335 国連の動き、役割考


2003.2.14日[朝日新聞]安保理の米仏論争、「古さ」勝負 軍配は仏に

 14日の国連安全保障理事会のイラク問題をめぐる議論は、査察への対応をめぐって溝が広がる米欧の「サヤ当て」の場ともなった。今月初め、機密情報を開示して「独り舞台」を演じたパウエル米国務長官に代わって、主役に躍り出たのはドビルパン・フランス外相。軍事・経済の圧倒的な力を持つ超大国から「古くさい」と揶揄(やゆ)された欧州が、逆に歴史と理想を武器に一矢を報いた。

 ■総立ち

 「国連というこの殿堂において、我々は理想と良心の守護者でありたい。我々の責任と名誉にかけて、平和的な武装解除を優先すべきだ」。ドビルパン外相は安保理での意見表明で、長い歴史の革命や戦火をくぐった自国を「戦争と占領と蛮行を体験した古い国」と断って、武力行使を急ぐ米国にクギを刺した。査察継続を訴えた後、「フランスは国際社会の全員と行動し、よい世界をつくることができると信じる」と結ぶと、議場後方の各国外交官らは異例の総立ちで拍手。外交解決を訴える仏独両国の背中には、広い世界の支持がついていることを物語った瞬間だった。

 矢面に立たされたパウエル長官は、机の原稿には目も落とさず、「地球の歴史上では比較的新興の国ではあるが、最も古い民主主義国の代表だ」と切り返して演説開始。ふだんの落ち着いた語り口ではなく、早口でイラクの決議違反を繰り返したが、拍手はなかった。

 ■脇役

 脇役たちもそれぞれの役割を演じ分けた。欧州のなかにあって米国と行動をともにする英国のストロー外相。仏外相の「古い国」発言を受けて、「私は、(北フランスのノルマン人がイングランドを征服した)1066年にフランス人(ノルマンディー公)によって設立された古い国の代表」と切り出した。古くても「新しい米国」を支持する、との精いっぱいの抵抗に場内からは笑いも。

 歴史となれば、黙っていないのが中国。唐家セン外相は「中国は古代文明である。我々の祖先は平和こそが最善の選択肢と考えてきた」と和平論をぶった。仏・中とともに武力行使に慎重論を唱えるロシアのイワノフ外相は、こう発言を締めくくった。「きょうの会合がバレンタインデーに開かれたことは象徴的だ。この日は人々が婚約し、大きな希望をつなぐ日。私たちもあやかりたいものだ」。

 結局この日、イラク査察を当面続けようという意見は、理事国15カ国中12カ国に。単独行動主義の米国が孤立感も漂わせた一日だった。


2003.2.18日[日経新聞]アナン国連事務総長「戦争回避へ査察継続を」
 【ミラノ=小林明】イタリア訪問中の国連のアナン事務総長は18日、ベルルスコーニ伊首相との会談後にローマで記者会見し「イラクへの査察は続けるべきだ。戦争は不可避ではない」と強調した。「フセイン・イラク大統領は直ちに協力的な行動を起こすべきだ」とも述べた。

 イラク問題への対応で対立が表面化した欧州諸国には「欧州は政治問題だけでなく、人道問題でも中心的な役割を果たしてほしい」と結束を呼び掛けた。事務総長はこの後にローマ法王ヨハネ・パウロ二世と会談し、国連が主導して問題解決を目指すべきだとの認識で一致した。




(私論.私見)