331―17 対イラク戦勃発(2)

 対イラク戦は開戦4日間の手ごたえで、イラクのフセイン政権が分解するよりも求心力を強めていることが判明した。このことは、当初の目論見であった短期決戦決着という触れ込みが崩れたことを意味している。これを追跡する。


三日目が過ぎ、4日目の朝を迎えた
 2003.3.24日(日本時間25日未明)パウエル米国務長官は、全米向けのテレビ番組でインタビューに応じ「テレビゲームじゃない。これは戦争だ。これが本当の戦争だ」、「どんな犠牲も私たちには、そして遺族にはつらいことだが、現段階での犠牲は軽い」。と語り、今後も予想される米兵の犠牲に対する国民の覚悟を求めた。を担わされたようだ。
 首都侵攻を目指す米英軍はイラク時間の24日夜、バグダッド南約80キロのカルバラ周辺で、首都周辺の防衛にあたる「メディナ機甲師団」など精鋭部隊「共和国防衛隊」との本格的な地上戦に突入する前哨戦として、上空から激しい攻撃を加えた。一方、バグダッドでも大規模な空爆が行われ、イラク空軍ビルなどが破壊された。クルド人自治区に近い北部では空爆により多数の死傷者が出ている模様。南部ではイラク側の反撃がなお続いている。
 イラクのアジズ副首相は同日夜の記者会見で、「フセイン大統領以下、指導部は全員健在であり、全軍を指揮している」と語り、同軍の指揮系統が失われているとの米英軍の指摘を真っ向から否定した。
◇<メディナ機甲師団> イラクの精鋭部隊で、首都周辺の防衛にあたる共和国防衛隊(7万〜10万人)を構成する6〜7師団の一つ。共和国防衛隊は80年代のイラン・イラク戦争末期に飛躍的に装備が改善され、旧ソ連製のT72戦車などで装備した機甲師団と、機械化歩兵師団に分かれている。訓練の度合いやフセイン大統領への忠誠心も、正規軍より高いとされる。メディナ機甲師団は90年のクウェート侵攻の主力になり、翌年の湾岸戦争でも多国籍軍と戦った。
 ブッシュ米大統領は24日、イラク戦争の戦費調達のため、総額747億ドル(約9兆円)規模の2003会計年度補正予算案を米議会指導部に提案した。大統領は4月の議会休会前の成立を求める構えだ。ブッシュ政権が考えている戦費規模が明らかになったのは初めて。

 米政府高官によると、国防総省の追加予算に約630億ドル(約7兆6000億円)を要求し、うち約530億ドルを派兵費用など「軍事作戦費」とした。さらにイラクの当面の戦後復興費35億ドルやイスラエルやヨルダンなど周辺国への支援50億ドル、米国内のテロ対策費などが計上された。

 米政府筋によると、戦闘期間を「30日間」と想定して予算案を作成した。米中枢同時テロの発生後と同様、財源確保のため戦時国債発行が検討される可能性がある。戦争が予想以上に長引くと、追加の予算措置がさらに必要となる局面もありそうだ。米国の財政収支は2003会計年度(02年10月−03年9月)に3000億ドル以上の過去最大の赤字を計上する見込みで、イラク戦の負担が財政赤字を一段と膨らませることになる。米上院では大統領が景気浮揚のため提案している大型減税の規模を1000億ドル圧縮して減額分を戦費に充てる案が浮上している。大統領は戦時の緊急性を強調、来月11日までに予算承認を求めているが、財政悪化懸念で審議は難航も予想される。(共同)


 2003.3.24日小泉純一郎首相は24日、イラク国営放送を通じて国民に徹底抗戦を呼びかけたフセイン大統領の姿勢について、「もともと無謀な戦争だと私は思っている。国連の決議に十分協力すれば戦争にならなかった。早く終わるためにも徹底抗戦というのはよくない」と批判した。

 また、演説を伝えた国営放送の報道内容について「イラクには報道の自由がない。どこを信じていいのか、難しいが、やはり日本に報道されている(米国などの)報道の方が信ぴょう性が高いでしょう」と疑問を示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。[毎日新聞]


 2003.3.24日国連のアナン事務総長は、イラクのラマダン副大統領から「米英の言いなりになってイラクの植民地化に手を貸している」などと厳しく非難されたことについて、「イラクはまさに戦争状態にあり、ラマダン氏や国民の憤りは理解できる」と述べるとともに、人道援助活動を一刻も早く再開させたい意向を記者団に強調した。

 人道援助については「戦争状態の中では占領した(米英)側に責任があるが、事態の安定後には国連がイラク国民を援助することが可能だ」と語った。戦後の復興や人道援助をめぐっては、米英による占領行政の是非などが今後の国連安全保障理事会の議題になる見通しだ。アナン氏の発言は国連が“戦後”に主体的にかかわる意向を示したと見られている。

 さらにイラク側からの「植民地化の手先」という非難について、「国連も私自身も“植民地の高等弁務官”になる意図などない」と述べ、「母国(ガーナ)がかつて植民地だった私が、植民地主義者のそしりを受けるのは皮肉なことだ」と、険しい表情で語った。


 2003.3.24日フライシャー米大統領報道官は24日、ブッシュ大統領がロシアのプーチン大統領と電話会談し、ロシア企業がイラクに夜間戦闘用の暗視ゴーグルや全地球測位システム(GPS)の妨害装置、対戦車ミサイルなどを提供してきた疑惑について「懸念」を伝えたと明らかにした。強い抗議の意味を持つもので、米露両国は国連安保理の武力行使容認決議をめぐって対立したのに続き、イラク戦争の最中に摩擦を表面化させた。

 米CBSテレビは24日、米政府当局者の話として、イラクのフセイン政権が共和国防衛隊に対し、米軍がバグダッド周辺に進攻した場合の化学兵器の使用を許可したと報じた。
 「 イスラエル製兵器が主役(東京新聞3/24)2003.3.24日付の有力紙「エルサレムポスト」は、米英軍のイラク攻撃では、イスラエル製兵器が多用されているとする同国製兵器の使用状況を伝えるAP通信の記事を掲載し、その優位性を伝えた。英国から連日のように出撃しているB52爆撃機には、イスラエルの国営軍需企業が開発した空対地ミサイル「ポパイ」が搭載可能。イラク南部から進撃する米海兵隊が使う無人偵察機「ハンター」「パイオニア」は、対戦車攻撃も可能なハイテク兵器で、これもイスラエル製だ。

 ほかにも、戦闘機の照準機や燃料タンクまで、同国製兵器は、米英軍に深く浸透しており、AP通信は「イスラエルで開発された技術抜きに、現代の軍隊を運用するのは難しい」とまで指摘している。イラクのサブリ外相は3.23日、「バグダッドでイスラエルのミサイルが発見された。同国が参戦している」と非難している。


 2003.3.25日米英軍は首都バグダッドに向け進撃を続けた。早ければ同日中にもバグダッドをめぐって、イラクの精鋭部隊との戦闘が本格化する見通しだ。だが、米英軍がほぼ掌握したと伝えられた南部の大都市バスラで主力部隊の英軍が激しいイラク側の抵抗に遭い後退するなど、各地で苦戦している。


 「無血入城」の希望遠のく。また、米英軍に対するバスラの一般市民の感情も歓迎されるほどではないという情報も流れ、ブッシュ米大統領が主張する「米英軍は解放軍として歓迎される」という予想も実現があやしくなっている。
 2003.3.25日国際原子力機関(IAEA)高官は25日、米国が主張する「イラクがニジェールからウラン500トンを輸入しようとした」とする証拠文書について、「(同機関の)数時間の調査で偽造と判明した」と明らかにし、「イラクの核開発計画の再開は確認されていない」との立場を確認した。

 ロイター通信によると、IAEAのイラク核査察チームのボット団長(フランス人)は仏語で書かれた同文書を入手後、(1)既に4年前から無効となっている旧憲法の権限下での大統領からの手紙の形となっていた(2)大統領の署名が明らかに偽物と分かる(3)「00年10月からのウラン輸入」とする文書にある署名の外相は89年に退任した外相のものだった(4)文書の用紙は現存しない99年以前の「最高軍事評議会」の題字を使っていた−−などの疑問点を数時間で発見した。

 その後、米国人を含む専門家による裏付け調査の結果、偽造文書と断定したという。

 IAEAは米英両国にイラクのニジェールからのウラン輸入での他の証拠を求めたが返答はなく、エルバラダイ事務局長は3月初め、国連安保理で「ニジェールからの輸入の証拠は偽物で、過去3カ月の査察の結果、イラクが核開発計画を再開した証拠は見当たらなかった」と報告した。

 これに対し、チェイニー米副大統領は先週も、「我々はフセイン大統領が間違いなく核兵器を得ようとしたことを知っており、核兵器開発計画を再開したと信じている」と述べ、エルバラダイ報告を批判している。[毎日新聞]


 2003.3.26日ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)が25日、国連本部でアナン事務総長と会談し、イラクの戦後処理問題について意見交換した。ライス補佐官は復興にかかる時間の見通しや国連の果たすべき役割に言及した模様だが、詳細は明らかにしなかった。

 アナン事務総長は「イラクに対するいかなる人道支援も安保理決議によって決められるべきだ」と述べ、米国に国連安保理で決議採択を目指すよう改めて申し入れた。同時に「それまでは、イラクを支配する米国とその同盟国が、人道支援を行なうべきだ」とも述べ、米英などによるイラク占領を既成事実として容認した。


 2003.3.25日サウジアラビアのサウド外相は25日、首都リヤドで記者会見し、同国が米国とイラクに戦闘停止を呼びかける和平案を提示したことを明らかにした。サウド外相は「我々は双方に提案を行い、前向きな回答を待っている」と述べ、米国とイラクが提案に応じることに期待感を示した。和平案の内容には一切、言及しなかった。 AFP通信などによると、サウド外相はパウエル米国務長官に電話で和平案を伝えた。同外相は24日にカイロで開かれたアラブ連盟の外相会議に出席しており、他のアラブ諸国と事態収拾策を協議したうえで、米国とイラクに和平案を提示した可能性がある。[毎日新聞]
 2003.3.25日カタールの衛星テレビ、アルジャジーラは25日、米英軍がイラク南部のバスラでクラスター爆弾を投下したと報じた。同テレビの特派員が爆弾の破片を見せ、24日夜の空爆で使われたと述べた。バスラの東部と西部に投下された模様だという。米海軍は、クラスター爆弾使用認めた。

 
米海軍は25日、イラク空爆のためペルシャ湾に展開中の空母キティホークの艦載機が同日、対戦車用兵器「クラスター爆弾」を使用したことを明らかにした。同爆弾は非人道的兵器として対人地雷同様、規制を求める動きがある。

 米海軍広報によると、FA18戦闘攻撃機が同日正午から午後2時半の間、バグダッドの南、カルバラで、イラク軍のミサイル補給車両に同爆弾2個を投下した。開戦後、同空母艦載機からの投下は初めてという。イラク軍の損害などについては明らかにしていない。

 クラスター爆弾は重さ約550ポンド、長さ約2メートル。投下後、空中で上下にふたが開き、中から長さ20センチほどの小型爆弾約250個が広範囲に飛び出る仕組み。小型爆弾の先は弓矢のようにとがっており、戦車の装甲を貫通してから爆発する。不発弾が多く残り、長期にわたり危険を及ぼすとされる。米海軍も、歩兵のみの部隊を狙った投下はしない方針をとっている。


 2003.3.25日イスラム法学者グループが米英への抵抗呼びかけ。イラクのイスラム教シーア派聖地ナジャフのイスラム法学者グループは25日、国民に対し、米英軍への抵抗を呼びかけるファトワ(宗教令)を発出した。同派の最高権威「大アヤトラ」であるサイイド・アリ・シスタニ師も署名しており、人口の約6割を占めるシーア派住民の動向に少なからぬ影響を及ぼすと見られる。逆に、フセイン政権に強い不満を抱く同派住民の協力をあてにしてきた米英軍にとっては、期待外れの形となった。ファトワは国民に「侵略者と不信心者をイスラムの地から追い出し、国と自尊と信仰と聖地を守れ」と呼びかけるとともに、イスラム諸国に対してもイラクの「イスラム聖戦士」を支援するよう訴えた(カタールの衛星テレビ「アル・ジャジーラ」)。
 米軍がマイクロ波弾初使用 イラクのテレビがまひ [kyodo.co.jp]米CBSテレビは二十五日、強力なマイクロ波で電子部品をショートさせ、コンピューターを破壊する「マイクロ波照射弾(E−BOMB=電磁波爆弾)」を米軍が初めて実戦で使用、イラク国営テレビ局の放送を数時間まひさせたと伝えた。報道が事実なら、この兵器の使用は史上初。巡航ミサイルで撃ち込まれたとみられる。米国防総省は、マイクロ波照射弾の存在を認めていない。この兵器は爆薬を搭載しておらず、市民の被害を最小限に抑え、フセイン政権を打倒する象徴的な新ハイテク兵器として開戦前から使用の可能性が指摘されていた。

 
イラクの首都バグダッドに投下されたと伝えられる「電磁波爆弾」は、強力な電磁波で電子機器を破壊する新型特殊兵器。電磁波爆弾は電磁波の一種であるマイクロ波を使った兵器。ミサイルや無人航空機に搭載し、投下する。投下後に高出力のマイクロ波を出し、周辺の電子機器の回路をショートさせる。

 影響範囲は200〜300メートル。地上レーダーやコンピューターなどの電子機器を使用不能にする。爆発を伴わず、爆弾ではないが、爆弾に匹敵する。

 米国防総省は存在を認めていないが、関係者の間では広く知られていた。専門家によれば、米軍は91年の湾岸戦争や99年のユーゴ空爆の際にも電子回路をショートさせる特殊装置を投下した。今回の電磁波爆弾はこれよりも威力が大きい。

 電磁波爆弾には「人命を奪わずに、敵に打撃を与える」との利点があるが、投下地域の電子機器が使えなくなり、市民生活に影響を与える。米軍が開発中で、「イラク戦争で使用される可能性がある」とみられていた。しかし、米国防総省のホイットマン報道担当官は、「攻撃の標的については話せない」と答え、実際に使われたかどうかは不明だ。 米国内では「投下を裏付ける材料に乏しい」との疑問が出ており、CBS以外の主要メディアは報道していない。[毎日]

 パウエル長官「問題にぶつかっている」 イラク戦況で。米国のパウエル国務長官は25日に放送された仏テレビとのインタビューで、イラク戦争の戦況について「われわれは問題にぶつかっている」とイラク側の抵抗にあっていることを認めた。しかし、「戦略は間違っていない」と主張した。また、戦争に反対したフランスとの関係について、安保理の常任理事国であるフランスが国連で「役に立つ役割」を担うことを望む、と述べた。

 長官は、戦況に触れて「バスラで見られるように、われわれは待ち伏せや軍ではない勢力による攻撃などの難しい問題にぶつかっている」としながらも、イラク軍の防衛態勢には一貫性がないと指摘し、「一進一退はあっても結局はわれわれが勝つ」と自信を示した。

 仏政府が、イラク軍が化学・生物兵器を使用した場合に米軍を支援する姿勢を見せていることについては、「助ける気があるのなら、われわれの部隊は通常兵器によっても同様な危険にさらされていることを理解するべきだ」と批判した。[朝日]


 米シンクタンクで反戦グループが抗議活動。米国のイラク戦争を思想的に支える右派シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所で25日、反戦グループがシンポジウム会場に入り、抗議のビラをまいて、退去させられる事件があった。彼らの標的は、シンクタンクの研究員で、批判派が「プリンス・オブ・ダークネス」(暗黒の王子)と呼ぶリチャード・パール国防政策諮問委員長。イラク戦争を正当化する新保守主義の論客だ。戦局の見通しが立たない中、戦争の是非をめぐる米社会の対立は先鋭化してきている。

 この日は、戦争の現況を分析するシンポジウムが行われており、会場から「どの程度の死傷者数を想定するのか」という質問が出た直後だった。

 「私がお答えしましょう」。1人の女性が聴衆席からすっくと立ち上がった。「パールさん、大事な問題をお忘れです。戦争の非合法性、不道徳性の問題です」と言ってビラを配り始めた。さらにもう1人加わった。2人はただちに会場の外に連れ出され、ビラも回収された。

 ビラには、負傷したイラクの幼児の写真の上に真っ赤な手形が押してあり、「あなたの手は血塗られている」と書かれていた。パール氏は先制攻撃のイラク戦争を正当化する新保守主義の論客だが、言論の場に徹する米国のシンクタンクでは、きわめて異例の事件だ。

 「どうやら、彼女は我々と意見が違うようですね」。パール氏はこう言って質疑応答に戻った。しかし、会場からの質問にはトゲがあり、厳しいやりとりもあった。

 <聴衆>「イラクに民主主義をもたらすといいながら、米国がサウジアラビアなどの権威主義体制を支援するのは二重基準ではないか」

 <パール氏>「民主主義にこだわるのは米国の安全保障のためだ。民主主義国家は戦争をしかけない。世界を民主化することが、米国の安全保障に役立つのだ。ただし、その途中で、より大きな悪を倒すための妥協は避けられない」

 唯一の超大国となった米国の軍事力で、世界を作りかえるのだという自信にあふれていた。 (朝日)


 イラク戦争:韓国政府機関が反戦の意見書を発表[毎日新聞]。韓国の政府機関である国家人権委員会は26日、イラク戦争に関し、「国連の合法的な承認を経ないまま始まった戦争に反対する。政府と国会が、イラク戦争と関連したことを決めるにあたって、憲法に明示された反戦、平和、人権という原則を順守して、慎重に判断することを求める」という意見書を発表した。

 韓国政府は、米韓同盟の重要性や北朝鮮問題での米韓連携を考慮して、米国支持を表明。工兵部隊など700人規模の派兵を閣議決定しているが、反戦世論の高まりを受けて、与野党の改革派議員が派兵反対を主張し、国会での同意案採択が遅れている。


 2003年03月27日

イラク戦争:
共和国防衛隊が南下 イラク軍が反攻態勢

 米中東軍は26日、イラク精鋭部隊「共和国防衛隊」の軍用車両約1000台が同日、イラクの首都バグダッドから南方に向けて部隊移動を開始したと明らかにした。また、南部の主要都市バスラでもイラク軍の戦車、装甲車など約120台が南東のファオ半島に向けて移動し始めたという。イラク軍が反攻への態勢を整えているものとみられ、バグダッド南方約80キロのカルバラ近郊に進撃している米英軍との間で近く大規模な地上戦に発展する可能性が出てきた。また、バスラでは26日、同軍とイラク軍との交戦が始まった。

●クートに向け軍用車両1000台

 【アッサイリヤ基地(カタール)福島良典】米中東軍によると26日、前線への補給物資を搬送中の米軍ヘリ操縦士が同日、バグダッドから南方約150キロのクートに向けてイラクの精鋭部隊「共和国防衛隊」が移動中との情報を入手した。同軍は、同隊の軍用車両1000台の南下を確認した。軍用車両はトラックとみられる。部隊移動はバグダッドの南方で首都の守りを固める共和国防衛隊「メディナ師団」への兵力増強が狙いとの見方が出ている。

 イラク軍は砂嵐などの悪天候で米英軍がバグダッド南方で釘付けになっている間に部隊を移動することで、近く予想される「首都攻防戦」に備え兵力強化に着手した模様だ。

 米英軍は地上部隊による首都攻防戦に先立ち、空爆、ヘリ攻撃、砲撃によって共和国防衛隊の弱体化を図る方針とされる。だが、クウェート国境からバグダッド南方まで補給路が伸びきり、首都決戦に必要な燃料・食料などの補給に懸念が生じ始めている。

 一方、米英軍は26日、イラク南部バスラからファオ半島に向けて移動中のイラク軍の戦車、装甲車など約120台に対し陸空から攻撃を加えた。イラク軍部隊の移動目的は不明だが、米英軍がすでに制圧したファオ半島奪還を目指している可能性もある。

 さらに、米英軍は同日、イラク北部クルド人自治区のチャムチャマル付近で油田都市キルクーク、イラク軍施設などに空爆を実施。米軍は空てい部隊約1000人を投入し、バグダッドに圧力をかける北部戦線の形成を急いでいる。

 米統合参謀本部のマクリスタル作戦副部長によると、米英軍はすでに開戦以来600発以上の巡航ミサイル「トマホーク」と4300発以上の精密誘導弾で空爆を続けている。

 一方、イラク側はこれまでにクウェートに向けて10発の短距離弾道ミサイルを発射。このうち7発は迎撃ミサイル「パトリオット」で迎撃され、2発は砂漠の無人地帯に落下、1発がペルシャ湾に着弾したという。

[毎日新聞3月27日] ( 2003-03-27-11:49 )


開戦1週間、情報戦激化

 ◇イラクTV、一時マヒ−−米英攻撃で

 米英軍は現地時間の26日未明、バグダッドのイラク国営テレビを攻撃、24時間体制で放送している国外向け衛星テレビ電波は午前4時半(日本時間同10時半)から数時間、ストップ。国内向けテレビも機能がマヒした。米CBSテレビは電子・通信機器を使用不能にする新兵器の電磁波爆弾(E―BOMB)が実戦で初めて使われたと報じた。

 国営テレビは、フセイン政権が大統領演説の様子を流し、イラク国民やアラブ世界にメッセージを送る役割を果たしてきた。「プロパガンダ(宣伝)機関」として12年前の湾岸戦争でも空爆の対象になった。今回は施設に「人間の盾」となる民間人がいるとの情報があったほか、フセイン政権崩壊後、国民に向けた情報の発信拠点として残しておきたいとの思惑があり、米政府は標的とすることをちゅうちょしてきた。

 ラムズフェルド国防長官も、23日の米NBCテレビのインタビューで、放送を止められないいら立ちをあらわにしていたほどだ。しかし、ここに至っての攻撃強行は、エスカレートする「情報戦」を制することが戦争遂行にあたって緊急の課題になりつつあることを裏付ける結果になった。

 開戦1週間。バグダッドの攻防が焦点になる背後で、もう一つの戦争が進んでいる。

◇米、情報操作に苦心

 ◇「体制内部崩壊」狙い−−閣僚・軍幹部ら「憶測発言」も

 ●捕虜映像の衝撃

 イラク国営テレビに対する26日の空爆の直接の引き金になったのは、カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」を通じて世界に流された米軍捕虜と遺体の映像だった。もともとはイラク国営テレビが配信したもので、拘束された5人の米兵が聞き取り調査に答える場面が映されている。

 米政府の衝撃は大きかった。中南部のナシリヤの戦闘で多数の犠牲者と行方不明者が出たことが確認された直後だっただけに、それまで順調に推移していると見えた作戦行動が支障をきたすことを懸念したからだ。

 米軍捕虜の映像は湾岸戦争でも流されたことがあり、イラク側が米側の動揺を誘おうとしているのは明らかだった。米政府の懸念通り、作戦に対する支持率は激減した。「地上戦の開始を急ぎ過ぎたのではないか」といった声が各地で強まった。イメージで左右される戦争。情報戦の一端が浮かび上がった。

  ●大統領の生死と統制権
 ブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官は「フセイン政権は国家の統制権を失いつつある」と繰り返している。現地時間20日未明の開戦直後から流れている「フセイン大統領死傷説」とともに、政権崩壊が間近であることを印象付ける狙いがあるのは明白だ。

 フセイン大統領が24日のテレビ演説に登場した後も、フライシャー大統領報道官は「あらかじめ録画された可能性がある」として、依然、フセイン大統領の消息が確認されていないことを強調する。テレビ演説にはイラク南部での米英軍との戦闘に具体的に触れている部分があり、開戦後に収録されたとの見方が大勢だ。しかし、ホワイトハウスは「後日の公表に備えて多くの声明を録画してあったとしても不思議ではない」と説明し、死傷説にこだわる。

 米政府の強硬姿勢を支えているのは独自の諜報(ちょうほう)網による機密情報といわれる。24日付の米ワシントン・ポスト紙は死傷説の根拠として(1)バグダッド郊外のフセイン大統領の邸宅が初日の空爆を受けた後、現場を目撃した近隣住民が「大統領が担架で搬送された」という内容の電話を掛けているのが通信傍受(盗聴)で確認された(2)米情報機関と接触しているイラク人が現場から報告してきた――という米政府高官の証言をあげている。フセイン大統領以外にもこの間、ラマダン副大統領やアジズ副首相ら政権幹部の死亡説がメディアを通じて流されては否定された。フセイン政権の危機を印象付けようとする米政府の思惑をそこに読み取る人は少なくない。

 今回のイラク戦争で、米政府はさまざまなレベルの心理戦を展開している。イラク軍の前線司令官らに対する投降の呼び掛けもその一例だ。対象者は精鋭部隊である共和国防衛隊にまで及ぶ。現政権を支持することがいかに不利益かをビラや電子メールを利用して説得する。フセイン政権がすでに「死に体」であることを吹き込み、疑心暗鬼にする策略だ。

 ◇化学兵器めぐって駆け引き

 イラク側の大量破壊兵器、とりわけ化学兵器の使用があり得るのかどうかが焦点に浮上する中で、米政府からさまざまなサインが発信されている。「レッドライン(限界線)を越えれば使われる可能性がある」「バグダッドに近づくほど危険が高まるという情報がある」――パウエル国務長官やラムズフェルド国防長官は再三にわたって化学兵器に言及し、緊張を高めている。大量破壊兵器の保有を否定しているイラク側は沈黙したままだ。

 今回の戦争の直接の目的はあくまでも大量破壊兵器の廃棄だ。武力行使容認の国連安保理決議は得られなかったものの、米政府としては国際社会に戦争の「大義」を示さざるを得ない。一方で、一連の発言は、イラクに化学兵器を使わせないようにするための国際社会の圧力を期待した心理作戦の意味合いもある。

 しかし、明確な根拠を示さない「憶測発言」が目立ち、「中部のナジャフで巨大な化学兵器工場が見つかった」などの前線部隊の情報も短期間のうちに否定された。

 米政権幹部の発言に情報操作の影を見る人も多い。米国の科学者団体「憂慮する科学者連合」のスティーブン・ヤング主任研究員は「米政府はイラクの大量破壊兵器保有の明確な証拠を国際社会に示さず、(ウラン購入をめぐる)偽造文書まで根拠にして開戦に踏み切った。メディアが政府発表の真偽をそのつど確かめて報道することは難しいが、政府の宣伝機関にならないよう努力してほしい」と話している。【ワシントン河野俊史、斗ケ沢秀俊】

  ◇米、イラクとも成功せず−−川上和久・明治学院大教授(コミュニケーション論)

 クウェート解放という大義があった湾岸戦争に比べ、今回の戦争で米英側は、大量破壊兵器の不拡散などあいまいな大義しか持たず、国際世論を味方につける必要性に迫られている。イラク市民の被害を最小限に抑えつつ、バグダッドの早期陥落を目指しているのもこうした理由からだ。

 米英は「正義の軍隊」であることをアピールするため、必死に化学兵器工場を探し、“解放”を喜ぶイラク市民の姿を伝えているが、イラク側の反論が証明されるなど必ずしも、その情報戦は成功していない。イラク側も戦意高揚などを目的に捕虜の米兵の映像を流し、かえって国際世論の反発を買っている。

 米メディアは、米軍が電磁波爆弾を初めて使用し、イラク国営テレビなどが一時まひしたと伝えた。事実なら、イラク側メディアによるプロパガンダを封じる目的もあると思う。頑強な抵抗に手を焼いた米英が早期決着を図るため、相手の情報戦の武器(メディア)をつぶしたうえで、市民の犠牲拡大を覚悟して一層の大規模爆撃などに踏み切る可能性もある。【聞き手・樋口直樹】

◇イラクも生存かけ心理戦−−アラブ民衆に影響を

 ●テレビ映像の影響

 道路を埋めた群衆の間を大きなひつぎが運ばれ、女性は涙をぬぐった。カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」が25日に放送した、イラク南部バスラの戦闘で死亡した市民の葬儀の映像だ。

 アンマンでこれを見ていたヨルダン人は「これで、確実にアラブの反戦デモが激しくなる。殉教者の葬儀はアラブ人の心に最も訴えかける」と語った。イラク政府はメディアにこの取材を許可することで、アラブの市民に「米国と戦え」とのメッセージを送ったのだ。

 アラブ地域のメディア状況は91年の湾岸戦争時と大きく変わった。当時、欧米のメディアや国営放送を通じてしか情報を入手できなかったアラブ人は今、アラブ独自のテレビ局を持った。イラク国内では、衛星テレビの受信は制限されているが、アラブ地域以外に住む世界のアラブ人にも大きな影響を与える。

  ●米英情報の否定
 フセイン政権が積極的に情報戦に乗り出しているもう一つの理由は、「フセイン大統領は指導力を失っている」との米英からの情報に乗って住民が反フセインに立ち上がることを極度に警戒しているためだ。25日には英軍筋から、「バスラで民衆が蜂起した」という情報が流れた際、サハフ情報相は即座に国営テレビでこれを否定した。

 フセイン大統領を恐れるイラク人にとっては、大統領自身からのメッセージが最も効果がある。フセイン大統領は24日、国営テレビで演説し健在ぶりをアピールした。米国でフセイン大統領の死傷説が流れているが「イラク国民は大統領の落ち着き払った様子から、米英の情報に不信を持ったのではないか」(アラブ外交筋)と演説の効果を評価する声もある。

 また、イラク国営テレビは度々、フセイン大統領が二男クサイ氏ら軍幹部と談笑している様子を放送。撮影日時などは不明だが、国民にとって余裕の表情を浮かべる大統領の映像は、「フセイン政権が追い詰められている」という米国の情報を打ち消す効果がある。

 フセイン大統領に不利なことは、国民へのアピールは秘密の場所で録画した映像しか流せないことだ。演説を生中継すれば、米軍に大統領の居場所を教えることになる。

 一方、大統領の演説については、健在アピールという意味よりも、アラブ民衆へのメッセージとして評価する意見も強い。エジプトの小説家、ガマル・ギタニ氏は「イラクが苦しんでいるときでも、パレスチナについて語った。我々はパレスチナを忘れないというメッセージになった」と語る。【アンマン小倉孝保】
(毎日新聞2003年3月27日東京朝刊から)


 2003年03月26日イラク資産:米国内の1700億円、接収準備が完了 米財務省

 【ワシントン竹川正記】米財務省は25日、在米のイラク政府の資産約14億ドル(約1700億円)をニューヨーク連邦準備銀行の特別口座に集約、接収の準備が完了したと発表した。同資産は91年の湾岸戦争以降、フセイン政権への経済制裁の一環として、米国内の金融機関の口座に凍結されていたが、ブッシュ大統領が先週、同資金をイラクの戦後復興に充てるため、接収すると発表。国内金融機関に対して、罰則付きで速やかに資産をニューヨーク連銀の特別口座に移管するように命令していた。

 米政府ではフセイン政権打倒による戦争の早期終結を前提に、新政権下での経済復興計画の策定作業を急いでいる。接収した資産は原油の輸出収入とともに、最大1000億ドル規模にも膨らむと推定される復興コストの一部に充当する方針。

 米財務省は日本やスイスなど欧州の金融当局に対しても同様の接収措置を取るよう求めている。ただ、テロリストグループではなく、国連にも加盟する主権国家に対し、一時的とは言え、資産の所有権そのものを奪う措置は極めて異例。日欧の金融当局は「ナチス政権に対する制裁以降、例が無く、正当化するには法的根拠が難しい」(国際金融筋)と慎重な姿勢も見せている。[毎日新聞]


 日本は戦後治安維持に自衛隊派遣を 米大使が与党3党に。イラク戦争後の復興支援をめぐって、ベーカー駐日米国大使が与党3幹事長に対して、日本は自衛隊を派遣して現地の治安維持に貢献するなどの役割を果たすべきだとの考えを伝えていたことが25日、分かった。大使は戦後復興に関する国連安保理決議案についても、仏独両国などの支持を得やすくするため、米側との調整を踏まえて日本が起草するよう要請。さらに米国とアラブ諸国との関係改善のために日本が「パイプ役」を務めるよう求めた。

 日本側関係者によると、大使は24日朝に自らの公邸で開いた自民党の山崎拓氏ら与党3幹事長との朝食会で、こうした考えを伝えた。

 大使が示した考えは直接日本政府にあてたものではないが、国内ではこれから論議が始まるものばかり。米国を取り巻く国際環境が依然厳しいだけに、武力行使を支持した「同盟国」の日本に対し、戦後処理でも最大限協力するよう、事前に米側の強い期待感を示したものだ。

 大使は、現在の戦況について「いまだ戦争終結にはほど遠い」とする一方、「日本は、戦後の復興支援において特別な評判が世界で高まっている。米国は、日本が積極的に参加してくれることを強く期待している」と指摘。アフガニスタンや東ティモールなどにおける日本の和平支援の実績に触れ、「戦後の治安維持の面などにおいて自衛隊の役割もあり得よう」と語った。

 これに対し、山崎氏は「日本の自衛隊(海外)派遣はこれまで、すべて国連決議を前提にしている。治安維持のために必要であれば自衛隊を出したいが、新法を作らなければならず、そのためには安保理決議が必要だ」と説明。集団的自衛権にも言及して「日米同盟を根拠に自衛隊は出せない」と述べ、大使は「よく理解している」と答えた。

 紛争当事国の軍事・警察組織が整備されていない段階での戦後復興は多国籍軍が担当するケースが最近は多い。ただ、日本が多国籍軍に参加するには、国連平和維持活動(PKO)協力法とは異なる法が必要になる。自衛隊の海外派遣の枠組みを、米軍のアフガン作戦を支援したテロ対策特措法以上に広げることになるため、治安部隊への本格参加となると、野党だけでなく与党内にも慎重論が出てくるのは必至で、政治的なハードルは高い。

 大使はまた、「日本は安保理メンバーではないが、イラクの戦後復興の問題に関し、主要なプレーヤーになることは誰もが理解している」としたうえで、復興支援の安保理決議案について「日本は自ら起草すべきだ。米側の提案を待つのではなく、米側とよく協議して案を作成し、実現のために働きかけを行うべきだ。独仏としても、英米の決議案より反対が少ないのではないかと思う」と述べた。

 大使はさらに、「日本とアラブ諸国との伝統的な友好関係」を評価。イラク戦争が米国とイスラム教徒の戦いではないとの米政府の説明が十分理解されていないとの認識を示し、「米国はアラブの敵ではないということについて、日本が労をとってアラブ諸国に説明していただければありがたい」と求めた。[朝日]


 2003年03月26日イラクの化学兵器使用の可能性を指摘 米国防長官ラムズフェルド米国防長官は25日の記者会見で、イラク軍が米軍に対して化学兵器を使用する可能性について「バグダッドや(フセイン・イラク大統領の故郷である)ティクリートに接近するほど高まるという情報がある」と明らかにした。ただし、あくまでも情報であり、「実際にそうなるかどうかは結果を見ないと分からない」と述べた。

 ラムズフェルド長官はまた、イラク軍兵士の捕虜が3500人以上に達し、他に数千人が部隊の組織崩壊で戦列を離れたと述べた。フセイン政権について「確実な死に直面している」とも語った。長官はさらに、イラク側のゲリラ兵が白旗を掲げて投降を装ったり赤十字の車両を使ったりして米軍に接近し、奇襲攻撃をかけるといった戦法をとっていると指摘し、戦争法規違反だと厳しく非難した。

 長官とともに会見したマイヤーズ統合参謀本部議長は、米地上軍がバグダッドに迫る一方、1日1000回近く出撃する空爆の大半は首都などを守るイラクの精鋭「共和国防衛隊」を標的にしていると述べ、同防衛隊との地上戦が近いことを示唆した。

 一方、米英軍の電撃作戦では南部一帯を完全制圧できず、補給部隊などがゲリラ的な攻撃の犠牲になっている現状について、長官と議長はそろって「(今回の軍事行動は)数日で首都に迫った優れた作戦だった」などと強く反論した。[毎日新聞] 


 米軍、3万人増派

 【北米総局】米陸軍第4歩兵師団の報道官が26日、ロイター通信に語ったところによると、同師団の兵士約1万6000人など約3万人の兵士が新たにイラク戦争に参戦するため、米本土からペルシャ湾岸地域へ航空機で派遣されることが決まった。第4歩兵師団は当初、バグダッド攻略作戦に北方のトルコから派遣される予定だった。


(毎日新聞サイバー編集部 2003年3月27日)


元・国連査察官スコット・リッター氏が「米国はこの対イラク戦で敗走する」と予想

●元・国連査察官のスコット・リッター氏が、アイルランドのラジオ番組で、ネオコン“ファザコン”小ブッシュ政権の対イラク侵略攻撃についてきわめて厳しい批判を行なっています。ここで注目すべきは、「アメリカはバグダッドを陥落できずに最終的には敗走する」と、ヴェトナム戦争と同じような結末を取ることを予想しています。「予想」という表現は、下記のラジオ発言の筆記録や、実際のラジオ録音(RealPlayer によるストリーミング放送)を聞けば、婉曲すぎることがわかるでしょう。 ずばり「アメリカは負ける」と断言しています。

【アメリカ政府にとっては不安のタネだが、元・国連兵器査察官のスコット・リッター氏は米国が対イラク戦争に敗北すると警告してきた。米軍は「イラクから尻尾を巻いて逃げるだろう」というのだ。】 Thorn in the side of the American administration, and former UN weapons inspector Scott Ritter, has warned that America will lose the Iraq war and the American military: "will leave Iraq with its tail between its legs."
【アイルランド・ラジオのインタビュー番組で、リッター氏は今回の紛争が「絶対的な泥沼」に陥り、前進を続けた米英軍はバグダッドの郊外で立ち往生してこの首都を陥落することはできないだろう、と語った。】 In an interview with Irish radio, Mr. Ritter said that the conflict would become an "absolute quagmire," and the US-UK advance would stall outside Bhagdad and fail to capture the city.
【「我々は気づくでしょう……2300万人もの国民を相手に対決しているという現実を。しかもそのうちの約700万人がなんらかの武装をしており、おまけに都市部に集中しているのです。アメリカはこの戦争に負けます」――リッター氏はそう断言する。】

"We find ourselves... facing a nation of 23 million, with armed elements numbering around 7 million --who are concentrated at urban areas. We will not win this fight. America will loose this war," said Mr. Ritter.

【リッター氏によれば、国防総省には「イラクから逃げ出してきた連中のたわいもないおしゃべり」を信じている人間があまりにも多い。そうした“脱国者”の目論見がホワイトハウスの“ネオコン”の連中の思惑と一致していたというだけで……。】 According to Mr. Ritter, too many in the Pentagon have listened to: "the blithering of Iraqi expatriates," whose agenda coincides with neo-conservatives in the White House.
【「アメリカの兵士たちはすでにイラクに送られてしまった。きわめてわずかの右翼の新保守主義の連中の思惑を実現するためにね。リチャード・パールとか、ポール・ウォルフォウィッツとか、ディック・チェイニーとかいった連中のためにね。けっきょく我々は、こういう連中が国の外交をハイジャックするのを、許してしまったのですよ」――彼はアイルランドRTE1ラジオ「トゥナイトショー」の司会者であるヴィンセント・ブラウンにそう言った。】 "We're in Iraq --carrying out the right-wing neo-conservative motives of a handful of people. The Richard Perle's, Paul Wolfowitz's; the Dick Cheney's. And we've allowed them to hijack our foreign policy," he told Irish broadcaster, Vincent Browne on the RTE1 radio "Tonight Show."
【スコット氏は、南部のシーア派住民が抵抗してくるのはイラク政府に脅されているからでなく、愛国精神とか宗教的な理由のためなのだと警告を発した。】 He warned that Shia Muslims in the South were not fighting because of intimidation by the Iraqi government, but because of nationalistic and religious reasons.
【「彼らだって戦いますよ。アメリカの十字軍きどりの不信心者たちが聖なるイラクに侵略して暴虐を行なえばね。そして彼らも我々に抵抗してくるでしょう。強力に抵抗してきますよ」――そう述べるリッター氏。「我々はイラクを“解放”してるんじゃないのですよ。実際やってるのはイラクの“破壊”なのですから」――インタビューで彼はそう付け加えた。】
"They're doing it because, the American Crusader Infidel has invaded and violated Holy Iraq, and they will resist us, and they will resist us strongly," said Mr. Ritter. "We are not liberating Iraq, we are destroying Iraq," he added later in the interview.
【スコット・リッター氏は元・国連兵器査察官で『Endgame』(1999年)の著者でもある。(補注:2002年秋に著した『War on Iraq: What Team Bush Doesn't Want You to Know 』は、『イラク戦争―元国連大量破壊兵器査察官スコット・リッターの証言 ブッシュ政権が隠したい事実』[合同出版、2003年]として邦訳されている。) 彼は弾道ミサイル技術の専門家で、米軍では12年間、軍事諜報業務に従事していた。88年にクリントン政権に抗議して国連特別委員会を辞職したが、それは同政権が国連兵器査察プロセスをご破算にしてしまったからだという。】 Scott Ritter, is a former U.N. weapons inspector and author of the book "Endgame." Ritter, a ballistic missile technology expert, worked in military intelligence during his 12-year career in the U.S. armed forces. In 1998, Ritter resigned from the U.N. Special Commissions team to protest Clinton Administration policies that he said subverted the weapons inspection process.
【以下は、ラジオ放送の録音からの抜粋】
3 minutes excerpt:(実際には30分を越えるストリーミング放送ですが、
          最初の3分ほどが、以下の筆記録で再現されています。)
rtsp://streaming2.rte.ie/2003/0324/tonightvb.ra?start=%2200:25:03%22&end=%2201:00:00%22
【司会者(ヴィンセント・ブラウン)
「スコット・リッターさん、……イラクでの攻撃の現状については予想外でしたか?】

" Scott Ritter... are you surprised by how the assault in Iraq is going?
【スコット・リッター
「いえいえ、全然。昨年の秋に論文を書いて、そこでまさにこうなることを予測してました。いくつかの分析についてはあまりにもぴったり的中しているので、驚いているくらいですが。】
Scott Ritter:
" No actually, I wrote a paper that was published last Fall, that predicted just this. And i'm a little disturbed in listening to some of the analysis going along here.
【アメリカかかくも厳しい窮状に陥ったのは、いろいろと理由はありますが、まずもって、国防総省には、イラクから逃げ出してきた連中の、あれこれと吹聴しまくる、じっさいその通りなんですが、……まあ言ってみれば“たわいもないおしゃべり”を信じている人間があまりにも多いと、サダム・フセインを敵視する話をね。そうした“脱国者”にしてみれば、まずもって【A】イラクを解放することこそ米国の役割であり、【B】イラクにいる国民たちも我々が出ていってサダムから解放されることを切望していると、まあそのように考えているわけですよ。】 I think that one of the reasons the American find themselves in such difficult situations in Iraq, is that so many in the Pentagon have listened to the... blithering of Iraqi expatriots who have spoken out --rightly so-- against Saddam Hussein, and who think that it's a) the role of the United States to liberate Iraq; and b) think that the Iraqi people want us to liberate them from Saddam.
【だけど現実はきびしい。大金をはたいてイラクに“救援”に出かけていけば町々で民衆の歓迎をうける、なんて甘い期待を抱いて出ていったはいいが……ごらんなさい、我々は弾丸と爆弾に“歓迎”されてるのが現実じゃないですか。】 And I think that the harsh reality is that in buying off on the grand expectations of being greeted in the streets of Iraq with song and flowers... we now find we are being greeted with bullets and bombs.
【それに南部のシーア派住民ですが、彼らは我々に抵抗している。それは、“ケミカル・アリ”(=クルド人を毒ガスで殺した責任者とされるアリ・ハッサン・アルマジド将軍)が殺人部隊を引き連れてかの地を訪れて「戦わないと死刑にする」と脅したから、っていうわけじゃないのですよ。】 And it's the Shia in the south who are fighting us. They're not doing it because Chemical Ali is down there with his death squads threatening to execute 'em.
【彼らは、アメリカの十字軍きどりの不信心者たちが聖なるイラクに侵略して暴虐を行なっているから、抵抗しているわけです。これからも我々に抵抗してくるでしょう。強力に抵抗してきますよ。】 They're doing it because, the American Crusader Infidel has invaded and violated Holy Iraq, and they will resist us, and they will resist us strongly.
【我々がいかに多くのイラク人を虐殺しようが、アメリカはこの戦争に負けます。そして最終的にはアメリカ軍は尻尾を巻いてイラクから逃げ出すでしょう。それが私の予測です。】 And no matter how many Iraqi's we kill and slaughter, I predict that America will loose this war and ultimately the American military will leave Iraq with its tail between its legs.
【残念ながら、我々はイラクの人々にたいして途方もない数の殺戮と破壊を行ないつつある。アメリカの兵士と海兵隊はその償いをするはめになるでしょうね。】 Unfortunately, we're going to inflict a tremenduous amount of death and destruction on the people of Iraq; the American soldiers and Marines will also pay a price.
【ついでにいえば、イラクに行かずにふんぞり返って、口先だけでアメリカ国民を鼓舞してイラクに送り込んで人殺しをやらせている者どもは全員、自分の行ないを恥じるべきですよ。】 And all those who sit outside of Iraq and courageously encourage Americans to go in and slaughter Iraqi's should be ashamed of themselves."
【司会者(ヴィンセント・ブラウン)
 「……で、あなた、アメリカがこの戦争に負けるというのですね?」】
Vincent Browne: "...You think the Americans will loose this war? "

【スコット・リッター
 「じっさい、ヴェトナムでは負けてますからね。】

Scott Ritter:
" We lost Vietnam....
【たしかに我々は膨大な数のイラク人をかたっぱしから殺す能力を持っていますし、じっさいそれが実行されるでしょう。だけど申し上げておきましょう。じつは我々は、イラクで戦うに足る戦力を持ってはいない。正確に言えば、今回の戦闘で勝利するための戦力はね。だからかなりの戦力補強を行なわねばならなくなるはずです。】 Remember we can kill many, many Iraqui's and we will do so. But I am telling you right now, that we do not have sufficient combat power in Iraq --as we speak-- to win this battle. So we will have to reinforce considerably.
【アメリカ軍の部隊展開の目下の方針は、こんな臆断にもとづいているのです。イラク軍は降参するにちがいないし、イラクの民衆は我々を歓迎してくれるに違いないし、国際社会も応援してくれるに違いない、とね。】 The current posture, in terms of American deployment, is predicated on a presumption that the Iraqi Army would surrender; that the Iraqi people would welcome; that the international community would support.
【だけど実際に起きているのはその正反対だ。】 The exact opposite is happening.

【我々はといえば、イラク現地に上陸した兵士は12万人にも満たない。これが2300万人もの国民を相手に対決しようとしている。しかもそのうちの約700万人がなんらかの武装をしており、おまけに都市部に集中しているのです。】

And now we find ourselves with fewer than 120,000 boots on the ground; facing a nation of 23 million, with armed elements numbering around 7 million --who are concentrated at urban areas.
【我々はこの戦争には勝てません。アメリカはこの戦争に負けます】 We will not win this fight. America will loose this war.
【サダム・フセインは死ぬかも知れない。……だけどね……】 Saddam Hussein may die... But you know what?
【今後もサダム支配はずっと続くでしょうね、みんな期待を裏切ってね。】 I'm betting that Saddam's gonna be around a lot longer than anyone can predict.
【それに我々はバグダッドを陥落できません、間違いなく。】 I'm betting that we don't capture Bhagdad.
【我々はバグダッドの郊外まで行って、そこで立ち往生するでしょう。】 I'm betting that we stall outside Bhagdad.
【このいくさは、絶対的な泥沼にはまりますよ。】 I'm betting that this becomes an absolute quagmire.
【私の予想がはずれてくれればいいと思いますけどね。これから命を落とすアメリカの同胞のことを考えればね。だけどあいにく私は海兵隊に12年間勤務してきたベテランだし、第一次湾岸戦争では実際に戦闘経験がある。戦争がどういうものか知っているのです。国を守るとはどういうことか、もね。】 I hope I'm wrong, for the sake of the American lives that are going to be lost. Remember I'm a 12 year veteran of the Marine Corps. I fought in the first Gulf War. I know what war is about. I know what defending my country is about.

【これは間違った戦争です。だってアメリカ合衆国の防衛にはなんら関係がないからね、イラクは大量破壊兵器を持っていませんよ。ブッシュ政権が途方もないウソで押し通して国際社会を騙した。アメリカ国民をもね。】

This is a bad war, because it has nothing to do with the defense of the United States of America. Iraq doesn't have weapons of mass destruction. The Bush Administration has pulled an enormous lie to the international community; to the American people.
【しかしもはや我々はイラクに兵を送ってしまった。ごくごくわずかの右翼の新保守主義の連中の思惑を実現するためにね。リチャード・パールとか、ポール・ウォルフォウィッツとか、ディック・チェイニーとかいった連中のためにね。けっきょく我々は、こういう連中が国の外交をハイジャックするのを、許してしまったのですよ。】 And now we're in Iraq --carrying out the right-wing neo-conservative motives of a handful of people; the Richard Perle's, Paul Wolfowitz's; the Dick Cheney's. And we've allowed them to hijack our foreign policy.
【そして彼らはああいうイラクからの“脱国者”にそそのかされてきた。私から見れば信用度ゼロの連中にね。連中は無謀にもイラクの“解放”を求めた。……そういうわけで、お人好しにもアメリカの善人たちがイラクに乗り込んで、……で戦争や人殺しをやってるわけです、よその国のためにね。アメリカ人にそんなことを頼むなんておかど違いもいいところだ。】 And they've been cheered on by these Iraqi expatriots, who have zero credibility in my eyes. They're so brave and they want Iraq liberated... Then my goodness man, go to Iraq... fight and die for your country... But don't ask Americans to do it.

Listen to full Gulf War Analysis Segment Audio
25 minutes[ Realplayer]
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[IRAQミニ情報]ナジャフ イスラム主義運動の拠点

 バグダッドの南約160キロ、ユーフラテス川西岸に位置する都市。イスラム教シーア派の聖地で、中心にはムハンマド(マホメット)の第4代後継者、アリが埋葬された墓所と信じられている廟(びょう)が建つ。

 同派の学問研究の中心地で、多くのイスラム法学者を輩出。参詣や留学に訪れる人が多く、古くから国際都市として栄えた。このため交易が活発になり、西欧思想や近代技術の導入も早かった。

 第一次世界大戦後は反英ジハード(聖戦)の核となった。イラク国家の成立後は中央集権が進み、社会的、経済的役割は低下したが、1950年代以降はイスラム主義運動の拠点となった。

 イラン・イスラム革命を指導したシーア派法学者のホメイニ師が自国から追放された後、13年間の亡命生活を送った地としても知られる。【松村由利子】

(毎日新聞サイバー編集部 2003年3月27日)

一週間が過ぎ、十日が過ぎる
 2003年03月28日米国防政策:イラク戦争の「計画立案者」パール委員長辞任 

 【ワシントン佐藤千矢子】米ブッシュ政権の外交・安全保障政策に大きな影響力を持つ米国防政策委員会(国防総省の諮問機関)のリチャード・パール委員長(61)が27日、アラブの武器商人との関係を指摘された騒動の責任を取って委員長を辞任した。パール氏は、新保守主義(ネオ・コンサバティブ)勢力の中心人物で、イラク戦争の「計画立案者」と言われてきただけに、突然の辞任は、ブッシュ政権のイラク戦争の行方にも影響を及ぼしかねない。

 辞任の発端となったのは、今月17日付けの米誌「ニューヨーカー」の記事。パール氏が今年1月3日、フランスのマルセイユでサウジアラビアの武器商人アドナン・カショギ氏らと昼食をともにし、パール氏が共同経営者を務めるベンチャー企業への投資をめぐる仲介話を相談されたことなどを、カショギ氏への取材を踏まえて伝えた。

 パール氏は27日、「事実誤認に基く批判」と疑惑を否定したうえで、ラムズフェルド米国防長官にあてた辞表で「米国が戦争し、兵士の生命を危険にさらしているとき、政権の人々の貴重な時間が私の(騒動の)ために割かれていることにうろたえている」と、辞任する意向を伝えた。

 ラムズフェルド長官は辞任を受け入れ「米国史の重要な時期における優れた委員長だった」との声明を発表した。ただ、長官の要請に応えてパール氏は同委員会の委員にはとどまる。

 パール氏は、レーガン政権の国防次官補を経て、保守系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」常駐研究員となり、01年から国防政策委員長を務めていた。批判勢力からは「プリンス・オブ・ダークネス」(暗黒の王子)と呼ばれ、イラク戦争反対派の最大の攻撃目標の1人でもあった。

 先月17日の毎日新聞との単独会見では、国連決議なしのイラク攻撃や、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日体制の政権転換の必要性などを語っていた。[毎日新聞]


2003年03月28日 イラク戦争:長期戦辞さない覚悟を改めて強調 米大統領
 【ワシントン中島哲夫】ブッシュ米大統領とブレア英首相は27日午前11時(日本時間28日午前1時)、ワシントン郊外の大統領山荘キャンプデービッドでの2日間にわたる首脳会談を終え、記者会見した。

 ブッシュ大統領は会見の冒頭、ブレア首相を称賛し、米英は「高貴な目的」のために戦っていると強調。「どんなに長くかかろうとも勝利する」と長期戦を辞さない覚悟を改めて強調した。

 また、凍結状態にある対イラク「石油・食料交換計画」を再開するよう国連に呼び掛けた。

 ブレア首相はイラク南部油田地帯を制圧し、安全確保に努めていることの意義を強調した。

 両首脳は特に、イラク国民に対する人道支援の重要性を指摘。イラク産石油の輸出収入で食糧を購入する国連の既存事業が中断しているため、この再開を促した。

 ブレア首相は同日午後、ニューヨークでアナン国連事務総長と会談する予定。米英と仏露中を含む安保理多数派との関係修復や、イラクへの人道支援、戦後復興などについて協議するものとみられる。

[毎日新聞3月28日] ( 2003-03-28-01:45 )


2003年03月28日 イラク戦争:米地上軍10万人増派へ 近く共和国防衛隊と激戦
 米政府は27日、イラク戦争の地上攻撃を強化するため、新たに米地上軍約10万人を4月末までにイラク領内に増派する方針を固めた。またラムズフェルド米国防長官は同日、バグダッド攻防をめぐり、近くイラク最精鋭の共和国防衛隊と大規模な地上戦を行う方針を示し、イラクのジャブリ国防相は「5〜10日以内」にバグダッドは米英軍に包囲されるとの見通しを示した。米英軍は27日、バグダッドの大統領宮殿などの標的に最大級の空爆を加えた。

 =◇=

 【ワシントン中島哲夫】ラムズフェルド国防長官は27日、フセイン・イラク政権打倒の前提として、バグダッドと北方に位置するフセイン大統領の故郷ティクリートを守る共和国防衛隊を無力化させる必要があるとの認識を示し、バグダッド南方のカルバラなどで、近く同防衛隊との最大の激戦が行われるとの見通しを明らかにした。

 長官は同日、米上院歳出委員会の公聴会で、フランスなどが国連を通じて要求しても「停戦はしない」と明言。「フセイン政権は除去される。ただ一つ不透明なのは、どれだけ時間がかかるかだけだ」と述べた。

 軍事情報筋によると、米軍は夜間戦闘に好適な新月の4月2日ごろ、バグダッド市街の一端を制圧し、攻撃用陣地を構築し始める見通しだ。こうした作戦の早い段階でイラク側が戦意を失い、投降が続出するといった展開にならない限り、首都攻略作戦は長引くことになる。

 また長官は、イラク北部に大規模兵力を投入して「北部戦線」を構築し、ティクリートからバグダッドへと南下攻勢をかける方針も示唆した。

 ロイター通信によると、4月末までに増派される10万人は、既に増派が明らかになっている第4歩兵師団のほか、ドイツを本拠地とする第1機甲師団など。これらの一部がイラク北部に展開するものとみられる。これによりイラク領内の米英軍は計22万5000人とほぼ倍に膨れ上がる。

 米メディアによると、北上する米海兵隊は二手に分かれ、一つの部隊は首都南方約150キロのディワニヤ周辺に到達。もう一方の部隊は首都南東約250キロの地点にいる。カルバラまで進出した米陸軍第3師団とあわせて三つの部隊が首都に向かっている。

 =◇=

 【アンマン春日孝之】イラクのジャブリ国防相は27日、バグダッドで記者会見し、米英軍地上部隊が首都に迫っていることについて、「5日〜10日で首都を包囲されても驚かないが、陥落はしない」と述べた。

 さらに、イラク軍が南部の各戦線で善戦していると強調。要衝ナシリヤはまだ陥落しておらず、イラク第2の都市バスラでも頑強に抗戦を続けていると説明した。

 =◇=

 【アッサイリヤ基地(カタール)田中洋之】米英軍は27日夜から28日にかけてバグダッドで大規模な空爆を続行。市内中心部の大統領宮殿やコミュニケーションセンターのほか、イラク精鋭の共和国防衛隊が配備されているバグダッドの南部と東部が標的となった。

 またカタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」は27日、イラク軍に撃墜されたという米軍の攻撃ヘリコプター「アパッチ」の映像を放映した。カタールの米中東軍司令部は「行方不明のヘリはなく、24日に墜落したヘリを再放送したもの」と否定している。[毎日新聞]


2003年03月27日 イラク戦争:義勇兵、続々バグダッドへ

 米英軍との首都攻防戦が近づくバグダッドに、各国から続々集まるムジャヒディン(イスラム戦士)――。同地のホテルにとどまる日本人男性の大学生(24)=京都市=が27日、日本からの国際電話で様子を語った。

 大学生によると、バグダッド中心街のあるホテルが、ムジャヒディンの登録事務所に充てられている。義勇兵として参加するさまざまな国のイスラム教徒の男性が連日バスで乗りつけているという。

 「サダム(フセイン・イラク大統領)を守るんじゃない。イスラムの国を守るんだ」。ある男性は語気を強め、訴えたという。国籍を聞くと、シリア、イエメンといった中東諸国が中心だが、フランス、マレーシアといった国々の名も。大学生は「毎日500人程度が登録に来ると聞いた。少し多い気がするが、1日でバス2台ぐらいの人が集まっている」と話す。

 ホテルの中は集まったムジャヒディンでごった返す。「アフガニスタンで家族を殺されたんだ」。その横には、話を聞きながら泣く姿も。「日本はヒロシマやナガサキに原爆を落とされながら、なぜアメリカを支持するのか」と聞いてきた男性もいたという。

 義勇兵は登録を済ますと、自分の荷物を抱え、指定のキャンプに連れて行かれるという。

 大学生は「彼らは純粋で、死を覚悟していた。しかし、使い捨てにされるのではないか心配だ」と話した。[毎日新聞]


2003年03月27日 イラク戦争:武力行使正当化する米国の姿勢批判 シリア大統領

 【カイロ城島徹】シリアのアサド大統領は27日付のレバノン紙アッサフィルのインタビューで「米英軍はイラク全土の制圧に失敗し、アラブ世界全体で民衆の抵抗を引き起こす」と述べ、「中東の民主化」を掲げて武力行使を正当化する米国の姿勢を批判した。

 また、米国はイラクの次の標的として、イスラエル攻撃を続けるイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」への影響力を持つシリアを意識しているとの見方について「イスラエルの存在がある限り、その可能性は常にある」と答え、米国の動向に警戒感を示した。

 シリアは戦争を「アラブ諸国への挑戦」と位置付けて強硬に反対し、米軍を支援する他のアラブ諸国も批判。シリアでの一般市民の抗議行動では、親米路線をとるエジプトのムバラク大統領に対する批判キャンペーンも起きた。このため、エジプト側が26日に抗議するなど、アラブ諸国間の不協和音が高まっている。[毎日新聞]



[ワシントン 27日 ロイター] 米軍は、激戦が予想されるバグダッド攻略に向けて準備を進めているが、バグダッド攻略は、米軍にとって、ベトナム戦争以来の大規模な市街戦に発展する可能性がある。

 米国防総省は、バグダッドをフセイン政権の「重心」と位置付けており、バグダッド制圧が、フセイン政権の崩壊や地方の抵抗減少につながる、とみている。

 軍事アナリストは、この週末にも、バグダッド南方で、第3歩兵師団などの米軍部隊と、イラク共和国防衛隊の間で、大規模な戦闘があると予想している。

米軍が、共和国防衛隊を抑えた場合は、バグダッド攻略が視野に入る可能性がある。

 米国防総省は、バグダッドを取り巻く防衛線を突破した後の攻略計画については、内容を明らかにしていない。

 軍事アナリストの間では、第3歩兵師団による大規模な地上戦や、陸軍第101空てい師団ヘリコプター部隊、特殊部隊による攻撃といった正面攻撃を予想する声や、バグダッドの孤立化や限定的な作戦の実行といったより慎重な作戦を予想する声が出ている。

 ラムズフェルド国防長官は、27日、上院公聴会で、米軍が攻撃開始から1週間でバグダッドまで80キロの地点まで進軍したことを明らかにした。

 長官は、「次は、対応がさらに難しい共和国防衛隊と対決しなければならない。イラク軍が壊滅もしくは投降した後、次の段階として、バグダッドを攻略する」と発言。バグダッドでは、イスラム教シーア派など、市内にいる一部のイラク人が、米軍のバグダッド制圧を支援するとの見通しを示した。ただ具体的な作戦計画は明らかにしなかった。

 レキシントン研究所のアナリスト、ローレン・トンプソン氏によると、米軍は、1968年のベトナム北部フエでの戦闘以来、大規模な市街戦を経験していない。

 同氏は、「米軍は、市街戦で勝利したが、市内は破壊され、民間人にも多数の犠牲者が出たため、勝利の実感はなかった」と指摘している。

 フエの市街戦は、1カ月に及び、2500人の米海兵隊が、1万人以上の敵軍を敗った。

 フエの人口は14万人だったが、バグダッドの人口は、約500万人に達する。

 トンプソン氏は、この週末にも、共和国防衛隊が、バグダッドに向けて進軍する米軍と交戦する可能性がある、と指摘。米軍の空からの攻撃などにより、共和国防衛隊が「ほぼ一掃される」との見方を示した。

 この戦闘で、イラク軍が化学兵器を使用する可能性もあるという。

 トンプソン氏は、この戦闘で生き残った共和国防衛隊の兵士が、バグダッドまで後退し、フセイン大統領に対する忠誠心が最も高い超精鋭部隊「特別共和国防衛隊」と合流、バグダッドを防衛する可能性がある、とみている。

 同氏は、共和国防衛隊がバグダッド南方で米軍に敗れた場合、バグダッド制圧には、5─6日かかると予測。特に民間人に、これまでの戦闘を大幅に上回る死傷者が出る見通しという。

 同氏は、「短期決戦を望むなら、民間人だけでなく、米軍側にも、死傷者が出ることを覚悟しなければならない」と指摘した。

 一方、湾岸戦争で活躍した元軍人で、外交問題評議会のアナリストであるウィリアム・ナッシュ氏は、バグダッドの正面攻撃はベストな戦略ではないかもしれないとし、「バグダッドを孤立化させ、通信を遮断すれば、サダム(フセイン大統領)は、イラクの支配者ではなく、バグダッドの市長だ。成果は大きい」と述べた。

3月28日 13:17
米英首脳会談:
イラク長期戦を辞さず 覚悟を強調


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 【ワシントン河野俊史】ブッシュ米大統領とブレア英首相は27日、ワシントン郊外のキャンプデービッド山荘での2日間にわたる首脳会談を終え、記者会見した。両首脳はイラク戦争について長期戦を辞さない覚悟を強調する一方、人道的見地からイラク産石油の輸出収入を国民のための食糧や医薬品の購入に充てる「石油・食糧交換計画」を速やかに再開するよう国連に呼びかけた。

 ブッシュ大統領は会見で「(米英の)連合軍は、日々着実に前進している」と述べた上で「目的達成までどんなに時間が掛かろうとも我々は勝利する」と宣言した。

 ブレア首相も「時間に縛られることはない」と語り、戦争が長期化しても計画を遂行する意思を明確にした。

 また、両首脳はイラクに対する武力行使容認決議案をめぐる安保理の対立などで凍結状態にある石油・食糧交換計画の再開が急務であることを強調し、「この緊急の人道問題は政治的に扱うべきでなく、安保理は国連事務総長に再開の権限を与えなければならない」(ブッシュ大統領)などと述べた。

 ブレア首相はイラクの戦後復興問題に言及し、米英両政府が人道支援や「フセイン後」の体制を承認する安保理新決議の採択を目指すと説明。戦後復興のプロセスに国連が関与することでブッシュ大統領と原則的に合意したと語った。

[毎日新聞3月28日] ( 2003-03-28-13:12 )


2003年03月29日

イラク戦争:
イラク政府「米英軍の誤爆」と非難 市場着弾

 米英軍は28日夜、イラクの首都バグダッドへの大規模空爆を続けた。市内の市場にミサイルが着弾、少なくとも市民55人が死亡、50人前後が負傷した。米中東軍報道官は「(ミサイル着弾を)確認できていない」と話しているが、イラクは「米英軍による誤爆だ」と非難している。開戦後、一度の民間人犠牲者としては最悪で、誤爆の可能性が強まった場合、米英軍への批判が高まりそうだ。一方、29日未明、クウェート中心部のショッピングセンター近くに、イラクから発射されたとみられるミサイルが落下し、衝撃で同センターの屋根や窓の一部が壊れ、少なくともけが人2人が出た。

 【アンマン春日孝之、アッサイリヤ基地(カタール)福島良典】米英軍は28日、バグダッド市内に対して集中的な空爆を行った。英BBCはこれに関連し、同日午後6時半(日本時間29日午前0時半)ごろ、同市内のシューラ地区の市場にミサイルが着弾、少なくとも死者55人、負傷者47人が出たと報じた。イスラム教の休日である金曜日だったため、市場は大混雑していた。サハフ・イラク情報相は58人が死亡し、さらに死傷者が増える可能性に言及した上で、「米軍のミサイルが市場を直撃した。民間人への犯罪行為だ」と厳しく批判した。

 犠牲者数について、ロイター通信は搬送先の病院の医師の話として「死者55人、負傷者47人以上」と伝えた。現場は市西部の住宅地「シューラ地区」にある市場で、犠牲者の大半は女性や子供、お年寄りだった。治療に当たった医師によると、付近に軍事施設はないという。

 事件の原因について、BBCは「上空を飛んでいた航空機がロケットを投下したのを見た」という住民の目撃証言を伝えた。アラブ首長国連邦の衛星テレビ「アブダビ・テレビ」も、米国の巡航ミサイルが直撃した可能性があると報じた。しかし、米中東軍は「詳細はまだ分からない」とし、イラクによるミサイル誤射の可能性を示唆している。

 米中東軍のブルックス作戦副部長は28日の記者会見で、米英軍が現在、イラク軍の指揮・統制システムの破壊を目指し、通信・放送施設などを重点的に攻撃していることを明らかにした。

 また、ブルックス副部長によると、米陸軍第3歩兵師団はバグダッドの南160キロに位置するナジャフの北方でイラク側のゲリラ部隊を撃退、東方からバグダッドに向けて北上中の米海兵隊第1遠征軍は進軍を続けている。

 ■相次ぐ市民の犠牲 

 

 イラク攻撃では、多数の市民が犠牲になる爆撃が相次いでいる。26日には市北部シャーブ地区の住宅地にある市場が被弾し、15人前後の市民が死亡。28日には中心部のマンスール地区でもイラクの政権政党・バース党の事務所付近の住宅地にミサイル2発が着弾し、少なくとも8人の市民が死亡した。

[毎日新聞3月29日] ( 2003-03-29-14:03 )


2003年03月29日

イラク戦争:
相次ぐ「誤爆」 反米感情の高揚必至 

 【アンマン小倉孝保】バグダッドで28日、米英軍による爆撃で市民に多数の犠牲者が出たことにより、イラクばかりかアラブ民衆の間に反米感情が盛り上がるのは確実だ。バグダッドでは同日昼間と26日に相次いでミサイルが着弾、多数の犠牲者が出たばかり。「同胞」の犠牲に同情するアラブ民衆の間には、攻撃を阻止できないアラブの指導者への批判が高まっている。

 開戦前、多くのイラク市民の間には「米軍の空爆は怖くない。市民を狙うはずがないからだ」と米軍のハイテク兵器に一定の信頼感のようなものがあった。テレビ映像などで米軍のピンポイント攻撃を知っている市民は、米軍は的確に軍や政府機関を狙うはずと考えていたからだ。フセイン政権に対する嫌悪感も強く、米軍が同政権を相手にしている限り、市民感情の盛り上がりにも限界があった。

 だが、増える市民の被害を受け市民感情には微妙な変化が生まれている。バグダッドとアンマンを結ぶイラク人運転手は「イラク人は米軍をはっきり敵として考えるようになってきた」と話した。アラブ人の多くはイラク市民に対し同胞としての親近感を持っている。だが、市民への被害が増えることでアラブ人が米軍の攻撃を「同胞」への攻撃と考える可能性が高まりつつある。

 28日にはカイロで大規模なデモが発生したほか、イラクと長年、敵対関係にあったイランの首都テヘランでも開戦後、初めてのデモが発生し、数千人の市民が米国旗を焼くなどした。また、ヨルダン各地でも大規模なデモが発生し、米軍の攻撃阻止に有効な手立てを打てないエジプトはじめ、バーレーンなど米軍を受け入れている湾岸諸国の政府に対しても抗議の声が上がった。

 こうした状況に対するアラブ諸国政府の危機感は強く、サウド・サウジアラビア外相は先日、「戦争が長引けば、米国との関係に悪影響が出る」と米・サウジ関係を憂慮する発言を行った。また、ムバラク大統領は27日、「戦争終了後も、地域の不安定化を招く」と話した。

[毎日新聞3月29日] ( 2003-03-29-12:33 )



「シラクは硬い。話が違う」 小泉首相、説得できず激怒


 2月18日午後8時。小泉純一郎首相は、フランスのシラク大統領から電話を受けた。17日の欧州連合(EU)首脳会議の内容を説明する大統領。話題はイラク攻撃をめぐる国連安保理の動向に移った。

 米英が新決議を断念して攻撃するのか、決議採択で安保理が結束できるのか。国際協調と日米同盟の両立こそ国益と信じた首相は「米と仏の問題ではない。イラクと国際社会の問題だ」と説き、歩み寄りを必死に求めた。だが、大統領は「フランスにはフランスの国益がある。査察強化・継続による武装解除が必要だ」と耳を貸さなかった。

 電話を切った首相の口調が一変した。「シラクの態度はとても硬い。話が違う。外務省はまだ変わることがあり得ると言っていたじゃないか」。外務省の西田恒夫総合外交政策局長や安藤裕康中東アフリカ局長らに声を荒らげる首相。首相は読み違いを悟り、日本と仏の距離を肌で感じた。

 2月末。首相執務室で福田康夫官房長官と副長官3人が首相を囲んだ。新決議不採択の場合に備えて対応を協議するのが主眼だった。「新決議がなくても米国の武力行使を支持する」。小泉首相は出席者に告げた。「国際協調」より「日米同盟」を優先する宣言だった。

 今月20日。新決議がないままイラク戦争が始まり、日本は攻撃支持を表明した。「日米同盟の強い信頼のきずなを基盤に、日本国民の安全確保に十分努力しなければならない」。首相は同盟重視を強調した。この夜、竹内行夫外務事務次官の自宅の電話が鳴った。アーミテージ米国務副長官からだった。「ありがとう。それだけ言いたかった」

 イラク戦争の大義とは何か。日本外交はもがき苦しんだ末、米支持で旗幟(きし)を鮮明にした。


(毎日新聞2003年3月29日)



イラク復興支援 首相「まず現行法で」 自衛隊派遣の新法に慎重


 小泉純一郎首相は28日、03年度予算が成立したことを受けて首相官邸で記者会見した。イラク戦争後の復興支援のため自衛隊を派遣する新法の必要性について「現時点で、新法を作らなければできないことより、現行法でできることを考えていきたい」と述べ、新法制定には慎重な考えを示した。政府・与党の一部には戦後の治安維持に自衛隊を派遣する新法制定を求める意見がある。戦況や戦争終結後の情勢に不透明さが強まる中、当面は現行法の枠内で可能な周辺国支援などに全力を挙げる意向を鮮明にしたものだ。

 国際紛争に伴って自衛隊を派遣する場合、政府は国連平和維持活動(PKO)協力法か、国連決議を根拠にしてきた。しかし今回は「受け入れ国の同意」など同法の派遣要件が満たされない可能性もあるうえ、国連での復興決議採択の見通しも立っていない。こうした事情も踏まえ、首相は現行法での対応を優先させる考えを強調。新法について「国連での審議の状況を見ながら新しい法律が必要だったら、与党と国会に相談しなければならない」と述べた。【川上克己】


(毎日新聞2003年3月29日)

米軍12万人増派、ブッシュ政権に誤算 「短期決戦」破たん


 【ワシントン中島哲夫】イラク戦争は米英地上軍の猛進撃が止まり、27日には12万人もの増派計画が明らかになって、米国内ではブッシュ政権に誤算があったとの見方が広がっている。特に先制攻撃を主張した政権内強硬派は短期間での楽勝を示唆してきただけに、今後予想される激しい地上戦で米兵やイラク民間人に多くの犠牲が出れば、反戦派からの強い批判を免れない情勢だ。

 強硬派の代表格はチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ウルフォウィッツ国防副長官ら。米国流の価値観を普遍的な正義と考えるネオ・コンサーバティブ(新保守主義)の影響を強く受けている。

 米メディアによれば、3人ともイラク攻撃の作戦計画策定段階で5万〜7万5000人程度の小規模展開による電撃作戦を提唱した。だが、結局はオーソドックスな大規模展開を望むフランクス中東軍司令官の慎重論も反映され、長期化にも対応できる形になった。12万人の増派も、早期展開が見込まれていた歩兵師団や機甲師団を含んでおり、軍事的には無理なものではない。

 問題は副大統領や国防長官が、開戦への支持を広げるためか楽観的な見通しを強調し過ぎたことだ。チェイニー副大統領は開戦前の16日、米NBCテレビで自信満々の本音を語った。

 「ならず者国家やテロリストの脅威に効果的に対処できる唯一の国が米国だ」「我々はイラク国民から解放者として歓迎されるだろう」

 ラムズフェルド長官も1月22日の記者会見で、戦争期間を「4日か、4週間か、4カ月か」と語り、米兵の死傷は「少ない」と予測した。2月27日には「6日か、6週間か、6カ月か」と述べた。多くの米国民は「米兵の犠牲はほとんどなく、1週間以内で終わる」と期待した。

 ところが、米軍はゲリラ攻撃を受けて死傷者が続出し、軍事専門家の間では、バグダッド攻略には少なくとも2カ月程度を要するとの見方が出ている。
ウルフォウィッツ副長官は24日、英BBC放送との会見で「抵抗はあるに決まっている。これが戦争だ」「(抵抗を)意外だなどと言う人は、ものが分かっていない」と述べた。「誤算」はなかったという言い分だが、米国世論に受け入れられるかどうかは不透明だ。

◇長期化「何度も表明」−−米報道官、誤算との指摘に反論

 【ワシントン中島哲夫】フライシャー米大統領報道官は28日、イラク戦争が米国にとって「長く、危険な」戦いになるかもしれないという事実を「ホワイトハウスは何度も表明してきた」と述べた。イラク側の抵抗が激しく戦闘長期化の様相となっているのは、ブッシュ政権の誤算ではないと釈明したものだ。

 報道官は、ブッシュ大統領が「戦争は軌道に乗っており、大いに進展している」と考えて満足していると強調した。


(毎日新聞2003年3月29日)

2003年03月29日

イラク戦争:
米軍、補給路確保に苦戦 自爆攻撃で米兵4人死亡

 米欧メディアは29日、イラクの首都バグダッドをめざして北上する米地上部隊に対し、米軍が物資補給上の理由から進撃を4〜6日間停止する命令を出したと報じた。米中東軍は報道に否定的な見解を発表したが、イラク側のゲリラ攻撃が続く中、米軍は全長500キロ近い補給路の確保に苦しんでいる。また、中部のナジャフ近郊で29日、米英軍に対する初の自爆攻撃が行われ、米兵4人が死亡した。サハフ・イラク情報相は、28日夜からの米英軍の空爆で、イラク側の民間人140人が死亡したと語った。

 【アッサイリヤ基地(カタール)田中洋之】ロイター通信などによると、米軍当局者は29日、米地上部隊のバグダッドへの進撃を4〜6日間停止する命令が28日に出たことを明らかにした。米部隊はバグダッド南方約80キロにまで迫っているが、イラク軍のゲリラ攻撃や悪天候などで、部隊への十分な補給が難しくなったものとみられる。米軍の先陣部隊とクウェートを結ぶ補給路は約500キロに及んでいる。

 現地からの情報によると、バグダッド南方のナジャフやナシリヤ、サマワに展開している米地上部隊では食料や燃料などが不足。兵士の食事が1日3回から1回に減らされたり、燃料節約のため装甲車などの使用が制限されているという。この状態が長引けば、前線の兵士の士気に影響が出るのは必至だ。

 米軍は現在、陸路で前線に物資を補給しているが、イラク軍の妨害を避けるため、ナジャフ近郊の砂漠地帯に輸送機が発着できる滑走路を整備して空路での物資補給に切り換える方針だ。空爆は従来通り行われる。

 これに対し、米中東軍のレニュアート作戦部長は29日の会見で「戦場に停止はない」と述べ、一部の部隊が待機状態にあっても攻撃は予定通り進んでいることを強調した。

 また、中東軍司令部は28日夜、イラク南部のバスラでバース党員ら約200人が集まっていた2階建てのビルを空爆したと発表。バグダッド近郊では29日、米軍ヘリコプター部隊がイラクの共和国防衛隊を攻撃し、兵士少なくとも50人を殺害したという。

 各国記者団が集まるバグダッドのイラク情報省ビルも29日未明に爆撃を受け、建物の上層部が損壊した。死傷者の有無は不明。ロイター通信によると、中東軍は巡航ミサイルで情報省を攻撃したことを認めた。

 ナジャフ近郊では29日、タクシーの運転手が米第3歩兵師団の兵士らに手を振って助けを求め、兵士らが駆け寄ったところタクシーが爆発した。米軍当局によると、米兵4人が死亡した。イラク戦争の開始以来、米英軍に対する自爆攻撃が確認されたのは初めて。

 【アンマン竹之内満】イラクのサハフ情報相は29日の会見で、28日夜からの米英軍の空爆で、イラクの民間人140人が死亡、351人が負傷したことを明らかにした。

 情報相は、米英軍が多数の小爆弾をばらまくクラスター(集束)爆弾を使用したことを指摘した。空爆ではバグダッドで68人、ナジャフで35人、カルバラで6人などの死者が出たという。

 また、イラン国境付近などで米軍の無人偵察機「プレデター」計2機を撃墜したと述べた。

 【ワシントン中島哲夫】29日付の米紙ワシントン・ポストは、イラク戦争の開戦後に米国の複数の秘密工作チームがバグダッドなど都市部に潜入し、要人暗殺や爆破活動を行っていると報じた。活動内容を知る当局者の話として伝えた。

 同紙によると、これらのチームは米中央情報局(CIA)の準軍事部門や米軍特殊部隊のメンバーで構成され、狙撃手や車、建物に仕掛ける爆弾の専門家を含む。標的はフセイン大統領の側近グループに属する政権党バース党の幹部や大統領警護隊の司令官らで、これまでの1週間余りの間に数人以上の暗殺に成功したという。

[毎日新聞3月29日] ( 2003-03-29-23:50 )


3月30日 9:31
イラク戦争:
米ボストンで数万人が反戦デモ


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 イラク攻撃に反対する反戦デモが29日、米北東部の大学の街ボストンで行われ、学生や大学職員、家族連れの市民ら数万人が「不条理で間違った戦争」などと叫びながら行進した。

 ロイター通信は、ボストンで行われた抗議デモとしては少なくとも過去30年間で最大級の規模だろうとする当局者の話を伝えた。

 米ニューヨーク・マンハッタンの中心部にあるタイムズスクエアでも同日、反戦デモが行われ、数百人が「戦争中止」などを訴えた。

 AP通信によると、抗議行動はイラク戦争中止だけでなく中東地域の平和などを求める計20団体が参加。イラク国旗や「戦争中止」「平和を」などと書かれたプラカードを掲げて平和を訴えた。(ニューヨーク共同)

[毎日新聞3月30日] ( 2003-03-30-09:28 )


3月30日 9:31
イラク戦争:
イラク防空部隊司令官が更迭 英報道官


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 英国のブレア首相の報道官は29日、イラクのフセイン大統領のいとこで、防空部隊のムサヒム・サーブ・ティクリティ司令官が更迭されたことを明らかにした。

 報道官によると、英米軍機へのミサイル攻撃がうまくいかなかったことが更迭の理由とみられる。報道官は「イラクの地対空ミサイルは多くが目標に命中せず、爆発する前に落下している」と語った。

 26日と28日にバグダッドの市場にミサイルが直撃、多数の市民が死亡したことについては「イラクのミサイルと断言するわけではない」としながらも「そう説明することは可能だ」と述べた。

 報道官は、最初のミサイル直撃は「米英軍の責任との証拠はまだ見つかっていない」とし、28日のものについては「調査中」と語った。イラク側は両日のミサイル直撃は米英軍による誤爆と非難している。

 また、バグダッド市内に落下したイラクのミサイルについて、報道関係者が現場に到着する前に、破片を回収するよう指示が出ていると述べた。後任の防空部隊司令官には、シャヒン・ヤシン・ティクリティ氏が任命されたという。(ロンドン共同)

[毎日新聞3月30日] ( 2003-03-30-09:28 )


2003年03月30日 イラク戦争:制圧した港湾管理を米企業に発注 英側に不快感

 【ロンドン岸本卓也】米英軍が制圧したイラク南部ウンムカスルの港湾管理事業を米政府が米企業に発注したことに対し、英国側の不快感が募っている。港湾管理をめぐる米英の不協和音はイラクの復興事業の米国主導を狙うブッシュ米政権と国連主導を主張するブレア英政権の対立を象徴している。

 英ガーディアン紙や英経済専門家などによると、米政府国際開発庁は24日、ウンムカスルの港湾管理事業を総額480万ドル(約5億8000万円)で米国の港湾サービス会社に発注する契約を交わしたことを発表した。契約には港湾の荷役や警備など港湾事業を取り仕切る権利が含まれている。

 この米政府の発注に対し、ウンムカスルを制圧した後に港湾管理をしている英軍のバリッジ空軍中将は27日、「港湾管理権は将来的にイラク人に返還する」と発表した。米政府から受注を獲得した米国企業については「一時的に管理を任すだけ。英国は帝国主義的な行動をしたくない」と米政府を暗に批判した。

 英軍は制圧前に港湾を管理していたイラク人の職員らを職場に復帰させる方針だが、米政府から港湾管理を受注した米国企業が英軍の方針に従わない可能性もある。

 米政府は開戦前から米企業主導の復興事業計画を策定し、開戦後にはウンムカスルの港湾管理事業のほかに油田破壊防止事業や炎上した油井の消火作業などを米企業に発注した。

 ブッシュ米大統領とブレア英首相は27日にワシントン郊外で会談し、イラクの戦後復興問題も話し合った。英政府筋によると、首脳会談で結論が出なかったといわれ、復興問題での米英間の考え方の違いは解消されていない。

[毎日新聞3月30日] ( 2003-03-30-19:39 )


2003年03月30日 反戦デモ:世界中で展開 ベルリンでは3万人が「人間の鎖」

 【ウィーン福井聡】イラク戦争に反対するデモが29日、世界規模で広がった。反戦機運の強いドイツでは約10万人が参加し、ベルリンでは3万人が手をつないで「人間の鎖」を作り、「アメリカのテロを止めろ!」などと叫んだ。反戦デモはワルシャワ、パリ、モスクワ、ソウル、サンチアゴなどに広がり、30日も各地で予定されている。

 ドイツではシュトットガルトやフランクフルトなど米軍基地のある地域でも基地施設を囲む形でデモが展開され、アテネやワルシャワではデモは米国大使館に向かった。

 フランクフルトのデモに参加した元高校教師、シュナイダーさん(63)は「イラクのフセイン大統領を弁護するつもりは全くないが、戦争という手段はどんな場合でも間違っている」と話した。

[毎日新聞3月30日] ( 2003-03-30-19:32 )


2003年03月31日

イラク戦争:
米大統領、首都攻略予定通り推進 長期戦の声も 

 米中東軍のフランクス司令官は30日、「戦争がどのくらい続くかは誰も分からない」と述べ、長期戦の可能性を強く示唆した。フーン英国防相も同日、長期化を示唆した。補給不足やイラク側のゲリラ攻撃などで作戦に支障が出ていることが背景にあるとみられる。だが、ブッシュ米大統領は29日、幹部会議を開き、予定通りバグダッド攻略を積極推進する方針を決めた。これに対し、ラマダン・イラク副大統領は29日の会見で、バグダッド南方のナジャフ近郊で米兵4人を殺害した自爆攻撃に言及し、今後も自爆攻撃を継続する方針を強調した。

 【アッサイリヤ基地(カタール)福島良典】米中東軍のフランクス司令官は30日、記者会見で、イラク戦争の長期化に言及するとともに、米内外から批判が出ている地上部隊の早期投入に関して、イラク南部の油田をフセイン政権の破壊計画から守るのが目的だったと反論した。

 米誌ニューヨーカーは開戦を急ぐラムズフェルド米国防長官が作戦立案者から提出されていた増派要請を再三、退けていたと報じた。これに関してフランクス司令官は「地上戦の開始前に増派を要請したことはない」と否定した。

 また、空爆開始からわずか半日後に地上部隊を投入したことについて司令官は「(フセイン)体制がイラク南部の油田を破壊しようとしているとの証拠を入手していた。破壊阻止の作戦目標は私が決断を下した」と述べた。

 米英軍はイラクのゲリラ戦法に悩まされ、脆弱(ぜいじゃく)な補給路などの難題を抱えているが、司令官は戦果を列挙、「(作戦の)現状は特筆すべきものだ。イラク国民は解放者を歓迎するはずだ」と強調した。

 米英軍は29日から30日にかけて、バグダッドの共和国防衛隊に加え、ゲリラ部隊「フェダイン・サダム」の訓練基地、大統領宮殿などを空爆したと明らかにした。米空軍幹部はAP通信に、米英軍が空爆の75%をバグダッド周辺の共和国防衛隊に集中していると明らかにした。

 一方、英国のフーン国防相は30日、BBCラジオで、イラク戦争で展開している約4万5000人の英軍部隊について「紛争が何カ月も長引くならば、彼らを交代させなければならない」と述べ、戦争の長期化を視野に入れていることを明らかにした。

 【ワシントン中島哲夫、藤原章生】ロイター通信は30日、バグダッド南方に展開している米軍部隊の兵士らが少なくとも2週間はざんごうを掘って待機せよとの命令を受けていると伝えた。同通信の報道は、待機命令を受けたのはバグダッドの南方約100キロに迫った部隊を含む複数の部隊という。

 軍事情報筋によると、米軍はもともと市街戦によるバグダッド攻略には50日間程度を要するとみていたが、ブッシュ政権は市街戦開始以前の終戦を期待していた。だが、30日付の米紙ワシントン・ポストは、一部の米軍事当局者がイラク戦争の決着は夏までずれ込むと見ていると伝えた。

 だが、ラムズフェルド米国防長官は30日、米ABCテレビなどで「戦闘の一時停止や停戦の計画はない」と強調した。マイヤーズ米統合参謀本部議長も米CBSテレビで、バグダッド攻略の具体的方法については「柔軟性のある計画を立てている」と語った。議長はまた、イラク側が継続方針を示した米軍への自爆攻撃について「十分対処できる」と語り、軍事計画に大きな変化がないことを強調した。

 【アンマン春日孝之、竹之内満】イラクのラマダン副大統領は29日の会見で、バグダッド南方のナジャフ近郊で同日行われた自爆攻撃について、直接的な関与には言及しなかったものの、「日常的な軍事作戦だ。我々は侵略者を殺害するため、あらゆる手段を使う」と述べ、「これは単なる始まりに過ぎない」と警告した。

 また、イラク軍報道官は30日の会見で、「すべてのアラブ諸国から総勢4000人以上の義勇兵がイラク入りした」と述べ、イラク軍と義勇兵が今後、自爆攻撃をエスカレートさせると警告した。サハフ・イラク情報相は同日、イラク側が同国南部・中部で米軍の攻撃ヘリ「アパッチ」など2機を撃墜、米兵の乗員2人を殺害したと述べた。一方、クウェートの米軍基地にトラックが突入、米兵15人がけがをした。犯人は不明。

[毎日新聞3月31日] ( 2003-03-31-01:57 )


2003年03月31日

イラク戦争:
米大統領、首都攻略予定通り推進 長期戦の声も 

 米中東軍のフランクス司令官は30日、「戦争がどのくらい続くかは誰も分からない」と述べ、長期戦の可能性を強く示唆した。フーン英国防相も同日、長期化を示唆した。補給不足やイラク側のゲリラ攻撃などで作戦に支障が出ていることが背景にあるとみられる。だが、ブッシュ米大統領は29日、幹部会議を開き、予定通りバグダッド攻略を積極推進する方針を決めた。これに対し、ラマダン・イラク副大統領は29日の会見で、バグダッド南方のナジャフ近郊で米兵4人を殺害した自爆攻撃に言及し、今後も自爆攻撃を継続する方針を強調した。

 【アッサイリヤ基地(カタール)福島良典】米中東軍のフランクス司令官は30日、記者会見で、イラク戦争の長期化に言及するとともに、米内外から批判が出ている地上部隊の早期投入に関して、イラク南部の油田をフセイン政権の破壊計画から守るのが目的だったと反論した。

 米誌ニューヨーカーは開戦を急ぐラムズフェルド米国防長官が作戦立案者から提出されていた増派要請を再三、退けていたと報じた。これに関してフランクス司令官は「地上戦の開始前に増派を要請したことはない」と否定した。

 また、空爆開始からわずか半日後に地上部隊を投入したことについて司令官は「(フセイン)体制がイラク南部の油田を破壊しようとしているとの証拠を入手していた。破壊阻止の作戦目標は私が決断を下した」と述べた。

 米英軍はイラクのゲリラ戦法に悩まされ、脆弱(ぜいじゃく)な補給路などの難題を抱えているが、司令官は戦果を列挙、「(作戦の)現状は特筆すべきものだ。イラク国民は解放者を歓迎するはずだ」と強調した。

 米英軍は29日から30日にかけて、バグダッドの共和国防衛隊に加え、ゲリラ部隊「フェダイン・サダム」の訓練基地、大統領宮殿などを空爆したと明らかにした。米空軍幹部はAP通信に、米英軍が空爆の75%をバグダッド周辺の共和国防衛隊に集中していると明らかにした。

 一方、英国のフーン国防相は30日、BBCラジオで、イラク戦争で展開している約4万5000人の英軍部隊について「紛争が何カ月も長引くならば、彼らを交代させなければならない」と述べ、戦争の長期化を視野に入れていることを明らかにした。

 【ワシントン中島哲夫、藤原章生】ロイター通信は30日、バグダッド南方に展開している米軍部隊の兵士らが少なくとも2週間はざんごうを掘って待機せよとの命令を受けていると伝えた。同通信の報道は、待機命令を受けたのはバグダッドの南方約100キロに迫った部隊を含む複数の部隊という。

 軍事情報筋によると、米軍はもともと市街戦によるバグダッド攻略には50日間程度を要するとみていたが、ブッシュ政権は市街戦開始以前の終戦を期待していた。だが、30日付の米紙ワシントン・ポストは、一部の米軍事当局者がイラク戦争の決着は夏までずれ込むと見ていると伝えた。

 だが、ラムズフェルド米国防長官は30日、米ABCテレビなどで「戦闘の一時停止や停戦の計画はない」と強調した。マイヤーズ米統合参謀本部議長も米CBSテレビで、バグダッド攻略の具体的方法については「柔軟性のある計画を立てている」と語った。議長はまた、イラク側が継続方針を示した米軍への自爆攻撃について「十分対処できる」と語り、軍事計画に大きな変化がないことを強調した。

 【アンマン春日孝之、竹之内満】イラクのラマダン副大統領は29日の会見で、バグダッド南方のナジャフ近郊で同日行われた自爆攻撃について、直接的な関与には言及しなかったものの、「日常的な軍事作戦だ。我々は侵略者を殺害するため、あらゆる手段を使う」と述べ、「これは単なる始まりに過ぎない」と警告した。

 また、イラク軍報道官は30日の会見で、「すべてのアラブ諸国から総勢4000人以上の義勇兵がイラク入りした」と述べ、イラク軍と義勇兵が今後、自爆攻撃をエスカレートさせると警告した。サハフ・イラク情報相は同日、イラク側が同国南部・中部で米軍の攻撃ヘリ「アパッチ」など2機を撃墜、米兵の乗員2人を殺害したと述べた。一方、クウェートの米軍基地にトラックが突入、米兵15人がけがをした。犯人は不明。

[毎日新聞3月31日] ( 2003-03-31-01:57 )


2003年03月31日

自爆テロ:
自爆行為は「イラクへの贈り物だ」 イスラム聖戦

 【エルサレム海保真人】イスラエル中部ネタニヤで30日に発生した自爆テロで、犯行声明を出したパレスチナのイスラム原理主義組織「イスラム聖戦」の幹部は同日、ベイルートでカタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」に対し「これはイラク国民への連帯を示す我々のやり方だ」と語り、自爆行為を「英雄的なイラク人への贈り物」と語った。

 イスラム聖戦によると、実行犯はヨルダン川西岸トゥルカルム近郊に住む19歳の男という。同組織はイラク人に米英との戦いを促す一方、自らはイスラエルへの攻撃を行い、共闘姿勢を鮮明にし始めたと言える。自爆テロでは約30人が負傷した。

[毎日新聞3月31日] ( 2003-03-31-10:09 )


2003年03月31日 イラク戦争:劣化ウラン弾 湾岸戦争の後遺症に悩む市民に衝撃

 【アンマン小倉孝保】米軍当局はイラクの首都バグダッドの爆撃で、劣化ウラン弾を使用したことを認めている。どの程度の劣化ウラン弾が今回のイラク戦争で使用されているのか、実態は不明だ。しかし、湾岸戦争後のがん多発などの後遺症に悩むイラク市民や医師たちは、大きな衝撃を受けている。

 イラク南部のバスラ・サダム教育病院に入院していた女子中学生、デラルさん(16)は昨年7月、脚の痛みに気づいた。次第に脚を引きずるようになり、骨がんと診断された。医師団は湾岸戦争の際に使用された劣化ウラン弾の後遺症とみている。

 大きく腫れ上がった左足のひざを医師に見せながらデラルさんは「将来は学校の先生になりたいけど、これでは無理かな……」と不安な表情。付き添っていた母(46)は「娘をこんな病気にしておいて。また、戦争を繰り返そうとしている」と憤った。

 イラク南部バスラの小児婦人科病院でジャセム医師(32)は「戦争の被害は一時のことではない。その後、将来にわたって罪のない人たちを苦しめる」と語り、同僚の医師たちも口々に「米軍には劣化ウラン弾は使ってほしくない」と話す。

 イラク南部のバスラでのがん発生率は10万人当たり88年は11人だったが、98年75人、01年116人と急増。また、死者数は88年の34人から98年428人、01年603人と17倍となった。同じ家族内でがん患者が複数以上同時に発生したケースが約50件あり、医師の経験則からすれば「極めて異常な状況」という。

 一方、米軍当局は26日の記者会見で、英米軍が劣化ウラン弾を使用していることを認めながらも「劣化ウランの使用は極めて少数」と説明した。さらに、「人体への影響は攻撃対象の極めて近くにいる場合だけ」と、一般住民への影響の可能性を否定し「科学的に(劣化ウラン弾とがんの発生などとの)因果関係が証明されていない」との立場を取っている。

 世界保健機関(WHO)は01年1月から、イラク保健省と協力して劣化ウラン弾の影響についての本格的な調査に入った。しかし、調査は進まず、イラク側は「米国の圧力でWHOが調査に消極的になった」(ムバラク・イラク保健相)と批判していた。

 サダム教育病院のがん治療センター長、ジャワッド・アリ医師(58)は「因果関係がはっきりしないとしても、その可能性が捨てきれないなら、これ以上劣化ウラン弾を使用する愚は犯すべきでない」と訴えている。

◇「民間人の被害拡大」と批判の声

 劣化ウラン弾の使用は「第二の対人地雷」と言われるクラスター弾の使用とともに、「民間人の被害が拡大する」と国内からも非難の声が強まっている。

 劣化ウランは、ウラン235を原子炉や核兵器に使うために濃縮する過程で生じる「核のごみ」で、他の金属に比べて比重が高い。貫通力に優れ着弾時に発火するなど破壊効果が高い。91年の湾岸戦争で米軍が使用した。99年のコソボ紛争でもNATO(北大西洋条約機構)軍が使用したが、使用後数年たって兵士や付近住民にがんや白血病などのさまざまな健康被害が報告され、劣化ウラン弾との因果関係が指摘される。

 今回のイラン戦争では今後想定される戦車同士の戦闘などに多用される可能性がある。

 コソボ紛争などでの被害を現地調査したNGO(非政府組織)「ピースボート」の中原大弐共同代表は「戦闘で使われれば、劣化ウランは砂ぼこりに交じって空中に舞い、兵士だけでなく民間人の体にも入る。米軍は民間人は攻撃しないと言っているが、戦争が終わって数年後に民間人に影響が出てくる。使用に強い怒りを覚える」と話す。

 広島県原水協と同県被団協は27日、ブッシュ米大統領あての抗議文を米国大使館に送付。この中で「劣化ウラン弾は人体に与える影響が極めて大きい。このまま進めば、イラクの化学兵器使用、米国の小型核兵器使用という最悪の事態を招きかねない」と訴えている。 【宮澤勲】

[毎日新聞3月31日] ( 2003-03-31-19:34 )


2003年03月31日

イラク戦争:
アーネット記者を解雇 国営テレビ出演で米NBC

 【ニューヨーク支局】米NBCは31日、戦時下に個人的な発言をしたとして、ピーター・アーネット記者を解雇したと発表した。同記者はCNN記者時代、湾岸戦争(91年)でバグダッドからの報道を続け、世界的に名を知られるようになった。アーネット記者がイラク国営テレビのインタビューに対して、米国の戦争計画は失敗だったと発言したことが問題視された。

 AP通信などによると、インタビューは30日に応じたもので、この中でアーネット氏は、イラクの友人が「愛国心と米英に対する抵抗が高まっている」などと紹介。そのうえで「米国は戦争計画を練り直している。最初の計画は、イラクの抵抗により失敗した。今、米国は別の計画を立てようとしている」と述べた。さらに「明らかに米軍の戦争計画は、イラク軍の力を見誤ったものだ」と話した。

 30日時点でNBCは「彼はプロの礼儀として答えたもので、発言はよく分析されたものだ」などとアーネット記者をかばっていた。ところが31日朝になり、NBCの番組の中でアーネット記者の解雇を発表した。NBC広報担当者は「アーネット氏がイラクの国営テレビに出たことは誤りで、個人的意見を述べたことも間違いだった」と説明した。

 アーネット氏は番組で「私は米国民に謝罪したい」と当惑している表情を見せた。

[毎日新聞3月31日] ( 2003-03-31-23:42 )



イラク外相が帰国、徹底抗戦を表明
 【バーレーン=岐部秀光】アラブ外相会議出席のため開戦後に一時イラクを出国していたサブリ外相は31日までに帰国した。バグダッドで同日午後、記者会見し「米英の侵略軍に最大限の被害を与える決意だ」と徹底抗戦の姿勢を表明した。

 外相は「敵は敗北の泥沼に足を踏み入れておりイラクの砂漠は米英兵の墓場となる」などと挑発。一方で「米英の侵略の背後にはイスラエルがいる」と指摘し、アラブ各国政府が民衆の声に応じて反米で団結するべきだと呼びかけた。 (朝日23:39)

4月01日 19:59
イラク戦争:
米空母キティホーク、連日大規模空爆を実施


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 【米空母キティホーク艦上(ペルシャ湾北部)井上卓弥】空母キティホーク当局者は1日、イラク領内に出撃した艦載機53機が31日昼から1日未明にかけ、バスラ南部海上のイラク軍フリゲート艦やバグダッド南部の地対空ミサイル発射装置などを標的に、クラスター(集束)爆弾やレーザー誘導爆弾計72基を投下したと発表した。先月末から連日、爆弾数十個が投下されており、大規模空爆が続いている。

 また、米空母群を指揮する第5艦隊司令部(在バーレーン)は、ペルシャ湾に展開する空母コンステレーションの艦載給油機S3Bバイキング1機が同日早朝、作戦飛行から帰艦後に飛行甲板上でバランスを崩し、海中に転落したことを明らかにした。乗員2人は救出され無事という。

[毎日新聞4月1日] ( 2003-04-01-19:54 )





2003年04月01日

イラク戦争:
空爆で市民19人死亡 米大統領「勝利に近づく」

 【アッサイリヤ基地(カタール)福島良典、アンマン春日孝之、ワシントン斗ケ沢秀俊】ロイター通信によると、1日早朝、イラク南部ナシリヤの北方約35キロにあるシャトラの検問所で、米海兵隊が突進してきた小型トラックに発砲、民間人とみられる運転手1人が死亡、同乗の中年男性1人が負傷した。

 米海兵隊員が現場で記者団に語ったところによると、トラックは猛スピードで検問所に近づき、鉄条網に気が付かなかった模様だという。兵士の1人は「自爆攻撃だと思った」と話しているが、男性は2人とも非武装で、トラックも荷物を積んでいなかった。

 また、AP通信によると、バグダッド南西約80キロのカルバラ近郊の町ヒンディーヤでは第3歩兵師団の戦車部隊が31日夜までに中心部を制圧、ユーフラテス川の対岸に撤退した首都防衛にあたるイラク精鋭部隊「共和国防衛隊」を攻撃している。

 米中東軍によると、米英軍は31日午後10時半(日本時間1日午前4時半)ごろ、バグダッド東部にあるイラク五輪委員会ビルなどを精密誘導爆弾で空爆した。同委ではフセイン大統領の長男ウダイ氏が委員長を務めている。

 一方、イラクのサハフ情報相は1日の会見で、イラクで「人間の盾」として活動する外国人が乗ったバス2台が米英軍の空爆を受け、数人が負傷したと明らかにした。現場はヨルダン国境から東約120キロにあるイラク西部の町ルトバ。負傷者の中には米国人が含まれているという。事実とすれば、開戦後に「人間の盾」の活動家が負傷したのは初めて。

 情報相はまた、バグダッド南方バビロンなどで1日、米英軍の空爆で子供9人を含む市民19人が死亡、約100人が負傷したと発表した。

 ブッシュ米大統領は31日、米ペンシルベニア州フィラデルフィアの沿岸警備隊で演説し、米英軍が「11日間でイラク西部、南部の大半を支配下に置いた」と強調、「我々は日々バグダッドに、勝利に近づいている」と述べた。

 また、米統合参謀本部のマクリスタル作戦副部長は31日の会見で、米英軍がバグダッド南部と北部に展開する共和国防衛隊に集中的な空爆を行い、「かなり弱体化させた」との見解を示した。

[毎日新聞4月1日] ( 2003-04-01-21:17 )


4月01日 21:19
中越首脳会談:
マイン越書記長が訪中へ イラク戦争など協議


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 【北京・浦松丈二】中国外務省は1日、ベトナムの最高指導者ノン・ドク・マイン共産党書記長が今月7〜11日、中国の胡錦涛国家主席(総書記)の招きで訪中すると発表した。胡氏が3月15日に国家主席に就任して以来、初顔合わせとなる。

 中越首脳はイラク戦争に反対する立場から、戦況や復興などを巡って意見交換する見通しだ。同省の劉建超報道局副局長は同日の会見で「中越両国は国境画定を終え、ハイレベルの往来や経済関係も順調だ」と関係発展に期待を表明した。

[毎日新聞4月1日] ( 2003-04-01-21:15 )


4月01日 20:55
イラク戦争:
伝統的保守派と新保守主義 米高官の暗闘激化 


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 【ワシントン佐藤千矢子】イラク戦争が長期化の様相を見せる中、ブッシュ共和党政権を支える保守層内で、「伝統的保守派」と「新保守主義」(ネオ・コンサーバティブ=ネオコン)の対立が強まってきた。対イラク政策をめぐって、現ブッシュ政権の高官たちと、父親の元ブッシュ政権の高官たちの「暗闘」も指摘されている。

 3月31日付の米紙ワシントン・ポストは、ブッシュ父子の側近たちの間で高まる不協和音に言及した。ブッシュ元政権の高官らは、チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官、ウルフォウィッツ国防副長官の「3人組」がブッシュ大統領に対して行っている政策提言は「誤りで、米国の長期的利益にとって危険でさえある」と指摘、それを大統領に納得させようと「舞台裏の努力」を始めたというのだ。

 記事では「ネオコン」の言葉は使っていないが、チェイニー副大統領ら3氏はネオコンの影響を強く受けている。ネオコンはユニラテラリズム(単独行動主義)の色彩が濃く、イラク戦争を強力に推進し、「米軍がイラクに侵攻すればイラク国民は歓迎し、短期で勝利できる」などと楽観論を強調してきた人々だ。

 一方、ブッシュ元政権の高官らは比較的、国際協調を重視する伝統的保守派で、パウエル国務長官もこちらの勢力に属する。チェイニー氏もブッシュ元政権の国防長官とはいえ、いまや国際協調路線とは相入れない立場にある。

 伝統的保守派は、大統領を直接、説得できるのは「父親しかいない」と認識しているが、「まだそうする時期ではない」と見ている。昨夏、ブッシュ元大統領の補佐官(国家安全保障問題担当)だったスコウクロフト氏が「同盟国の支持なくイラク攻撃に踏み切れば、対テロ戦争への支持が失われる」などと表明したところ、ホワイトハウス内では同氏の出入りを歓迎しない空気が強まった。伝統的保守派は、大統領を説得する政治的環境はまだ整っていないと考えている。

 一方、「3人組」の一角、ラムズフェルド長官は、迅速な兵力展開やハイテク兵器を駆使した戦争を追求。湾岸戦争時の米統合参謀本部議長だったパウエル国務長官が「圧倒的な軍事力投入」を柱とした「パウエル・ドクトリン」を主張しているのに対し、ラムズフェルド長官は時代遅れの理論として葬り去ろうとしているという。

[毎日新聞4月1日] ( 2003-04-01-20:51 )


2003年04月02日

イラク戦争:
米地上軍、バグダッド南西で共和国防衛隊と戦闘

 【アッサイリヤ基地(カタール)福島良典、ワシントン佐藤千矢子】米軍地上部隊は1日、バグダッド南西約80キロのカルバラへの進撃を開始、イラク精鋭部隊「共和国防衛隊」との間で、開戦以来、最大規模の地上戦を展開した。同時に米英軍は共和国防衛隊に対する大規模空爆を続行しており、首都攻防戦に備え、包囲網をせばめている。

 ラムズフェルド米国防長官は同日の会見で米英軍は「(バグダッドを)包囲しつつある」と強調、米メディアなどでフセイン政権との「停戦交渉のうわさ」が伝えられていることについて、これを否定し、無条件降伏以外の選択肢はないと力説した。

 数日間、補給を待っていた米英軍は1日、進撃を再開。AP通信によると、米軍は1日夜、カルバラ近郊の共和国防衛隊「メディナ師団」に対して巡航ミサイル、B52爆撃機などによる大規模空爆を実施。米中東軍によると、米第3歩兵師団はカルバラ東郊のヒンディーヤ付近でイラク軍部隊を攻撃、ユーフラテス川にかかる橋を確保した。米歩兵部隊は2日早朝、カルバラを包囲、戦闘機、攻撃ヘリコプターなどの支援を受けて制圧に向けた作戦を開始した。第101空てい師団はバグダッド南方約160キロにあるナジャフの空港を制圧したという。

 AP通信はまた、米海兵隊がバグダッド南方約160キロのディワニーヤで共和国防衛隊との8時間にわたる激戦を展開、イラク兵少なくとも80人を殺害したと伝えた。米軍はバグダッド南方クート近くの空軍基地も支配下に置いた。

 さらに、イラク戦争に増派された第4歩兵師団の第1陣が1日、クウェートに到着。英紙タイムズは米軍筋の話として、バグダッドへの全面攻撃が48時間以内に始まる可能性があると伝えた。

 一方、マイヤーズ米統合参謀本部議長は、共和国防衛隊の6個師団のうち、メディナ、アルニダ、ハンムラビ、バグダッドの4師団に対し、米英軍が「陸空両面から切れ目ない攻撃を行い、戦闘能力を著しく低下させた」と語った。

 同議長はまた、イラク北方のキルクーク防衛にあたっていたネブカドネザル師団の一部や、フセイン大統領の故郷ティクリート防衛にあたっていたアドナン師団がいずれもバグダッド南方に移動したと指摘した。

[毎日新聞4月2日] ( 2003-04-02-13:25 )


4月02日 19:02
イラク大統領:
国民に新たな「徹底抗戦」呼びかけ


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 【アンマン春日孝之】AP通信によると、イラクの衛星テレビは2日、フセイン大統領が国民に「徹底抗戦」を呼びかける新たな声明を流した。

 サハフ情報相が1日、国営テレビを通じ代読した声明に続くもので、米英軍のバグダッド侵攻が迫る中、改めて国民の結束を図る狙いがあるとみられる。今回の声明は軍服姿のキャスターが読み上げ、「戦え。勝利は我らの手中にある」と鼓舞した。

[毎日新聞4月2日] ( 2003-04-02-18:58 )


米上下両院の歳出委員会、イラク戦争関連補正予算案を承認
 [ワシントン 1日 ロイター] 米上下両院議会の歳出委員会は1日、ブッシュ米大統領が提案したイラク戦争の戦費、同盟国や航空業界への支援を目的とする約800億ドルの補正予算案を承認した。

上下両院委員会が今回承認したのは、ブッシュ大統領が提案した750億ドルに、イラク戦争で打撃を受けている航空業界向けに30億ドル以上の支援が加わり、総額で780億ドルを超える規模となった。

議会委員会で承認された法案は、「復活祭」で議会が休会に入る前に可決して大統領に送付できるよう、週内に上下両院議会に送られ、採決に向けた調整を行う。

両委員会の承認した案は、イラク戦費に625億ドルを充てることを認めるものの、戦費を補てんする目的で国防総省に600億ドルという巨額を配分するのでなく、複数の分野に分けて配分する内容となっている。


仏外相「イラク戦争、米英を支持」
 【パリ=柴山重久】イラク戦争を巡って米英と対立していたフランスに関係修復を模索する動きが出てきた。ドビルパン仏外相は1日夜、「仏はイラク戦争で米国と英国の側に立つ」と発言し、開戦後初めて米英支持を明確に表明した。パウエル米国務長官が3日訪欧するのをにらんで融和姿勢を強調、イラクの戦後復興で協調体制を敷く狙いがあるとみられる。 (日経16:00)


韓国国会、イラク派兵案に同意
 【ソウル2日共同】韓国国会は2日、本会議を開き、イラク戦争で工兵隊など700人を派兵することに対する同意案を賛成多数で可決した。同意案は二度にわたり採決が延期されるなど難航したが、採決では256議員が出席し、179議員が賛成、68議員が反対、9議員が棄権した。

 韓国は米韓同盟強化の立場から、最大600人の工兵隊と最大100人の医療支援団を派遣、米国などの基地運営や診療活動、イラク戦争終了後の復旧支援や救護活動などに従事する。盧武鉉大統領は同日午前、国会の所信表明演説で「難しい時に米国を助け、米韓関係を強固にすることが北の核問題を平和的に解決することになる」と訴え、派兵を認めるよう訴えた。野党ハンナラ党は大統領演説を受けて採決に同意した。

 韓国では、イラク戦争で派兵をすれば、朝鮮半島で危機が訪れた際に戦争に反対する名分がなくなると派兵反対の動きが活発化。一部の市民団体は、同意案に賛成した議員について、来年春の総選挙で「落選運動」を展開すると圧力を加えるなどしていた。 (19:16)

韓国大統領「イラク派兵は北朝鮮問題解決のため」
 【ソウル=山口真典】韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は2日、就任後初の国会における国政演説で「北朝鮮の核開発問題を平和的に解決するため、強固な韓米協調が何より重要だ」と述べ、イラク戦争への派兵に同意するよう訴えた。

 韓国では反戦や反米運動が高まっており、国会は政府が閣議決定した工兵部隊など700人の派兵同意案採決を2度にわたり延期している。

 盧大統領は「イラク派兵を決めたのは国民の安全を守り(朝鮮半島の)戦争を防ぐためだ」と明言。外国人投資家も引き合いに出し「投資家は戦争の危険よりも韓米関係に葛藤(かっとう)が生じることを不安視している」と語り、派兵に繰り返し理解を求めた。

 同時に北朝鮮の核問題に関して「我々との合意がない限り、米国が北朝鮮の核問題を一方的に処理することはないだろう」と指摘。平和的な解決に向けて米韓両国の間に認識のズレはないと強調した。 (13:07)