国債論の基礎認識 |
(れんだいこのショートメッセージ) |
「現在、日本の抱える債務は国と地方合わせて約***兆円を超え、国債発行残高も***兆円と財政状態は悪化の一途を辿っている。国債費の増加は財政をますます硬直化させつつあり日本国破産へ一瀉千里に向いつつある」。この文のうち***は日増しに増えつつある。 この国債に関する知識を得ようとしても、素人には極めて分かりにくい仕掛けになっているれんだいこには何が何やらわからない。れんだいこの知識の乏しさに原因が有るのではなくて、恐らくわざわざ分かりにくくしているのだろう。しかし、今や国政上の重要案件であるから、この問題に踏み入っていかざるを得ない。本章の眼目はここにある。 2005.1.10日 れんだいこ拝 |
【国の借金の種類】 |
「国の借金」とは、「政府が財政運営のため、国民や民間金融機関などから借り入れ、将来返済が必要な債務」のことを云う。(1)・普通国債や、特殊法人への融資に充てる財投債などの「国債」、(2)・国の一般会計や特別会計などが長短期で借りる「借入金」、(3)・一時的な資金不足の補てんなど短期の資金調達のために発行する「政府短期証券」から成り、その合計が「国の借金」。借金残高は1995年に300兆円に乗せた後、相次ぐ景気対策による国債増発で急速に積み上がり、その後の8年間で2倍以上に膨らんでおり、現在更に膨張しつつある。 |
【戦後財政法の会計原則】 | |||||||
戦後の財政法は、戦前の国債史の反省からその発行を原則禁止とした。財政法4条は次のように明記している。
財政法5条は次のように明記している。
財政法4条はかく国債の発行の原則禁止を明記している。財政法5条は借入金の借入につき日本銀行からの借入を禁止している。これが戦後の財政運営原則であった。それは、戦時中のインフレの元凶が日銀引受けによる赤字国債の増発が結果的に財政を硬直化させ、自暴自棄的な戦争政策へ向わざるを得なくなったとの観点から汲み上げた歴史の教訓に対する真摯な反省から制度化されたものである。 財政法は、1947(昭和22)年に制定され、いわゆる健全財政の原則を打ち立てている。これによれば、1、健全財政の原則、2、建設国債規定、3赤字国債未規定 |
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【国債の種類の基本形】 |
財政法上禁じ手である国債がどういう裏技を使って発行され始め常態化したのか、そこに如何なる利権が存在したのか、遅まきながら今からこれを学ぶ。 現在発行されている国債(国の発行する有価証券債券)には資金使途によって二種類に識別される。その一つが「建設国債」であり、港湾、ダム、橋、道などの社会基盤整備(公共投資)の財源については、国会の議決を経た範囲内の金額として条件が附されつつ発行可能となった。国会の議決ということをいわばミソとして1966年に発行されて以来、毎年常態化している国債と云える。 もう一つは「赤字国債」であり、一般財源の不足を補うために発行する特別国債として歳入不足を補うために発行されるもので、人件費等の経常的な経費をまかなう為ないしは教育、医療、福祉に使われる為に捻出される。病院や学校といった建設費用は赤字国債でまかなわれることとなっている。特別立法を必要としており、これまたいわば単年度立法の特例公債法をミソとして、1965年の補正予算で初めて発行されて以来、毎年常態化している国債と云える。但し、1990〜1993年までの4年間は発行されなかった。 財政法上「建設国債」は辛うじて認められているが、赤字国債は認められていない。例年、赤字国債が発行されているが、、毎年、今年は特例として赤字国債を発行するという法律(特例法)を作っていわば非合法的に発行しているのが赤字国債であり、故に特例国債と呼ばれることもある。 国債を形態的に見れば「建設国債」と「赤字国債」に分かれるが、これらは更に償還期限により種類が分かれているので期別国債として識別する必要が有る。国債を期別で見れば、長期と短期に分かれる。 短期国債は、年度内に処理される資金繰りのための国債で、3ヶ月もの、6ヶ月もの、11ヶ月ものとある。長期国債は、返済が1年を越える債務で、中期国債(2年、5年もの)、割引国債(3年もの)、長期国債(6年もの、10年もの)、超長期国債(15年、20年ろ、30年物)がある。他にも、政府短期証券(FB)というのもあり、これも短期国債であり、国の一時的な資金不足を補うための債券で、財務省証券、食糧債券、外国為替資金証券の3種類がある。 国債を利息で見れば、1年利付債(0.4%)、五年利付債(1・1%)、十年利付債(1.8%)から成る。 |
【国債の種類の超変則形】 |
1983年、遂に、「借換国債」というものが登場してきた。 借換国債は、過去に発行した国債の償還財源を調達するために新たに発行される国債で、サラ金型国債ということになる。国債の償還に関しては建設、特例を問わず、「60年償還ルール」が採用されている。「60年償還ルール」は超長期償還制度であり、目下日本特有のシステムとなっている。 具体的には、10年物国債を発行して資金調達した場合、国は10年後に国債保有者に元本を現金で支払うが、国が自力で返済するのは1/6だけで、残りは改めて借換債を発行して償還財源になる。この方法が6回繰り返され6分の1ずつ減らして、最終的に60年で全額償還することとなる。 このトリッキーな手法で「借換国債」が発行され続けることで、国家の累積債務はみるみるうちに雪達磨式に膨張し借金地獄になっていく。あらかじめ発行限度額が定められるが、次第にこの枠が広げられ、2005年度の場合30兆円(←24兆円)枠にまで拡大している。 更に、01.4月からはじまった財政投融資の改革の一環として、「財投債」という新国債が発行された。新財投制度では、郵貯などの預託義務がなくなり、自主運用されることになり、財政投融資は安定財源を失った。しかし、資金運用部に代わる財政融資資金特別会計が財投債を発行し、財投対象機関(特殊法人等)に融資などをしている。 以上、国債には、新規財源債としての「建設国債」、「赤字国債」の他に「借換債」「財投債」という4系から構成されていることになる。 |
【国債発行の仕組み】 |
2005年初頭現在、財務省は、1965年に導入され今日まで続いてきた1千社以上の金融機関がまとめて国債を引き受けるシンジケート団制度(「シ団方式」)を来年度で廃止し、2006年度以降は既に部分的に導入されている「国債市場特別参加者制度」により全ての国債を入札で発行する方式(「公募入札方式」)に全面的に切り替える意向を表明した。但し、金融機関には3%以上の応札義務が課される模様。 従来の国債発行の仕組みは次の通り。国債の発行額は、毎年度の初めに国会で審議される。そして国は国債を発行する際に、発行額、期間、発行日、償還日、利払い日、利率などの発行条件やスケジュールを決める。国債の引受けは、シ団引受けか、資金運用部による引受けかの2ルートで行われる。シ団引受けが全体の8〜9割を占め、資金運用部引受けは、年度内の税収の伸びを反映して、発行を増減させなければならない時の調整弁として利用される傾向にあった。 シ団引受けの場合、売り手である政府は、買い手であるシ団と絶えず綿密な連絡をとらねばならない。世話人会(頭取クラス)と国(財政当局)との間で相対交渉が行われ、毎年度の発行額、上下期の配分、業界ごとのシェアなどを決める、一種の談合が行われていた。いわゆる護送船団方式である。 現在では、シ団引受けと公募入札方式がとられている。シ団は発足当時より相対的にその重要度を低下させたとはいえ、現在でも国債発行に関して重要な役割を果たしている。75年のシ団メンバー数727に比べて、現在では約1600と増加している。これは国債の大量発行がなされてきたことと、外銀、信金、労金などが参加し、証券会社の参加が倍以上になったためである。 |
【国債発行の禁じ手として日銀引受け】 |
政府が発行した国債をただちに日銀が引き受けることは禁じ手。これを「日銀による国債の買いオペ」というが、「買いオペ」を無制限に実施すれば、紙幣の乱発発行、その市中への流通によりインフレ圧力になる。 日銀が、民間の短期国債をオペレーションで買い取るときには買い戻し条件を付けていたが、一方的に買い取る方式を始めた。こうなると、国債の日銀引き受けといえる。更に、日銀は国債購入のオペによって資金供給を行い、この介入資金を放置するという資金の非不胎化(ステラリゼィション)方針をとっている。貨幣がマーケットにあふれることになる。 これは、財政問題を金融政策で荒治療する一種の頓服(熱さまし)的な役割でしかなく、効果も長持ちしない。財政再建の本筋は構造改革である。財政当局も財政政策を裁量的に行うのではなく、中長期的に現実性のある財政を確立すべきである。 |
【国債の格付け】 |
日本が世界一の借金国となっている。政府は国債中毒に陥っている。既にパッチワーク(継ぎ接ぎ)財政の泥沼に陥っている。 格付け機関のムーディーズが日本の国債の格付けをAa1から下げる方向で検討すると発表している。もし、日本国債の格下げが行われれば現行金利では国債の引き受け手がなくなる恐れがあり、勢い高金利化する。その払いが追って迫ってくるという悪循環に陥ることが予見される。 |
【財政法27条、28条規定】 | |||||||||||||||||||||
財政法第27条は次のように規定している。「内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の1月中に、国会に提出するのを常例とする」。これを受け、第28条は次のように明記している。
これによって特殊法人に関わる情報や、一般会計と特別会計などのダブルカウント調整も分かるようになっている。にも拘らず、国会の予算審議でこれらの点の質疑が行われているのであろうか。おざなりの答弁で遣り過ごしているのではなかろうか。 |
(私論.私見)