331―13 | 対イラク戦の現段階(3) |
米英軍による対イラク戦争は、米東部時間2003.3.19日夜(日本時間20日午前)に開始される。これに至る直近の1ヶ月前よりの駆け引きを見ていくことにする。権謀術数の限りが尽くされるが、それにしても国連が奇妙な役割を果たしていることが透けて見えて来る。 2002.9.19日米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、ブッシュ政権が20日に発表する包括的な対外政策文書「米国の国家安全保障戦略」の最終草稿を入手したとして、その全文を報じた。それに拠れば、大量破壊兵器を開発している敵対国家やテロ組織への先制攻撃を容認しているほか、軍事力の圧倒的優位の維持、国際条約より自国の立場優先などの「ブッシュ・ドクトリン」を明確に打ち出している。 米国のこの断固たる決意が如何に貫徹されるのか、それがその後の経緯となる。 |
2002.11月の安保理で「決議1441」が全会一致で採択された。決議は、大量破壊兵器の廃棄と査察受け入れなどを求めた過去の決議へのイラクの違反を認定した上で「最後の機会」を与えるとしていた。「国連の査察継続とイラクの査察協力」を求め、イラクが違反する場合には制裁が待ち受けているとの恫喝をしていた。しかし、「直ちに自動的な武力行使を認めたとは解せない」(西田恒夫・外務省総合外交政策局長)との解釈が一般的であった。 かくて、国連の査察隊が派遣された。イラクは為す術も無くこれを受け入れた。これに関連する国連機関は、1・国連安全保障理事会、2・国連査察団、3・国連監視検証査察委員会(UNMOVIC、ブリクス委員長)、4・国際原子力機関(IAEA、エルバラダイ事務局長)である。 但し、国連の査察隊は、「核兵器、大量破壊兵器、化学兵器、生物兵器」の存在を証拠づけることが出来なかった。これにより、2003.2月頃より、「更なる査察継続か、武力行使か」が焦点となった。仏・独・ロが査察継続を主張し、米・英が武力行使に突入すべきと主張し対立し始めた。これを見て、帝国主義間の齟齬を見て取る者も居た。 あぁだがしかし、イラク・フセイン側は的確に見ていた。所詮茶番劇であるとしつつ、しかし仏・独・ロの動きに一縷の望みを託した。米・英はこの動きを封じ込めて行く。そして2003.3.19日に開戦となる。これにより、様々な口上をもってこの間国連査察隊が為したことはイラクの機密軍事情報の捕捉であり、米英側の別働隊であったことが判明する。 この国連にもっと立ち働いてもらおう運動が今尚支持されている。れんだいこは、その論者に告げる。国連を勝手に理想機関視するのはそれこそ勝手だが、ニューヨークに置いたままの国連が中立なんぞ有り得ると思って、マジにそういう駄弁を繰り返しているのだろうか。国連安全保障理事会が中立公正な機関であったという験しがあるなら、それを先に聞かせてくれたまえ。 付言すれば、2003.4.11日の「ロイター通信」に次のような記事が出ている。「北朝鮮、イラク戦争を教訓に国連を無視する可能性=ロシア国防相」の見出しで、ロシアのイワノフ国防相が、韓国のチョ永吉・国防相との会談後に記者団に述べた見解を披瀝している。それによれば、概要「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がイラク戦争から教訓を得た、とし、核問題について今後国連が決定を下しても北朝鮮が無視する可能性がある。核問題について今後国連が決定を下しても、ほかの先例を踏まえ北朝鮮が決定を無視する可能性を排除できない。北朝鮮は10日、北朝鮮の安全は“物理的な抑止力”を持つことでのみ確保できるということが、イラク戦争により証明された、との見方を示した」。 常識的にそうなるだろう。同じ手は何度も使えないということだ。 2003.4.10日 れんだいこ拝 |
只今情報貼り付け段階です。いずれれんだいこ流に纏めるつもりです。貼り付けられたサイトの皆様には今しばらくご協力申し上げます。ご自由にご意見聞かせてください。 |
【「国連の査察継続」を廻って、世界各国が駆け引きに興じる】 |
2003.2.14日、外務省は、米英によるイラク攻撃の可能性が強まっていることを受け、バグダッドに滞在する日本人に対し退避勧告を発令した。バグダッドを除くイラク全土には既に退避勧告を出している。
2003.2.24日クアラルンプールで非同盟諸国会議が開かれ、焦点のイラク問題が話し合われた。25日に採択される予定の最終文書案は、「一定の国が他国を『悪の枢軸』と決めつけることを拒絶する」、「テロとの戦いを口実にした加盟国や途上国に対する武力行使や脅し、政治的目的の追求を拒否する」と、米国による一極支配の世界秩序を拒否する姿勢を鮮明にしている。その上で国連憲章の順守や、問題解決への国連の役割の重要性が訴えられた。 米国に「悪の枢軸」の一つと名指しされているイランのハタミ大統領は会合で、「武力によるいかなる体制変革にも反対する。イラクの将来決定に外国の介入は不要だ」と述べた。議長を務めるマレーシアのマハティール首相は、「米国同時テロ以降、富める国の振る舞いが貧困国の怒りを買っている。一般市民を犠牲にする現代の戦争は石器時代より原始的だ」と訴えた。 2003.2.24日フライシャー米大統領報道官は24日の記者会見で、ブッシュ大統領はイラク問題を外交的に解決する「希望をほとんど抱いていない」と述べ、武力行使が不可避との見方を強く示した。 同報道官は、北朝鮮とイラクへの対応の違いについて「北朝鮮の場合、大統領は外交に基づく多国間アプローチが最も効果的と考えている」と指摘。イラクに関しては、サダム・フセイン(大統領)が外交(解決)に応じる可能性はほとんどないと言明した。 (時事通信) |
【2003.2.25日、米英スペイン3カ国が「対イラク新決議案」を提出、これを廻って紛糾する】 |
国連安全保障理事会は24日午後(日本時間25日午前)、イラク問題を協議する非公開協議を開催。米国と英国は、スペインと共同で、国連安全保障理事会に対し、対イラク武力行使容認のための新決議案を提出した。
米、英、スペインの3カ国が共同提案した新決議案は、前文11項目と本文2項目で構成。本文では、「イラクが昨年11月に採択された安保理決議1441で与えられた『最後の機会』をとらえることに失敗した」と指摘され、安保理が事態を注視するというもの。イラクの武装解除期限などは設定されておらず、本文自体はわずか3行という簡潔な内容となった。その論旨は、概要「イラクが決議1441に従わず、これまでもまた現在も義務の履行で重大な違反を犯していることを確認する。イラクに関連する諸決議の下での武装解除の諸義務を遂行する最後の機会を与えたが、イラクがこれを逸した。決議1441に基づいてイラクが提出した申告には虚偽や遺漏がある。イラクが履行義務違反を続ければ、深刻な結果に直面するだろう」。 |
【世界中に反戦デモ巻き起こる(今は名を秘す、2003/02/25)】 |
2月15日前後に全世界的規模で行なわれた反戦デモは、60年代のベトナム反戦運動時を上回る史上空前の規模となり、ロンドン二百万、ローマ百万、ベルリン五十万、マドリードでも数十万、アメリカでも一月十八日に続き、二月十五日に全米百五十の都市でデモ・集会が行われ、ニューヨークでは三十八万人というかつてない規模となりました。二月十六日には西海岸のサンフランシスコでも二十五万人のデモが行われ、この参加者数は実にサンフランシスコの人口の三分の一が参加した計算となります。 とりわけアメリカ支持を打ち出したイギリス・スペイン・イタリア、そして日本でも世論調査は対イラク戦争反対が完全に多数であり、イギリスでは世論調査で戦争を支持する率がついに一割を切り、45%が「ブッシュ米大統領をフセイン・イラク大統領に匹敵するほど世界にとって危険人物」と回答しています。 アメリカでは二月初めまでの段階で、メーン州とハワイ州の州議会をはじめ、サンフランシスコ、シカゴ、フィラデルフィア、デトロイトなどの大都市を先頭に、全米二十三州の六十六の自治体が、イラクへの武力行使に反対する決議をあげています。 さらに、イギリスの鉄道労働者は英軍への補給物資輸送を拒否してストに立ち上がり、アメリカの港湾労働者も米軍への戦争協力に反対して闘い続けるなど、労働者の反戦の動きも目立っているとのことです。 ここで触れなければならないのは「査察継続による平和的解決」論ではないかと思います。これは、世界最大の大量破壊兵器保有国=アメリカの軍事力こそが世界平和の最大の障害となっているという現実をごまかし、小国イラクを「世界平和の障害」に仕立てている宣伝に加担するものにしかなりえないということでしょう。 決して惑わされてはなりません。フランスやドイツやロシアの政治指導者を「平和主義」とするのは誤りです。『エコノミスト』2月4日号によると、湾岸戦争後、アメリカが手をつけられない状態になっている間隙をついて、ロシアはイラク南東部の西クルナ油田(推定埋蔵量二百億バレル)の権益を獲得。フランスもイラク南東部のイラン国境に近いマジュヌーン油田(二百億バレル)とビン・ウマル油田(六十億バレル)の開発権をめぐってフセイン政権と交渉を進めているし、中国はイラク中央部のアル・アダブ油田の権益獲得に成功したとのことです。イラクの石油利権をめぐる抗争が、このかんのアメリカ・イギリスと、フランス・ロシアなどとの対立の背景なのです。 そして忘れてはならないのは、NATO軍がユーゴスラビア全土に爆弾やミサイル、劣化ウラン弾を雨あられと降り注いだ99年「ユーゴ空爆」においては、シラクのフランスも、シュレーダーやフィッシャーのドイツも、これに参戦していたという歴史的事実です。 イラクでは、十年を超えた経済制裁のもとで、すでに百万人が亡くなっています。子どもたちの半分が栄養不良になり、劣化ウラン弾による被曝で小児がんや白血病や感染症が多発しているが、制裁による薬品不足でほとんどまともな治療もできない状況です。そのような状況に対して米軍は三日間で湾岸戦争以上の爆弾の雨を浴びせようというのです。 英BBCテレビによると、米英は3月中旬にイラクに攻撃の方針とのことです。ブッシュ大統領は「世界には(フセイン・イラク大統領を)平和を脅かすものと見ていない人々がいるようだが、同意はできない」と、あくまでも戦争の意志を貫く方針です。小泉は、反戦運動が「イラクに間違ったメッセージを送ることになる」と世界の民衆の意思を愚弄しています。これから3月にかけて、さらなる反戦デモが必要です。 |
【米・英・スペイン対独・仏・露が対立する】 |
2003.2.23日パウエル米国務長官が来日し、与党3幹事長と東京都内で会談。焦点となっているイラク問題で国連安保理に提案している決議案が不採択となった場合の対応について「米国は決議1441だけを軍事行動の根拠とすることはない。特に(湾岸戦争での武力行使を容認した)決議678と(同戦争の停戦決議)687を含む、すべての関連決議を根拠にする」と述べていたことが判明した。 2003.3.1日トルコ国会は、対イラク攻撃に備えた米軍の国内駐留などを求めた政府案を否決した。国内の強い反戦世論を反映した形で、再度の国会採決の可能性は残されているが、3日にも予定されていた米軍のトルコ駐留が遅れることは確実となった。 国会が最後まで米軍の国内駐留を承認しない場合、北はトルコから、南はクウェートからイラクへ侵攻する作戦を変更する必要が出るなど、米英のイラク攻撃計画への影響は避けられない事態となる。 国会定数550のうち与党・公正発展党(AKP)は363議席を占めており、政府案承認はほぼ確実視されていた。しかし反戦世論を受けて、国会討議は賛否が激しく対立。同党の約100人の議員が造反して反対に回り、投票結果は賛成264票、反対250票(棄権19票)と、賛成票が出席議員533人の過半数(267)にわずかに達せず、憲法の規定により承認は否決された。ギュル首相は2日、修正案を国会に再提出する意向を示唆した。 公正発展党は2日、今後の対応について協議を開始。4日に再開される国会で再び審議することは可能だが、米国と協議する必要もあり、法案の再提出まで時間がかかるとの見方も出ている。公正発展党は元来、イスラム主義政党であるため、その流れをくむ議員や、直接戦火の影響を被るトルコ南東部選出の議員らが政府案反対に回ったとみられる。政府案では、承認から半年間、最大で米軍6万2000人と255機の軍用機、65機のヘリコプターなどを国内に受け入れ、トルコ軍とともにトルコ・イラク国境付近に展開する予定だった。米軍にとって、トルコはイラク北部からの侵攻ルートとして重要で、米国はトルコに対し総額150億ドルにのぼる経済支援策を提示するなど、部隊の駐留を求めていた。[毎日新聞] 2003.3.2日ブッシュ米大統領は1日午前(日本時間2日未明)、週末のラジオ演説でフセイン・イラク政権との対決を「米国は決意した」と宣言し、第二次世界大戦後の日本などの例に言及しながら戦後政策まで説明した。米国は国連安保理での武力行使容認決議を求め、外交攻勢をかけているが、これに失敗した場合でも、軍事攻撃に踏み切ることが、国民向けの演説を通じて決定的となった。 演説では、大量破壊兵器開発疑惑が消えないフセイン政権の脅威を「終わらせること」に米国民の安全がかかっていると主張。戦争中の方針を述べる中で、「米国の大義」に基づき、イラク国民の生命と自由を尊重するとし、食糧や医薬品など救援物資を提供すると約束した。また、生物・化学兵器の破壊処理を主導し、イラクの国内混乱や国家分裂を防ぐとともに、「滅びゆく政権」による破壊から、天然資源を守ると明言し、石油収入を復興に活用する方針を示した。演説は戦後の構想について、フセイン政権のような独裁体制の再現は認めないことを強調。復興には「米国を含む多くの国の持続的な取り組み」が必要だと述べた。また、米国には第二次大戦後、日本とドイツの軍事占領後に「憲法と議会を残した」経験があると指摘。イラクも民主化が可能だと強調した。[毎日新聞] 2003.3.2日政府系の「アルジェムフリア(共和国)」や政権政党バース党の機関紙「アル・セオラ(革命)」によると、サダム・フセイン大統領は1日、精鋭の共和国防衛隊司令官らと会合。「(米国が侵攻してくれば)イラク国民は戦う以外に選択はない」、「我々はこれより先、神の名の下に勝利を手にする」「正義は我々の側にあり、必ず勝利する」などと述べ、差し迫る米軍の軍事攻撃に対し、士気を鼓舞した。 2003.3.3日イラクのサーディ大統領顧問(科学技術担当)は2日、バグダッドで記者会見し、1日から開始した弾道ミサイル「アルサムード2」の廃棄問題に関し、「米国が合法的に行動しないなら、なぜ廃棄を続ける必要があるのか」と述べ、米国によるイラクへの軍事攻撃が明確になった場合、廃棄作業を中止する可能性があると表明した。 大統領顧問によると、廃棄対象のミサイルは100基以上で、うち20基は製造段階にある。1日から2日間の作業で計10基を廃棄したが、すべての廃棄が終わるまでにはかなりの時間がかかるだろうと述べた。米国は湾岸地域への兵力配備を進め、対イラク武力行使は時間の問題ともみられている。大統領顧問は、開戦となった場合は「アルサムード2」を交戦手段として使用する可能性があることを示唆した。イラク当局は廃棄ミサイルの現場や写真をメディアに公表しなかったが、大統領顧問は「アルサムード2は合法的ミサイルであり、(廃棄の写真や映像は)イラク国民にはインパクトが大きい。政府は戦争を回避するという目的のために廃棄を始めた」と釈明した。 一方、大統領顧問によると、イラク当局は2日、イラクが廃棄したと主張している炭疽(たんそ)菌や神経ガスVXの廃棄量をどう証明するかなどについて、国連査察団の専門家との間で技術的な協議をしたことを明らかにした。 大統領顧問は「(今回予想される)戦争には流血というコストに加え、800億ドル(約9兆6000億円)の戦費が必要だが、大量破壊兵器の査察なら年間8000万ドル(96億円)で済む」と指摘。「私の唯一の仕事は我々が大量破壊兵器を所持していないことを証明し、(米国に)戦争へのいかなる口実も与えないことだ」と述べ、戦争回避に向けた積極姿勢を強調した。 2003年3月3日イラク上空で監視飛行を続ける米英軍機が最近、連日のように爆撃を行い、その対象を多連装ロケット砲や地対地ミサイルなど米英軍などによる対イラク攻撃部隊への脅威になる兵器に拡大していると2日、ロイター通信が伝えた。同通信は、米軍事当局はイラク上空の「飛行禁止空域」を本格進攻の準備に活用しており、現在の攻撃対象の一部は報復攻撃とは見なしにくいとの専門家の見方を紹介している。 米英両国が91年の湾岸戦争後、イラク北部のクルド人、南部のシーア派イスラム教徒に対するフセイン政権の弾圧を防ぐとの名目で設定したイラク機の「飛行禁止空域」は、北緯36度以北と同33度以南という広範囲に及ぶ。この空域で米英軍機が監視飛行中、イラク側から対空砲火やミサイル用のレーダー照射を受けた場合、報復爆撃を加えてきた。 しかし、ラムズフェルド米国防長官は昨年9月、攻撃してきた兵器よりも司令部施設や軍用飛行場などを爆撃してイラクの防空能力を弱体化させるよう数カ月前に命じていたことを公表。この時点で既に、フセイン政権打倒作戦の予備的攻撃との見方が出ていた。 2003.3.4日、国連外交筋は3日、米英両国が来週に対イラク武力行使容認決議案の採決動議に動く見通しになっていると述べた。ブリクス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長が今週末の7日に査察報告を行う予定になっているが、この報告を各国に検討してもらうため、数日、間を空ける可能性が強くなっているという。ネグロポンテ米国連大使は3日、「ブリクス委員長の報告のすぐ後に、採決の動議をすることになるだろう。短い決議案なので議論の必要もあまりないだろう」と述べた。これにからみ国連外交筋は、10日から14日までが決議動議の最大のヤマ場になるだろうと述べた。
また、4日付の米ワシントン・ポスト紙(電子版)は、米政府や外交当局者の話として、米英両国が国連安保理で来週以降もイラク問題を協議するのは無意味だとする点で一致したと伝えた。武力行使容認決議案の採択に必要な9カ国の賛同が得られないと判断した場合には、採決にこだわらない方針だという。 別の国連外交筋は、米英が現時点で、依然として決議採択に必要な安保理の9カ国の支持を得ていないことを認めた。新決議案に反対する常任理事国のフランスとロシアも、拒否権行使の可能性を否定していないという。こうした状況から、米英両国は来週、新決議採択を目指す一方で、新決議の採択いかんにかかわらず、来週以降に対イラク攻撃を決断する可能性が強まってきた。 一方、安保理の中で態度を決めていない中間派6カ国(メキシコ、チリ、パキスタン、ギニア、カメルーン、アンゴラ)を含む安保理非常任理事国10カ国は3日、調停案をまとめたカナダと話し合いを持ち、米英と仏露独の歩み寄りの道がないか妥協案を探った。 カナダは3月末まで査察を継続し、それでもイラクが査察に協力しない場合、国連加盟国の武力行使を容認するという妥協案を提示しており、中間派6カ国の動向も大きな関心を集めている。[毎日新聞] 2003.3.4日パウエル米国務長官は4日夜、ロシア公共テレビとのインタビューで、イラク問題で、国連の支持がない場合でも、「武力による武装解除(大量破壊兵器廃棄)のため同盟国を率いて行く」と述べた。国務長官は「無論、平和的手段による解決がましだ」と語ったうえで、「フセイン(イラク大統領)が(大量破壊兵器の廃棄を求めた)国連決議1441号を順守せず、国際社会に従おうとしなければ、残念ながら、我々はフセイン体制の武装解除を断固として表明することを迫られる」と述べた。米英は安保理に対イラク武力行使容認決議案を提示しているが、フランス、ドイツ、ロシアなどが強硬に反対しており、長官は安保理での協議が難航した場合、国連決議抜きの開戦もあり得るとの見解を示したものだ。
2003.3.5日ドビルパン仏、イワノフ露、フィッシャー独の3カ国外相は5日、パリで会談し、国連安保理での武力行使容認決議案の扱いをめぐり緊迫化するイラク危機への対応を協議した。その結果、3カ国は決議案に結束して反対することで一致した。国連安保理メンバーの3カ国は2月10日、開戦を急ぐ米英両国に対抗し、国連の対イラク査察の継続と強化をうたった共同宣言を発表。同月24日には査察を約4カ月間延長する構想を安保理に提案している。[毎日新聞] 2003.3.5日 イラク問題:国連が独自にフセイン後の新政権支援計画。米国が対イラク攻撃と占領の準備を進める中、国連が独自に占領後の新政権作りを支援する計画をまとめていることが4日、明らかになった。新政権作りに向けて「国連イラク支援派遣団(UNAMI)」の設立を検討しているという。消息筋によると、国連は米英軍がイラクのフセイン政権を打倒し、イラクを占領することを想定、その3カ月後をめどに民主的な新政権作りを支援するための作業を開始するという。
イラク新政権のあり方については、イラクの有力者や各国代表を集めた会議で、合意をまとめる可能性が強い。国連は現時点では「イラクの人たちが新政府の構造、法的な枠組み、統治のあり方を決める」という方針で、UNAMIの役割を「新政権作りへの全面関与」でなく「側面支援」にとどめたいと考えている。 消息筋は4日、アフガニスタンでの新政権作りを念頭に置いて計画案を作成したと述べた。すでに、ブラヒミ国連アフガニスタン特別代表を、イラク問題でも責任者に任命する案が浮上しているという。 英紙タイムズによると、計画案は約60ページにぼるもので、フレシェット国連副事務総長の指示により、6人の委員で構成するグループが約1カ月かけて作成したという。米英両国が、安保理で新決議の採択を断念して対イラク攻撃に踏み切った場合でも、国連は戦後処理に関与し、新政権作りを支援して行く意向という。 2003.3.6日イスラム教国で構成するイスラム諸国会議機構(OIC、56カ国・機構)の緊急首脳会議がカタール・ドーハで開かれた。最終声明では、イラクに国連大量破壊兵器査察への協力を求める一方、米国のイラク攻撃への反対で一致した。だが、米国の対イラク攻撃で基地提供に応じる国もあり、一致した行動は難しい情勢だ。会議ではまた、イラク代表団がクウェート代表団を口汚くののしるなど両国の和解の難しさが露呈した。 声明では「イラク危機は国連の枠組みの中で平和的に解決されるべき」としてイラクへの国連査察の継続を支持。一方、イラクへの軍事攻撃に反対し、軍事攻撃に加わることを拒否した。だが、クウェートはじめカタール、バーレーンなどは、攻撃には直接加わらないものの、イラクが査察に協力しない場合、攻撃やむなしとの立場を取り、基地提供を容認するものとみられる。 会議ではまた、クウェート代表団が先のアラブ首脳会議で議論となったフセイン大統領退陣案に言及し「国外に去るという思慮深い決断を待っている」と発言。この後、イラク代表として出席したイラク革命指導評議会のイブラヒム副議長は、クウェートが米軍を受け入れていることについて、「クウェートはイスラムの裏切り者で、米国の手先きだ」と非難。クウェート代表団が立ち上がって抗議すると、イブラヒム副議長は「黙れ、サル」とののしる騒ぎとなり、議長のハマド・カタール首長がとりなした。[毎日新聞] |
【2003.3.6日、国連査察委が査察書を提出】 |
国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)は、安保理各国に正式提示する全167ページよりなる査察書を纏め、6日までに主要国に渡された。イラクの兵器開発状況を詳細し、対イラク大量破壊兵器査察で生じた29項目の疑問点とイラクが果たすべき義務を列挙しており、今後も査察が続いた場合、査察の進み具合を計る判断基準に使われる見通しだ。
イラクは8445トンの炭そ菌を廃棄したと申告しているが、同文書によると、その裏付けとなる証拠や書類はなく、約1万リットルの炭そ菌を含む推定2万1000リットルが廃棄されているのかどうかが疑問視されているという。 安保理決議1284によって、ブリクス委員長は3月27日までに、査察の問題点を整理し、今後の作業の基準にする行動計画をまとめることになっていた。また、査察延長を求めたフランス案は、3月27日の報告締め切りを前倒しして作成するよう求め、これに応えた形になった。[毎日新聞] 2003.3.6日ブッシュ米大統領、決議なしでも攻撃、新政権樹立を明言。ブッシュ米大統領は6日夜、4カ月ぶりの公式記者会見を行った。フセイン・イラク大統領を「殺人者」「がん」と表現し、軍事攻撃に踏み切る場合はフセイン政権を打倒し新政権を樹立すると明言した。国連安保理に武力行使容認決議の採択を求める一方、決議なしでも独自に動く決意を示した。 国連査察団が7日、安保理への報告を行い、来週にも新決議の成否が決まるのを前に、強硬政策への国民の理解を求めたものだ。ブッシュ大統領は採択の見通しが不確実でも、新決議の採決を求めると述べた。武力行使に踏み切る場合には、開戦前にイラクに滞在している国連の査察官や人道支援関係者、報道関係者に出国を求める方針を示した。 また、攻撃に際しては民間人の犠牲を可能な限り少なくし、食糧や医薬品を届けると約束。大量破壊兵器を除去し、フセイン政権を転覆させて国民が和合できる新政権の樹立を助けると述べた。 (毎日新聞) 2003.3.7日 イラク問題:開戦の場合、1年で戦費は1000億ドルの見通し。対イラク開戦の戦費や戦後駐留経費などの負担は、開戦後の1年間だけでも1000億ドル(約11兆8000億円)規模に達する見通しだ。ホワイトハウスと国防総省はすでに戦費調達の補正予算要求策定に向けた最終作業に着手、ブッシュ大統領が正式に開戦を決断し次第、議会に提出する構えだ。
ただし、戦後処理を含めた負担総額は「今後5年間で最大3000〜4000億ドル以上に膨らむ」(米シンクタンク)可能性もある。国連決議を伴わず、強硬開戦した場合、負担の大部分を米国が背負い、03会計年度で過去最悪の3000億ドル超に達する見込みの米財政赤字が一層、拡大するのは必至だ。市場では、長期金利上昇など米経済への打撃を懸念する声も強まっている。 25万人を派兵し、戦闘期間が最大2カ月と想定した場合、直接の戦費分は400億ドルを想定しており、それ以上長期化した場合は1日当たり5億ドルずつ追加される見積もりという。補正予算にはほかに、食糧など人道支援にかかわる費用、終戦後のイラク占領・復興費(1年分)やトルコなどイラク周辺国への米軍駐留の見返りとしての経済支援も含まれているという。 だが、「予見不可能な要素がたくさんあり、正確な見積もりは不可能」とホワイトハウス高官が認めるように、フセイン政権打倒後の民主政権確立や戦後復興まで含めた総費用がどれだけかかるかは、米政府も把握しきれないのが実情だ。 湾岸戦争では610億ドルの戦費のうち9割の540億ドルが同盟国の分担で賄われ、日本も130億ドルを負担したが、国際社会からほとんど評価されず問題化した。今回の対イラク戦争でも米政府は治安維持と経済復興面で同盟国の分担を期待している。だが、仏露独や国際世論の反対が強い中、強硬開戦に踏み切った場合、分担する国が出るのかどうかは不透明だ。[毎日新聞] 2003.3.7日17日を最終期限の修正決議案提出 米英など 。イラク問題をめぐり7日開かれた国連安全保障理事会の外相級協議で、米国、英国、スペインの3カ国は、イラクに対し今月17日を最終期限として大量破壊兵器の完全武装解除を求める修正決議案を安保理に提出した。この要求が順守されない場合、米英は武力行使に踏み切る方針で、修正案は事実上の最後通告といえる。 3カ国は修正案を11日に採決したい意向だが、同案が否決されたり採決の見通しが立たない場合、米英が国連の枠組みを離れて17日以前に攻撃を開始する可能性も否定できない。一方、これに先立つ査察報告で国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長は「今後、数カ月間の査察が必要」と述べ、査察継続を明確に要請。国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長もイラクの核開発疑惑には否定的な見解を表明し、安保理内では査察継続を求める声が強まっている。 国連安保理に提示された米英スペインによる修正案は、先月24日にこの3国が提出した武力行使容認の新決議案に「17日」という期限を設けたもので、7日行われた各国外相演説の中でストロー英外相が説明した。 修正案は、立場を決めていない安保理の中間派6カ国を取り込むのが狙いとみられる。しかし、査察継続を支持するフランス、ロシアなどは「修正案は戦争に道を開くもの」と反対の立場を表明、安保理内の分裂はさらに深まっている。 イラクに「最後の機会」を与える修正案には、大量破壊兵器廃棄の具体的な達成目標が記されておらず、米英がイラクの努力を認めて武力行使を中止する可能性はほとんどない。 米英は11日にも採決を求める意向だが、修正案を公式に支持しているのは現在、スペインとブルガリアを含む4カ国だけで、このままでは採択に必要な9票を確保する可能性は低い。 パウエル米国務長官は、採択できなかった場合は独自判断で武力行使すると言明しており、採択の可否にかかわらず、17日以降の数日内に攻撃が始まるとの見方が強まっている。 しかし、米英が修正案の採択を断念した場合などは、17日という期限が無効になるため、開戦時期が早まる可能性も排除できない。 協議では、武力行使に反対するドビルパン仏外相が、イラク問題で首脳級安保理協議を開くことを提案したが、パウエル長官は協議後、記者団に「外相級で十分」と語り、仏提案を拒否する意向を明らかにした。 安保理は7日午後5時(日本時間8日午前7時)すぎから、非公式協議に入り、修正案などについて協議した。[毎日新聞] 2003.3.7日米、来週イラク武力行使の方針 報道官が明言。フライシャー米大統領報道官は7日、国連安保理で行われたイラク査察報告について「イラクが(大量破壊兵器の)武装解除をしていないことを意味する」などと述べ、米政府の主張が証明されたとの解釈を示した。また、米、英、スペインが同日提出した修正決議案が来週、採択に至らない場合、国連の枠外で多国籍の連合を形成し、対イラク武力行使に踏み切る方針を明言した。
報道官は定例会見で、決議案が採択されない場合の対応について「ブッシュ大統領が言った通り、国連がサダム・フセイン(イラク大統領)を武装解除しないなら、多数の同盟国の連合がそれを行う」と述べた。 報道官は「国連ではない他の集団が国際的行動の源泉となるが、それは多国籍、国際的なものだ」と、米国単独の身勝手な行動ではないことを強調した。 新決議がなくてもイラクを占領し、新政権を作る法的権限が米国にあるのかという質問に対し報道官は、ブッシュ大統領が過去の安保理諸決議や米議会の武力行使容認決議、米国憲法に基づく軍最高司令官としての役割により、その権限はあると信じていると説明した。[毎日新聞] 2003.3.8日「武装解除は武力で」米大統領がラジオ演説。ブッシュ米大統領は8日午前(日本時間9日未明)、定例の週末のラジオ演説で、7日の国連査察団報告について「サダム・フセイン(イラク大統領)がいまだに大量破壊兵器廃棄を拒否しているのは明らかだ」と非難した。さらに「彼(フセイン大統領)の武装解除は武力によって行われることになる」と述べ、イラク攻撃への決意を改めて示すとともに、国民に理解を呼び掛けた。
ブッシュ大統領は、イラク政府が国連査察団の監視の下で弾道ミサイル「アルサムード2」の廃棄を行う一方で、「我々の情報によれば、彼(フセイン大統領)は同じ型のミサイルの製造を継続するよう命令している」と指摘。査察団に対して「詐欺を続けている」と批判した。[毎日新聞] 2003.3.8日経済制裁「解除すべき」 フセイン大統領が声明。イラクのサダム・フセイン大統領は8日、イラクは国連が求めている大量破壊兵器廃棄を遵守しているとして、過去12年に及ぶ国連による経済制裁が「すべて解除されるべきだ」との声明を発表した。
声明は、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長が、7日の国連安保理報告で弾道ミサイル「アルサムード2」の廃棄を評価する姿勢を示したことなどを受けて発表したとみられる。 また、声明の中でフセイン大統領は「国連安保理は、米英を”うそつき”と弾劾すべきだ」と要求するなど、米英を強く批判した。[毎日新聞] 2003年03月08日 イラク問題:クウェート国境のフェンス破壊 国連監視団が報告
【クウェート市・井田純】国連イラク・クウェート監視団(UNIKOM)は7日、イラク・クウェート国境に設置されているフェンスが壊され、軍用車両が通れるゲートが7カ所で確認されたと発表した。米軍の対イラク攻撃準備とみられており、UNIKOM報道官は「深刻な違反だ」と語り、国連本部に事態を報告したことを明らかにした。 UNIKOMによると、ゲートの幅は10〜12メートルで、戦車なども通行可能な大きさ。電気フェンスのワイヤーも切断されていたが、現場の作業員らは、UNIKOMに対し、補修目的と述べただけで詳細は明らかにしていないという。 両国の国境線沿いは非武装地帯だが、ここ数日、現場付近では米兵の姿が頻繁に目撃され、武装も確認されている。[毎日新聞] |
【2003.3.8日、米英が、「武装解除の期限17日」とする事実上の最後通告】 |
2003.3.8日イラク問題をめぐり7日開かれた国連安全保障理事会の外相級協議で、米国、英国、スペインの3カ国は、イラクに対し今月17日を最終期限として大量破壊兵器の完全武装解除を求める修正決議案を安保理に提出した。この要求が順守されない場合、米英は武力行使に踏み切る方針で、修正案は事実上の最後通告といえる。3カ国は修正案を11日に採決したい意向だが、同案が否決されたり採決の見通しが立たない場合、米英が国連の枠組みを離れて17日以前に攻撃を開始する可能性も否定できない。一方、これに先立つ査察報告で国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長が「今後、数カ月間の査察が必要」と述べたことを踏まえ、安保理内では仏露独を中心に査察継続を求める声が強まっている。 【ニューヨーク佐藤由紀】国連安保理に提示された米英スペインによる修正案は、先月24日にこの3国が提出した武力行使容認の新決議案に「17日」という期限を設けたもので、7日行われた各国外相演説の中でストロー英外相が説明した。 修正案は、立場を決めていない安保理の中間派6カ国(ミドル6)を取り込むのが狙いとみられる。しかし、査察継続を支持するフランス、ロシアなどは「修正案は戦争に道を開くもの」と反対の立場を表明、安保理内の分裂はさらに深まっている。 イラクに「最後の機会」を与える修正案は、17日までに大量破壊兵器や関連物質を査察団に引き渡し、過去の廃棄に関する情報を開示するよう求めている。イラク側が順守したかどうかは安保理が判定するが、米英がイラクの対応に満足して武力行使中止に傾く可能性はほとんどない。 ネグロポンテ米国連大使によると、採決は11日にも行われる。修正案を公式に支持しているのは現在、スペインとブルガリアを含む4カ国だけで、現時点では採択に必要な9票を確保する見通しは立っていない。 パウエル米国務長官は、採択できなかった場合は独自判断で武力行使すると言明しており、採択の可否にかかわらず、17日以降の数日内に攻撃が始まるとの見方が強まっている。 しかし、米英が修正案の採択を断念した場合などは、17日という期限が無効になるため、開戦時期が早まる可能性も排除できない。 協議では、武力行使に反対するドビルパン仏外相が、イラク問題で首脳級安保理協議を開くことを提案したが、パウエル長官は協議後、記者団に「外相級で十分」と語り、仏提案を拒否する意向を明らかにした。 安保理は7日午後5時(日本時間8日午前7時)過ぎから大使級の非公式協議を開き、修正案などについて協議したが、進展はなく、10日に再び討議することで一致した。 【修正決議案骨子】 一、イラクは国連決議を順守しなかった。 一、国際平和と安全保障を回復すると決意した。一、イラクに必要な決定を行うよう求める。 一、3月17日までに決議への無条件の協力を示し、すべての武器や情報を国連に渡さなければ、イラクが最後の機会を逃したと決定する。 [毎日新聞3月8日] ( 2003-03-08-14:29 ) 2003年03月09日 イラク問題:米英、開戦72時間での首都攻略を計画 英紙報道
9日付の英紙サンデー・テレグラフは、米英軍がイラク攻撃開始から72時間で首都攻略を目指す電撃作戦を計画しており、開戦の数時間後に空挺(くうてい)部隊がバグダッドの主要空港であるサダム国際空港を急襲する準備をしていると報じた。 同紙によると、戦争は巡航ミサイルの波状攻撃で始まり、続いて爆撃機や攻撃機を投入、イラクの指揮中枢を破壊する。地上では南北から歩兵部隊などが進撃を始める。 開戦から数時間後、米軍機がサダム国際空港の防空施設やイラク軍部隊を精密誘導爆弾などで攻撃し、米英軍の空挺部隊が低空飛行する航空機から降下する作戦という。(ロンドン共同)[毎日新聞] カーター元大統領、イラク戦は「文明国史上空前の愚行」。ノーベル平和賞を昨年受賞したカーター元米大統領は、9日付の米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、ブッシュ政権が準備を進めている対イラク武力行使を、「文明国の歴史の中でほとんど前例のない」誤った軍事的、外交的行為に踏み切ろうとしていると厳しく批判した。 カーター氏は文中、自らの大統領在任中(77年〜81年)に様々な国際的危機があり、「正義の戦争」の原則はよく承知していると述べ、「目下のイラクへの単独行動主義的な攻撃が、その基準に見合っていないのは明らかだ」と主張した。 戦争が正義であるための条件として(1)すべての非暴力的な方策が尽きた後の最後の手段であること(2)戦闘員と非戦闘員が区別されること(3)自国が受けた被害に釣り合うこと(4)国連などの認めた法的な裏付けがあること、などを列挙し、イラク戦はどれも満たさないと考えを述べている。 そのうえで同氏は、イラク周辺に展開している米軍に関して、「戦争を最後の選択としつつ、イラクに安保理決議を順守させるための圧力として用いるなら、平和と正義のチャンピオン(擁護者)としての米国の地位を高めることになる」と提案している。[朝日新聞] 3月11日 15:04イラク問題:国連で公開討論 日本など50カ国以上が参加
【ニューヨーク佐藤由紀】国連安保理は10日、マレーシアなど非同盟諸国の提案により、11日午後3時(日本時間12日午前5時)から安保理構成国以外も参加するイラク問題の公開討論を行うことで合意した。参加希望国は日本を含めて50カ国を超える見通しで、2日間にわたって開かれる可能性が強い。 また、米国は10日の非公式協議で、イラクが生物・化学兵器を搭載可能な無人飛行機などを所有していたと主張。7日の査察追加報告でこれに言及しなかった国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長を追及した。 これに対し委員長は、無人機の飛行距離が国連による規制(150キロ以内)を超えるか、生物・化学兵器の運搬に関係しているかを調べていると述べ、違反かどうかの見解は保留した。 また、イラクの大量破壊兵器廃棄に関する優先課題などを記した査察作業計画を来週、安保理に提出する用意があることを明らかにした。同計画は、査察続行を求めるフランスやロシアなどが早期提出を求めていた。 [毎日新聞3月11日] ( 2003-03-11-15:00 ) 3月12日 10:25イラク問題:国連で各国が公開討論 武力行使反対の声相次ぐ
【ニューヨーク佐藤由紀】国連安全保障理事会は11日、対イラク武力行使をめぐり公開討論を開き、各国が演説を開始した。非同盟諸国会議の要請を受け、非理事国の43カ国・組織が演説する予定。初日に発言した28カ国・組織のうちクウェート、オーストラリア、韓国、シンガポール、アルバニアの各国を除く、23カ国・組織の代表が武力行使を非難し、国際世論の反発の大きさを示した。日本は、12日午後3時(日本時間13日午前5時)すぎから始まる2日目討論の最初に発言する。 討論会の最初に演説したイラクのドゥーリ国連大使は、イラクの大量破壊兵器開発の疑惑について「イラクが積極的に協力していることは査察で明白となった。米国の目的は石油と中東の支配だ」と述べた。 カナダ代表は、イラクの平和的武装解除にはベンチマーク(判断基準)と期限が必要だと主張し、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長にイラクが果たすべき義務と日程を盛り込んだ「作業計画」の早期提出を求め、その計画をもとに3週間ずつ査察を延長していくとの妥協案を提出した。 また南アフリカ代表は「戦争は不必要なだけでなく犠牲を生み地域を不安定化する」と懸念を表明した。このほかアラブ諸国、非同盟諸国が査察の継続強化と平和的解決を訴えた。 一方、オーストラリア代表は、イラクは平和的解決の最後の機会を逃したと指摘、「行動を遅らせることはテロを助長する」と新決議を支持した。シンガポールも「安保理が新決議を採択するよう求める」と述べた。韓国は「イラクの協力は不十分であり、安保理は一致してこの違反に対し行動を取るべきだ」と発言した。 [毎日新聞3月12日] ( 2003-03-12-10:21 ) 2003年03月13日対イラク:英、「6項目要求」を提示 米との調整難航
【ニューヨーク佐藤由紀】英国政府は12日、対イラク攻撃を回避するための6項目要求をまとめた文書を国連安全保障理事会各国に提示した。英国はイラク政府が本気で大量破壊兵器廃棄を受け入れる意思があるかないかを確認する基準にしたいと説明、イラクが6項目を履行する期限は、安保理各国の交渉にゆだねるとした。しかし12日夜開かれた安保理の非公式協議で、米国は「17日が修正決議案の正式な期限だ」と語り、期限の延長には応じない姿勢を示した模様で、調整は難航している。 英政府の提案は、先に米英スペインが出した武力行使容認決議に付ける形をとっており、イラク政府が要求を満たした場合は査察を継続する。満たさない場合は、米英などの武力行使が正当化されることになる。 文書には、要求の受け入れを求める期限は書き込まれていないが、英国は3月を越えることはないと表明している。 文書は、サダム・フセイン大統領にテレビを通じて大量破壊兵器の廃棄を宣言するよう求めている。そのほかに▽30人以上のイラク人科学者の国外での聴取を認める▽炭疽(たんそ)菌を提出する▽ミサイル「アルサムード2」の全廃▽移動式の化学・生物兵器生産施設を返上――などを求めている。 英国はこの文書により、新決議に対する態度を表明していない中間派6カ国(パキスタン、チリ、メキシコ、アンゴラ、カメルーン、ギニア)を説得することを狙っている。 パキスタンのアクラム国連大使は協議後、「会議は議論より質問に終始した。本国政府と相談する」と語り、明確な立場は表明しなかった。 英国は米国、スペインとともに、対イラク武力行使新決議案をまとめ、安保理に提出している。イラク政府に17日までに大量破壊兵器の完全廃棄を受け入れるよう求めているが、他の安保理構成国から期限の延期を求める声が出ていた。 このため英国が、受け入れ期限を10日程度延長する案をまとめるとともに、イラクの武装解除を確認するための基準作りを進めていた。 【英6項目要求骨子】 一、フセイン大統領がイラク国営テレビなどを通じ、アラビア語で大量破壊兵器の廃棄を宣言する。 一、大量破壊兵器開発に携わった科学者30人とその家族をキプロスで査察団の聴取を受けさせる。 一、保有する炭疽菌を引き渡し、廃棄の説明をする。 一、アルサムード2ミサイルと部品の廃棄を完結する。 一、生物・化学兵器を散布できる無人飛行機、遠隔操作できる有人飛行機について説明する。 一、移動式の生物・化学物質生産設備を破壊のため引き渡す。 [毎日新聞3月13日] ( 2003-03-13-15:57 ) 2003年03月13日 対イラク:米、多数派工作で進展? 9カ国の賛成確保に接近
【ワシントン中島哲夫】米国務省のバウチャー報道官は12日、対イラク武力行使を容認する国連安保理決議について賛否を明らかにしてない中間派6カ国に対する説得工作で、「進展があることを否定しない」と述べた。米英のメディアは米政府高官の話として、アフリカのアンゴラ、カメルーン、ギニアの3国が好意的な反応を示していると報じており、決議採択に必要な9カ国の賛成確保に接近しつつあるとみられる。 バウチャー報道官は「進展」の具体的内容を語らず、「(票固めが)確実になったという誤解は与えたくない」と慎重な姿勢も示した。また、ブッシュ大統領とパウエル国務長官が引き続き精力的な電話外交を続けているものの、決議をめぐるあらゆる状況は「極めて流動的」だと述べた。 一方、フライシャー米大統領報道官は、ブッシュ大統領が12日午前中だけでもプーチン・ロシア大統領、ムシャラフ・パキスタン大統領ら4カ国の首脳と電話したと発表した。これまでの電話外交では「米国の立場を支持しない諸国」に対して「落胆」の意を伝えたとも述べた。両国関係に悪影響を与える可能性を暗示して圧力をかけているとみられる。 同報道官は、決議採択の見通しについて「結果は採決の日に分かる」と、現状での評価を避けた。しかし米政府は採決で9カ国以上が賛成した場合、フランスなどが拒否権を行使して決議案が葬り去られても武力行使への踏み台にする方針とみられる。 フライシャー報道官は同日、15理事国による採決は「過半数は8票、(採決に必要な)多数は9票」と述べ、採決で9票に届かなくとも「道義的な勝利」を得たと主張する可能性がある。 現時点で確実な決議案賛成派は米国、英国、スペイン、ブルガリアの4カ国。拒否権行使の可能性を含めて反対派は仏、露、中、独、シリアの5カ国。中間派はアフリカの3カ国のほか、パキスタン、チリ、メキシコとなっている。 [毎日新聞3月13日] ( 2003-03-13-12:43 ) 3月14日 13:31対イラク:米、露骨に反仏攻勢 国務長官ら批判展開
【ワシントン中島哲夫】米政府高官は13日、対イラク武力行使容認決議案に拒否権を行使する方針をますます鮮明にしているフランスを相次いで非難、露骨な批判攻勢に出た。説得をあきらめ、安保理不一致の最大の責任はフランスにあると主張し、新決議なしのイラク攻撃を正当化するのではないかという印象が広がっている。 パウエル米国務長官はこの日、下院の公聴会で証言し、英国が安保理に提示した戦争回避のための対イラク6項目要求を「ある常任理事国」がイラクよりも早く即座に拒否したと指摘、名指しこそ避けたものの仏政府への強い不満を明示した。 長官はこの直後に、武力行使容認決議案の採決を求めず取り下げるという選択肢があることに言及したため、「フランスの拒否権」が新決議なしの軍事攻撃の主因になるという判断を暗示する形になり、非難のニュアンスが一層強まった。 ホワイトハウスでの定例記者会見に臨んだフライシャー大統領報道官の発言はもっと激しかった。英国の6項目要求について、ドビルパン仏外相がイラクよりも早く拒否した経緯に触れながら、「(これは)常軌を逸した拒否権行使でなくて何だろうか?」と指摘。 また、仏政府が「最後通告」を伴う決議案に対し拒否権行使の方針を明言していることについて、「矛盾している。最後通告の論理を拒否するなら、サダム・フセイン(イラク大統領)の武装解除は不可能だ。大量破壊兵器による武装強化を許すものだ」などと非難を繰り返した。 フライシャー報道官は「長年の同盟国を無用と見るのか」との質問に「まったく違う」と否定したが、異例の同盟国批判が際立った。 [毎日新聞3月14日] ( 2003-03-14-13:28 ) 3月14日 14:58イラク問題:「反仏運動」は米国民の権利 米大統領報道官
【ワシントン河野俊史】国連安保理での対立をめぐって米国各地でフランス・ワインのボイコットなど「反仏運動」が起きていることについて、フライシャー米大統領報道官は13日、「米国民の権利だ」と述べ、ホワイトハウスとしてこれを容認する姿勢を示した。 国連安保理で協議が続く対イラク武力行使容認決議をめぐって米仏間の亀裂が深まる中で、米国内ではフランスパンやシャンペンを大型の米国車で踏み潰すイベントが開かれたり、一部のレストランがフレンチ・フライ(ポテトフライ)を「フリーダム・フライ」と改名するなど、あからさまなフランス・バッシングが広がっている。 同日の記者会見でホワイトハウスとしての見解を求められたフライシャー報道官は「米国民による自発的なもので、彼らの権利だ」と擁護。「欧州の人々が(反戦)デモをするのと同じ」と皮肉を込めて付け加えた。 [毎日新聞3月14日] ( 2003-03-14-14:55 ) 2003.3.15日対イラク:米英スペイン首脳会談で結束図る 協力維持確認へ。ブッシュ米大統領は14日、2日後にポルトガル領アゾレス諸島でブレア英首相、アスナール・スペイン首相と会談する予定を報道官に公表させた後、中東和平実現に向けた道筋「ロードマップ」の提示方針を自ら発表した。いずれも対イラク武力行使をにらんだ「地ならし」の意味が強い。
ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)はアゾレス諸島での会談について、イラク問題への国連安保理の対応を決着させる道を考えるものだと指摘。フライシャー大統領報道官は「この会談は(外交努力の)最終段階を進む大統領の決意を示すものだ」と述べた。 最重要課題の一つは、3国が安保理に共同提案している武力行使容認の修正決議案が、採択に必要なだけの支持を確保できず、しかもフランスなどが拒否権行使の構えを明示している事態への対応だ。イラクに対する「最後通告」的な期限設定をどこまで先送りするか、他の妥協策も打ち出すかなどが焦点となる。 もう一つは、決議案が否決されるか、または採択不可能とみて取り下げる場合の協力維持の問題だ。米国は決議なしでも軍事攻撃に踏み切る方針だが、例えば英国では同調への世論の反対が極めて強く、ブレア政権の危機を招く。 米国としては強固な同盟国である英、スペインの離脱を避けたいのは当然で、ブッシュ大統領が米国より欧州に近いアゾレス諸島に「出向く」形をとったのは、必要な配慮だったと言える。 一方、中東和平の「ロードマップ」提示方針もイラク問題と深い関係がある。アラブ世界にはそもそも、米国のイスラエル寄りの中東政策に強い不満がある。イラク攻撃に踏み切った場合、フセイン政権はこの不満に訴えてアラブ諸国を米国から離反させようと試みる可能性が強い。米政府はあらかじめ、パレスチナ問題の解決に一歩を進めておく必要があった。 またブッシュ大統領の声明発表直後、ブレア首相も記者会見して和平実現に協力する姿勢を強調した。首相は今年初め、大統領が昨年6月に打ち出したパレスチナ暫定国家樹立などの和平構想に具体的進展がないことを批判していた。 ブレア首相の主張を受け入れたという形をブッシュ大統領は作ったことになる。これで首相がイラク攻撃に協力しやすくなるなら、という思惑があるのは当然だ。[毎日新聞] 2003.3.15日米議員:イラクのウラン購入文書偽造疑惑でFBIに調査要求。イラクがニジェールからウランを購入しようとしたことを示す文書が偽造文書だったとの疑惑が米国で問題化し、民主党のロックフェラー上院議員は14日、米連邦捜査局(FBI)に事実関係の調査を求める書簡を提出した。米政府が「イラクが核開発を続けていることを示す証拠」としていた文書だけに、偽造文書と断定されると、国内外に波紋を広げそうだ。
文書は昨年12月、イラクの核開発の証拠として国連に提出された。イラクが天然ウラン産地のニジェールからウランを購入しようとしていたとの内容で、米国務省は「核開発の証拠」と主張した。ところが、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は今月7日、国連での報告で、「さまざまな文書を精査したところ、疑惑には根拠がないとの結論に達した」と述べ、文書偽造の疑惑が浮上した。 米メディアの報道によると、ニジェール政府の公式文書の形式を取っているものの、レターヘッドや署名が公式文書とは違っており、偽造されたことは明確だという。ロックフェラー議員はFBIに対し、文書の出所、偽造の動機、情報機関が偽造を見破れなかった理由などを調査するよう求めた。同議員は「文書偽造がイラク問題での世論や国際政策を操作するための、うその宣伝活動の一環である可能性がある」と指摘している。 [毎日新聞] |
【2003.3.8日、米英が、「武装解除の期限17日」とする事実上の最後通告】 |
<イラク問題>シラク仏大統領 決議案で拒否権行使方針を明言 3月11日 12:34イラク問題:仏の拒否権行使方針 背景に多極化志向と反戦運動
【パリ福島良典】シラク仏大統領は10日、国連安保理で拒否権を行使してでも、対イラク武力行使容認決議案の否決を目指す対米強硬姿勢を打ち出した。国際世論の反戦機運を追い風に、米国との全面対決による関係悪化という危険を冒してでも、国際法上の正当性を欠く軍事行動には反対を貫く道を選んだ形だ。 イラク危機の平和解決を主張するシラク大統領は10日夜のインタビューで、「可能性が0.1%、0.00001%だとしても、イラク問題を戦争なしで解決するために万策を尽くそうという私の決意が鈍ることはない」と言い切った。 だが、フランスの立場は隣国ドイツの平和主義とは色彩が異なる。シラク大統領は「フランスは戦争を頭から拒否するわけではない。だが、戦争は最後の手段だ」と説明した。フランスの論理は(1)成果を挙げている査察の継続(2)査察が暗礁に乗り上げた場合にのみ武力行使を検討――という2段構えになっている。 フランスがイラク危機を重視するのは、国際社会がいかに紛争に対処するかを左右する試金石だと認識しているためだ。シラク大統領は米国一極ではない「多極的な世界」の構築を目指し、ブッシュ米政権の独走に歯止めをかけたい考えだ。 今回、シラク大統領の強気の背景にフランスを始めとする世界各国での反戦世論の高まりがあるのも事実だ。各地で反戦デモは熱を帯び、2月末の世論調査によると、仏国民の70%が「フランスは拒否権を行使すべきだ」と回答している。 一方でシラク大統領は「ポスト・イラク危機」を見越し、対米関係の悪化や、欧州の分裂を最小限に防ぐための布石を打っている。インタビューでシラク氏は価値観を共有する米仏間の絆を強調。イラクの戦後復興に積極的にかかわる姿勢を示し、「欧州は危機を経て強くなってきた」と指摘、欧州分裂の修復に意欲をのぞかせている。 [毎日新聞3月11日] ( 2003-03-11-12:31 ) 2003.3.15日独首相:「イラクの武装解除は平和的解決が可能、査察継続を」。ドイツのシュレーダー首相は14日、議会で施政方針演説を行い「イラクの武装解除は平和的解決が可能であり、国連による査察は継続されるべきだ」と述べた。 首相は「仏、露、中国や安保理の多数派各国と共に、我々はかつてないほど平和的解決を確信している。国連査察はイラク側の協力を引き出す重要な役割を果しており、我々が戦争ではなく平和の論理を主張する根拠となっている」と語った。[毎日新聞] |