428952−2 国会審議の流れ

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有事法制:与党は今国会で成立目指す 野党との協議は難航か

 武力攻撃事態法案を柱とする有事法制関連3法案が26日、衆院で審議入りし、野党側は武力攻撃事態法案に盛り込まれた「武力攻撃が予測される事態」の定義など法案のあいまいさをただした。これに対し小泉純一郎首相は「事態の判断は国際情勢、相手国の意図、軍事的行動などを総合的に勘案してなされる」と具体的な事例を挙げて説明することを避けた。 

 法案が審議入りしたのを受け、与党は今国会中の成立を目指して野党との協議を本格化させる。ただ、自由党はより緊急度が高いテロ・不審船対策が盛り込まれなかったことで政府案を「時代錯誤だ」と批判、共産、社民両党は慎重派の立場から反対している。民主党も菅直人幹事長が26日の会見で「(政府案は)根本的なところでほとんど抜け落ちている。この部分を修正すればいいとか悪いとか簡単に言える法律ではない」と述べ、今国会中の法案修正は困難との見通しを示した。修正協議も含む国会審議は難航も予想される。

 質疑では、自民党の菱田嘉明氏らが「今なぜ有事法制か」などと質問したのに対し、小泉首相は「武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態への対処を中心に、全体としての危機管理体制の整備を図るもの。かかる法制の整備は長年の課題であり、国家存立の基本として行われていなければならなかった」などと必要性を強調した。

 国民の私権制限が包括的に盛り込まれたことについての質問も相次いだが、首相は「国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のためには合理的な範囲と判断される限りにおいて(私権を制限することは)憲法の趣旨に沿ったものだ」として理解を求めた。

 法案は5月7、9の両日、武力攻撃事態特別委員会で全閣僚出席のうえ基本的質疑を行う。

 自民党国対幹部は「議論の中でなるほどということがあれば執行部と話をすることがあるかもしれない」と述べており、野党が修正要求を出してくれば柔軟に対応することも検討している。[毎日新聞4月26日] ( 2002-04-26-23:52 )



2002年05月05日有事法制:7日から衆院特別委 政府は今国会中の成立を目指す

 武力攻撃事態法案を柱とする有事法制関連3法案は7日から、衆院の武力攻撃事態特別委員会で小泉純一郎首相はじめ全閣僚が出席して質疑が始まる。先の衆院本会議の代表質問では野党から3法案への反対意見が相次いだが、政府・与党は国の根幹にかかわる重要法案として野党にも理解を求め、今国会中の成立を目指す考え。最大野党・民主党と歩み寄れるかが焦点で、政府・与党は法案修正も視野に柔軟に対応する構えだ。

 小泉首相は与野党に共通する「今なぜ有事法制なのか」との疑問について「国および国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態への対処を中心に、全体としての危機管理体制の整備を図るものだ」と3法案の必要性を強調している。

 ただ、武力攻撃事態がどのような状態を指すのかは具体的例示を避けており、野党側は「定義があいまいで有事の範囲が拡大する」などと追及する見通し。

 有事の際の国民の私権制限が包括的に盛り込まれる一方で、国民保護法制の整備は2年以内の課題として先送りした点も論議になりそうだ。また、緊急性の高いテロや不審船対策が盛り込まれていない点について「政府案は時代錯誤」(自由党)などの批判が出ている。【鬼木浩文】[毎日新聞5月5日] ( 2002-05-05-17:15 )



2002年4月27日(土)「しんぶん赤旗」戦争国家法案審議入り 歴史の過ち繰り返すな 石井副委員長が違憲性指摘
衆院本会議【関連記事】  【代表質問全文】


 小泉内閣発足から丸一年の二十六日、衆院本会議で「戦争国家法案」(武力攻撃事態法案など有事三法案)が審議入りしました。戦争放棄の九条をはじめ、国民の人権や自由、地方自治など、憲法の民主的諸原則をふみにじり、戦争を最優先させる国家体制をつくろうとする重大法案。国会周辺は朝から宗教者や市民団体、労働組合が集会や請願デモ、国会傍聴を行い、怒りの声に包まれました。日本共産党の石井郁子副委員長が質問に立ち、法案の危険を明らかにし、小泉純一郎首相の認識をただしました。


 「送らじなこの身裂くとも教え子を理(ことわり)もなきいくさの庭に」 石井副委員長は、高知県の教員・竹本源治氏が痛恨の思いで詠んだ歌を紹介し、「子どもの命を守り、育てる女性として絶対に歴史の過ちを繰り返すことは許せません」と述べると、議場は水をうったように静まり返りました。

 戦争国家法案のねらいについて石井氏は、アメリカが行うアジア太平洋地域での介入戦争に、自衛隊を参戦させ、国民を強制的に総動員するためだと指摘。アーミテージ米国務副長官らが、日本が集団的自衛権を認めることや、有事法制策定を公然と要求しているとして、アメリカの戦争にいっそう加担・協力する日本政府の動きを批判しました。

 石井氏は、国民を総動員するために、戦争協力の努力義務を課し、医療・輸送・土木工事の従事者への業務従事命令などでは罰則付きで協力を強制していることをあげ、戦争非協力の立場を国家が犯罪とみなすものだと批判。戦争協力の「責務」を負わされる日本銀行、日本赤十字、NHK、輸送・通信、電力、ガスの事業者など「指定公共機関」は無限定になると指摘しました。

 さらに法案が国民の自由と権利に「制限が加えられる」とし、その歯止めが何もないことをあげ、「包括的かつ無限定に国民の自由と権利を侵害するものだ」と批判しました。

 石井氏はさらに、戦争のために首相が全権限を行使し、国会が無視される問題を指摘。首相には地方自治体などへの「指示権」や「直接執行権」まで与え、「まさに有無をいわさずの強行になる」と批判しました。

 小泉首相は国民の権利制限について、「公共の福祉に反しない限り、憲法の趣旨にそったもの」などと、まともに答えられませんでした。

 小泉首相は、法案の国民動員が発動される「武力攻撃事態」が、アメリカの介入戦争による「周辺事態」にもあたると認めました。


その時、議場は退席者相次ぎ与党席ガラガラ

 アメリカの戦争に国民を強制動員する「戦争国家法案」が審議入りした二十六日午後の衆院本会議。自民党は途中退席する議員が目立ち、二百四十の同党議員のうち、一時は百人前後が空席のまま議事が進みました。

 自党の質問が終わったころから途中退席する議員がボロボロ。五人がけ、六人がけの一列分が全部が空席になった座席までありました。

 「何が重大事態だ。全然いないじゃないか!」「与党席、ガラガラだぞ!」と、野党席から激しいヤジが飛ぶなか、鳩山邦夫衆院議院運営委員長が「ここ、ズラッといないよ」と空席が並ぶ列を指さし、議員集めを指示するような場面も見られました。

 審議を傍聴していた東京・国分寺市の小池好子さん(57)は「憲法に違反し、日本の平和と民主主義にかかわる大変な法案なのに、審議にも参加しないなんて国会議員の資格がない。いいかげんな審議で、数の力で押し通そうとしているのが、ありありですね」と憤激します。三浦サエ子さん(67)=同市=も「きょう見たガラガラの自民党席のことも街頭から訴え、反対運動を広げたい」と語っていました。



2002年4月28日(日)「しんぶん赤旗」

戦争国家法案審議入り 「国家存立の基本」といいながら 足元みれば、このていたらく

 医療改悪法案(十九日)、個人情報保護法案(二十五日)の審議入りと同じような光景が、二十六日午後の衆院本会議で三たびおきました。有事三法案=戦争国家法案の趣旨説明と各党質疑があったときです。

 始まって一時間もたたないのに、途中退席が相次ぎガラガラになった自民党席。残っている自民党議員といえば熟睡と立ち話です。「学級崩壊」ならぬ政権党が作り出す「国会崩壊」。記者席の空席も目立ち、開会と同時にいっぱいになった傍聴席とは対照的です。傍聴者のなかには約三十人の子どもたちの姿もありました。

しゃにむに日程決める

 戦争国家法案は、憲法にもとづく国づくりの根幹にかかわる重大問題です。政府・与党は、医療改悪法案も個人情報保護法案も「今国会でなんとしても成立を」のかけ声で、会期(六月十九日まで)を逆算して、しゃにむに審議入り日程を決めてきました。いざ審議となれば、先にみたようなていたらくです。

 「(法案は)国全体としての基本的な危機管理体制の整備をはかろうとするものだ。国家存立の基本として整備されているべきものだ」(二十六日)

 原稿棒読みの答弁で小泉純一郎首相は、くり返しこう強調しました。口利き、機密費、スキャンダル…。自分たち政権党の「危機」の管理さえままならないのに、「国家存立」うんぬんとはよくいえたものです。

あいまいな答弁相次ぐ

 審議のやりとりを聞いてさらに驚きました。

 法案を推進する与党からは、「国民の中には、冷戦終結したいま、どうして有事法制が必要なのかという疑問や、人権や地方自治が不当に制限されるのではなどの不安がある」(自民党・菱田嘉明議員)と、法案の必要性の説明を求める質問が相次ぎました。対する小泉首相は、「国家存立の基本だ」「武力攻撃事態かどうかは国際情勢、相手国の意図などを総合的に勘案して判断する」と抽象的な言葉を並べたてるだけ。片山虎之助総務相は、「指定公共機関」の内容について問われると、「今後検討していく」と、これまたあいまいな答弁です。

 マスコミも「具体像不明 与党も質問 首相、抽象的答弁に終始」(「朝日」)と書いたほどです。

 小泉内閣発足丸一年の二十六日に発表された完全失業率は5・2%で過去最悪となりました。国民のくらしを支える政治がいまほど求められているときはありません。それなのに、政府・与党は、国民になおも痛みをおしつけ、腐敗政治にどっぷりつかり、戦争国家体制づくりの法案のごり押しです。しかも、それだけのことをやりながら、真剣さも緊張感もありません。「国家存立」うんぬんをいう前に、政権党としての最低限の資格が問われています。 (高柳幸雄記者)



5月07日有事法:基本的質疑始まる 衆院武力攻撃事態特別委員会

 武力攻撃事態法案を柱とする有事法制関連3法案に対する基本的質疑が7日午前、衆院武力攻撃事態特別委員会で、小泉純一郎首相と全閣僚が出席して始まった。民主党の岡田克也政調会長が法案に盛り込まれた武力攻撃が予測される事態の定義を明確にするよう迫ったのに対し、中谷元防衛庁長官は「事態は千差万別だ」としたうえで、「防衛出動前の防衛出動待機命令を出せる状態」「武力攻撃の意図が推測され、武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される状態」などと述べるにとどまり、具体的な例示は避けた。

 法案は武力攻撃事態における地方自治体に対する首相の指示、代執行の権限を認めたほか、国民の私権制限も包括的に盛り込んだ戦後初の有事立法になる。重要法案であることから、野党側は岡田氏のほか、自由党が藤井裕久幹事長、共産党は志位和夫委員長、社民党は土井たか子党首が質問する。個別法案の審議で野党が党首または党首クラスが質問に立つのは異例だ。

 最初に質問に立った自民党の衛藤征士郎元防衛庁長官が法案の必要性などについてただしたのに対し、首相は「いかなる時に国家の緊急事態が発生するか分からない。普段から有事に対して冷静に考え、しかるべき対応をとることは国家としてもっとも必要な仕事だ」と答えた。

 米軍への支援と自衛隊の活動範囲についての衛藤氏の質問に、中谷長官は「(周辺事態と武力攻撃事態が)併存する事態も考えられる。米軍の支援に関しては、その支援が米軍の武力行為と一体化しても、我が国の自衛権発動の3要件に合致する限り、憲法との関係で問題が生じるものではない」と述べた。自衛権の発動として自衛隊が行動する範囲内にとどまる限り、米軍を支援しても憲法上の問題はないとの認識を示したものだ。

 また、昨年9月の米国同時多発テロが、法案が想定する武力攻撃事態に該当するかどうかについて、中谷長官は「法案は、日本に対する武力攻撃についてあらゆる事態を含む。仮に同様の事態が発生したら、該当する場合もあり得る」との見解を示した。[毎日新聞2002-5月7日]



5月09日 2:20有事法制:公海上船舶への攻撃も対象に 福田康夫官房長官

 福田康夫官房長官は8日の衆院武力攻撃事態特別委員会で、武力攻撃事態法案で定める武力攻撃事態の範囲について「公海上の船舶等に対する攻撃が、状況によって我が国に対する組織的、計画的武力の行使にあたる場合も排除されない」と述べた。公海上で日本の船舶等が武力攻撃を受けた場合、同法案の武力攻撃事態の対象になり得るとの見方を示したものだ。

 福田長官は、他国の領域内にある自衛隊の艦船や航空機、または在外公館などに対する武力攻撃については「国連平和維持活動(PKO)の部隊が戦闘地域に行くことはない」と説明。在外公館についても「相手国の領域の中で(攻撃が)起こる場合は、通常は相手国が(在外公館を)守る」と述べ、武力攻撃事態と認定する可能性は極めて低いとの認識を示した。

 ただ、福田長官は「我が国に対する計画的、組織的な攻撃だと認定されるかどうかが問題」と述べ、理論的には、外国の領域内でも武力攻撃事態と認定するケースはあり得るとの見解も示した。

 これに関連して、中谷元防衛庁長官は「相手国の領域内での不測の事態については、正当防衛や緊急避難として自衛隊法95条に定めた武器防護(による武器の使用)を適用する」と述べた。[毎日新聞5月9日]



有事、民間防衛組織整備へ

 福田官房長官は8日午前の衆院武力攻撃事態対処特別委員会で、今後整備する有事法制に関し、有事における被災者救援や被害復旧などのために、一般国民が参加する民間防衛組織の設置に関する新たな法整備を目指す意向を表明した。政府が公式の場でこうした考えを示したのは初めて。

 福田長官は、米田建三氏(自民)が有事における国民の協力について質問したのに対し、「国民が被災者の搬送などに協力することを想定している。このために必要な組織や平時における訓練のあり方について、仕組みを考えたい」と述べた。

 政府が民間防衛組織の設置を目指すのは、有事においては自衛隊は防衛活動に専念することから、「国民の被害を最小限に抑えるには、住民が互いに協力しながら、自らの手で助け合うことが不可欠」(防衛庁)と考えているためだ。また、政府内では、民間防衛組織を大規模災害時にも活用する案も検討されている。

 ただ、民間防衛組織に対し、「戦前の隣組のように住民が相互監視することになりかねない」などの懸念があることから、政府は、自主的な参加にゆだねることで強制色を薄めたい考えだ。

 民間防衛組織は、有事に、自治体や警察と連携しながら、救援活動のほか、相互連絡、物資配給などを実施する。平時には、訓練なども行う。政府は77年から始まった有事法制研究の中で、民間救援組織について検討を進めてきた。フランスやドイツ、スイスなど各国で整備されている。

 福田長官はまた、有事における軍事情報の漏えい防止策について、「秘密情報の必要最小限の秘匿を考えないといけない。罰則(のある法律)にするか、国会の議論を踏まえて考えないといけない」と指摘した。

 中谷防衛長官は武力攻撃を受けた時に政府が公表する対処基本方針について、「国の安全を害するような内容まで含めることは考えていない」と述べた。(5月8日14:07)



5月09日有事審議:武力攻撃事態の具体的な事例を近く提示 官房長官

 衆院武力攻撃事態特別委員会は9日開かれ、福田康夫官房長官は、武力攻撃事態の具体的な事例について「どういう形で示せるか検討している。できるだけ早く示したい」と、近く同特別委で提示する考えを示した。公明党の赤松正雄氏の質問に答えた。

 また、福田長官は、武力攻撃事態における表現の自由について「(公共の福祉に反しない限り)戦争反対の個人の意思表明は明らかに国民の権利だ。集会や報道の自由は権利として確保されている」と説明した。民主党の桑原豊氏の質問に答えた。ただ、津野修内閣法制局長官は「検閲は有事においても禁止されている。(公共の福祉に反しない範囲は)どの程度までと一般的に言うことは難しい」と述べた。[毎日新聞5月9日] ( 2002-05-09-13:23 )



5月09日有事審議:武力攻撃事態には米軍との共同対処を明記 官房長官

 衆院武力攻撃事態特別委員会は9日、小泉純一郎首相と全閣僚が出席して7日に続き基本的質疑を行った。福田康夫官房長官は、武力攻撃事態が発生した場合の米軍との共同対処について、政府が定める対処基本方針に明記することを明らかにした。保守党の井上喜一氏の質問に答えた。

 福田長官は、基本方針に定める全般的方針の内容について「外交上の方針、国の基本的な姿勢、国民の安全の確保、日米共同対処など」と説明、米軍の行動について「日米安全保障条約5条の規定で対処するが、(対処基本方針の中の)全般的な方針に記載されることになる」と述べた。

 また福田長官は、武力攻撃が発生すると判断する時点について「(外国からの)ミサイルが着弾した時でなく、武力攻撃の着手があった時だ」と述べた。

 一方、福田長官は、武力攻撃事態における国民の自由と権利に制限が加えられる範囲について「(公共の福祉に反しない限り)戦争反対の個人の意思表明は明らかに国民の権利だ。集会や報道の自由は確保されている」と説明した。

 ただ、津野修内閣法制局長官は「検閲は有事においても禁止されている。(公共の福祉の範囲は)どの程度までと一般的に言うことは難しい」と説明するにとどめた。[毎日新聞5月9日] ( 2002-05-09-12:13 )



2002年5月9日(木)「しんぶん赤旗」他国領域での攻撃も「有事」木島議員質問に官房長官認める「武力攻撃」定義は二転三転

 日本共産党の木島日出夫議員は八日、衆院有事法制特別委員会で、有事法制が発動される「武力攻撃」に他国領域で活動する自衛隊部隊への攻撃が含まれるのかと追及しました。福田康夫官房長官は、「計画的、組織的な攻撃と認定されるかが問題。(認定されれば)そうなる」とのべ、法案発動の場合があると認めました。

 政府は、これまでインド洋など公海上の自衛隊艦船への攻撃が「武力攻撃事態」に含まれることは認めていましたが、PKO(国連平和維持活動)や報復戦争参加法(テロ対策特措法)にもとづき他国領域で活動する自衛隊部隊への攻撃まで「武力攻撃」に該当するとしたのは初めて。

 また、在外公館への攻撃も「基本的には入らない」としつつ、「諸般の状況」によっては「武力攻撃に該当する」と認め、まったく歯止めがないことを示しました。

 また、木島氏は、武力攻撃事態法案の中心概念である「武力攻撃」の定義について追及。法案に数多く使われている「武力攻撃」の意味について、「武力攻撃のおそれ」を含むか否かを、自衛隊の行動を規定した二条六号の「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」という規定に関してただしました。

 これに対し、福田官房長官は当初、武力攻撃という用語には「おそれのある場合」が「含まれない」と答弁。ところが、木島氏に問題点を指摘されると、今度は「含まれる」と正反対の答弁。前日の首相答弁とも矛盾する形になりました。

 あげくの果てに、福田長官は、同条の「武力攻撃」については「おそれのある場合」を含まないが、「部隊等の展開その他の行動」部分にかかるときは、「『おそれ』『予測』事態が含まれる」と答弁し、法案の矛盾を露呈しました。

 木島氏は「欠陥法案だ」と指摘し、政府の恣意(しい)的な判断でこの法律が動き出すと批判しました。



2002年5月9日(木)「しんぶん赤旗」衆院特別委 志位委員長の総括質問(大要)海外での武力行使の歯止めなし 有事3法案の恐るべき本質をつく

 七日の衆院有事法制特別委員会でおこなった日本共産党の志位和夫委員長の質問(大要)を紹介します。

 志位和夫委員長 有事法制三法案について、日本共産党を代表して、小泉首相に質問いたします。

 自衛隊を海外に派兵する法律としては、すでに「周辺事態法」が九九年に強行されたわけであります。しかし、この法律は、できないことが二つあります。この法律というのは、日本にたいする武力攻撃がなくても、アメリカがアジアのどこかで介入戦争をやった場合に、自衛隊がその戦争に参加できる仕組みをつくるものでしたが、できないことが二つあった。

 一つは、自衛隊が米軍の活動を支援するさいに、「武力の行使」をおこなってはならないということが建前とされておりました。

 もう一つは、この戦争に日本の国民を動員するさいに、強制力をもっての動員は許されないと、協力とか依頼であっても強制してはならないと、二つのできないことが「周辺事態法」ではあったわけです。

 いま国会に提出されている有事法制三法案というのは、この二つの点がどうなるのか。私は、法案の条文に即して、この点をただしていきたいと思います。

米国の戦争に参戦

 志位 まず、自衛隊による「武力の行使」は、どうなるのかという問題です。

 「武力攻撃事態法案」の第二条では、法案で使われる用語の「定義」について規定しております。

 その第二条第二号では、「武力攻撃事態」とは何かについて、「武力攻撃が発生した事態」、「武力攻撃のおそれのある場合」、「武力攻撃が予測される事態」――「発生」、「おそれ」、「予測」、この三つのケースを包括した規定だと定義しています。

 それをうけて「定義」の第二条第六号では、そうした「武力攻撃事態」にたいする「対処措置」とは何かについての定義を定めています。この第六号のイでは、「武力攻撃事態を終結させるために実施する措置」というのを定めておりまして、その(1)として、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」を規定しています。つまり自衛隊は、この定義によりますと、「武力攻撃事態を終結させる」ために、「武力の行使」ができるという規定になっています。

 そうしますと、ここで規定されている「武力攻撃事態を終結させる」ために自衛隊がおこなう「武力の行使」というのは、「武力攻撃事態」の三つのケース、すなわち「武力攻撃が発生した事態」「武力攻撃のおそれのある場合」「武力攻撃が予測される事態」、このすべての場合で、「武力の行使」ができるということになりますが、これはいかがですか。

 小泉純一郎首相 わが国が武力攻撃を受けた場合は、武力の行使はできますよ。そのために自衛隊はあるんですから。しかし、予測する段階で武力の行使なんかしようがないでしょう。必要な備えはするんだから。どういう部隊を展開するか、どういう予防措置をつくるか、これは武力の行使じゃないんです。

 志位 総理の答弁は、要するに、武力攻撃が「発生」した場合に限られると。「おそれ」や「予測」では、できないということですか。「おそれ」はいいのですか。どっちなのですか。

 首相 「おそれ」がある場合に武力攻撃なんて必要ないじゃないですか。

志位委員長 「『おそれ』『予測』の場合に武力行使を禁止する規定があるか」

中谷防衛庁長官 「条文には書かれていない」

 志位 要するに、「おそれ」や「予測」では武力の行使はしないということをあなたは言われました。

 私は、この法案について聞いているのです。この法案の中身について聞いているのです。この法案では、さきほどいったように「武力攻撃事態」――「発生」「おそれ」「予測」の全部をふくんだ「武力攻撃事態」を「終結」させるために、その全体を「終結」させるために、「対処措置」として「武力の行使」ができると一般的に規定しているのですよ。

 総理のいうように武力攻撃が「発生」した事態にのみにしか「武力の行使」ができないというのであるならば、その根拠になる規定は、この法案の「定義」のなかにありますか。あったら言ってください。

 中谷元・防衛庁長官 わが国の場合、武力の行使ができる組織というと、自衛隊だけでございます。この法律は自衛隊法とこの武力攻撃事態法案の二つが必要でありまして、武力攻撃事態法案にはその手続きを書いてあるわけです。自衛隊の行動につきましては、自衛隊法の七六条のなかに自衛隊の活動できる規定といたしまして、武力攻撃を受けた場合という規定があります。この両方によって自衛隊の行動が律せられるわけです。

 志位 答えてないんですよ。この「武力攻撃事態法案」のなかに「おそれ」や「予測」の場合では、「武力の行使」ができないという規定があるかないか。これを聞いているのです。自衛隊法の問題を聞いているんじゃないんです。この法案のなかにあるかないかを聞いているのです。

 なぜ問題にするかといいますと、この「武力攻撃事態法案」というのは、プログラム法でもあるわけでしょう。つまり、これがもし法律になったとするならば、二年以内に「事態対処法制」としてさまざまな法律を「改正」する必要があるわけですよ。そのとき、自衛隊法だって「改正」する必要がある。自衛隊法の原法にもなるのです。だから、自衛隊法に規定してあるかどうか聞いているんじゃない。この「武力攻撃事態法案」のなかに、「発生」の場合のみしか「武力の行使」ができないというのだったら、根拠になる規定があるかないか。あるんだったら、どこにあるんだと聞いているのです。どうですか、この法案のことを聞いているのですよ。

 防衛庁長官 この法案につきましては、自衛隊のことだけではなくて、国民の避難誘導とか、その他のことを含めまして包括的に決めております。このなかで自衛隊の記述はございますが、その際の国会承認等の手続きを書いておりますし、ご指摘のくだりもございます。しかしながら、自衛隊がからんだ行動につきましては、自衛隊法がございまして、八八条によりますと、出動を命じられた自衛隊は、わが国を防衛するために必要な武力を行使することができるということになっております。

 志位 質問に答えてくださいよ。自衛隊法のことを聞いているのじゃない。この「武力攻撃事態法案」のなかに、「おそれ」や「予測」の場合には「武力の行使」をしてはならないという明確な条文の規定があるかどうか聞いてるのですよ。それを聞いているのです。イエスかノーか。

 防衛庁長官 この条文には書かれておりませんが、自衛隊が防衛出動をして、武力行使をするということは、自衛隊法に書いております。ですから、この法案の手続き等によりましても、そういう予測の場合におきましては、武力の行使ができないということです。

志位委員長 「『国際法規と慣例の遵守』をなぜ落としたのか」

政府は答弁不能に

 志位 それでしたら、私は、自衛隊法の問題を聞きたい。自衛隊法にあるからといって、ここに規定がないことを合理化できないことはさきほどいった通りです。その規定が(「武力攻撃事態法案」のなかに)ないということを防衛庁長官はお認めになりました。しかし、(「武力攻撃事態法案」のなかに)「おそれ」や「予測」の場合には「武力の行使」はしてはならないという規定がなければ、その規定にあわせて、「事態対処法制」として、自衛隊法も変えられてしまう。だから、問題にしてきた。では、自衛隊法との関係を、つぎに私は、聞いてみたいと思うんです。

自衛隊法と「武力攻撃事態法案」では武力行使の要件が大きく違っている

 志位 (パネル=表1=を掲げて)自衛隊法では、武力行使の要件をこのように定めております。「武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」ものとする。自衛隊法八八条第二項であります。

 こんどの「武力攻撃事態法案」の第三条第三項を見ていただきたい。第三条というのは、「武力攻撃事態法案」のなかで「基本理念」、すなわち武力攻撃がおこったときの行動原則を決めた部分であります。これを見ますと、こういう規定になっています。「武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない」

 これは、重大な違いがあるでしょう。つまり、「国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し」というのが、すっぽり抜け落ちているわけですよ。あなたは、自衛隊法に則してやるとおっしゃったけれど、自衛隊法の規定と、こんどの「武力攻撃事態法案」の規定は違う。「国際の法規及び慣例(の遵守)」が、取り外されている。これは、なんで取り外したのですか。

 防衛庁長官 この武力攻撃事態法案というのは、基本理念を定め、それぞれの事態対処のための手続きを書いております。それによりまして、自衛隊が行動するわけでありますが、実際の自衛隊の行動につきましては、自衛隊法のなかにございまして、その際も七六条のなかにわが国を防衛する必要と認める場合には防衛出動を命じるというふうに、記述を書いておりますし、八八条の条文には、ご指摘の「国際法規を遵守し」という規定がございますので、それにしたがって行動するわけです。

 志位 全然、答弁になってないですよ。なんで落としたか聞いてるのです。「武力攻撃事態法案」のなかで、自衛隊の武力行使の要件を書いたのは、ここだけですね。これは間違いありませんね。(防衛庁長官うなずく)

 うなずいているから、武力行使の要件を書いたのはここだけなんです。ここだけで、なんでわざわざ、これを落とす必要があるのですか。「国際の法規及び慣例の遵守」を、なぜ落としたのかを聞いてるのです。答弁になってません。なぜ落としたのか。

 防衛庁長官 自衛隊法には自衛隊法の根拠を書いております。武力攻撃事態法案には、その理念を書いておりまして、武力攻撃事態に際しては、自衛隊のみならず、いろんな省庁、また公共団体等の行動を決める必要がございますので、その基本的理念を書いているわけです。

 志位 自衛隊法とこんどの「武力攻撃事態法案」は、「武力攻撃事態法案」が基本的な法律になるのですよ。これにもとづいて、二一条、二二条、二三条に定められている「事態対処法制」で、自衛隊法も変えられるんですよ。二年以内にそういう(立法措置をとる)ことになってるじゃありませんか。だから、なぜこれを落としたのかと。こんどの法律で落としたら、自衛隊法だって落とすことになるんですよ。「国際の法規及び慣例の遵守」をなぜ落としたのか。まったく説明になっていない。ちゃんと説明してください。

 防衛庁長官 自衛隊法の七六条の防衛出動の記述も、この自衛隊が出動する際の手続きが、この武力攻撃事態法案によってはじまる記述の変更はございますけども、その他の自衛隊の基本理念につきましては、その根拠として残しているわけでありますし、また八八条につきましても、原文のままでございますので、自衛隊の行動に関して、変化するところはいささかもないわけでございます。

「おそれ」や「予測」で武力行使をすれば、国際法違反の先制攻撃になる

 志位 私がなんでこの問題を、きちんとただしたいかといいますと、さきほど私は「武力攻撃事態法案」の定義の第二条を問題にいたしました。ここでは「武力攻撃事態」というのは、三つケースを包含している。「発生」と「おそれ」と「予測」。これを包含している事態だと規定し、その全体を「終結」させるために自衛隊は「武力の行使」ができるというふうにかかっているのではないかと私は聞きました。それにたいして総理は、これは「発生」だけだと、武力攻撃が「発生」したときじゃないと「武力の行使」はできないとお答えになりました。そこで私は、それはこの法律のなかのどの条文によって規定されているんだと聞きましたら、結局、この法案のなかには「おそれ」や「予測」の段階での「武力の行使」を禁止する規定の条項はないというのが、さっきの答弁だったでしょう。だから、問題にしているのですよ。

 というのは、「おそれ」や「予測」で「武力の行使」をやったら、先制攻撃になるのですよ。これは、国際法違反になるのですよ。そして、「おそれ」や「予測」での対応というのは、「周辺事態法」とも重なり合ってくる。日本にたいする攻撃がなくても、アメリカが軍事行動を起こしたら、自衛隊がその戦争に参加する。これは、まさに、「おそれ」や「予測」という事態と重なり合ってくる。こういう事態でも日本が「武力の行使」ができるというところに道を開いてくるのじゃないか。そういう規定なんじゃないか。だから、「おそれ」や「予測」の問題は、あいまいにできない問題だと聞いているのです。これを禁止する条項はないんですよ。あなたが認めたように。この法案のなかには、禁止する条項がない。一方で「国際法規の遵守」を落としてしまっている。これはいったいどういうことなのかということを聞いている。

 さきほどの自衛隊法八八条二項の「国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し」ということを、歴代の政府がなんというふうに説明してきたのか。歴代の政府が、どういう意味で、これを説明してきたのか、ご存じですか。

 防衛庁長官 自衛隊は防衛出動がかからない限りにおきましては、武力行使をすることもできませんし、また、武力行使をする場合におきましても総理から承認いただいた、自衛隊の活動のできる地域においてのみできるわけでございまして、これまでの審議でのやりとりにおきまして、武力の行使ができるということは防衛出動が起こってから、すなわち、武力攻撃が受けてからでないと武力の行使ができないとお答えいたしておりまして、この基本原則は何ら変わるものではございません。

 志位 また質問に答えていないですね。私が聞いたのは、自衛隊法の八八条二項にある「国際の法規及び慣例の遵守」、これをどういう意味の条項だと、これまで政府は説明してきたのか、ということを聞いているのですよ。(委員長に)ちゃんと質問に答えさせてください。

 防衛庁長官 条項の意味ですけれども、原則として国会の事前承認を得て防衛出動命令が下令されて自衛権の発動の三要件に該当する場合に限られておりますし、この武力行使は国際の法規・慣例によるべき場合であって、これを遵守し、事態に応じこれを合理的に必要と判断される限度をこえてはならない、という要件を課しております。その国際法規及び慣例には、ジュネーブ条約の記述とか、ハーグ陸戦法規とか、毒ガスの禁止に関する議定書とか、対人地雷条約とか、そういうものが含まれるわけでありまして、武力の行使がわが国を防衛するために、必要最小限の範囲内にとどまるべきとの趣旨で、そのような記述がされているというふうに理解しております。

 志位 いまジュネーブ条約などの国際人道法を守る規定だというふうにおっしゃいましたが、そういう意味だけですか。

 防衛庁長官 たとえばジュネーブ条約に関しましては、武力の行使の対象は戦闘員に限られますし、軍事目標に限られる。また民間人や民間施設を攻撃の対象としてはならないこととされておりまして、そのような国際的なルールを守って自衛隊が行動するということでございます。

 志位 そうするとまったく矛盾した説明になるんですよ。この「武力攻撃事態法案」には第二一条「事態対処法制の整備に関する基本方針」というのがありますが、その第二項では、「事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保されたものでなければならない」と書いてありますね。つまり、そういうジュネーブ条約などの、国際人道法を守るための「事態対処法制」を二年以内につくるということが書いてあるわけですよ。法案で。それを書いておきながら、「基本理念」のなかでその基本になる「国際法規の遵守」を落とす理由はないじゃないですか。そういう「事態対処法制」をつくるというのだったら、なんでここから落とす必要があるのですか。

 防衛庁長官 自衛隊法にそういう記述がなければ、書く理由がありますが、もうすでに自衛隊法のなかに記述がございますので、書く理由はございません。

歴代政府はこの条項を先制攻撃を禁止する条項と説明してきた

 志位 そういう軽々しいことで落とせるような条文じゃないですよ。政府はこれまで、この八八条二項前段の部分の「国際の法規及び慣例の遵守」という項目の意味について、繰り返し国会で答弁していますよ。この(パネル=表1=のなかで)赤い文字で書かれた条文(太字部分)は、日本の側からの先制的な武力攻撃はできないんだ、ということを保障する条文なんだと繰り返し言っていますよ。

 たとえば一九六〇年三月一日衆議院予算委員会、この場ですけども、林内閣法制局長官は、八八条第二項について、これは「国連憲章第五一条の要件にあたる以外には、武力の行使をしてはならないということを書いているものだ」と説明しています。国連憲章第五一条でのべている武力攻撃に対する自衛反撃以外の武力の行使、すなわち先制的な武力の行使、「おそれ」や「予測」の場合での武力の行使、これはやってはならない規定なんだと繰り返し言っていますよ。つまり、武力行使の三要件のうち、武力攻撃が発生したことをあらわす規定なんだということを、繰り返し言ってますよ。

 これを、今度の法案は取り外してしまった。私は、政府の従来の説明に照らしても、「国際の法規及び慣例の遵守」をわざわざ落としたということは、武力攻撃が「発生」しなくても、武力攻撃の「おそれ」や武力攻撃の「予測」がされる場合でも、「武力の行使」ができるところに道を開いたということになるではありませんか。これまで、先制攻撃ができない最大の担保、保障が、この(パネルをしめす)「国際の法規及び慣例の遵守」と説明してたのですから、それを落としちゃったら、先制攻撃ができるということになっちゃうじゃないですか。「おそれ」や「予測」の場合でも、これはできるということになっちゃうじゃないですか。今回の法案は、そういう重大な条文になっているのではないか。どうですか。

 防衛庁長官 この条文に書かれていなくても、自衛隊出動の許可がなければ、自衛隊は行動できませんし、武力行使もできません。したがいまして、「武力攻撃のおそれ」の場合は、防衛出動はできますけれども、武力攻撃が発生しなければ武力の行使はできないわけでございます。自衛権の発動の三要件については、従来から憲法第九条のもとに認められる自衛権の発動としての武力行使については、三点、わが国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するために他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、というのが定められております。

 志位 なぜ落としたかの理由を聞いているのですよ。なぜわざわざ落とす必要があったのかの理由なのです。自衛隊法に書いてあったら、そのまま書けばいいじゃないですか。そんなに軽い条文じゃないのです。先制攻撃をやっちゃならないということの保障になる条文だと説明してきた、きわめて重大な条文なのですよ。なぜわざわざ落とす必要があったのかと聞いているのです。自衛隊法に書いてあるからというのは説明にならない。落とした理由を聞いているのです。

 福田康夫官房長官 先制攻撃うんぬんというお話でございますが、その前に申し上げますと、この武力攻撃事態法においては基本理念をのべているわけでございまして、それでは先制攻撃のことをなにも触れてないじゃないかということになりますれば、それは、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」ということをのべて、これはまさに委員のおっしゃっていることを防ぐためにある条文だと考えるべきである、このことは防衛庁長官がのべている通り、ただいまものべた通りです。

 志位 「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」というのは、「武力の行使」をやることは前提にあって、これだけの限度でやらなきゃなりませんよということを書いてあるだけなんですよ。「武力の行使」はもう前提になっているのですよ。その限度を書いてあるだけなんですよ。その前にある文章をなぜ落としたのかというのを聞いているのです。前にある文章はあったでしょう。「国際の法規及び慣例の遵守」。どうして落としたんですか。なぜわざわざ落とす必要があったのか。なんでこんなこと答えられないのですか。

(瓦力委員長が中谷防衛庁長官を指名するが、中谷長官は答弁に立たない)

 官房長官 要するに必要最小限度の自衛権の行使と、まあこういうことをのべているわけでございますからね。ですから、赤く書いてあった部分の国際法規うんぬんというようなことについては、そこで十分カバーできるんだというように考えていいのではないかと思います。

 志位 カバーできないんですよ。この「国際法規の遵守」というのは、国連憲章五一条の遵守なんだと、国連憲章五一条では、武力行使は現に発生した場合にのみ自衛の反撃が許されると、これが「国際法規の遵守」の意味なんだと、だからこれがあるから、「おそれ」の場合では武力行使できませんと、もちろん「予測」の場合でもできませんと、こうやって政府はこれまで答弁してきたんですよ。それをなぜわざわざ落としたのかと、落としてしまったら、「おそれ」や「予測」でも、「武力の行使」はできるようになるじゃないかと、少なくともこの法案では、そういう構造になっているじゃないかと、いうことを問題にしているのです。官房長官、あなたが出している法案でしょう。官房長官、官房長官。

 津野修内閣法制局長官 官房長官のご答弁の前に説明をさせていただきます。まず、憲法第九条の下において、許容されております自衛権の発動、これにつきましては政府は従来から、いわゆる自衛権発動の三要件として、わが国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち武力攻撃が発生したこと、これがまず第一要件として掲げられているわけです。第二に、この場合にこれを排除するために、他の適当な手段がないこと、および第三として、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、に該当する場合に限られているわけです。そして、今回、いわゆる武力攻撃事態法案も提出、提案したわけですけれども、あるいは自衛隊法も現にございますが、これらはいずれも憲法の規定を解釈、そういったものを前提と致しましてできているわけで、決して先制攻撃ができるというようなことで、そういった規定をつくったわけではありません。そして、当然、自衛隊法上、武力を行使する場合にはそのさきほどのご指摘のような文言が自衛隊法上もございますわけですから、ご懸念のような、先制攻撃を許容しているというようなことはさらさらないということです。

武力行使は無限定、「国際法規の遵守」を落とす――先制攻撃への歯止めなし

 志位 私が聞いたことに全然答えてないですよ。「国際法規の遵守」を、なぜ落としたのかということです。「国際法規の遵守」は必要ないから落としたんじゃないですか。するつもりがないから、落としたんじゃないですか。そうとしかいいようがないですよ。

 だってこの法律全体を通して、「武力攻撃事態」というのはひじょうに広く規定されています。武力攻撃が「発生」した事態だけじゃなくて、「おそれ」の事態、「予測」の事態、三つを全部包含している。そのときに「定義」で、それを「終結」させる――「武力攻撃事態」を「終結」させるというのは、「発生」も「終結」させる、「おそれ」も「終結」させる、「予測」される事態も「終結」させるということでしょう。

 この全部を「終結」させるための「対処措置」として、自衛隊ができることとして、「武力の行使」ということが、無規定に入ってるんですよ。無限定に。そして、その「武力の行使」というのは、「おそれ」や「予測」の場合ではやってはならないという規定は、明示的に、法案の条文、「定義」のなかでも、法案の全体を通しても、どこにも一つもないでしょう。一つもないところに、あわせてもってきて「国際法規の遵守」を落とすということになったら、これは、無法な先制攻撃に道を開く法律だというふうにとられたとしてもしょうがない法案に、私はなっていると思います。

 結局、これだけ聞いて、はっきりしたものが、二つあるのですよ。第一は、この法案は、全体を通して「おそれ」や「予測」の事態で「武力の行使」をしてはいけないという規定がないこと、第二に、さきほどいったように、「国際法規の遵守」という項目を武力行使の要件から落とすという重大な、変更をしておきながら、合理的な説明を、だれもできなかった。防衛庁長官も、官房長官も、法制局長官も説明できなかった。私はそういう点で、まさに、国際法を守る保障をもってない法案だと、いわざるを得ません。

志位委員長 「『武力攻撃事態法』が『周辺事態法』と合体したらどうらるか」

 志位 私はつぎに進みたいと思うんですが、こういう極めて危険な内容をもっている「武力攻撃事態法案」が、「周辺事態法」と合体したらどういうことになるか、という問題について、つぎにただしていきたい。

「周辺事態法」では建前だった「武力行使の禁止」の規定がまったくない

 志位 総理は、「周辺事態」と「武力攻撃事態」が重なり合うことを繰り返し認めておられます。これは、一つの事態にたいして「周辺事態法」と「武力攻撃事態法」が、いわば組み合わさって発動されることがあるということになります。「周辺事態法」というのは、日本に対する武力攻撃でなくても、アメリカがアジアのどこかで介入戦争を始めたら、自衛隊がその戦争に参加する法律でした。ただ、「周辺事態」への対応として、自衛隊がたとえば、米軍への補給とか輸送とか修理とか医療とか、いわゆる後方地域支援、これをやれることができるとされていたけれども、自衛隊は「周辺事態法」によりますと、派兵先で決して、武力の行使をしてはならないという縛りがかかっていましたね。これ間違いありませんね。どうですか。

 官房長官 いまの質問にお答えする前に、もう一度申し上げますけれども、委員は第二条、定義の所でいわれているわけですね。しかし、この法律の基本理念、第三条にございます武力攻撃事態への対処に関する基本理念、ここの第二項に、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない」と書いてるんです。参考に第三項ですが、「武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない」と。ここにも書いてるわけです。この理念をもってこの法律を施行していくことになるんだろうと思います。

 また、もう一つ、申し上げれば、この第一八条、ここには、わが国が講じた処置について、「直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない」、こういうふうに規定されているわけであります。ですから、国際法規を無視するとかそういうことではまったくなく、むしろ積極的に事態の排除というか、戦争の武力の排除とか終結とか、こういうことをもっと重く考えるべきではないかと思っております。

 志位 いまの官房長官の説明は全く成り立たない説明なんですよ。第二条第二号でさっきいったような規定を定義をしたわけです。その定義をうけて、「対処措置」というのが定義されたわけですね。それを全体を受けて第三条の「基本理念」の第一項で、「万全の措置が講じられなければならない」と、あるわけですね。「万全の措置」のなかには、当然「武力の行使」が入るわけですよ。

 それで、その後に、(第三条)第二項のことを説明されましたけれども、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない」と書いてありますよ。しかし、この回避の手段については書いてないでしょう。武力を行使して、相手側の武力攻撃の発生を回避するという手段だってとりうるんですよ。とっちゃいけないと、どこにも書いてないじゃないですか。それを書いてないということを問題にしているのです。「武力の行使」ができると一般的な規定をして、「万全の措置」をとると、そしてそれを「基本理念」の冒頭においておきながら、この「基本理念」のなかにも、「おそれ」や「予測」の場合では、武力の行使をしてはならない、という規定があるかといえば、どこにも書いていない。書いてないどころか、国際法を守るということも書いてない。ですから、これを問題にしたわけです。

 さっきの質問に答えてください。「周辺事態法」について、これは武力の行使をしてはならないという原則はありますね。いいですか(官房長官うなずく)。じゃあ、首を振っていますから、そういうことでしょう。

 「周辺事態法」では武力の行使をしてはならないという基本原則があるんですよ。これまで、自衛隊を海外に出す法案はいろいろありました。PKO法が九二年。「周辺事態法」が九九年。「テロ特措法」が二〇〇一年。これすべて、武力の行使はしてはならないという規定は入ってますよ。ところが今度の「武力攻撃事態法」には、その規定が全くないということを、私は問題にしているわけです。

「武力攻撃事態法」では米軍支援の自衛隊が危険になったら逃げるのか

 志位 私は先に進みたいんですけれども、「周辺事態法」では米軍を支援する自衛隊の艦船は、戦闘地域に行っちゃならない、という決まりがありましたね。戦闘地域、つまり武力攻撃を受ける可能性のある戦闘地域では「後方支援活動」をやっちゃいけないと。補給とか輸送とか、これをやっちゃいけないと。もっと後ろの方の安全な「後方地域」でのみで許されるんだというのが、「周辺事態法」の建前でしたね。ですから、米軍への支援活動を自衛隊がやっている最中に、武力攻撃がされる危険が生まれたら、その支援活動を中断しなきゃならない。中断してその場から逃げて、攻撃にあわないようにしなきゃならないというのが、「周辺事態法」の定めですね。これは間違いないですね。

 防衛庁長官 おっしゃる通りであります。

 志位 ところが、私は、「武力攻撃事態法」のこの法案の体系でいくと、違ったことになるんじゃないかと。この法律が発動されたら、米軍への支援活動を、たとえば自衛隊の艦船がやっている、補給の活動をやっている、輸送の活動をやっている、こういう活動をやっていたとしますでしょう。その時に自衛隊が武力攻撃をされる危険が生まれても、その場から逃げるわけにはいかなくなるでしょう。「武力攻撃事態を終結」させるために、「武力の行使」もふくめて、「万全の措置」をとるという法律の定めに従うならば、その場にとどまって米軍への支援活動を継続しなければならなくなるというのが、この法律だと思いますが、いかがでしょうか。

 防衛庁長官 日本が武力攻撃をされているときはその通りであります。

 志位 日本が武力攻撃をされているときは、と条件つきで聞いたのじゃないんですよ。米軍への支援活動をやってるさいなんですよ。「武力攻撃事態法」というのは、「武力攻撃事態を終結させる」ための法律でしょう。「武力攻撃事態」には何度もいっているように、三つのケースが入るのですよ。日本が攻撃されている場合、それから、「おそれ」がある場合、「予測」の場合、三つ入るのですよ。この「武力攻撃事態を終結」させるために、米軍が海外で動いたと、その時に、自衛隊が支援活動をやっていると、危なくなってきたと、武力攻撃の「おそれ」がある場合、「予測」がされる場合も「武力攻撃事態」に入るわけですから、そういう場合には逃げるんですか。それともその場にとどまってやるんですか。どうですか。「武力攻撃事態」で、武力攻撃がまだ「発生」していないと、しかし、武力攻撃の「おそれ」がある、あるいは「予測」があると、それで出ていったと。出て行ったときに、海外で自衛隊の艦船が危なくなったと。そのときには逃げるのですか。それとも、その場にとどまって戦うのですか。

 防衛庁長官 米軍が行動できるというのは、わが国が攻撃された後であります。自衛隊も、これも武力攻撃があった後、武力を行使するわけでありますので、そういう際の米軍の行動に際して、支援もおこなう必要がございますし、日本を防衛する米国軍を防衛するというのは当然のことであります。

 志位 私の質問に、また答えないですね。つまり、武力攻撃の「おそれ」がある事態、武力攻撃が「予測」される事態、こういう場合でも、米軍は行動できるでしょう。「武力攻撃事態を終結させるために実施する措置」というのがさっきいった第二条の「定義」の第六号、「対処措置」のところにあるわけですけれども、その(1)は、自衛隊の武力の行使などの活動、(2)は、自衛隊の行動および米軍が安保条約にしたがって武力攻撃を排除するためにおこなう活動、それを支援する活動とあるんですよ。

 だから米軍は、「武力攻撃事態」が発生したら、日本有事でなくたって、日本が攻撃されてなくたって、「武力攻撃事態」というのは「おそれ」や「予測」を含むのですから、行動するのですよ。そうやって行動している米軍に、日本が、自衛隊の艦船が後方支援をやっていた、兵たん支援をやっていた。危なくなった。そのとき逃げるのか、逃げないのかということを聞いているのです。ちゃんと答えてください。武力攻撃があった場合は、それは日本にたいする武力攻撃ということで応戦するのでしょう。あなたがたの論理からいえば。それを聞いているのではない。もうそれはさっき答弁をもらいました。「おそれ」や「予測」の場合ではどうなるのですかと聞いているのです。

 防衛庁長官 わが国にたいして武力攻撃が発生していない段階ですけれども、武力攻撃が予測される場合、または武力攻撃のおそれのある場合におきましては、米国の武力行使と一体化するような支援措置やわが国としての武力行使がおこなえないことは当然でして、一体化するような支援措置がおこなえないということです。

 志位 逃げるか、逃げないか、聞いているんですよ。そうすると、逃げるんですね。一体化する武力攻撃、一体化する活動ができないということは、逃げるということですか。

 防衛庁長官 わが国におきましては、集団的自衛権を行使しないということになっております。

 志位 ちゃんと答えてくださいよ。だからこの場合は、支援活動を中断して、撤退するのですか。

 防衛庁長官 わが国といたしましては、集団的自衛権を行使しえないということでございます。その地域を離脱をするということでございます。

志位委員長 「米国防長官の『先制攻撃も必要』発言は容認できないというべきだ」

小泉首相 「選択肢(の一つ)として理解する」

 志位 これは、一つの事態なのですよ。一つの事態なんだけど、「周辺事態」から、「武力攻撃事態」へと読み替えると、自衛隊の対応が変わってくるんじゃないかということを問題にしている。

 「周辺事態法」では禁止されていた武力の行使を、明示的に禁止する条文がない。この法案には。禁止する条文がまったくない。ですから私は、これは米軍がおこなう戦争に、日本が一体になって戦争をやれる道を開くものではないか。法案上はそうとしか読めない。あなたは否定しました。しかし、法案の構造と矛盾した答弁です。

 「おそれ」や「予測」では、武力行使しないんだと、いうことをおっしゃいました。しかし、「おそれ」や「予測」でどんどん武力行使をやってる国が、世界にはありますよ。アメリカです。私は、総理に、それだけやらないというのだったら、アメリカにたいする基本姿勢を聞きたい。

 アメリカがこの間おこなってきた戦争というのは、たとえば一九八三年のグレナダ侵略、八六年のリビア空爆、八九年のパナマ侵略など、国連総会の決議で国際法違反と糾弾されるような、先制的な軍事力行使を何度も何度もやっています。そのたびに日本政府は残念ながら、情けないことに、「理解」だとか「支持」とか、ただの一度も「ノー」といっていません。

 そのアメリカのブッシュ大統領が、今年の一月二十九日におこなった一般教書演説で、イラン、イラク、北朝鮮を「テロを支援している」と、「大量破壊兵器を開発している」と、「悪の枢軸」と決めつけて、こういいました。「私は危険が高まっているおりに、何かできごとが起きるまで待つことはしないだろう」。これは明らかに先制的な軍事力行使も辞さないと、テロのためだと、大量破壊兵器のためだということになれば、先制攻撃も辞さない戦略をとることを世界に公言しているということになります。

 ラムズフェルド国防長官は、最近、『フォーリン・アフェアーズ』五・六月号で、「変化する任務、変貌(へんぼう)する米軍」という論考を寄せています。これを見ますと、「備えあれば憂いなし」とか、総理とおんなじようなせりふをいってますけれども、これもアメリカ製だったのかなと思いながら読みましたけども、そのなかで、こういうふうに書いています。

 「アメリカを防衛するには、予防戦略、そしてときには先制攻撃も必要になる。すべての脅威を相手に、いつでもどこでも防衛策を講じるのは不可能である。テロやその他の姿をあらわしつつある脅威から国を防衛するには戦争をも辞さない覚悟を持つべきである。攻撃は最大の防御であり、ときにそれが唯一の防御策である場合もある」

 こうはっきりアメリカはのべているわけです。総理にうかがいたい。総理は、ブッシュ大統領のいわゆる「悪の枢軸」発言について「理解する」という発言をされてきましたけれども、ラムズフェルド国防長官のこの発言、これは質問通告をしてありますからお読みになっていると思うのですけれども、はっきり先制攻撃といっています。こういう先制攻撃は絶対に容認できないと、日本政府としてはっきりいうべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 首相 ラムズフェルド国防長官の発言は発言として、アメリカの安全保障上戦略として、あらゆる選択肢を残しておく、ということだと私は理解しております。

 志位 あらゆる選択肢(の一つ)として先制攻撃を理解する、ということですね。たいへん重大な発言です。そういうことですね。

 首相 アメリカはアメリカの立場を表明している、と私は理解しております。

 志位 私は、先制的な軍事力行使を、これだけはっきり「理解する」といったのはたいへんな発言だと思いますよ。(場内どよめき)

 ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言にたいしては、ロシアや中国はもとより、ヨーロッパ諸国、EUもこぞって反対している(「そうだ」の声)。東南アジアも、中東も、世界はみんな反対してますよ。

 たとえば、EUの国際担当委員、EUの外務大臣にあたるパッテンさんという方、ご存じだと思うんですが、この方はイギリスの保守党の幹事長を務められていた、イギリスの保守政界の重鎮ですよ。このパッテンさんも、ブッシュ発言については、世界にたいする危険な「絶対主義的で極度に単純化された」立場だと、激しく非難しています。

 世界の主要国の総理のなかで、このブッシュ発言を理解を示したり、ラムズフェルド国防長官の発言まで理解を示すという人は、これはおそらくちょっとほかに見当たらないんじゃないかと思うぐらい、アメリカにたいしてほんとうにいいなりの国だということがよくわかりました。

 この論戦全体を通じて、政府は武力攻撃の「おそれ」の事態や「予測」の事態では武力の行使はしない、と繰り返した。先制攻撃はしない、と繰り返した。それは結構です。しかし、先制攻撃をお家芸としている米国にひとことの批判もできないで、「理解」ということをはっきりいうようなそういう政府では、先制攻撃はいくらしないということを言ったところで、私はなんの保障にもならないと思います(場内騒然)。そして、現に法案はそういう道を開くものになっております。(「そうだ」の声)

 私は、ひじょうに、深刻な法案の本質が浮き彫りになったと思います。

 この法案は、日本の国民の安全を守るものじゃありません。アメリカがおこなう先制攻撃の戦争、ラムズフェルド氏がいうような介入の戦争、これにたいして、武力行使をもって自衛隊が参戦する法案だと思います。

 「武力攻撃が発生」した場合だけではなくて、武力攻撃の「おそれ」の場合、「予測」の場合で、明文上の禁止条項をわざわざ取り外して、先制的な攻撃への道を開いたこと、そして、「国際の法規及び慣例の遵守」を法案からいっさい取り外したこと、さきほどのこれですね(パネルを示す)。この「国際の法規及び慣例の遵守」をいっさい取り外した。これは、国際法無視の米軍の戦争への参戦を想定しているからではないか。そうとしか説明がつかない。

 私は、この法案というのは、そういう本質をもっていると思います。



人権と自由を侵害

 志位 さて、もう一つの大きな問題に進みたいと思います。

 「周辺事態法」では、戦争に国民を動員するさいに、強制力をもって動員はできないという建前があったわけでありますが、これがどう変わるかという問題点です。

「周辺事態」を「武力攻撃事態」と読み替えると強制動員が可能に

 志位 さきほどものべたように、「周辺事態」と「武力攻撃事態」というのは大きく重なり合ってくる。それは一つの事態を、「周辺事態」から「武力攻撃事態」へと読み替えることができるということになります。そういう読み替えをしただけで、米軍の戦争への国民の強制動員が可能になってくる、そういう仕組みではないか。

 政府の法案どおりに、これは整理をしたものです(パネル=表2=を掲げる)。左側が、「周辺事態」の場合です。「周辺事態」の場合は、自治体にたいして、「協力を求めることができる」と。ここまででした。民間にたいしては、「協力を依頼することができる」と。ここまででした。私も「ガイドライン法」のときに、さんざんここで議論をやりましたけれど、(政府は)「自治体には強制できないんです」と、さんざん言ったものでしたよ。「民間には義務づけないんです」とさんざん言ったものでした。

 ところがこんどは、同じ一つの事態なのに、「武力攻撃事態」と読み替えただけで、自治体について、国が「指示」、「実施」できるようになる。

 それから国民については、すべての国民に協力を義務づけることになる。(「武力攻撃事態法案」)第八条です。すべての国民です。なんの制約もありません。

 それから施設管理、土地などの使用、物資の収用、取扱物資の保管命令を出せることになっています。保管命令違反者などに対しては、罰則を科せられるようになっています。

 指定公共機関、たとえばNHKとか、NTTとか、ガスとか、電気とか、これはいくらでも広げられるわけでありますけれども、この指定公共機関に対しても、国が「指示」、その「指示」に従わなければ「実施」ができる。

 それから医療、土木建設工事、または輸送の業務に従事するもの、これにたいしては業務従事命令が出せる。

 これだけ変わってくるわけですね。ただ事態は一つなんです。「周辺事態」と「武力攻撃事態」というのは重なり合ってくるということを認めてるんですから、事態は一つなんですよ。事態は一つなのに、それを「周辺事態」から「武力攻撃事態」に読み替えただけで、これだけ国民を強制動員できる仕掛けになっている。

保管命令に違反すれば罰則、「取扱物資」も無限定

 志位 私は、そういうなかで、いくつかただしたい問題があります。とくに深刻な問題がいくつか出てくるんですが、第一は、自衛隊が防衛出動をしたもとで、「取扱物資の保管命令」に従わなかった国民には、罰則が科されるという問題です。

 自衛隊法改定案一二五条には、こういう規定があります。「取扱物資の保管命令に違反して当該物資を隠匿し、毀棄し、又は搬出した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」。ここでいう「取扱物資」というのはなんでしょうか。法律で「取扱物資」とはなにかという規定がありますか。

 防衛庁長官 食料とか水とか燃料とか、建設資材等でございます。

 志位 私が聞いているのは、法律に規定があるかどうか、聞いているのです。

 防衛庁長官 法律では物資と規定していますが、自衛隊の行動に必要なものでございます。

 志位 要するに何でも入るということなんですよ。自衛隊が必要だといったら何でも「取扱物資」に入ってくる。自衛隊が燃料が必要といったら、ガソリンスタンドも強制のなかに入ってくる。食料が必要となれば、コンビニエンスストアも入ってくる。おコメが必要になればコメ屋さんもかかってくる。すごい仕掛けでしょう。水が必要だとすれば水道業者もかかってくる。つまり、規定がないということですよ。無規定、無限定ということですよ。

 戦前の一九三八年に「国家総動員法」というのがつくられた。「国家総動員法」では、「総動員物資」というのは法律で規定されていますよ。この「国家総動員法」よりも、法律で物資の規定がないというのは、もっと悪いと思いました。

 つぎの設問に入りたい。政府は、「保管命令に違反して保管物資を隠匿、毀棄、または搬出するという悪質な行為を行う場合に限り罰則を科す」と、答弁されましたね。「悪質な行為」に限るというのですけども、こういう場合はどうなるのか。

 「私は戦争に協力できない」という信念をもっている方が、いるとしますでしょう。そういう戦争には協力できないという信念から、「物資の保管命令」を拒否した国民は、「悪質な行為」となるのでしょうか。たとえば、おコメが「取扱物資」に指定された、そのとき、おコメ屋さんが「この戦争には協力できない」という信念から、みずからの思想・信条から、保管命令を拒否して、通常通りコメの販売をやったとしますでしょう。この場合は、「悪質な行為」になるのですか。

 防衛庁長官 これは本人の内心には関係ございません。事実行為といたしまして、わざと物資を隠匿したり使用できないようにする悪質な行為がおこなわれた、すなわちその行為に、基づいて考えるわけでございます。

 志位 「悪質な行為」とあなたがいったから、「悪質な行為」に入るかどうか聞いたのです。どっちなんですか。

 防衛庁長官 そのものの行為の概要に照らして判断するわけでございます。

 志位 それは、悪質というしか、あなたの答弁からは理解できませんね。「内心の自由」ということをいいましたけど、「私は戦争に協力できない」という信念に基づいて、保管命令を拒否した国民を、犯罪者として罰するということは、戦争への非協力、戦争への反対という思想・信条を、処罰の対象とすることに私はなると思います。憲法一九条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」という条文に違反する、基本的人権の侵害行為になると思います。いかがですか。

 防衛庁長官 これは、いつも起こるわけではございません。国家の存亡の危機、究極の段階でですね、まさにわが国に武力攻撃が起こって、目の前でいろんな被害が発生している場合に、国として国民の生命および財産を守る責務に基づいておこなう行為です。同じ日本人、日本に住んでいる方として、こういった事態につきましては、ご協力をいただくと、というのは当然のことです。

志位委員長 「『思想・良心の自由』『沈黙の自由』の侵害になるのではないか」

政府は答弁不能に

 志位 いまの防衛庁長官の答弁で不正確な点があるので訂正しておきたい。日本にたいする武力攻撃がまさに起こって、それにたいする事態だといいましたけど、防衛出動というのは起こらない前から出動できるんですよ。「おそれ」のある場合でも出動できるでしょう。「おそれ」のある場合でもいまの罰則がくるのですから。訂正しておきたい。国民のみなさんに誤解をまねく、そういう発言は慎んでいただきたい。

 さらに聞きたいのですが、いま、きちんと答えなかったけど、思想・良心の自由というのは、これはどなたもお認めになると思うけど、いわば絶対的自由ですよ。内心の自由は、国家権力といえども、絶対に立ち入ることのできない、絶対的自由だということは、これは異論がないことだと思います。

 そして「思想・良心の自由」のなかには「沈黙の自由」もふくまれるでしょう。つまり、自分がある思想をもっている。それをいうときは表現の自由の問題になりますが、いわない自由もふくまれるわけですよ。「沈黙の自由」がふくまれることは間違いないと思うのです。さっきの私の設問にかかわっていいますと、「戦争に協力できない」という信条を、沈黙している自由は絶対的に侵すことができないと思うのです。

 ところが、物資の保管命令が、罰則という強制をもって一律に課せられたらどうなるか。そうしますと、「戦争に協力できない」という信条をもつ国民は、その信条を沈黙している自由を侵害されてしまうのではないでしょうか。つまり、無理やりその信条を行為として表現しなければならない。つまり、保管命令には協力できないという行為として示さなきゃならなくなる。そしてこの行為として示したら、罰則、お縄になるという、そういうところに追いやられることになる。これはまさに「思想・信条の自由」、「内心の自由」、「沈黙の自由」、これを奪っていくということになるんじゃないですか。いかがでしょうか。

 防衛庁長官 それは、わが国にたいする武力攻撃をいかに考えるかということでありまして、放置をしてましたら、被害や損害、死傷者が増えていくわけです。わが国を守るということにつきまして、国民のみなさまがたがこの点をご理解いただいて、そういう際にはご協力をいただかないと国というものも守れないし、また国としても国民を守れないと、お互いに協力をし合って、国としての防衛を果たすということにつきるのではないかというふうに思います。

 志位 あなたは私の聞いた質問に答えないですね。私が聞いたのは、こういうふうに一律に罰則つきで強制を課したら、それは「思想・良心の自由」、「沈黙の自由」を侵害することになるんじゃないですか、と聞いているのですよ。あなたは、日本に対する武力攻撃を排除するためだと繰り返していうけれども、さっき明らかになったように、「周辺事態法」とこの「武力攻撃事態法」というのは重なり合って発動するということがありうるわけですよ。日本に対する武力攻撃がなくたって、「おそれ」のある事態、「予測」のある事態とすればもう発動できるのですよ。アメリカの戦争に協力できるのですよ。アメリカの戦争に協力するとなったら、反対する人がたくさん出るのは当たり前なのです(場内騒然)。その反対する人が、保管命令に違反したら犯罪者とされてしまう。

 私は、ほんとうに、罰則つきで国民に強制するというのは許されないと思います。日本は憲法九条を持つ国ですよ。憲法九条は、戦争をやってはならない、戦争に協力してもならない、戦争をやることが犯罪だというのが憲法九条です。その九条を持つ国で、戦争に協力することを拒否する国民を犯罪者とするというのは、これはこれ以上の違憲立法はない、私はこのように思います。(場内騒然)

国民の自由と権利を無制限に制限できるしくみをつくる

 志位 第二に、「武力攻撃事態」のもとでは、国民の権利と自由を、いわば無制限に制限できる仕組みがつくられるという問題であります。

 「武力攻撃事態法案」の「基本理念」を定めた第三条の第四項では、つぎのような規定があります。「武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない」。この規定がありますね。

 それでうかがいたいのですが、ここで「公正かつ適正な手続」とのべられているのは、個別法を定めることですね。防衛庁長官、そうですね(長官うなずく)。うなずいていますから、もういいです。そういう説明でした。

 それではうかがいますけど、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」に、この三条四項の条項では、「制限が加えられる」と規定されているのですが、その制限はどこまで許容されるのでしょうか。どこまでの制限が許されるのでしょうか。

 憲法には三十条の条文にわたって、国民の基本的自由と基本的権利、これを詳細に規定しているわけでありますけれども、どの範囲まで人権が制限できるのか。私が聞きたいのはあなたがたの解釈じゃありません。法律にそういう規定があるかどうかです。「武力攻撃事態法案」にそういう国民の権利の制限はどこまでできるという、規定があるかどうか。

 官房長官 権利の制限をともなう対処措置につきましては、個別の法制整備においてこの基本理念にのっとり、制限される権利の内容、性質、制限の程度等との、権利を制限することによって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性などを総合的に勘案して、その必要性を検討するということを考えております。従いまして制限される権利とか、その内容については、今後、整備する法制において個別具体的に規定することが適切であると考えております。

 志位 ということはつまりこの「武力攻撃事態法案」には、この法案そのものには規定がないということですね。そういうことですね。ちゃんと答えてください。ないかどうか聞いているんですから。

 官房長官 その制限は「武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない」ということになっているわけです。そして個別の法制整備もこのような基本理念のもとでおこなわれることとなりますから、そういう意味で、国民の基本権利の制限は、すべて個別法にまかせるということにはなりません。

 志位 私は制限が法律に規定されているかどうかを聞いたんで、あなたのいまの答弁だと「武力攻撃事態に対処するため必要最小限」という以外にはないということですね。答えてください。

 官房長官 ご指摘の通り、基本的には、基本的な理念をここにのべております。

 志位 それ以外に制限する条項はないということですね。

 官房長官 ですから、ここでもうす基本的な方向性というものは理念として示されているとこういうように考えてください。

個別法で人権の制約ができれば、大日本帝国憲法とどこが違うのか

 志位 要するに、これ以外にはないということですよ。つまり、「武力攻撃事態に対処するため必要最小限」と政府が認定したら、どんなに個別法を広げてもつくれるわけですよ。「必要最小限」というのは、何の歯止めにもなりはしない。あなたがたは、「必要最小限」「必要最小限」といって、世界第二位の(軍事費を使う)軍隊をつくっちゃったじゃないですか。だから、「必要最小限」というのは何の歯止めにもならない。

 つまり、個別の法律をつくったら、そして「武力攻撃事態に対処」するために「必要」とされるならば、国民の権利と自由が、個別法によって無制限に制限されるということになるんですよ。この法案では。

 私は、これでは、戦前の大日本帝国憲法とどこが違うのか。戦前の大日本帝国憲法の一番の反省は、国民の権利や自由をならべた項目があった。あったけれども、みんなまったく形がいだった。なぜならば、全部「法律の定めに従って」とか「法律のよるところに従って」とか、全部法律で制限されたからです。個別の法律さえつくれば、国民の権利や自由が制限されるとなったら、大日本帝国憲法と変わらなくなるではありませんか。どうでしょうか。そういうことでしょう。この点では。

 (福田官房長官ら政府側はだれも答弁席に立たない)

志位委員長 「米国の介入戦争に参戦し、国民を強制動員する違憲立法は廃案に」

 志位 答弁できないようですね。同じになるんですよ。個別の法律さえつくれば、国民の権利と自由が制限できる。そういうやり方で、最後にやったのは治安維持法ではないですか。暗黒政治ではないですか。この暗黒政治をやったために、侵略戦争への道が開かれて、あんな惨害を生んだんじゃないですか。その反省にたって、新しい憲法では、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として一一条で明記して、法律の抜け穴さえあれば、基本的人権を制限できるという考え方を排除したんですよ。これがいまの憲法なのです。

 私は、きょうは、有事法制三法案について条文にそくして問題を明らかにしてまいりました。

 そうしますと、結局、アメリカが海外で引き起こす介入戦争に、自衛隊が武力行使をもって参戦する、憲法違反、国際法違反の参戦法案となる。そのために憲法で定められた国民の自由と人権、あるいは地方自治に重大な制約をくわえ、首相に権力を集中させる、戦時体制をつくるという点でも憲法を踏み破るものになる。

 私は冒頭に、「周辺事態法」には二つのしばりがあったといいました。武力の行使ができないというしばり、強制動員はできないというしばり、この二つのしばりを取り外す。ここに今度の「武力攻撃事態法案」を中心とする三法案のおそるべき内容がある。これは廃案にするしかないということを最後に強調して、終わりにいたします。(拍手)



5月09日 21:02有事審議:「報道機関も国への協力責務」 福田官房長官が言及

 福田康夫官房長官は9日の衆院武力攻撃事態特別委員会で、武力攻撃事態において国への協力責務を負わされる指定公共機関について「新聞社がインターネットを使って、また通信社も(緊急事態の伝達など)その任に当たっていただくことは当然考えられる」と語り、NHKや民放だけでなく新聞・通信社も含まれる可能性に言及した。表現の自由や報道を規制する意図はないことも強調したが、福田氏の発言で報道機関全体に協力義務が及びかねないことが明らかになった。

 福田氏は、武力攻撃事態で自衛隊が武力行使できる条件として「ミサイルが着弾したということではなく、武力攻撃の着手があった時だ」と述べた。政府は1956年2月に「誘導弾等による攻撃を防御するのに、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれる」との統一見解を示しているが、福田氏の発言はこれを追認するものだ。

 ただ、小泉純一郎首相は「実際、第一撃を受けた後でないと対応できない」と福田氏と矛盾する認識を示すなど、政府内の調整不足も露呈した。また、福田氏は武力攻撃事態の具体的な事例について「どういう形で示せるか検討している。できるだけ早く示したい」と、近く同特別委で提示する考えを示した。[毎日新聞5月9日] ( 2002-05-09-21:02 )



有事法制「賛成できない」・民主政調会長

 民主党の岡田克也政調会長は9日の記者会見で、有事法制関連3法案について「(政府側の答弁は)あまりに準備不足だ。こういう状況が続くようならわれわれとしては賛成するわけには行かない」との見解を表明した。そのうえで「今の状況では採決に至るとは思えない」と語り、今国会での成立に否定的な考えを示した。

有事法制審議 揺れる答弁 首相と官房長官も矛盾

 衆院武力攻撃事態特別委員会は9日、有事法制関連3法案に対する基本的質疑を終えた。法案が想定する武力攻撃事態のイメージや国民保護の仕組みについて、政府側の具体的答弁は極めて限られたもので、「外側は作ったが、中身が伴っていない」(民主党・枝野幸男氏)という野党の批判も、政府側と議論がかみ合わないまま。与党内から政府答弁を批判する声さえ出ている。

 「もう法案に賛成するのをやめようかという気さえ起こってくる」。公明党の赤松正雄氏は、9日の特別委で、武力攻撃事態の具体的なイメージを提示できない政府を痛烈に皮肉った。

 武力攻撃事態の定義をめぐっては、7日の特別委で中谷元防衛庁長官が「武力攻撃が予測される事態とは、自衛隊法に基づく防衛出動が予測される事態と同じ。防衛出動が予測される事態とは、武力攻撃が予測される事態だ」と「珍答弁」を展開したばかり。

 与党内にも強まる「法案の根幹となる、事態の定義が分からない」との不満に危機感を抱いた政府側はこの日、福田康夫官房長官が「どういう形で(具体的な事例を)示せるか検討している。できるだけ早く示したい」として場を収めた。

 しかし、具体的例示は難しい。特別委で民主党の末松義規氏が「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)から核ミサイル、生物・化学兵器が飛んできた時の対応は」と尋ねたのに対し、小泉純一郎首相は「実際、第一撃を受けた後でないと対応出来るものではない」と答えた。その一方で、「(外部から日本に対する)武力攻撃が発生した時はいつか」との赤松氏の質問には、福田長官が「ミサイルが着弾したということではなく、着手の段階から含まれる」と説明。政府内の調整不足も露呈した。

 国と地方自治体の関係についても、民主党の桑原豊氏が、入港する船に非核証明書を求め、米軍の艦艇が寄港していない神戸市の例などを念頭に「国から協力を求められた自治体は、正当な理由があれば拒めるのか」と質問したが、福田長官は「今後、検討することになっている」とかわした。

 政府側の答弁は、明快さを欠いたものが多く、法案が「2年間で整備する」と先送りした国民保護法制や米軍への協力のための法制なども含め、分かりやすく具体的な法案の全体像を、早急に示す必要がありそうだ。【鬼木浩文】

衆院武力攻撃事態特別委(詳細)

 9日の衆院武力攻撃事態特別委では赤松正雄(公明)▽井上喜一(保守)▽桑原豊、渡辺周、末松義規、枝野幸男(民主)の各氏が政府の見解をただした。主なやりとりは次の通り。

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 ◇認定基準、提示を検討−−福田長官

 赤松正雄氏 有事法制の武力攻撃事態の認定の基準は。

 福田康夫官房長官 具体的に、どういう形で示せるかを検討している。できるだけ早く示したい。

 赤松氏 「恐れのある事態」ではどう対処するのか。

 福田長官 恐れのある場合も、武力攻撃が予測される事態と同様で、第3条2項を準用する。

 赤松氏 首相は昨年、集団的自衛権問題は研究してもよいと言ったが。

 小泉純一郎首相 集団的自衛権を保有しているが行使できないというのが今の議論だ。しかし、どれが集団的自衛権にあたるかは、その時々の見方などで解釈が違う。さまざまな角度から研究してもいいということで、特別に機関を設けるのではない。

 井上喜一氏 中国の日本総領事館の館内で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を脱出した住民が中国の武装警察に連れ去られたことに対し、きちんと抗議することが必要だ。

 川口順子外相 中国大使館を通じ、事実ならば非常に遺憾であると伝えた。武装警察が許可なく立ち入ったことは、ウィーン条約違反だと強く抗議する旨を伝達した。

 井上氏 有事法制で、攻撃が起ころうとしている場合、こちらからの武力排除も可能か。

 福田長官 武力攻撃による現実の侵害があってからだけではなく、武力攻撃の着手があった時に可能だ。武力攻撃が発生し、自衛権発動の3要件を満たした場合、自衛隊法88条に基づく武力行使になるが、それは着手の段階から含まれる。

 井上氏 対処基本方針の武力攻撃事態に関する方針とは。

 福田長官 例えば外交上の具体的な方針、国民の安全確保についての考え方などを必要に応じて記載するということで、日米共同対処も記載され得る可能性もある。

 桑原豊氏 現憲法と有事法制の関係について首相の認識を聞きたい。

 首相 憲法の範囲内で非常事態に対応するのは可能だと思っている。憲法改正論議は妨げない。

 桑原氏 有事法制は憲法の範囲内の法律といいながら、包括的に基本的人権を制約している。

 福田長官 基本的人権を包括的に制限する趣旨ではない。国民の権利については公共の福祉に反しない限り、最大の保障がなされる憲法13条の趣旨に沿っている。

 桑原氏 戦争反対の集会は許されるのか。

 福田長官 憲法13条の規定はあるが、集会や報道の自由は権利として確保されている。

 桑原氏 毎日新聞の知事アンケートで、35知事は法案への態度を保留した。地方公共団体が実施する対処措置の内容は何か。

 福田長官 具体例は、避難のための警報や施設の応急復旧を中心にさまざまな必要措置を指す。

 桑原氏 対処措置は原発や基地がある地域では違いが出てくるのか。

 福田長官 国が定める対処基本方針は、地方公共団体の対処措置まで具体的に記載するものではない。地方公共団体は、国の対処基本方針に基づいて必要に応じた対処措置を実施する。

 桑原氏 国が一方的に指示するのではなく、自治体と協議する規定を入れたほうがいい。

 片山虎之助総務相 できるだけ伝家の宝刀は抜かないように地方自治体と連携でやるが、万一の時には担保する必要がある。

 桑原氏 国会承認について、周辺事態法は原則事前承認だが、武力攻撃事態法案の対処基本方針は事後承認だ。この違いをどう整理するのか。

 福田長官 それぞれの法律に従って国会の関与を決めている。二つの事態が併存する場合も、それぞれの法律に基づいて承認を求めるべきだ。

 桑原氏 二つの事態は別の概念ではないか。

 中谷元防衛庁長官 周辺事態は、わが国の周辺に起こった事態の中で、基本的には後方支援等をして事態の鎮静化に努める。武力攻撃事態は、わが国にとっての武力攻撃に対処するということで、主体的に備える。基本的な考え方が違うから法律も違うし、対処も違う。

 渡辺周氏 98年のテポドン発射は、公安当局などは事前に情報を入手していたが、これは予測される事態に入るのか、恐れなのか。

 中谷長官 当時の政府は、いろいろな情報を総合的に考え、武力攻撃が予測される事態ではなかったのではないかと思う。

 渡辺氏 (米同時多発テロのような)テロが日本で起こった場合には、武力攻撃に認定することはあるのか。

 中谷長官 全く同様の背景において事態が発生した場合を仮定すると、法案にある武力攻撃に該当する場合もあり得る。

 渡辺氏 国民にどうやって広めるのか。首相が記者会見するのか。有事宣言をするかどうか。

 福田長官 安全保障会議の決定を閣議決定して、首相はただちに対処基本方針を公示し、その周知を図らなければならないという規定がある。

 渡辺氏 新聞社はインターネットでも配信している。速報性は民放と同じくらいのスピードだ。新聞にも自主規制を求めるのか。

 福田長官 新聞社は警報等の緊急情報の伝達等を担うことは考えにくい。新聞社が新しい伝達手段も使って、表現の自由や報道の規制をすることのない方法で任にあたっていただくことは当然考えられる。

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 ◇核兵器対応は第一撃後−−小泉首相

 末松義規氏 米同時多発テロと同じような事件が起きたらどうするのか。

 首相 米テロ事件のようなことが仮に日本で起こった場合は米国のような対応はできない。その時々のケースで違うし、米国の状況と日本の状況も違う。今の時点で、こうすると具体的なことを言える状況にない。民間航空機がハイジャックされてどこに向かってくるか分からず、首相官邸や国会に来るかもしれないといった場合、その飛行機を撃ち落とすなんて想像したくないが、実際にそうできないと思う。事件が発生し、しばらくたち、どういう状況かはっきりしないと。

 末松氏 北朝鮮から核ミサイル、生物兵器、化学兵器が飛んできた時、この法律ではどう対応するのか。

 首相 この法案はそういうことを想定しているものではない。(それは法案の想定を)超えたものだ。実際、第一撃を受けた後でないと対応できない。

 末松氏 核兵器がここ(国会)に飛んできたらみんなふっ飛ぶ。日本のリーダーシップはどこにあることになるのか。

 首相 もしもそのような攻撃を受けた場合には、日本は米国との間で安全保障条約を結んでいるから、抑止力になっている。(攻撃してくる相手は)どういう目に遭うかは分かっていると思う。

 末松氏 東京都議会が核兵器でやられた場合の緊急時対応みたいなものは考えているのか。

 片山総務相 いろんなケースを想定して、今後、地方議会の役割についてどうするか、個別法制の中で検討したい。

 末松氏 台湾の機密文書に防衛庁の秋山昌広元事務次官に(台湾側が)ハーバード大学の留学費用10万ドルを渡したと書かれている。

 川口外相 台湾とは外交関係がないので、それが事実だという情報には接していない。

 柳沢協二防衛庁官房長 秋山元次官が台湾側から直接、金品を受け取ったことは全くないということだ。

 枝野幸男氏 防衛出動を命じられた自衛隊部隊は、道路工事をする際、行政機関などに事前通知すると法改正をしている。戦争状態になっている部隊が事前通知をする余裕があるのか。

 中谷長官 戦闘が行われている以外の地域では行政機関が生きているところがある。

 枝野氏 戦闘行為の現場でなくても戦略上、現場となるかもしれないところであらかじめ橋や家を壊す場合、法的根拠は何か。

 中谷長官 事態に応じ合理的に必要と判断される場合は88条で実施する。

 枝野氏 有事法制が通らなくても元々88条があり、防衛出動時に、事態に応じ合理的に必要と判断されれば何でもできるということだ。

 中谷長官 自衛隊の行動範囲は首相が指定するし国際法規、条約もある。

 枝野氏 自衛隊法で防衛出動を命じるのは首相だが、今度は事態対処基本方針に基づいて出せる。しかし基本方針は閣議決定が必要だ。これで緊急事態に対応できるのか。

 中谷長官 閣議決定が必要だと自衛隊法にも書かれている。

 枝野氏 条文ではなく解釈で閣議決定が必要としているだけだ。

 津野修内閣法制局長官 自衛隊法は防衛出動という重要政策の決定にかんがみて内閣の首長たる首相を意味している。

 枝野氏 「防衛庁の新初等練習機の調達についての会計検査院報告のポイント(会計検査院作成)」という文書がある。これを作ったのは防衛庁で、公文書偽造罪に当たる。文書はスイス政府に送っている。

 中谷長官 会計検査院の報告書が内閣に提出され、(入札に参加した航空機会社がある)スイス政府から送付要請があったが、専門的で膨大なので当局が平易な要約をつけ送付した。断りなく会計検査院作成と書いたことは防衛庁としても遺憾であり反省している。

(毎日新聞2002年5月10日東京朝刊から)



日本共産党

2002年5月10日(金)「しんぶん赤旗」

有事法制 集会や報道を制限

「公共の福祉」理由に官房長官

戦争反対デモも


 戦争反対の集会や報道も許されない――有事法制三法案=戦争国家法案を審議している衆院有事法制特別委員会で九日、福田康夫官房長官は、武力攻撃事態法案にもりこまれている「国民の自由と権利」制限の対象に、言論・集会の自由まで含まれるとの重大な見解を示しました。

 戦争国家法案には、憲法が保障している「国民の自由と権利」に「制限が加えられる場合」があると明記しています。この問題で、民主党の桑原豊議員が「精神的自由は権利制限してはならないのではないか」として、戦争反対の集会や示威行動にどう対応するのかと質問。福田官房長官は、憲法第一三条をあげ、「公共の福祉に反しない限りという意味において、集会や報道の自由は権利として確保されている。あくまでも『公共の福祉』に反しない限りということだ」と答弁しました。

 これは「公共の福祉」を理由に、集会や報道の自由などの制約もありうるとの考えを示したもの。これまで政府は「自由と権利」を制限する具体的内容は、今後整備する個別法(私権制限法)で定めるとしており、言論・集会の自由まで対象だとのべたのは初めてです。


戦前の亡霊がよみがえるよう

 森英樹名古屋大学教授(憲法学)の話 学界では「表現の自由」や「思想・良心の自由」といった精神的な自由は、ほかの権利と違い、内在的制約をこえて制限できるものではないと考えています。なぜなら、これらの権利は、民主社会を支える基本的権利だからです。

 福田官房長官の発言は、この権利さえ「公共の福祉」の口実さえつけば侵害できるとする暴言です。「公共の福祉」の名で、国民の権利すべてに網をかけるように制限できるという議論は、学界でも否定され尽くしています。明治憲法では、法律さえつくれば、すべての国民(臣民)の権利が制限できました。まさに戦前の亡霊がよみがえってきたことを思わせます。

 災害時に、国民が耐え忍ばなくてはならない事態が起きること一般を、学界で「権利の侵害だ」と問題にすることはあまりありません。これは国民の共通の利益のためにありうることだからです。

 しかし今回は、政府のおこなう戦争での権利制限です。憲法は戦争を禁止しており、戦争のための国民の権利制限は、そもそも認められません。

 


新聞社にも規制の可能性官房長官示唆


 九日の衆院有事法制特別委員会で民主党の渡辺周議員は、武力攻撃事態法案のなかの「指定公共機関」に民放が含まれることに関連し、「新聞社もインターネットで瞬時に配信している。新聞に関しても何らかの報道の自主規制を求めざるを得ないのではないか」と質問しました。福田康夫官房長官は「(インターネットなど)新しい伝達手段を使って任に当たることは当然考えられる」とのべ、新聞社や通信社も指定公共機関の対象になる可能性を示唆しました。


日本共産党

2002年5月10日(金)「しんぶん赤旗」

 日本共産党の木島日出夫議員が八日の衆院有事法制特別委員会でおこなった質問の要旨を紹介します。

衆院特別委

木島議員の質問(要旨)


「我が国」の定義

木島議員 他国領域での攻撃の場合、法律は動くのか

官房長官 「攻撃」と認定されればそういうことになる

 木島議員 まず武力攻撃事態法案第二条の「武力攻撃」という言葉の定義であります。二条一号には「我が国に対する外部からの武力攻撃をいう」と書かれているだけです。おそらくわが国国法上はじめての武力攻撃の定義だと思う。ここでいう「我が国」というのは何ですか。

 福田康夫官房長官 「我が国」といったら日本国のことです。

 木島 わが国の領域内にある国民、そして領域、領土、領空、領海、これがわが国の概念の一つであることは、よくわかる。聞きたいのは、わが国の領域の外にある、わが国の軍用機や軍艦、船舶や航空機、これらもこの法案の第二条第一号の武力攻撃の概念である「我が国」に含むのかということです。

 官房長官 わが国の領域内において行われた場合に限らず、たとえば公海上のわが国の船舶等に対する攻撃が、状況によってわが国に対する組織的、計画的な武力の行使に当たるという場合も、これは排除されないと考えています。

 木島 重大な問題を含む問題だと思います。今、公海上にある艦船をのべたが、他国の領域内にあるわが国の艦船、航空機、軍民両方ありますが、とりわけ軍用機や軍艦、これもこの概念の「我が国」の中に入るのですか。

 官房長官 わが国でない国の領域というのは、基本的には入りません。

国民の財産等、私権の制限にかかわる「定義」

 木島 定義というのは非常に大事です。この法律によって、わが国の武装部隊である軍がどう動くか、どういう場合に動くか、あるいはその結果、わが国の国民の財産等の私権がどう制限されるのか、それが定義によって決まるから、非常に大事だということで、厳密にお聞きしたい。公海上にある軍艦は入るが、相手国領域内にある軍艦は入らない、航空機も同じだ、どうしてそういう解釈になるのですか。この法律からどうしてそういう解釈が出てくるのですか。

 中谷防衛庁長官 相手国の、領域の領土、領海においては、相手国の管轄下にあるからです。

 木島 次に、外国の領土内にあるわが国の在外公館、大使館、領事館、公使館。こういうものは、この法律による「我が国」の中には含まれるのですか。

 官房長官 他国にある大使館等公館が攻撃されたというとき、それは一般的には該当しないと考えています。

 木島 要するに例外的には、在外公館にたいする外部からの武力攻撃も、本法の対象になるときもあるという答弁ですが、それでは、例外というのはどういうときですか。

 官房長官 それが諸般の状況から考えて、わが国に対する武力攻撃というように認定される状況においては、それは該当するのではないかということでありますけど、通常において、外国にある公館は、その国に治安は依存しているわけですから、通常はおこらないのではないかと思います。

 木島 諸般の状況によっては、在外公館も、この法律でいう「我が国」に含むという、こんな答弁では、この法律、とても審議できない。諸般の状況なんて、あいまいな概念で、この法律を解釈できないですよ(「そうだ」の声)。大事な問題です。

 官房長官 過去の答弁を申し上げると、外国において日本人の生命、身体、財産または日本政府の機関が、危殆(きたい)に〓しているという場合に、とくに第一条件であるわが国に対する急迫不正の侵害であるという条件を満たすものであろうかということを考えますと、これも断定的な答えをすることはできない場合だと思いますが、一般的には、ただちにこれらの要件に該当するとは考えられないと、こういう答弁をしているわけです。(場内笑い)

 木島 そんなあいまいなことで、この法律が適用される場合とされない場合が区分けされるというのは、法律として全くまともなものではないといわざるをえないと思う。具体的に聞きます。わが国領域外にある軍用機、軍艦に対する、それが公海であれば、この法律が適用されると答弁しました。九二年にPKO協力法が成立した。九九年に周辺事態法が成立した。昨年、テロ特措法(報復戦争参加法)が成立した。自衛隊がわが国領域外に出動して活動する法制は三つできあがっています。

 この三法で、相手国政府の同意を得て、相手国の領域内で活動する自衛隊に対して、外部から武力攻撃があったときに、どうなるのか。公海上で活動する自衛隊に対する攻撃はこの法律の適用はある。相手国領域内で活動する自衛隊は適用がされない。そのように区分けしていいのですか。

 官房長官 どういう状況で起こるかということが問題。そもそもPKO部隊が戦闘地域に行くことはありません。そういうケースは考えにくい。在外公館のことについては、わが国がこの法律で決めているのは、わが国が武力攻撃を受けるという事態で考えられた対応措置で、そのわが国がほかの国に出かけて行って何かするということも考えにくい事態です。

 木島 私は法律の解釈を聞いているのです。想定できるかどうかは政治判断の分野です。そんなことは聞いていない。テロ特措法でインド洋、アラビア海に自衛隊が出ていっている。相手国の同意があれば沿岸にも入る。その自衛隊の艦船に外部からの不法な組織的、計画的な攻撃があったときに、この法律は動くのか。「武力攻撃」の概念に入るのか否かと聞いているのです。

 防衛庁長官 公海上で武力攻撃があった際には、それが自衛権に該当するかどうか、組織的、計画的なものであるかどうか、いわゆる自衛権発動の三要件にあうかどうかについて、自衛権を発揮します。

 木島 相手国の領域内で活動する自衛隊は、この法律の適用からはずれるとはっきり答弁できますか。

 防衛庁長官 相手国の領域内では、第一義的に相手国の責任ですが、不測の事態については、正当防衛、緊急避難して、(自衛隊法)九五条の武器防護を適用するとテロ特措法でも定めました。PKO法でも定めました。

 木島 そんなことを聞いていない。この法律の第一条の「武力攻撃」の概念に入るのかと聞いているのです。入らないということですか。だから正当防衛とか緊急避難とか武器防護とかいう概念で攻撃に立ち向かうという答弁ですか。

 官房長官 それは相手国の領域のなかにある、それが組織的、計画的な攻撃を受けるということを認定できるかどうかという問題です。通常はそういうことは相手国領域で起こり得る場合には、相手国がそれを守るということが通常です。

 木島 そういう前提ぬきで、他国領域内にあって、三法で動いている自衛隊に対する組織的、計画的な攻撃がなされたときに、この定義にのるのかと聞いているのです。

 官房長官 繰り返しになりますが、わが国に対する計画的、組織的な攻撃だと認定されるかどうかが問題です。

 木島 認定されるような状況があれば、この法律が動くということですか。

 官房長官 理屈でいえばそうなります。

 木島 外相に聞く。一八条によると、「政府は、国際連合憲章第五一条及び日米安保条約第五条第二項の規定に従って、武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置について、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない」。国連憲章五一条の「武力攻撃」と本法案の「武力攻撃」という概念は同じですか。

 川口外相 基本的には同じ概念です。

国連憲章51条の「武力攻撃」の定義はない

 木島 国連憲章五一条の「武力攻撃」の定義はない。難しい議論が論じられてきました。「個別的自衛権」発動の要件として、国連加盟国に対して武力攻撃がなされたときという概念です。定義はできていない。一九七四年十二月十四日に国連総会は、侵略の定義を決議しています。七つの概念の四番目に、「他国の陸海空軍兵力あるいは船舶、航空機に対する攻撃」とあります。だから憲章と法案の「武力攻撃」の概念が同じであれば、他国領域内にある軍隊に対して武力攻撃がされた場合には該当するということになります。それでいいですか。

 官房長官 国連憲章上、侵略行為を決定する権限が安保理にあることを前提にしつつ、このような行為も含めて、侵略行為を列挙したものですが、本決議はあくまでも安保理のための指針であって、武力の行使を論じたものではありません。


「武力攻撃」の定義

木島議員 対処措置の中の「武力攻撃」に「おそれ」は含むのか

官房長官 含まぬ―含む―一部含む 答弁二転三転

 木島 定義を聞いている。第二条第二号について聞きます。「武力攻撃事態」の定義です。「武力攻撃事態」には三つある。一つは「武力攻撃が発生した場合」、二つは「武力攻撃のおそれのある場合」がわざわざカッコして書きこまれています。もう一つが「武力攻撃が予測されるに至った事態」。わからないのは、「外部からの武力攻撃」という生の武力攻撃という概念で使っているのか、「おそれ」を含むという概念でも「武力攻撃」という言葉を使っているのかです。あとの条文にもたくさん出てきます。

 一つだけあげましょう。二条六号の「対処措置」のイの(1)「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」、措置の中心ですよ。この「武力攻撃」という概念に、二条一号の生の「外部からの武力攻撃」の概念を使っているのか、「おそれ」まで含まれた概念の武力攻撃という意味で使っているのか、決定的に意味が違ってくる。どうなんですか。

 官房長官 二条二号の「武力攻撃事態」の冒頭で規定している「武力攻撃」には、「おそれのある場合」が含まれています。その他の個所で規定している「武力攻撃」には、「おそれのある場合」は含まれていない。すなわち、基本的に本法案では「武力攻撃」という用語は、武力攻撃が発生した場合に使用しています。なお二条二号等の「武力攻撃が予測されるに至った事態」の「武力攻撃」に「武力攻撃のおそれのある場合」を含めていないのは、「武力攻撃のおそれを予測する」とは「武力攻撃を予測する」と同じ意味だということです。

 木島 この法律の中で、「武力攻撃」という概念のなかに「武力攻撃のおそれのある場合をふくむ」という意味で「武力攻撃」という言葉を使っているのは、第二条二号の「武力攻撃事態」という概念のときだけだということでいいですか。

 それでは「対処措置」について聞きます。法案二条六号に「対処措置」とある。「第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定にもとづいて実施する次に掲げる措置をいう」、二つあって、イが「武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置」で、三つのべています。(1)が「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」。この「武力攻撃を排除するために必要な」という形容句は「自衛隊が実施する武力の行使」だけにかかるのですか、それとも「部隊等の展開その他の行動」にもかかるのですか。

 官房長官 これは全部にかかります。

 木島 全部にというのは「武力の行使」と「部隊等の展開」と「その他の行動」です。要するに、「武力攻撃を排除するために必要な」という形容句は、「おそれ」は含まないという答弁ですか。そうするとこの「対処措置」のイ(1)は「おそれ」も「予測」も排除されるということですか。

 官房長官 これは、「武力攻撃のおそれ」のあるときも含む。つまり武力行使の準備段階も入っているという意味です。

 木島 先ほどの答弁で、六号イ(1)の「武力攻撃を排除するために」には「おそれ」は入っていないと言ったではないですか。整合性はどうなるのですか。

 (官房長官答弁に立てず、審議中断)

答弁できないことが法律の欠陥示している

 木島 志位委員長もこの質問をしました。六号イ(1)の「武力攻撃を排除するために」という場合は、「おそれの場合」も、「予測の場合」も入らないという答弁を総理以下している。先ほどもそういう答弁でした。それで聞いたら、「武力の行使、部隊の展開その他の行動」全部にこの修飾句がかかるという答弁して、さらに聞いたら答えられなくなりました。

 「おそれが入る」と言いました。この法案の中では、「武力攻撃」という生の言葉をいろんな形で使っています。「武力攻撃の発生」という言葉、「武力攻撃を回避する」とか、いろんな概念をせまい意味の「武力攻撃」なのか、「おそれ」を含む概念なのか、使い分けしないで使っています。それによって法律は変わってきます。どういう措置ができるのか、自衛隊はどういう場合に動けるのか動けないのか、決定的に変わってくるので、根本概念について当然答弁できなければいけないはずの質問をしているにもかかわらず、こんな問題にもすぐに答弁できないというのは、この法律がいかに欠陥かということを示しているのではないですか。

 防衛庁長官 昨日の審議で説明した内容だが、この法律の組み立てが、最初総則で二条で定義を言っています。この定義のなかに、対処措置として実施する措置を列挙したもので、各措置はそれぞれの権限法にしたがって実施されます。列挙した「武力の行使」を権限において実施するのは自衛隊法の八八条に、武力行使の規定があり、その規定にもとづいておこなうし、「武力の行使」というものは、武力攻撃がおこなったあとでないと発動しない。現実に自衛隊の出動についても七六条に書かれていますが、出動したあとでないと「武力の行使」はできません。

 木島 きのう、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」の「武力攻撃の排除」のなかには「おそれ」は入らないという答弁をしています。きょう聞いたら、その修飾句は「武力の行使」だけでなく、「部隊等の展開」や「その他の行動」まで全部かかっているという。それだったら、「おそれの場合」や「予測の場合」は対処措置のイの(1)はできないのだなと聞いたら、おかしくなった。まともな答弁になっていません。

 官房長官 六のイの(1)の「武力攻撃」に「おそれ」は含まれていません。「武力攻撃を排除するために必要な…部隊等の展開その他の行動」の最後の「部隊等の…」には、「おそれ」の事態や「予測」の事態における準備活動は含まれています。「武力の行使」はあくまでも自衛権行使の三要件を満たすときのみに可能で、「おそれ」や「予測」の事態でおこなうことはできないということです。

 木島 そうなると最初の官房長官の答弁はおかしくなる。「武力攻撃を排除するために」という修飾句が「部隊の展開」や「その他の行動」にまでかかっているという答弁が出ました。そうなると「おそれ」の場合はこの条文は動かないのではないかと質問しました。それに対してまだ明確な答弁になっていません。

 時間の関係があるので、次に進みます。「武力攻撃」の概念にもどる。「我が国に対する外部からの武力攻撃」という概念ですが、これは攻撃する主体は何ですか。国だけか、大規模なテロ集団その他も含まれるのですか。

 官房長官 国または国に準ずる者という規定になっています。

 木島 準ずる者だけではわからない。どんな者が入るのですか。

 官房長官 これは、具体的に言うべきではありません。国と同等、準ずる組織体と考えるべきです。

政府の恣意的な解釈でどうにでも法律が動く

 木島 この法律は日本の実力部隊である自衛隊がどういう場合に動けるのか、動けないのか、どういう動きができるのか、そのときに国民の権利、人権がどう制限されるかがかかっている法律です。どういう場合にこの法律が動き出すのか、動けないのかは日本の国にとって国民にとっても決定的です。だから概念は政府が変われば変わるという答弁では、とてもではないがこの法律は認められません。だれが考えても解釈が分かれないような明確な解釈が示されて、賛否ができる。武力攻撃の定義しか聞いていない。それがこの程度です。納得できません。

 官房長官 国、国に準ずる者と言うしかありません。

 木島 そんなあいまいな定義づけでこの法律が作られたら、政府の勝手な恣意(しい)的な解釈でどうにでもこの法律が動き出すということを指摘したい。断じて認められません。

 



5月10日 20:39武力攻撃事態法案:「予測」と「おそれ」の補足文書提示 政府

 政府は10日、衆院武力攻撃事態特別委員会の与党理事らに対し、武力攻撃事態法案に定めた武力攻撃事態の「予測」と「おそれ」について補足説明の文書を提示した。

 予測される事態について「我が国への武力攻撃の意図が推測され、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態」と説明。おそれのある事態は「国際情勢や相手国の明示された意図、軍事的行動などから判断して、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が差し迫っていることが客観的に認められる事態」などとしている。

 ただし、与党理事からも「これだけでは分かりにくい」との批判も出ため、政府側は、再度検討することになった。[毎日新聞5月10日] ( 2002-05-10-20:37 )



5月11日 0:59小泉首相:会期延長に言及 森前首相らとの会談で

 小泉純一郎首相は10日夜、自民党森派会長の森喜朗前首相らと東京都内のホテルで会談し、後半国会の対応について「小泉内閣は政策を実現し、改革を推進するためにある。中途半端にしたまま国会を閉じることはない」と述べ、重要法案の成立に向け、会期延長も辞さない考えを示した。

 また有事法制関連法案について「福田(赳夫元首相)さんが研究を始めた。私は『天運』だろうな」と、恩師との因縁に絡めて成立に強い意欲を見せた。

[毎日新聞5月11日] ( 2002-05-11-01:00 )



5月11日 20:53有事法制:民主党は反対の方向

 国会で審議中の有事法制関連3法案について、民主党では反対論が大勢になってきた。同党は「危機管理法制は必要」との基本姿勢で、有事法制に関して賛否が分かれているが、有事推進派からも政府案や衆院武力攻撃事態特別委での政府答弁に対して「武力攻撃事態の定義があいまい」「テロや不審船の対応がない。国民保護法制も確立していない」などの批判が続出している。

 政府・与党は特別委質疑で民主党から批判が相次いだことを踏まえ、修正協議に前向きな姿勢を見せているが、同党の鳩山由紀夫代表は8日の会見で「法律を出しながら修正とは欠陥商品と認めているようなものだ。到底応じられない」と政府案の撤回を求めた。菅直人幹事長も10日、「(政府案は)お粗末の一言だ」と切り捨てた。

 民主党内で反対の機運が高まった背景は、政策論だけでなく、「倒閣を掲げながら、小泉純一郎首相を手助けするのは得策でない」(幹部)との判断が働いたためだ。さらに鈴木宗男衆院議員に対する再喚問要求をめぐって与野党の対立が激化する中、「修正協議に応じて(有事3法案だけ)賛成に回る状況じゃない」(幹部)との空気が生まれてきたことも推進派を反対に傾かせている。昨年秋のテロ対策支援法など安保関連法案を審議するたびに露呈した党内対立の再燃を避けたい執行部には好都合となっている。

 しかし、推進派の一部は「今回は反対せざるを得ないが、国会審議を通じて有事法制への積極姿勢は示しておきたい」と、ジレンマに陥っているのも事実だ。

 【吉田啓志】[毎日新聞5月11日] ( 2002-05-11-20:52 )


日本共産党

2002年5月9日(木)「しんぶん赤旗」

他国領域での攻撃も「有事」

木島議員質問に官房長官認める

「武力攻撃」定義は二転三転

[質問要旨]


 日本共産党の木島日出夫議員は八日、衆院有事法制特別委員会で、有事法制が発動される「武力攻撃」に他国領域で活動する自衛隊部隊への攻撃が含まれるのかと追及しました。福田康夫官房長官は、「計画的、組織的な攻撃と認定されるかが問題。(認定されれば)そうなる」とのべ、法案発動の場合があると認めました。


 政府は、これまでインド洋など公海上の自衛隊艦船への攻撃が「武力攻撃事態」に含まれることは認めていましたが、PKO(国連平和維持活動)や報復戦争参加法(テロ対策特措法)にもとづき他国領域で活動する自衛隊部隊への攻撃まで「武力攻撃」に該当するとしたのは初めて。

 また、在外公館への攻撃も「基本的には入らない」としつつ、「諸般の状況」によっては「武力攻撃に該当する」と認め、まったく歯止めがないことを示しました。

 また、木島氏は、武力攻撃事態法案の中心概念である「武力攻撃」の定義について追及。法案に数多く使われている「武力攻撃」の意味について、「武力攻撃のおそれ」を含むか否かを、自衛隊の行動を規定した二条六号の「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」という規定に関してただしました。

 これに対し、福田官房長官は当初、武力攻撃という用語には「おそれのある場合」が「含まれない」と答弁。ところが、木島氏に問題点を指摘されると、今度は「含まれる」と正反対の答弁。前日の首相答弁とも矛盾する形になりました。

 あげくの果てに、福田長官は、同条の「武力攻撃」については「おそれのある場合」を含まないが、「部隊等の展開その他の行動」部分にかかるときは、「『おそれ』『予測』事態が含まれる」と答弁し、法案の矛盾を露呈しました。

 木島氏は「欠陥法案だ」と指摘し、政府の恣意(しい)的な判断でこの法律が動き出すと批判しました。


5月16日 11:02有事特別委:武力攻撃の「恐れ」など統一見解示す 官房長官

 福田康夫官房長官は16日午前の衆院武力攻撃事態特別委員会で、有事法制関連3法案審議の焦点になっている、武力攻撃の「恐れのある場合」と「予測される事態」との違いについて政府統一見解を示した。恐れのある場合は「わが国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態」と定義。具体例として「ある国がわが国に対する武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船や航空機を集結させている場合」を挙げた。この段階から、自衛隊の防衛出動が可能になる。

 一方、「恐れ」の一歩手前といえる「予測される事態」は、「わが国に対する武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態」とし、具体的には「ある国が、わが国への攻撃のための部隊の充足を高めるべく、予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行ったり、わが国を攻撃するための軍事施設の新たな構築を行っている」ことを挙げた。こうした場合、自衛隊の防衛出動待機命令や、陣地構築のための命令を出すことが出来るようになる。

 政府見解は、先の特別委員会で民主党の岡田克也氏が「法案による武力攻撃事態の定義が不明確だ」と提出を要求していた。

[毎日新聞5月16日] ( 2002-05-16-11:02 )

武力攻撃事態の認定基準を説明 福田官房長官




 福田康夫官房長官は16日午前の衆院有事法制特別委員会で、武力攻撃事態法案に関連し、(1)「武力攻撃が予測される事態」とその次の段階である「武力攻撃のおそれのある事態」を認定する基準(2)指定公共機関の対象、についての政府見解を示した。

 自衛隊が陣地構築や予備自衛官の招集を行える「予測される事態」について、同長官は「ある国が我が国への攻撃のため、部隊の充足を高めるべく予備役の招集や軍の要員の禁足・非常呼集を行っているとみられる」「我が国を攻撃するためとみられる軍事施設の新たな構築を行っている」と例示。

 自衛隊が反撃に備えて防衛出動し、部隊を展開できる「おそれのある事態」については「ある国が我が国に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船あるいは航空機を集結させている」ことを挙げた。

 一方、有事の際に協力する「責務」があるとしている指定公共機関については「民間放送事業者が指定される可能性はあるが、現時点では日本放送協会(NHK)を主として考えている」との見解を示した。

 新聞社を含める可能性については、同長官は答弁で「印刷媒体という意味では緊急性という意味でテレビなど放送にかなわない」とする一方で、「インターネットを使って即刻報道が行われていることを考えると、新聞社にもご協力をいただく可能性はないわけではない」と述べた。

 岡田克也氏(民主)の質問に答えた。(12:09)




5月16日 10:50自衛隊派遣:対テロ支援で自民党部会が期間延長を了承

 自民党は16日午前、内閣・国防・外交合同部会を開き、アフガニスタンで対テロ攻撃を継続中の米英軍に対する自衛隊の支援活動について、今月19日に期限を迎える派遣期間を、今年11月19日まで半年間延長する政府方針を了承した。自衛隊の支援活動は、テロ対策支援法に基づく措置で、現在はインド洋で海上自衛隊の補給艦による燃料補給活動などを行っている。政府は、同日午後に安全保障会議を開いたうえで、17日の閣議で延長を正式決定する。

[毎日新聞5月16日] ( 2002-05-16-10:49 )


重要法案成立で一致、会期延長は必至…与党党首会談

 15日の与党3党首会談では、有事関連3法案など重要法案の会期内成立に全力をあげることで一致した。しかし会期末までは残り1か月。重要法案の成立には大幅な会期延長が必要だ。国会終了後の内閣改造・自民党役員人事も視野に与党内でも駆け引きが激しくなりそうだ。

 ●進まぬ審議

 党首会談では有事関連3法案、医療制度改革関連法案、個人情報保護法案、郵政公社関連法案、政治倫理関連法案を重要法案と位置づけた。しかし、有事関連3法案が24日に与党側が衆院通過をめざしている以外、どの法案もほとんど審議されていない。会期内成立は絶望視されている。

 15日の党首会談では、会期延長の話は出なかったというが、与党内では「首相としては公約の郵政公社関連法案を成立させないわけにはいかない」(森派幹部)として、首相が会期の大幅延長を求めるのは必至と見られている。政府・与党内では「20日ごろには延長幅の議論をしなければならない」(自民党幹部)とされる。ただ、辻元清美・元社民党衆院議員、加藤紘一・元自民党幹事長、井上裕・前参院議長が相次いで議員辞職する異常事態になったため、「この国会は様々な問題で政治とカネの国会になってしまった。いったん閉じて、もう1度、時間をおいてから臨時国会を開いた方がいい」(神崎公明党代表)との声もある。

 ●内閣改造

 会期延長問題は、与党内で待望論が高まっている内閣改造・自民党役員人事にも影響を与えそうだ。与党内では、公明党の神崎代表が「恐らく国会終了後にでも、小泉首相は改造を考えておられるのではないか」と公言するなど、国会閉会直後の内閣改造はもはや「既定方針」だ。自民党内の改造を求める勢力や公明党としては、延長しないか小幅延長にとどめ、早期に自民党役員人事と内閣改造を断行するのが望ましいと考えている。

 自民党橋本派や江藤・亀井派などが求めている山崎幹事長の交代も焦点だ。「参院補選の大敗や女性問題があっても、だれも山崎氏の責任問題を追及しないのは、国会終了後の幹事長交代が党内の共通認識だからだ」(橋本派幹部)と見られている。

(5月16日06:05)
5月19日 19:02国会:重要法案の優先順位巡り与党内で激しい動き 残り1か月

 今国会会期末(6月19日)まで残り1か月となり、20日から与党内の重要法案の優先順位をめぐる動きが激しくなりそうだ。与党は有事関連法案の27日の衆院通過を目指し、健康保険法改正案も今国会の成立を果たすことで衆参ともに歩調を合わせている。また与党内の調整が難航すると見られていた郵政改革関連法案は、成立に向けての動きが活発になりそうだ。

 ■有事、健保に自信■

 「全法案が成立するとは思っていない。どれを通すのか、考えないといけない」。保守党の二階俊博幹事長は19日のNHK討論番組でこう語り、週明けから4大法案の優先順位を決める作業に入る意向を示した。

 中でも与党が最優先法案と位置付けるのが、有事関連法案と健康保険法改正案。参院側も、自民党の青木幹雄参院幹事長が17日の記者会見で「有事法制は国際的な観点に立った法案で、非常に大事だ。健康保険法改正案も予算が伴うので必要だ」と明言した。

 有事法制はすでに4日間の特別委審議を終え、自民党は「ほぼ論点は出尽くした」(幹部)という受け止め方だ。昨年のテロ対策法のような修正協議に向けた動きもなく、政府はすでに武力攻撃事態の定義に関する統一見解を提示。先送り批判が強い国民保護法制は提出時期を盛り込んだ整備計画策定も検討し、成立に向けた環境整備を急ぐ考えだ。

 ■動き出す郵政法案■

 郵政改革関連法案は、自民党内の法案了承を経ずに国会提出された。特に郵便事業への民間参入を認める信書便法案には自民党の強い反発があり、会期内成立は困難視されていた。

 しかし、自民党郵政族の実力者である野中広務元幹事長が一括成立に向け調整に乗り出したことで情勢は急転。週明けからの本格審議入りと並行する形で、衆院段階での法案修正を目指す動きが強まる可能性が出てきた。

 自民党の古賀誠前幹事長は17日の講演で「有事法制は、一分一秒を争って成立させないといけないのか。どうしても成立させなければならないのは郵政だ」と強調。公明党も追認している。会期内の成立は流動的だが、小幅の延長で成立に向けた機運が高まっている。

 「優先順位でいけば最後」(首相周辺)とされる個人情報保護法案は、小泉純一郎首相と山崎拓幹事長が17日の会談で「重要法案の会期内成立」を確認した。ただ、首相の読売新聞試案などを参考にした「修正指示」が本格審議入り前に表面化。かえって混乱しており、「大幅な会期延長がないと成立は困難」(自民党幹部)との見方が強い。[毎日新聞5月19日] ( 2002-05-19-19:03 )


5月20日 20:38有事法制:武器・弾薬提供 米軍支援法では可能性も 中谷長官

 中谷元防衛庁長官は20日の衆院武力攻撃事態特別委員会で、米軍への武器・弾薬の提供について「周辺事態法やテロ支援対策法で武器・弾薬(の提供)を除いたのは、米側のニーズ(要請)がなかったから。憲法上出来ないからではない」と述べ、武力攻撃事態法案で2年以内に整備することにしている、武力攻撃事態における米軍支援法制では、武器・弾薬の提供が含まれる可能性を示した。共産党の木島日出夫氏の質問に答えた。

 政府はこれまで、米軍への武器・弾薬提供について、97年の日米防衛新指針(ガイドライン)をめぐる国会審議で「最終的に需要はないということで、詰めた検討を行うには至っていない。しかし、大いに憲法上の適否について慎重に検討を要する問題ではあろうという感触は持っている」(同年11月20日の大森政輔内閣法制局長官答弁)と説明。憲法が認めていない集団的自衛権の行使にあたるかどうか、厳密な判断は避けている。

[毎日新聞5月20日] ( 2002-05-20-20:38 )


5月20日 23:38山崎幹事長:重要3法案「今国会で」世論フォーラムで講演

 自民党の山崎拓幹事長は20日、福岡市のホテルで開かれた「毎日・世論フォーラム」(毎日新聞社主催)で講演し、今国会の重要法案のうち、有事法制関連法案、郵政改革関連法案、健康保険法改正案の3法案について「小泉構造改革の一環をなす」などの理由から、今国会で成立させるべきだとの考えを強調した。

 山崎幹事長は、特に有事法制については「四半世紀にわたる懸案。当然のことが非常に遅ればせながら行われている」と指摘。また郵政改革と健保法改正の2法案についても「今国会で実現しないと『小泉構造改革は進展がない』とのメッセージになりかねない」と述べた。

 また、中国・瀋陽の総領事館内連行事件について「小泉政権支持率の低下に大変大きな影響を与えていると直感する」と述べ、長期化した場合の小泉政権へのマイナス影響への懸念を示した。

[毎日新聞5月20日] ( 2002-05-20-23:39 )


5月21日 0:17有事法制:法案を批判 自由党・藤井幹事長

 自由党の藤井裕久幹事長は20日、東京都内のホテルで開かれたアジア調査会で講演し、有事法制関連3法案について、「自衛隊の行動だけが先鋭化し、国民の権利の制限や地方への指示、代執行だけが先行しているのは疑問だ」と批判した。

 藤井氏はさらに「乱発はありえないが、戒厳令的なものも入れるべきだ」と指摘。同党が対案として提出を準備している非常事態対処法案では難民の大量発生などの社会的混乱にも対応できるよう整備されていることを強調した。

[毎日新聞5月21日] ( 2002-05-21-00:17 )


日本共産党

2002年5月23日(木)「しんぶん赤旗」

有事法案

公聴会日程の撤回求める

書記局長・幹事長 4野党が合意


 日本共産党、民主党、自由党、社民党の野党四党は二十二日、東京都内で書記局長・幹事長会談を開き、有事法制三法案について、与党単独で公聴会日程の設定を強行議決したことは暴挙だとして、白紙撤回を求めることなど、今後の国会対応をめぐり五点にわたって合意しました。日本共産党から市田忠義書記局長が出席しました。

 有事三法案の基本問題について、この間の審議を通じ、(1)法案の中心問題である「武力攻撃事態」の概念がきわめてあいまい(2)自衛隊が武力行使をしないことを建前とする「周辺事態」が、いかなる場合に武力行使を可能とする「武力攻撃事態」となるのか、説明がない(3)国民の自由と権利の制限について内容が不明(4)地方自治体がいかなる責務を負わされるのか不明で、多くの自治体から不安の声があがっている――など、政府がいまだに明確な説明をしていないとの認識で一致。このような状況のもとで、公聴会日程を強行議決することは認められないとの立場を確認しました。

 また、▽医療改悪法案(健康保険法等改悪案)の廃案▽個人情報保護法案、人権擁護法案の撤回▽深刻な不況のもと、国民の暮らしと経済対策についてのいっそうの国会審議▽「政治とカネ」の問題で、野党四党が共同提出した、公共事業受注企業からの献金禁止を柱とする政治資金規正法改正案、あっせん利得処罰法強化法案の今国会での成立――を求めていくことで合意しました。

 


5月25日 20:29有事法制:民主党軸足定まらず 自民党が修正協議に前向き姿勢

 有事法制関連3法案に対する民主党の意見集約が遅れている。与党の強引な委員会運営への反発から一時は反対論に傾斜したものの、小泉純一郎首相の指示で自民党が再び民主党との修正協議に前向きな態度を見せ始めたためだ。「よりましな法案」にするための修正協議に積極的な意見が党内にある一方、与党の動きは野党共闘の足並みを乱すだけの「つり球」で終わる可能性もある。国会の会期延長問題も絡んで、民主党執行部は厳しい選択を迫られている。

 民主党の鳩山由紀夫代表は23日の野党4党首会談で、社民党などから法案反対に同調するよう求められ「今月中に党の態度を決めたい」と語った。与党が衆院武力攻撃事態特別委員会で公聴会日程を単独議決したことを受け、強行審議を理由にした反対への意思表示と受け止められた。

 しかし、野党の審議拒否で国会が空転し出すと、小泉首相は自民党の山崎拓幹事長に超党派での決着を指示。これを受け与党3党は24日、自ら決めた公聴会日程をあっさり延期させた。「与党の非」を理由に賛否が分かれる党内の矛盾にフタをしようとした民主党の思惑は外れた。

 22日に開かれた党全議員政策懇談会では、政府案の修正を求める声も一部あったが、「法解釈が執行者に任されてしまっている」「審議時間が足りない」などと廃案か継続審議を求める意見が半数近くにのぼった。それでも岡田克也政調会長は記者団に「さらに論点を整理したい」と態度表明を避けた。

 民主党幹部は「賛否の決定は法案の採決直前になるだろう」と語る。軸足の定まらない民主党に対し、自由党からは「安保問題の党内対立を放置してきたツケだ」との不満が出始めている。

[毎日新聞5月25日] ( 2002-05-25-20:30 )


2002年05月27日国会:鈴木宗男氏問題が審議に影響か 野党は手ぐすね

 有事法制で与野党が対立していた国会は28日から正常化するが、今度は鈴木宗男衆院議員(自民党を離党)の政治団体による政治資金規正法違反事件が、審議の進行に影を落とすことになりそうだ。東京地検特捜部が鈴木氏の事務所や自宅を家宅捜索したのを受け、野党は辞職勧告決議案採決を求めるなど攻勢を強める構え。与党は捜査が鈴木氏本人に及ぶかどうか見極め、当面は静観しながら批判をやり過ごすしかない状態だ。小泉純一郎首相もリーダーシップを発揮する様子を見せていない。

 首相は27日、参院予算委の外交問題と政治倫理に関する集中審議で、鈴木氏の進退問題について「本人が決めるべき問題だ。諸般の状況を見極められないような人が議員になっているとは思いたくない」と答え、改めて自発的辞職への期待を表明。「本筋でないことで審議に影響を与えないようにして欲しい」と懸念を示した。

 閣内では先週、坂口力厚労相が「議員の自宅や事務所が捜索を受けるのは異常なこと」と指摘し、福田康夫官房長官も「状況は客観的に見て変わってきている」と述べたが、いずれも遠回しな表現にとどまった。自民党内にも「政治的に今までと違う局面になった」(堀内光雄総務会長)と、何らかの対応を促す意見はあるが、少数派。

 同党の山崎拓幹事長は捜索が入った翌24日、早々に「新たな局面に入ったとは必ずしも言えない」と明言。執行部は、野党から3度目の辞職勧告決議案採決要求が出ても、あくまで衆院本会議への上程を阻止する方針を確認している。これには捜査が鈴木氏本人に向かっているとの見方から、いずれ検察当局から逮捕許諾請求が出されるとの観測も下敷きにある。逮捕許諾を与えれば、辞職勧告への対応に頭を悩ませる必要もなくなるという思惑だが、その間はじっとしているしかない。

 一方、鈴木氏が政治団体の裏金を、橋本派若手・中堅議員らが集まる「ムネムネ会」メンバーに配っていたとの疑惑が新たに浮上。民主党は27日の国対役員会で、メンバー議員らを衆院予算委へ参考人招致するよう求める方針を決めた。この招致要求は離党した鈴木氏の疑惑を、自民党攻撃の材料に振り向けることが狙いだ。共産党の市田忠義書記局長も会見で「口利き料を選挙資金として、ムネムネ会議員に配り、当選させていた疑いが濃い」と批判した。

 野党4党首は同日、東京・有楽町でそろってマイクを握り、小泉政権への対決姿勢をアピール。民主党の鳩山由紀夫代表は「国会を延長して喜ぶ人は鈴木宗男さんだ。会期中は国会に承認されなければ逮捕されない」と、鈴木問題を使って自民党内に浮上している会期延長論をけん制した。

 自民党が鈴木氏の疑惑解明に及び腰なのに対し、野党は「追及材料は後から後から出てくる」(民主党幹部)と手ぐすねを引く。同日の野党4党国対委員長会談で、共産党は鈴木氏の再喚問と議員辞職勧告決議案の早期上程を主張。他の野党は、逮捕許諾請求が出される可能性もにらみ、一番効果的に与党を揺さぶるタイミングを見計っている。[毎日新聞5月27日] ( 2002-05-27-20:24 )



6月01日 19:54
非核三原則:「国民的議論があり得る」と釈明 政府首脳

 政府首脳の非核三原則見直し発言は、小泉官邸の外交感覚の希薄さ、緊張感の低下を感じさせるものだった。折しも発言のあった31日は日韓共催のサッカー・ワールドカップ(W杯)開幕という節目の日であったばかりでなく、インド、パキスタン両国に緊張緩和を働きかけていることを考えても、より慎重になって当然の局面だった。

 「非核三原則の見直しを検討していることは全くない。時代状況、国際情勢等を踏まえたさまざまな国民的議論があり得るということを述べたものだ」。政府首脳は1日、自らの発言についてこう釈明した。日本は核拡散防止条約(NPT)加盟国。それを破棄することや米国とのあつれきを覚悟してまで核武装することなど、選択肢としても語られていない。しかし、そうであるならば、あたかも「床屋政談」のように言及する必然性がどこにあったのか。

 これに先立つ福田康夫官房長官の会見にしても、改めて「法理論的に言えば、(核兵器を)持ってはいけないという理屈にならない」と述べた。この発言そのものは従来の政府見解に沿ったものだが、有事関連3法案の審議が難航している国会事情ひとつ考えても、与党内から「不用意」の批判が出ても仕方がないものだった。

 この1年、小泉政権の関心は自民党抵抗勢力との戦いに傾斜し、外交への目配せは不十分だった。それは、昨年からの靖国参拝問題をめぐる首相の行動の揺れでも明らかになった。

 核政策にかかわる発言に、より繊細な配慮が求められることは言うまでもない。小泉政権を浮揚していた熱狂の渦はとうに引き、首相が思っている以上に高度は急降下している。政権の操縦にはこれまでにも増して細心の注意が求められている。そのことを改めて肝に銘じないと今後、「失言→政権失速」の悪循環という前政権の轍(てつ)を踏むことになりかねない。 【前田 浩智】

[毎日新聞6月1日] ( 2002-06-01-19:52 )


6月01日 12:21非核三原則:見直し論に「どうってことないよ」 小泉首相

 小泉純一郎首相は1日昼、政府首脳が非核三原則見直しの可能性に言及したことについて、「あれはどうってことないよ」と述べ、問題視しない考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。

[毎日新聞6月1日] ( 2002-06-01-12:20 )


6月01日 20:23非核三原則:政府首脳の見直し発言に自民党内からも疑問視の声

 核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」という日本政府の非核三原則について政府首脳は5月31日、「今までは憲法に近かったが、これからはどうなるか。憲法改正を言う時代だから、非核三原則だって、国際緊張が高まれば、国民が『持つべきではないか』となるかもしれない」と述べ、世論の動向次第では、将来、見直しが政治課題になる可能性もあるとの考えを示した。

 同首脳は1日、「非核三原則の見直しはない」と釈明したが、67年以降、歴代内閣が堅持してきた非核三原則の見直しに触れた発言であり、民主党は同日「内閣の見識を疑う」(鳩山由紀夫代表)などと批判、自民党内からも疑問視する声がでている。

 核政策については、安倍晋三官房副長官が早稲田大学の講演で「法理論と政策論は別だが、核兵器の使用は憲法上、問題ない」と発言。この発言について31日の記者会見で質問された福田康夫官房長官は、核兵器の保有と憲法の関係について「法理論的に言えば、専守防衛を守るなら、(核兵器を)持っていけないという理屈にならない。しかし、政治論ではそうしない政策選択をしている」と述べ、従来の政府見解に沿う説明を行った。

 政府首脳は1日、自らの発言に関連し、「非核三原則の見直しを検討していることは全くない。時代状況、国際情勢等を踏まえたさまざまな国民的な議論があり得るということを述べたものだ」と記者団に、核政策の変更がないことを強調した。[毎日新聞6月1日] ( 2002-06-01-20:25 )



6月03日 19:36

非核三原則:
中国外務省が「政府首脳発言」を批判


 【北京・坂東賢治】中国外務省の孔泉報道局長は3日、新華社通信を通じて非核3原則の見直しもありうるとの政府首脳発言について談話を発表し、「国際社会に対する日本政府の厳粛な承諾に反するものだ」と批判した。中国政府がこの問題について論評したのは初めて。韓国や日本の野党などからも強い反発が出ていることから中国としても態度表明をする必要があると判断したものと見られる。

 孔局長は「平和と発展が時代の主流であり、国際的な核軍縮の進展が続いている今日、日本政府高官がこうした談話を発表したことは驚きだ」と指摘した。その上で「我々は日本人民が自国の根本的な利益に立ち、正確な判断と選択を行うと信じる」と指摘し、日本国内で発言への批判が高まっていることを評価した。

[毎日新聞6月3日] ( 2002-06-03-19:34 )


6月03日 19:21

非核三原則:
小泉首相が官房長官の『政府首脳発言』にいら立ち


 「政府首脳ってだれ?首脳というのは総理大臣じゃないの?私は一言も言っていない。誤報はやめてもらいたいね」。報道各社が福田康夫官房長官が「非核三原則」見直しに言及したのを、「政府首脳発言」としてきたことに対し、小泉純一郎首相は3日昼、首相官邸で記者団にいら立ちをあらわにした。政治記事の背景説明を記事にする際の官房長官と担当記者団との取り決めに基づいて「政府首脳発言」とした。

 首相は別の質問が終わった後にも、立ち去りながら「間違えないでくれよな。政府首脳と言っても、私は一言もそんなこと言ってないんだから」と念を押すほどだったが、その直後に、福田長官が担当記者団の求めに応じて実名報道に同意した。報道各社は官房長官が官邸内で背景説明をした場合、「政府首脳」と表記することがあるが、首相が「政府首脳」になることはない。首相も当然、こうした取り決めを理解しているとみられるが、この日のあえて「抗議」したかったようだ。

[毎日新聞6月3日] ( 2002-06-03-19:20 )


6月03日 13:53

非核三原則:
福田長官の罷免要求へ 野党4党 


 野党4党は3日昼の衆院武力攻撃事態特別委員会の理事会で、「非核三原則」見直しに言及した福田康夫官房長官の罷免を小泉純一郎首相に要求する方針を表明した。また、同日午後の同委員会に小泉首相の出席を求め、非核三原則見直し発言に関する集中審議を行うよう与党に要求したが、与党側は拒否した。野党はこれに反発、今後の同委員会審議を拒否する構えだ。

 これに関連して、民主党の鳩山由紀夫代表は同日午前の自由党大会であいさつし、福田長官の「核保有」発言について「日本の傷付いた方々(被爆者)に対する思いやりのない発言だ。世界平和に逆行する」と批判。「厳しく責任を求めないといけない。一日も早く辞めてもらうよう努力する」と述べ、福田長官の早期辞任を要求した。

 一方、福田長官は同日午前の記者会見で「(非核三原則見直しは)政府としても私個人としてもそういう考え方はない。非核三原則を今後とも堅持していくという政府の姿勢は揺るぎない」と語った。また、小泉首相は同日昼、首相官邸で記者団に「(非核三原則は)見直さないと私が言っている。野党は何でも『辞めろ』と言うが、これもどうかと思う。(野党は有事関連法案の審議に)影響させたいと思っているだけだ」と、野党の対応を批判した。

 おことわり 毎日新聞は「非核三原則」見直しに言及した31日の政府首脳発言について、この首脳が福田康夫官房長官であるとの特定を控えてきました。これは、政治取材において、政治家の背景説明(バックグラウンドブリーフィング)では「実名は書かず、政府首脳などと表記する」とのルールがあり、見直し発言がこれに該当していたためです。内閣記者会は3日、福田長官に対し実名で報道することへの同意を求め、同長官がこれに応じたため、今後、この政府首脳発言を福田長官の発言として報道します。

[毎日新聞6月3日] ( 2002-06-03-13:53 )


6月03日 18:54

自由党:
野党共闘軸に政権交代をアピール 党大会で小沢党首


 自由党は3日、都内のホテルで党大会を開いた。小沢一郎党首は「無原則、無責任な施策で、その場をしのいできたため、改革はむしろ後退している」と小泉純一郎首相を批判。さらに「野党各党と一致協力して、国会と選挙での協力態勢を強化し、自民党に代わる新しい政権の姿を国民の前に示したい」と野党共闘を軸に、政権交代を目指す姿勢をアピールした。民主党の鳩山由紀夫代表や社民党の土井たか子党首ら来賓をはじめ、党員約600人が出席した。

 衆参両院議員が30人の小所帯で、「小沢党」色の濃い同党にとって、民主党などとの選挙協力による政権交代こそが党の存亡をかけた選択肢になる。

 大会であいさつした鳩山氏は「自由党と協力しながら、自民党政権を早く終焉させるため、あらゆる手段を講じなければいけない」とエールを送った。だが、自由党との連立政権構想が民主党内のコンセンサスを得ているとは言いがたい。旧新進党で小沢氏と行動をともにした議員を中心に小沢氏の政治手法に対する不信感が根強いため、鳩山氏も踏み込んだ発言を控えた形だ。

 小沢氏は党大会後の記者会見で「政権を取れるという認識を持つことが大事だ。政権を取れれば、異論は乗り越えられる」と強調した。しかし、民主党内の「反小沢」感情について、自由党幹部は「民主党の問題だ。こっちは鳩山氏ら執行部を相手にしている」と述べるだけで、展望を描ききれていないのが実情だ   【浜名晋一】

[毎日新聞6月3日] ( 2002-06-03-18:54 )


有事法制、民主が廃案要求を正式決定 成立さらに困難に

 民主党は11日午前の拡大役員会で、有事法制関連法案について「審議時間が不十分で、内容にも問題が多い」(菅直人幹事長)として、廃案を求めることを正式に決めた。与党内にはなお、民主党との修正協議で法案成立を目指す動きがあるものの、民主党が態度を明確にしたことで、同法案の今国会成立はさらに困難な情勢となった。

 役員会では、19日に会期末を迎える今国会の会期延長に反対することをあらためて確認。そのうえで会期内の法案修正を与党側が持ちかけてきても、これを拒否する方針で一致した。これに関連して熊谷弘国対委員長は記者会見で「会期末も迫り、今の法案はあまりにも問題が多すぎることが若干の審議の過程で明らかになった」と語った。

 民主党はこれまで原則的に有事法制の必要性を認める立場から、「十分な審議を経て、賛否を決める」(岡田克也政調会長)として態度を明確にしてこなかった。しかし福田康夫官房長官の「非核」発言や防衛庁のリスト問題などが明らかになって以降、与党との修正協議への意欲は急速に薄れていた。

 一方、政府・与党では小泉首相が修正協議を含めて野党の一部の同調を得るよう慎重審議を指示しており、これまでは会期の大幅延長を前提に成立の可能性を探る動きがあった。ただ、民主党が正式に廃案要求を決めたことで、与党側は、単独採決など強行的な姿勢であくまで成立を狙うかどうか、さらに厳しい局面に追い込まれた。

 さらにかりに与党側が今国会で同法案を継続審議とし、次国会であらためて修正協議を行う場合についても、現段階では民主党には「根本的な作り直しが必要だ。継続審議ではなく、いったん廃案にすべきだ」(鳩山由紀夫代表)との意見が強く、廃案含みの展開になる可能性も出てきた。(朝日6.11)