333―25 【ネオコン論理に潜むトロツキズムの影】

 (最新見直し2005.6.16日)

【ネオコン論理に潜むトロツキズムの影】

 「“トロツキーの幻想”を追い続けるアメリカ・ネオコン[現代中国ライブラリィ]」等を参照し、れんだいこ風に纏める。

 現代米国小ブッシュ政権の中枢に位置しているネオコンには高イデオロギー性が認められ、それは永続革命論を展開したトロツキーの諸言説に基づいている。ネオコン初期の理論家がこぞってアメリカ在住の元トロツキストであったことは偶然ではない。れんだいこ史観に拠れば、「ネオコンとは、トロツキズムがシオンの議定書派のシオニズムと結合したものであり、そのコスモポリタン的世界革命主義が現代極右理論として生み出されているところに特質がある」ことになる。

 ネオコンは、その世界観、社会観、歴史観の中にトロツキズム的マルクス主義即ち第四インター系マルクス主義理論をそれなりに取り込んでおり、その論理構成の洗練とリアリズム的認識論を媒介させているが故に余計に厄介な主義として立ち現われている。現代マルクス主義は、この「事実」を理論的に対自化せねばならない。然るにそれが為されていない。つまり、あまりにも無能を呈しているように見える。

 さて、トロツキズムの世界同時革命的観点が何故「米・英―イスラエル連合による世界革命」なるものに転換出来たのか。ここには、世界の左派運動が主体的に問い返さねばならない思想的課題が突きつけられているように思われる。れんだいこ見解の披瀝は今は控える。

 今の時点で云える事は、1・ワンワールド的国際主義、国際グローバルスタンダードの創出、。2・表面的反戦平和主義、3・反ナチス主義、反日帝天皇制主義、4、西のホロコースト論、東の南京大虐殺事件、5・反政府、親ユダヤ主義等々は、トロツキズムーシオニズムーネオコンに共通する観点である、ということである。


 ネオコンイズムの画期性は次のことに認められる。政治をしてそれまでのように経済的利益の代弁者、力による政治支配に止まることなく、積極的に「理想」を掲げ、その「理想」に基づく世界変革に向うべしとするイデオロギーの意義を高く称揚している。ネオコンイズムにはそういう思想性が流れている。具体的には、シオンの議定書派の原理主義的シオニズムが指し示す青写真をを「理想」とし、その「理想」実現に向うための戦略戦術として「トロツキズム的永続革命論」を採用しようとしている。ネオコンイズムにはそういうイデオロギー性と戦略性に特質が認められる。

 ネオコンイズムは、米国政治史上の二大基軸即ち共和党政治と民主党政治の拮抗調整レベルを超えて、新たな世界的国際戦略に乗り出している。ネオコンイズムの国家戦略とは、アメリカをして国内政治に埋没させること無く、「米国民主主義」をお題目にしつつ世界整序再編の旗手たる地位と使命を覚醒、これに対する積極的関与を鼓吹するところにある。代表的人物は、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ウルフォウィッツ国防副長官、ファイス国防次官、ボルトン国務次官、リビー副大統領首席補佐官、エイブラムス国家安全保障会議(NSC)中東担当、パール前国防政策委員長、ウルジー元中央情報局(CIA)長官、クリストル「ウィークリー・スタンダード」誌編集長らである。

 「桃太郎の鬼退治」と見まがうようなネオコンイズムのこの論法は、トロツキズム式国際主義的革命論を踏襲している感が有る。ネオコン=トロツキスト論の象徴とされているのが、ウィリアム・クリストルである。クリストルは、次のように評されている。
 ネオコンのシンクタンクPNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)の議長をつとめ、ネオコンの中でも核心的なイデオローグの一人である。彼は学生時代に、第四インターナショナル系のトロツキスト組織SWP(社会主義労働者党)の青年組織であるYSA(青年社会主義者同盟)のメンバーだったと、自ら『トロツキストの思い出』という著書の中で語っている。

 トロツキーの「永続革命論」とは何か。簡単に言えば、ソビエト革命の勝利は、引き続くヨーロッパ革命、世界革命と連動させることにより勝利するという観点に立ち、永続革命を指針させる論である。しかし、ヨーロッパ革命は敗北し、レーニン没後のスターリン派との抗争で、トロツキーは「一国社会主義」を唱えるスターリンに追放される。ソ連を追放されたトロツキーは、第4インターを結成し、レーニン派の跡目を相続したスターリン派の第3インターに対峙する。これは別名トロツキズムとも云われる。

 アメリカのネオコンが誕生したのは、第二次大戦終了の前後だといわれる。第4インターの中から、スターリン率いるソ連批判が生まれた。トロツキーは、腐っても鯛で「労働者国家擁護」を標榜していたが、ソ連が1939年にナチス・ドイツと独ソ不可侵条約を締結したのを機に、ナチスと手を結ぶようなソ連を労働者国家として擁護することはできないとして、正統トロツキズムから分離した。

 彼らは、トロツキーを批判し、「反スターリン主義」(スターリン主義打倒)を掲げ始めた。この「反スタ」の流れの中からネオコンが生まれる。彼らは、50年代初頭の朝鮮戦争を契機とした冷戦の始まりで米ソの対立が激化すると、米帝批判よりも「反スタ」に傾斜し始め、スターリン主義打倒を呼号し始める。

 この系譜からネオコンが生まれる。その特徴は、トロツキズム式世界革命論に立脚しつつシオンの議定書派のシオニズムの青写真を遂行せんとするところにある。彼らは、自分たちは絶対的な正義だと信じており、その絶対的正義である「自由民主主義」を世界に広めなければならないと考えている。それは、かっての共産主義運動、レーニン主義、ボリシェビズム、トロツキー永続革命論、毛沢東主義のイデオロギーと似通っている。ネオコンに影響されたホワイトハウスや国防総省は、米国史上稀なるイデオロギーに染まっていると云える。

 2005.6.16日再編集 れんだいこ拝


【ネオコン論理に垣間見える露骨なユダヤ原理主義の影】
 ネオコンにはもう一つの特質がある。「トロツキズムとユダヤ・シオニズムとの政治的結合」に加えて「キリスト教右派とユダヤ教の奇妙なイデオロギー的接合」を獲得しており、これがネオコンのもう一つの特殊性であるように見える。それが実践的に企図するものは、「米国・英国―イスラエル連合による世界平定を通じてのワン・ワールド化、それに基づくグローバル・スタンダードの創出」であるように見える。

 この流れには歴史的必然性がある。ソ連邦解体により「冷戦構造」が崩壊したが、この新事態を受けて創出されたのが「ネオコン・ドクトリン」であるように思われる。「ネオコン・ドクトリン」とは、冷戦時代の敵対巨頭ソ連と中国を封じ込め、次の強敵としてイスラム圏を標的と定め、その征討=「民主化」に乗り出すことを課題としている。その為に生み出されたのが「ネオコン・ドクトリン」であるように思われる。

 興味深いことに、「ネオコン・ドクトリン」は、第二次世界大戦による日帝解体それに続く「民主化」を理想教材として「中近東の民主化」を目論んでいる節がある。してみれば、戦後日本の再建史は世界史的意義をもっていることになる。この先例が「中近東の民主化」に適合するのかどうかは保証の限りに有らずではあるが。

 今やネオコンの野望は、アメ帝の覇権を後ろ盾にして「中東侵略戦争」に勝利し、イスラエル建国の一層の成功裡な推進、これを通じての「米・英―イスラエル連合による世界革命」の達成にある、ように思われる。

 2005.6.16日再編集 れんだいこ拝




(私論.私見)