米国債買付史

 (最新見直し2009.9.11日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、日本政府の米国債買い付け史を整理しておくことにする。「米国債保有は、日本の財政再建の最後の足かせとなるのか?」、「日銀の米国債保有額」、「日本の保有米国債」、「947.米国の崩壊」その他参照。「米国債の保有額などは、アメリカ側からは断片的に出ているものの、日本の政府からはどれだけ保有しているのかは明らかにされてはいない」。これは問題ではなかろうか。

 「チェイニー米副大統領は何のために来日したのか?」によると、「日本はもう、イラク戦争の戦費30兆円以上負担している」とある。2007/02/27日のコメントなので、その後更に増加していることになる。

 2009.1.10日日 れんだいこ拝


【日中両国の米国債買い付け狂騒史】
 2008.11.18日、米国財務省の「対米証券投資状況」(TIC)(国際資本統計)によると、米国債(米財務省証券、米政府機関債(GSE社債)、米公社債および米公社株式の合計)の日中買い付け狂騒史の動きが次のように判明した。

 中国の米国支えが露骨化している。この背景にどういう事情が有るのだろうか。中国の米国債保有高は、00年9月末時点では621億ドルだった。日本にもまして増え続けているのが中国である。中国の外貨準備高の増大と米国債購入については中国経済の急成 長と対米輸出増とともに顕著になっており、財務省統計による と、1999.12月に中国と香港を合わせた保有額が985億ドルにのぼり、それまで日本、英国に続いて三位の位置にあった ドイツを追い抜きその後も着実に増え続けている。

 2001.9月の米中枢同時テロ後の動きとして、中国の米国債保有高に更に拍車がかかった。2004年時点で、1997年当時の約2.4倍に当たる1200億ドル以上に達している。8年間で10倍弱も増えたことになる。中国は多くを米国債などのドル資産で持つ外貨準備高が06年1月に日本を抜いて世界一となっている。

 米国金融市場の危機が顕在化して以降の2008.7月以降10月までの4ヶ月で、中国は、米国債を約1491億ドル(約13兆4932億円)買い越した。米国発の金融危機が世界的に広がっているが、中国は米国債への投資を続けていることが確認された。米財政赤字が拡大する中、米国債の安定的な引受先となっている。「中国証券報」によると、9月の新規保有額は436億ドル(日本は128億ドルの減少)で、前月の223億ドルのほぼ倍に達し、年初以来最も増加の大きい月となった。その結果、中国の米国債保有残高は、リーマン・ブラザーズ倒産ショックが起きた9月に約5870億ドル(約53兆1222億円)となって、日本を抜き世界第一位の水準となった。

 2008.9月末現在、中国の米国債保有額は5850億ドル(約56兆7千億円)に達し、首位を続けていた日本(5732億ドル)を抜いて世界のトップに立ち世界最大の米国債保有国となった。1〜9月の新規保有額は累計1074億ドル。2月と6月を除いて保有額が増加し、特に7月以降は増加幅が拡大した。10月に中国は米国債を更に約659億ドル(約5兆9638億円)買い越し、中国の米国債保有残高は約6529億ドル(約59兆0860億円)に達した。

 他方、日本の動きはどうか。これまで米国債保有額で世界一だった日本は、ここ8〜9月の2カ月連続で保有額が減し、9月は8月の5860億ドルから128億ドル減って5732億ドルになった。10月に前月より約123億ドル(約1兆1131億円)買い越したものの、残高は約5855億ドル(約52兆9864億円)であり、中国の約90%の水準に留まっている。これにより、中国は、第二位の日本を約674億ドル(約6兆0995億円)も上回っている。海外全体の米国債買い付けは2兆8605億ドルで、前月より1106億ドル増えた。保有額世界3位は英国で3384億ドルに達する。

 これを米国側から見ると次のようになる。 米国政府は2001.9月の9・11以来、米国債を外国に売却して得たドル資金で財政を補ってきている。その結果、米国債の発行残高のうち外国が保有する比率は2000.5月に約36%であったのが、2008.6月には63%を超えた。このパーセンテイジは、10月に低下して60%を下回っており、米国債の大量発行に外国の買い取りが追い付かない情況になっていると思われる。

 未曾有の金融危機に立ち向かうために米国連邦政府は巨額の財政支出をおこない、破綻しかかった金融機関に資本を注入している。その結果、財政収支が急速に悪化し、2008.1月から10月までの累積で約7324億ドル(約66兆2792億円)の赤字となっている。これは過去最大であった2004年の財政収支赤字4128億ドル(当時の為替レートで約37兆3615億円)の約1.77倍の水準であり、12月末には更に拡大すると思われる。

 経常収支が赤字である米国を、経常収支が黒字である国がファイナンスするというドル循環の観点からすれば、日本に替わって中国が米国を最もファイナンスしていることになる。中国の外貨準備残高は2兆ドルに迫る水準に増加しており、中国の実際の米国債保有高は6529億ドルよりも更に大きいと推測される。米国の財政赤字と米国債の発行残高とが今後も拡大するならば、米国のアジア戦略の機軸が日米同盟から米中G2へシフトしたとしても国際金融の観点からは不思議ではないだろう。

【「橋本首相の日本保有の米国債売却の可能性発言事件」考】

 1997.6.23日、訪米中の橋本龍太郎首相が、コロンビア大学での講演を終えた後の質疑応答でのコメントで、ジョーク交じりに、日本保有の米国債売却の可能性について触れた。質疑応答の部分は、公式の講演報告書には入っていないが、サイト「Hashimoto’s threat」で詳細なやり取りが保存されている。これを確認する。

 聴衆の一人から、次のような質問があった。「過去二十年間にわたって、アメリカのドルは、円に対して、その価値を、半分近く減価してきたという事実を考慮すれば、日本や日本人が、米国債を蓄積し続けることに、長期的な利益があると、あなたは思われますか」。これに対して、橋本総理は次のように答えた。

 「この場には、アメリカ連邦政府の職員の方はいらっしゃいませんでしょうね。本当のことを申し上げれば、われわれは、大量の米国債を売却しようとする気になったことは、幾度かあります。たとえば、ミッキー・カンターさんとやりあったときとか、アメリカが国際準備通貨としてのドルの役割を維持しようとしなかったときとかですね。 米国債を保有することは、われわれにとって唯一の選択肢ではないのです。むしろ、米国債を売却して、金を購入することも、もうひとつの選択肢なのです。でも、日本がいったんそのようなことをしようとなれば、アメリカ経済に計り知れない衝撃を与えることになりますよね。そうじゃないですか? 多くの国が、米国債を、外貨準備高として、保有しています。 これらの国は、ドルが下落しても、米国債を買い続けるでしょうし、そのことは、アメリカ経済にとって、かなりの支えになるはずです。私は、そうなることを願っているのですが、アメリカが為替レートの安定性の維持に努力し、協力するであろうことは、かなり、明白なはずです。 ですから、われわれは、米国債を売却し、外貨準備を金に変えようとしたい誘惑に、屈服することはないでしょう」。

 この「橋本首相の日本保有の米国債売却の可能性発言」により、翌日のニューヨーク市場は、1987年のブラックマンデー以来最大の192ポイントの下げ幅を記録した。その後、日本政府の否定により沈静化したが、当時、これは、単なるジョークや即席の発言(the cuff remark )ではなく、アメリカの円高誘導に対するけん制(threat)を意図したものだとの説も流れた。これにより橋本首相の命運が定まった。橋本首相は、この発言により総理の座を失ったと云われている。この一件があった後、日本保有の米国債売却の話は日米間でタブー視され続けてきた。

 この事件の問題性は、「橋本首相発言」の結果、日本の米国債購入がますます累進したことにある。当時の1997年の米国債の発行残高は5兆4075億ドルであり、そのうち1兆5千億ドルは米国の公的基金が保有しており、この分は市場に出回らないものであった。残り3兆5千億ドルのうち34.4%を日本などの海外勢が保有していて、日本は海外勢ではトップで、3兆5千億ドルの8.5%の約2900億ドルを保有していた。英国がこれに続き、あとはドイツ、中国の順番で、中国は1.5%の約500億ドルの米国債を保有していた。当時、日本政府は外貨準備高2200億ドルの大半を米国債で運用しており、日本の保有額2900億ドルの半分以上は日本政府の保有であった。政府は、米国債の保有残高を公表していないが、2003年末で4000億ドル程度と見られている。これは、1997年当時の日本政府の保有高の約38パーセント増しに当たる。 一方、近年の大量の為替介入の結果、日本の保有する米国債はさらに増えに増え続けていった。


【増え続ける米国債発行と日本の買い増し】

 一方、米国債の発行総額は、2003年7月時点で6兆7510億ドルと、1997年対比25%の伸びにとどまっている。また、このうち、市場性国債が全体の50.6%、非市場性国債が全体の49.4%を占め、このうち外国政府向けは0.2%に過ぎない。海外保有率は、1997年当時が20.6%なのに対し、2002年は18.9%にダウンしている。このように、米国債の発行総額の増加率に比し、日本政府の米国債保有額の増加率は著しく大きく、また米国債の海外保有率がダウンしている中で、日本の保有率が上昇しているといういびつさを見せている。日本政府の米国債保有率が上昇しているのは、ほかならぬ円高を是正するために日本が行う巨大化する「円売り・ドル買い」の為替介入の結果である。政府は、為替介入資金を管理する外国為替資金特別会計で、国債の一種である政府短期証券(外国為替資金証券)を発行して、金融市場から円資金を借り、日銀を通じて外国為替市場で、その円資金をドルと両替する。それで得たドルで、政府は米国債を買って運用する。いわば、米国債と、政府短期証券(外国為替資金証券)とは両建ての関係にある。世界最大の債権大国ニッポンの中身とは、実は、このような両建て関係に支えられた名のみのものなのだ。それでも米国債を買い続ける大儀名分として、政府は、両国の金利差に求めている。すなわち、政府は、日米の金利差で、累計28兆円の運用益があるとしている。

 橋本発言の1997年の為替介入実績が1兆591億円であったのに対して、2003年度の為替介入総額は、32兆8696億円に達しているという。米国債保有増加の原因がほかならぬ巨大な為替介入の結果であることが、このことから見ても分かる。この米国債保有増加の見合いで増加している外国為替資金証券の増加はどうであろう。1997.4月の外国為替資金証券の金額は約38.8兆円であり、全国債・FBの発行残高に対する比率は13.6%であった。2002年度末の発行残高は56兆5000億円であり、その後の巨額介入で、外国為替資金特別会計の借入限度枠である79兆円をオーバーすることになったため、2004年度には借り入れ限度額を140兆円に拡大した。この外国為替資金証券は短期国債であり、原則3ヶ月ものであるが、実際は借り換えの繰り返しによって長期固定化している。すなわち、巨額化する国債発行残高の増嵩の大きな要因となっているのだ。橋本総理の発言当時、そのあまりに影響の大きさに、「橋本総理は、経済オンチ」などの酷評も、一部に見られた。しかし、その後の米国債の保有動向を見ると、あながち的をえないものではなく、むしろ、この橋本発言は、現在の異常さを見通した発言だったのかも知れない。特に、9.11以後のリスクヘッジとしての金の相場の堅調などを見ると、「米国債保有のかわりに、金保有を」という発想は、正鵠を得ている。

 日本が米国債の海外保有の相当量を為替介入の結果として保有しているということは、日米経済にとって硬直した関係を生んでいる。日本がいくら為替介入の結果として円安ドル高の結果を得たとしても、これまでドル安時代に購入した日本保有の米国債についての含み損が発生する。介入の効果が無く介入をやめたとしても、日本の買いざさえを失った結果としてのドルの暴落による影響を日本政府は、米国債の暴落というかたちでまともに受けることになる。中国は、アメリカ政府との駆け引きをしっかりしているように見えるが、日本政府はアメリカ政府の言いなり。それが顕著となったのが小泉政権だった。


【米国財務省証券保有高の推移 (単位:10億ドル)】
(資料)米国財務省「Major Foreign Holders of Treasury Securities」から作成。
外国勢の米証券保有高、06年6月末で7.78兆ドル=財務省(nifty キャッシュ ロイター)
=== 備忘録(引用)===
 [ワシントン 31日 ロイター] 2007.6.1日、米財務省は、2006年6月末時点の外国勢による米証券保有高がとなり、前年同期のから13.3%増加したとを発表した。

 財務省と米連邦準備理事会(FRB)が実施した年次調査によると、外国の公的機関による米証券の保有高は2兆3010億ドルで、前年の1兆9380億ドルから増加した。

 米証券の最大保有国は日本で1兆1060億ドル、このうち長期債が8億2700万ドルだった。前年は1兆0910億ドル、そのうち長期債が8130億ドルだった。

 2位は中国で、保有高(香港とマカオを除く)は6990億ドル、このうち長期債が6780億ドル。当局が人民元高抑制を試みる中、中国の米証券保有は増加している。前年は5270億ドル、そのうち長期債が4850億ドルだった。3位は英国。
年  海外保有計  日本保有分 中国保有分 韓国保有分 NIEs保有分 海外保有分
2000 317.7 60.3 29.6
2001 1.0401 317.9 78.6 32.8 135.8
2002 1.235.6 378.1 118.4 38.0 140.7
2003 1.523.1 550.8(551.4) 159.0(157.7) 62.9 185.2
2004 1.849.3 689.9(711.8) 222.9(193.8) 69.0 198.4
2005 2.039.0 2月7020億ドル
671.0
2月1965億ドル
310.9
2月英国1710億ドル
210.3
6月6兆8640億ドル
2006 2.087.2 640.1 321.4 221.0 6月7兆7780億ドル
2007
2008
2009

【米国外貨準備高】
(単位 100万米ドル)
(資料)米国財務省「Major Foreign Holders of Treasury Securities」から作成。
 「外貨準備高(総務省統計局より)
年  海外保有計  日本保有分 中国保有分 韓国保有分 NIEs保有分
1996 1000億米ドルを突破
2000 356.021 168.857
2001 2000億米ドルを超える。
2002 462.356 292.045
2003 664.569 409.154
2004 835.229 615.548
2005 835.506 822.479(8189億米ドル)
2006 (8536億米ドル)
10月1億米ドルを上回った。
2007 6月末現在
1兆3326億米ドル(約162兆9493.76億円)
2008
2009

 中国も米ドルをかなり保有しているといわれている。

 (「二度とだまされない! 9・11詐欺の事実を暴くことは、我々の未来を作る作業だ!」)

 橋本昌雅氏の「(平成16年6月29日)小泉内閣も反対勢力も野党も、みんな積極財政論者だよね 」(http://link-21.com/masahiro)は次のように指摘している。
(2)小泉内閣の金融政策

 小泉内閣の金融政策は、日銀と連動する金融政策で、日銀が量的緩和政策をして、だぶついた資金を為替介入に投入して、輸出産業を支え景気浮揚を図るというものだ。この金融政策が意味するものとして、日銀の独立性にこだわった速水優日銀総裁から、政府と連携する福井俊彦総裁への交代の意味は大きい。 つまり、日銀が独立性を放棄したということは、金融政策は政治的になることを意味するのだ小泉内閣は、、為替介入によって輸出産業を支え株価を維持し、ドルを米国債に投入することで、ブッシュの石油戦争を支援する。つまり、日本の為替介入は、日本の輸出産業と、米国の軍需産業を支援しているのだ。 これは、国債の発行で、その恩恵を受けていた土木建設産業と同じように、米国債によって自動車を中心とする輸出産業が恩恵を受けるということで、米国債は、日本の国債の運用と基本的になんら変わりがないのである。

(3)経済論争が迷走する理由

 日本の国債残高700兆円、日本の米国債保有高73兆円、民間都市開発推進機構の保証残高不明。 つまり、小泉内閣は、均衡財政主義ではなく、まちがいなく積極財政主義である。小泉内閣を緊縮財政主義と批判するのは、高速道路や新幹線などの従来の既得権益者である自民党の反対勢力や、従来の既得権益者を批判しつつ、官僚を中心とする積極財政を目論む民主党などの野党であるが、彼等には、経済政策として対立するもの何一つない。 対立するのは既得権益の立場の違いだけである。そして、重要なポイントは、日銀の独立性が失われたことで、金融政策は政治的になり、石油をめぐる世界情勢を中心に、量的緩和や為替介入が行われていて、現在の金融政策は、日本が統制経済であることだ。

 




(私論.私見)