336―3 世界各国の宗教界の動き


2003年02月12日[毎日新聞] イラク問題:法王特使がバグダッド到着 平和的解決呼びかける

 【バグダッド福島良典】ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の特使、エシガレイ枢機卿が11日、フセイン・イラク大統領にイラク危機の平和的解決を呼びかける法王のメッセージを携えてバグダッドに到着した。

 12日にアジズ副首相らイラク政府指導部と会談するほか、滞在中にフセイン大統領と直接会談し、バチカンとしてイラクに国連査察への全面協力を求める。イラク入り後、同枢機卿は報道陣に「戦争は最後の解決策ではなく、最悪の解決策だ」と述べ、戦争回避の必要性を強調した。

 キリスト教徒のアジズ副首相は法王のイラク訪問を期待する意向を伝える見通し。法王は00年にイラク訪問を希望したが、国連制裁などの影響で実現しなかった。


2003年02月13日[毎日新聞]イラク問題:ローマ法王が平和解決目指し、宗教外交を活発化

 【バグダッド福島良典】対イラク戦争の危機が迫る中、世界のキリスト教カトリック信徒約10億人の頂点に立つローマ法王ヨハネ・パウロ2世が平和解決を目指し、宗教外交を活発化させている。バグダッドに特使を急派する一方、関係各国指導者と会談を重ね、戦争回避の必要性を訴えている。世界各地で反戦の世論を喚起し、開戦に前のめりな米国の動きに歯止めをかけたい考えだ。

 圧倒的な軍事力を誇る米国に対し、バチカン(ローマ法王庁)は軍事力、経済力を持たない。キリスト教精神の実現を外交目標に掲げ、世界平和、紛争解決、宗教対話などを追求している。ブッシュ米政権が準備を進める今回の対イラク戦争は「正義の戦争ではない」との立場だ。

 11日にバグダッド入りしたエチガライ枢機卿は法王の平和特使として知られる。これまでにもルワンダ、ユーゴスラビアなど世界各地の紛争地を訪れ、紛争当事者に対して平和解決を促してきた。西暦2000年の大聖年を記念する法王のイスラエル・パレスチナ訪問の準備も担当した。

 エチガライ枢機卿は12日、イラクのラマダン副大統領、アジズ副首相と会談し、戦争回避の重要性などを討議した。近く、フセイン大統領との直接会談に臨み、国連による大量破壊兵器査察への全面協力を促す法王のメッセージを伝達する。

 また同枢機卿は12日夜、バグダッド市内の教会でミサを主宰、「イラク、中東の平和を祈念することは(人類にとっての)重要な試金石だ」と述べ、イラクの信徒・聴衆から喝采を浴びた。イラク(人口約2300万人)はイスラム教徒が多数派だが、3大1神教の共通の父祖にあたる預言者アブラハムの生地ウルを抱え、キリスト教徒人口も約80万人を数える。

 宗教対話を推進してきた法王は、イラク攻撃がキリスト教世界とイスラム教世界の対立に発展する事態を危惧している。法王は7日、対イラク戦争不参加を明言しているドイツのフィッシャー外相とイラク危機を協議。14日にはアジズ副首相、今月下旬にはアナン国連事務総長と会談し、国連の枠組みを通じての平和解決を促す見通しだ。