331―16 | 対イラク戦勃発(1) |
ウォードランキスト・ブッシュは遂に「レッツ・ゴー」サインを出した。米東部時間2003.3.19日夜(日本時間20日午前)、米軍はイラクへの軍事作戦を開始した。戦前の予想はイラク軍は総崩れ、イラクの内部崩壊が時間の問題であるとしていたが、その戦況は如何に相成るや。 こたびの戦争の注目点は次のことにある。一つは、米軍が国連決議を得ることなく単独派兵で仕掛けたことである。これにより戦争の大義名分である「錦の御旗」を持たぬまま突入した、という風変わりな戦争となっている。果たして、持たぬ「錦の御旗」の効用は如何に。これが興味の湧くところである。 第二に、こたびのブッシュの戦意の主眼は奈辺にあるのか。イラクが「悪の枢軸」故の懲罰なのか。石油利権なのか。イスラエルを廻る中東紛争解決の為の危険な賭けなのか。ブッシュ一族の利権行為なのか。世間の評論も定まっていない。つまり、戦争に対する確たる理由が秘せられているという不思議な戦争であるところが興味の湧くところである。 第三に、千歩へりくだってブッシュの言い分を認めたにせよ、世の中為しても許されることと許されないことの区別があるとするべきではないか。こたびのブッシュ的過干渉はそのケジメを一挙になし崩しにしているが、今後この後遺症は如何に相成るや。 第四に、こたびの戦争に伴う支出が米国経済に如何にリアクションをもたらすのか。さしもの米国も一挙に老大国への道へ転がり込むのではないのか。その世界経済に及ぼす影響は吉か凶か。これが興味の湧くところである。 第五に、こたび世界中に生み出された反戦平和運動が今後どのような平和機関の創出に向かうのか。権威失墜した国連に変わる何らかの恒常的機関創設まで向かうのか否か。これが興味の湧くところである。 以上の関心から、以下追跡、検証していきたい。 2003.3.25日 れんだいこ拝 |
米国とイラクとの敵対関係は湾岸危機にまでさかのぼる。90年8月にイラク軍が隣国クウェートに侵攻・占領したのが直接の引き金となった。米軍が主導する多国籍軍が91年1月、攻撃を開始、翌2月にイラク軍を撤退させた。クウェート侵攻後、イラクに対する国連経済制裁が発動され、12年以上たった現在も制裁は続いている。 イラクは制裁の解除を目的にたびたび自ら危機を演出、米英軍は98年12月にもバグダッドを中心に大規模な空爆を行った。だが、その後4年は大量破壊兵器をめぐる国連のイラク査察が頓挫。国連安保理決議1441に基づき、査察が昨年11月下旬に再開された。米国はこの査察をイラクに対する「最後のチャンス」としていた。だが、フセイン政権はさまざまな条件を付けて協力せず、米英は「重大な違反」を主張。このため、同決議に言う「深刻な結果」すなわち軍事力による制裁を科す以外にないと判断した。 米政府は当初、武力行使容認について、より明確な内容を盛り込んだ国連安保理新決議を望んだ。だが、フランス、ロシアなどの反対で採択の見通しがつかず、新決議なしで軍事的解決を急ぐことになった。 |
【米英軍、対イラク戦の火蓋を切る。ブッシュ「レッツ、ゴー」で発動】 |
米政府は、17日フセイン大統領と2人の息子に48時間以内の亡命を求めたが、同大統領らがこれを拒否したため、期限切れ(米東部時間19日午後8時)に伴い攻撃に踏み切った。米東部時間3.19日夜(日本時間20日午前)、イラクへの軍事作戦を開始した。攻撃はバグダッド時間20日午前5時半(日本時間同日午前11時半)ごろ始まった。 米英軍は巡航ミサイルなどを使って、バグダッドなどに攻撃を加えた。紅海やペルシャ湾に展開する米海軍艦艇などが多数の巡航ミサイル・トマホーク約40発を発射したほか、レーダーに探知されにくいF117ステルス戦闘機などがフセイン大統領ら政権幹部を標的に、地中深く貫通する特殊貫通爆弾バンカーバスターなどを使った集中的な爆撃を敢行している模様。 |
フライシャー米大統領報道官は、ホワイトハウスで記者団を前に「イラクに対する武装解除が始まった」ことを発表し、ブッシュ大統領もテレビ演説し、「我々はイラクを武装解除する初期段階の軍事作戦とイラク国民の解放を始めた」と開戦を宣言した。【イラク開戦:「武装解除する初期段階の軍事行動」米大統領声明】 ◇米大統領演説骨子 一、米国などの連合軍がイラクの武装解除と国民の解放のため、軍事作戦を展開している。 一、私の命令で、連合軍がイラクへの選択的攻撃を開始した。 一、35カ国以上が決定的な支援を行った。 一、民間人の犠牲を防ぐため全力を尽くす。 一、軍事作戦は、予想以上に長く、困難かもしれない。 一、イラクが統一され、安定した自由な国となるまで継続した関与が必要だ。 一、我々はイラクから脅威を取り除き、国を国民の手に戻す以外に野心はない。
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一昨年9月の同時多発テロ以降、イラクとの敵対姿勢を強めてきた米政府はついにフセイン政権打倒を目指す軍事行動に踏み切ったが、国連安保理の容認決議を経ない先制攻撃が国際的な非難を呼び起こすのは必至だ。対イラク開戦を受け、中東情勢が一気に緊迫するのは避けられず、長引けば世界景気に影響が及ぶことも予想される。
フセイン大統領の長男ウダイ氏は「米国の侵略に対する聖戦」を宣言した。イラク軍は対空砲火で応酬している。 一方、英スカイニューズ・テレビはイラクの2個師団が投降の意向を示していると伝えた。それぞれ1万8000人から3万人規模という。 |
英首相イラク攻撃時演説 | Prime Minister's Address to the Nation |
私は火曜夜に、イラクでの軍事行動に参加するよう国軍に命令を降しました。
英国軍は陸海空軍とも作戦に従事します。サダム・フセインを政権の座から追放し、大量破壊兵器の軍備を解除することが目的です。 この行動方針について、我が国内で深刻な見解の相違があることは知っています。しかし、私はまた、祈りと願いを我々の軍隊に送りつつ、英国民が団結することも知っています。彼らは世界で最も素晴らしい軍隊であり、彼らの家族と全ての英国国民は彼らを誇りに思っています。 今日の英国に対する脅威は私の父親の世代のものとは異なります。大国間の戦争はなく、ヨーロッパは平和です。冷戦はすでに過去の記憶のものとなりました。 しかし、この新しい世界は、イラクのような、大量破壊兵器を装備する国家の残忍なふるまいや、極端なテロリストグループが生じさせる無秩序と混乱によって、新しい脅威に直面しているのです。彼らは私たちの暮らしや自由、民主主義を嫌うのです。 情報の一部に基づいた私の深い危惧は、彼らが脅威がともに手を組み、我々の国と世界に大災害を引き起こすことにあります。専制国家は人命を尊重せず、テロリストは破壊を好むからです。 攻撃を始めれば我々がテロリストの目標になると言う人もいます。実際は、テロリストにとって全ての国家が攻撃目標なのです。バリはかつて一度も対テロリズムの先頭にたったことはありませんでした。米国もアル・カイダを攻撃していませんでした。しかしアル・カイダ米国を攻撃したのです。 英国は、他国の後ろに隠れていたことなどはかつてありませんでした。しかし、我々がたとえ隠れていたとしても、何の役にも立たないでしょう。 もしもテロリストたちが、たった今世界で製造され取引されているような大量破壊武器を入手すれば、彼らは大虐殺を始め、我々の経済、安全、世界平和に想像を越えるような深刻な打撃を与えるのです。 私の首相としての判断は、この脅威が現実のものであり、成長しており、英国がかつて経験した、通常の脅威とは本質的に異なる性質のものになっている、ということです。 12年間、世界は、数十万人が死亡した湾岸戦争の後でサダム・フセイン大統領に軍備縮小を促し続けました。国連査察官たちは、炭そ菌のような膨大な量の生物化学兵器、VX神経ガスやマスタードガスの行方が、イラクではまだ未解明だとしています。 したがって、私たちの選択肢は明らかです。引き下がり、サダム・フセイン大統領がさらに強大になるのを放置しておくか、彼の軍隊を装備解除するために進むのか。退却すれば、一時的に猶予はありますが、我々は数年後には我々の弱さを後悔することになるでしょう。 サダム・フセインだけがただ一つの脅威でないことは事実です。しかし、将来の脅威に、平和をもって対処する最良の道は、現在の脅威に断固として対処することだ、というのもまた事実なのです。 サダム・フセインの追放は、イラクの民衆への祝福となるでしょう。現在、400万人のイラク人がフセインによって追放され、国民の60%は食糧援助に依存しています。何千もの子供たちが毎年栄養失調と疾病によって死んでいます。何十万人もの人々が、家を追われるか殺害されたのです。 私は、イラクの人々がこのメッセージを聞くことを希望します。我々はあなたがたと共にいます。我々の敵はあなたがたではなく、あなたがたの残忍な統治者なのです。 サダム政権後の、我々の人道的支援は総合的なものになります。イラクの民主化を支援します。また、油田からの収入が他人の手に渡らずイラク国家の収入になるように、国連の信託基金に収入を預けます。 イラクだけが我々の関心事ではありません。ブッシュ大統領と私は、イスラエルとパレスチナの安定に基づいた中東の平和を引き受けます。そしてそれらを実現するよう努力します。 しかし、貧困と、環境と、疾病の破壊に直面する我々の挑戦は、世界の安定と秩序を必要とするのです。サダム・フセインのような独裁者、アル・カイダのようなテロリスト・グループは、まさに、世界の存在を脅かす存在なのです。 そのため、私は、今夜、英国軍に活動命令を降しました。そして、これまでそうだったように、我々の国を救う兵士たちが勇気と決意をもって、多くの国の運命を導いてくれるでしょう。 ご静聴ありがとう。 (2003年3月21日 毎日新聞サイバー編集部) |
On
Tuesday night I gave the order for British forces to take part in military
action in Iraq. Tonight, British servicemen and women are engaged from air, land and sea. Their mission: to remove Saddam Hussein from power, and disarm Iraq of its weapons of mass destruction. I know this course of action has produced deep divisions of opinion in our country. But I know also the British people will now be united in sending our armed forces our thoughts and prayers. They are the finest in the world and their families and all of Britain can have great pride in them. The threat to Britain today is not that of my father's generation. War between the big powers is unlikely. Europe is at peace. The Cold War already a memory. But this new world faces a new threat: of disorder and chaos born either of brutal states like Iraq, armed with weapons of mass destruction; or of extreme terrorist groups. Both hate our way of life, our freedom, our democracy. My fear, deeply held, based in part on the intelligence that I see, is that these threats come together and deliver catastrophe to our country and world. These tyrannical states do not care for the sanctity of human life. The terrorists delight in destroying it. Some say if we act, we become a target. The truth is, all nations are targets. Bali was never in the front line of action against terrorism. America didn't attack Al Qaida. They attacked America. Britain has never been a nation to hide at the back. But even if we were, it wouldn't avail us. Should terrorists obtain these weapons now being manufactured and traded round the world, the carnage they could inflict to our economies, our security, to world peace, would be beyond our most vivid imagination. My judgement, as Prime Minister, is that this threat is real, growing and of an entirely different nature to any conventional threat to our security that Britain has faced before. For 12 years, the world tried to disarm Saddam; after his wars in which hundreds of thousands died. UN weapons inspectors say vast amounts of chemical and biological poisons, such as anthrax, VX nerve agent, and mustard gas remain unaccounted for in Iraq. So our choice is clear: back down and leave Saddam hugely strengthened; or proceed to disarm him by force. Retreat might give us a moment of respite but years of repentance at our weakness would I believe follow. It is true Saddam is not the only threat. But it is true also - as we British know - that the best way to deal with future threats peacefully, is to deal with present threats with resolve. Removing Saddam will be a blessing to the Iraqi people. Four million Iraqis are in exile. 60% of the population dependent on food aid. Thousands of children die every year through malnutrition and disease. Hundreds of thousands have been driven from their homes or murdered. I hope the Iraqi people hear this message. We are with you. Our enemy is not you, but your barbarous rulers. Our commitment to the post-Saddam humanitarian effort will be total. We shall help Iraq move towards democracy. And put the money from Iraqi oil in a UN trust fund so that it benefits Iraq and no-one else. Neither should Iraq be our only concern. President Bush and I have committed ourselves to peace in the Middle East based on a secure state of Israel and a viable Palestinian state. We will strive to see it done. But these challenges and others that confront us - poverty, the environment, the ravages of disease - require a world of order and stability. Dictators like Saddam, terrorist groups like Al Qaida threaten the very existence of such a world. That is why I have asked our troops to go into action tonight. As so often before, on the courage and determination of British men and women, serving our country, the fate of many nations rests. Thank you. (毎日新聞サイバー編集部) |
フセイン大統領がTV演説 徹底抗戦を呼び掛け |
イラクのフセイン大統領は米英軍の攻撃開始を受け、20日午前8時半(日本時間同日午後2時半)すぎからイラク・テレビで国民向けの演説を行い、ブッシュ米大統領がイラクに対して「人道的な罪を犯した」などと米国を強く非難、イラク国民に対米徹底抗戦を呼び掛けた。 フセイン大統領は「国家防衛のためにあらゆる手段を尽くす」と述べた。また「ブッシュを支持する者も罪を犯した」として米国の対イラク攻撃を支持する国々も非難、「不実な敵は恥辱にまみれて死ぬ」と述べた。 ◇フセイン・イラク大統領の演説骨子。一、ブッシュ(米大統領)は人道的な罪を犯した。一、ブッシュを支持する者も犯罪を重ねた。一、祖国を防衛し、徹底抗戦する。一、イラクは勝利する。 |
英首相報道官は、米が英首相にイラク攻撃を2時間半前に事前連絡したことを明らかにした。
韓国の青瓦台(大統領官邸)によると、盧武鉉大統領は20日午前、チェイニー米副大統領と電話会談し、米国のイラク攻撃開始の事前通報を受けた。 会談は午前8時40分から約10分間行われ、チェイニー副大統領がイラク問題での外交的努力の終了を伝えるとともに、フセイン・イラク大統領がブッシュ米大統領の最後通告を「事実上拒否した」として「数時間以内」に攻撃を始めるとした。 これに対し盧大統領は「事前通報してくれたことに感謝する」と述べる一方、攻撃による被害を最小限に抑えるよう要請した。 米英軍のイラク攻撃開始を受け、米上院本会議は20日、ブッシュ米大統領と英国政府を支持するとの決議を全会一致で可決した。米議会では、それまでは対立を続けていても、いざ開戦となれば軍の最高司令官を兼ねる大統領の下に団結を表明するのが伝統となっている。 この日もイラク攻撃が始まる直前まで反対を表明していた民主党のダシュル院内総務が本会議で「米国はブッシュ大統領の下に団結する」と演説、ケネディ上院議員も「われわれと同じように、多くの米国人がこの戦争に反対してきたが、今日からこの紛争が終わるまでは、われわれは団結し兵士を支持する」と表明、共和党ブッシュ政権との対決姿勢を撤回した。(ワシントン共同) フランス公共ラジオによると、同国国防省報道官は20日、「米国や同盟国の部隊が(イラクの)化学、生物兵器に直面した場合」と断った上で、フランスの取る行動が「軍事手段に至る可能性もある」と条件付きでフランスが参戦する可能性を表明した。 報道官はまた「(米中枢同時テロが起きた)2001年9月11日以降、米国との間に、米軍機がフランス領空を飛行することを認める協定がある」と述べ、米国が3月初めに英国に配備したB52爆撃機がフランス領空を通過してイラクへ向かうのを認めていることを明らかにした。(パリ共同) イラク攻撃への参戦を表明していたオーストラリアのハワード首相は20日、豪州軍が米英軍とともに第1次攻撃に参加したと発表した。テレビ演説した首相は、テロ勢力と直結したフセイン政権を倒す正当性を訴え、北朝鮮の核の脅威に備える点からも米国との同盟の重要性を強調した。
湾岸地域に2000人を展開する豪州軍は同日、空爆の支援でFA18戦闘機などが出動したほか、イラク国内で偵察に当たる特殊部隊が行動を開始した。 豪州では約70%の国民が国連決議のない攻撃に反対していたが、首相は米国と行動をともにした理由の一つとして「われわれの(アジア太平洋)地域は今、北朝鮮の危険な行動に強い懸念を抱いている。豪州の長期的な安全にとって、米国との同盟関係は極めて重要だ」と説明した。 豪州は昨年10月にインドネシア・バリ島で起きた爆弾テロで自国民から100人近い犠牲者を出した後、テロ勢力への先制攻撃を公然と唱えるようになった。北朝鮮の弾道ミサイルの射程に豪北部も入ると判明してからは、国交を回復した北朝鮮の平壌に大使館を建設する計画も延期した。ハワード政権が米国の意向を重視する姿勢は一層強まっている。[毎日新聞] フーン英国防相は20日、イラクへの武力行使について「早期に勝利することはないかもしれない」と長期戦を覚悟していることを明らかにした。ブレア英政権は国民に戦争の早期終結とイラク市民の犠牲を最小限にすることを公約していた。フーン国防相は「戦闘長期化を国会に警告するつもりだ」と述べた。
米英によるイラク攻撃は数日間の大規模空爆の後で地上部隊が一気に首都バグダッドを制圧する短期決戦が予想され、英政府も短期終結を示唆していた。長期化予想について軍事専門家たちは市民の犠牲を最小限にするために大規模な攻撃が仕掛けにくいことを挙げている。また、フセイン大統領や側近が居場所を絶えず替え、居場所の特定が難しいことも指摘されている。[毎日新聞] ドイツのシュレーダー首相は20日夕、イラク戦争の開戦について、国民に向けてテレビ演説し、「誤った決定が行われた。平和への機会ではなく、戦争の論理がまかり通った。ドイツはこの戦争には参加しない」と述べ、米英主導の戦争を批判した。 首相は戦争の早期終結を求める一方、戦災の被害を受けたイラク国民のために手を差し伸べる必要があると主張。国連を通じた人道支援に積極的な姿勢を打ち出した。独政府は同日、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)、世界食糧計画(WFP)、赤十字国際委員会(ICRC)に対し、計1000万ユーロ(約13億円)の緊急人道支援を表明した。一方、国内では反戦ムードが盛り上がり、この日は各地で反戦デモが開かれた。ベルリンで5万人の生徒・学生が参加したのをはじめ、計10万人が戦争反対を訴えた。[朝日] 2003年03月21日フセイン大統領、徹底抗戦の意志重ねて表明。イラクのフセイン大統領は20日、同日未明のイラク攻撃開始後、初の主要閣僚会議を開き、米英軍に徹底抗戦する意志をあらためて確認した。会議にはラマダン副大統領、アジズ副首相、サハフ情報相、ラシド石油相、サブリ外相が出席、会議のもようは国営テレビで放映された。
未明の空爆の狙いが大統領を含むイラク指導部の抹殺にあったことを米政府が認めたため、イラク政府はあえて大統領の映像を放映、米軍の空爆目的の失敗と大統領の健在ぶりを強調したとみられる。しかし、大統領は複数の影武者を頻繁に使っているとされ、第一波の空爆直後に急きょ放映された演説も含め、映像の真贋(しんがん)論争が当面、続きそうだ。 会議後、政府が発表した声明によると、大統領は会議で「米国は未明の攻撃でやったように、イラク国民の士気をくじこうと事実をゆがめる作戦に出るだろうが、それに失敗したし今後も失敗するだろう」と述べ、イラク国民とフセイン政権の離反工作をけん制。「イラク国民も兵士も、今日の事態に十分に備えてきた」と抗戦の意志を示した。[毎日新聞] |
米軍、3方から首都攻略目指す。3.20日、米政府当局者の話として、米軍がイラクの南部からだけでなく、西部と北部からもイラク領内に入ったと報じた。米軍は3方からバグダッドへ進み首都攻略を目指すとみられる。
イラク戦争:空爆の火力規模は湾岸戦争時に比べ3倍に。「空爆の火力規模は湾岸戦争時に比べ3倍になる」。イラク南部とバグダッドへの大規模空爆を目前に控えた21日夜(日本時間22日未明)、米空母キティホークの艦載機群を統括するパット・ドリスコル大佐は「精密誘導ミサイルの導入で破壊力は飛躍的に高まった」と語り、12年前の「砂漠の嵐」作戦との違いを強調した。
キティホーク幹部によると、この空爆作戦に先立ち、ペルシャ湾に展開する巡洋艦カウペンズをはじめ、アラビア海北部や紅海上の駆逐艦や潜水艦など10隻の艦船が、バグダッド近郊の軍事施設を中心にトマホーク320発を集中的に打ち込んだ。[毎日新聞] 大規模空爆 戦意喪失狙う「衝撃と畏怖」作戦。対イラク作戦で、米国防総省が「衝撃と畏怖(いふ)」と呼ぶ大規模空爆が21日、ついに始まった。その特徴は、物理的な破壊だけでなく、戦意喪失に陥るほど大きな心理的打撃を与えることを狙っている点にある。 「衝撃と畏怖」の作戦内容は、巡航ミサイル・トマホークや航空機から投下する精密誘導爆弾を戦争史上前例のない規模と集中度で投入し、フセイン大統領をはじめ政権幹部の居住・執務施設や、権力基盤となっている共和国防衛隊、治安機関の施設などを攻撃することだ。 心理的な打撃を与えることを狙ったこの概念の立案者の一人は、広島の原爆に言及しながらこの相乗効果を説明したと、先に米CBS放送は伝えていた。 だが、ラムズフェルド米国防長官らは21日の記者会見で、「第二次大戦の爆撃との類似点はない」と強調した。精密誘導兵器を使ったピンポイント攻撃であり、広島、長崎の原爆や東京大空襲など無差別爆撃とは違うという主張だ。しかし、実は共通点があることは圧倒的な攻撃状況を伝えたバグダッドからのテレビ映像が示している。 一方、ラムズフェルド長官はフセイン政権が「国家の統制を失い始めている」と述べ、「イラク政府内の混乱が増大している。戦況把握の能力や、軍と意思疎通する能力も消失しつつある」と説明した。通信傍受などのデータを根拠にしているものとみられる。 長官はまた、特定地域のイラク軍部隊との間での投降交渉が、開戦の数週間も前から行われてきたと明らかにした。開戦初期に起きた部隊ぐるみのイラク軍投降は、こうした交渉の成果だった可能性がある。 この大規模空爆は地上作戦と同時か、数日早く始まるものと想定されていた。それが遅れた理由としてラムズフェルド長官と会見に同席したマイヤーズ総合参謀本部議長は、イラク南部の油田の安全確保や地上部隊に対する脅威の事前除去の必要性、予想外だったフセイン大統領らの所在情報入手などを挙げた。[毎日新聞] バグダッドを切り裂く閃光 「衝撃と恐れ」作戦の衝撃。米英軍によるイラク戦争開始から2日目の21日夜、イラクの首都バグダッドの夜空を閃光が絶え間なく切り裂いた。首都中心部に爆音がとどろき、数十メートルの高さに達するきのこ雲が爆発の光に照らされ、不気味な姿を相次いで現した。 「巨大な火の玉が上がった。また一つ。こんなものはこれまで見たことがない。連中はバグダッドを破壊している」。バグダッドに残るジャーナリストのマイク・ニコルソン氏が米CNNテレビを通じて電話で空爆の激しさを語った。 3000発にのぼる高性能爆弾と巡航ミサイルでイラク軍の志気をくじくのが狙いとされる大規模空爆「衝撃と恐れ」。チグリス川にかかる橋と建物の見えるバグダッド中心部の上空が数秒おきにオレンジ色に染まる。一方イラク軍の対空砲火は、チカチカと光る豆電球のように小さく見えた。 ラムズフェルド米国防長官が戦況を説明した。「この作戦の第1の目的は米国民を守ること。第2はイラクの現体制に終止符を打ち、第3は大量破壊兵器を撲滅することだ」。[毎日新聞サイバー編集部] イラク政府、CNNをバグダッドから追放。米CNNは21日、イラク政府からバグダッド退去命令を受けたと表明した。CNNは米テレビ局で唯一、バグダッドに特派記者を残し、現地の映像情報をリアルタイムで放映していた。退去理由についてイラク情報省はロイター通信に対し、「ウソやうわさを流す(米国の)宣伝組織になったからだ」と述べた。 2人の記者とプロデューサー、カメラマンの計4人がバグダッドから退去する準備を進めており、車でヨルダンに向かう予定。イラクを出国するまで同国内からの報道はしないという。 ほかの米テレビ局は米政府の警告を受けてイラク戦争が始まる前にバグダッドから特派記者を退去させ、フリーの記者らの取材に頼っている。 CNNは1991年の湾岸戦争時にも唯一、バグダッドに特派員を置き、イラク政府の検閲を受けながらも多国籍軍の空爆開始の模様などを報道した。[日経] 米国防長官、米統合参謀本部議長の会見要旨。米国防長官「フセイン政権、国家統制失いつつある」。ラムズフェルド米国防長官は21日の記者会見で次のように述べた。 連合軍の作戦は(1)フセイン政権の終結(2)イラクの大量破壊兵器除去(3)イラクに潜むテロリストの捜索・逮捕・追放(4)イラク内外のテロリストネットワークに関する情報収集(5)不法な大量破壊兵器取引の世界的ネットワークに関する情報収集(6)経済制裁の終結とイラクの市民に対する速やかな人道支援(7)イラクの人々のものである油田と資源の保全(8)イラクの人々自らが作る政府への速やかな移行の支援――の実現に焦点を当てている。 イラクのフセイン政権について「国家の統制を失いつつある」と述べ、国家を掌握することが困難になっているとの見方を明らかにした。一方、米CNNなどは同日、イラク南部を守っていた同国陸軍第51師団約8000人が投降したと伝えた。開戦して以来、最大規模の投降となる。 同長官の発言にはフセイン政権の求心力の低下を強調することで、イラク兵の戦意を喪失させ、投降を促す狙いがあるとみられる。 同長官は「イラク当局者の混乱が広がっている」と説明。イラク政府は「戦場を起きていることを把握したり、部隊と連絡をとる能力が低下している」とも語り、イラク軍の指揮系統が崩壊し始めているとの見方を示した。 フセイン大統領が実権を失っているとの観測を巡っては「分からない。断片的な情報は聞いている。それを裏付ける十分な情報が入り始めたら、自分の見解を明らかにする」と述べた。21日までにイラク軍兵士数百人が投降したことも確認した。 <マイヤーズ議長>一、19日の夜遅く(バグダッド時間20日未明)、(フセイン政権の)指導者が集まっていると思われるバグダッド南東部の邸宅の一つを攻撃した。一、現時点で我々の地上部隊はイラク国内160キロまで入っている。一、「イラクの自由作戦」開始以来、連合軍の航空機の出撃は1000回以上に達し、イラクの軍事標的に対して多数の精密誘導弾を投下している。一、数百の軍事標的がこれから数時間のうちに攻撃される。 2003年03月22日 イラク戦争:非難声明出さないアナン氏を指弾 イラク国連大使。イラクのドウリ国連大使は21日、「国連のアナン事務総長が米英軍によるイラク攻撃を非難する声明を出さないだけでなく、米国の考えに従ってイラクの石油輸出権を管理しようとしている」、「アナン総長はせめて安保理に書簡を出し、今回の攻撃が世界の平和と安全を脅かすと警告すべきだった」と指弾した。
アナン総長は安保理に対し、戦争で中断しているイラクへの人道計画(「人道物資購入のための原油輸出計画」)の再開を認めるよう要請。米英両国の考えを取り込んだ決議案原案も安保理に提示している。安保理は週末に専門家レベルの協議を開き、来週にも採決を行う予定だ。 ロシアのラブロフ大使は同日、「安保理は当面の人道問題を話し合うべきで、それ以外の話はもっと後にすべきだ」と語り、やはりアナン氏の考えを批判した。イラクには国連の経済制裁が科されているが、国連の管理下で原油を輸出し、その代金で食糧や医薬品を購入することは認められている。しかし、米英によるイラク攻撃でこの計画は中断に追い込まれている。[毎日新聞] |
【世界各地の反戦運動】 |
2003年03月21日 イラク戦争:東京の反戦集会に5万人 英、仏、スペインでも。
[日本]東京・芝公園の反戦集会「ワールド・ピース・ナウ3・21」には、約5万人(主催者発表)が参加した。反戦・平和団体など47団体で構成する実行委が主催した集会はこれで3回目だが、参加人数は今回が最多。東京では日比谷公園での労組主催の集会に約5000人(主催者発表)が参加したほか、渋谷でも高校生の集会があった。 [英国]ロンドンの国会、首相官邸周辺をはじめ、全土で数万人が参加、道路や鉄道を止める行動もあり、十数人が逮捕された。学生や高校生が授業を放棄し「石油のために血を流す戦争に反対」などと書いたプラカードを持ち、100人前後で各所を行進。2月15日の史上最大の反戦デモを主催したストップ・ザ・ウォー連合は「午後6時を期して、それぞれの町の中心部をデモの人波で埋めよう」と呼び掛けた。 [フランス]パリ中心部では、フランス社会党などの政党や市民団体が呼び掛け、市民約4万人がデモに参加。米大使館に抗議の意思を示すため、近くにあるコンコルド広場に集まったが、警察当局が厳重な警備態勢を敷き、大使館には近づけなかった。 |
【ドーハ(カタール)福島良典、ワシントン佐藤千矢子】イラク攻撃を続ける米英軍は、現地時間21日午後8時(日本時間22日午前2時)過ぎから、首都バグダッドや北部の主要都市モスル、キルクークなどに対し、精密誘導爆弾やトマホーク巡航ミサイルなどを使った開戦後初の大規模空爆を開始した。「衝撃と畏怖(いふ)」と呼ばれる空爆作戦では、同日中に計1500〜3000発の爆弾が投下される見込みで、これまでに爆撃機や艦船から約2000発のトマホークなどが発射され、大統領宮殿(共和国宮殿)を含む政府中枢施設が炎上した。米ABCテレビは一連の空爆で、ラマダン副大統領ら政権幹部3人が死亡したとみられると報じた。イラク将兵の投降も相次ぎ、フセイン政権は自壊の兆しも見せ始めた。南部の主要都市バスラも近く陥落する可能性が強まっている。
米軍の空爆はイラク軍の指揮系統などを破壊しており、ラムズフェルド米国防長官は21日の会見で「イラクは国家の統制を失いつつある」と述べ、作戦が順調に進んでいることを強調した。
マイヤーズ米統合参謀本部議長は「南部と北部でイラク兵が投降している」として、イラク軍の士気が衰えていることを示唆した。AP通信は国防総省筋の話として、米英軍の地上部隊が南部のバスラに差しかかった際、イラク軍の第51歩兵師団約8000人が部隊ごと投降したと伝えた。
米軍はこの大規模空爆に先立ち、フセイン大統領ら政権幹部殺害を狙った限定空爆を行っているが、同大統領の生死は明らかになっていない。ABCによると、米中央情報局(CIA)は、ラマダン副大統領とイブラヒム革命指導評議会副議長のほか、大統領のいとこで、クルド人に対する化学兵器使用を命じたとされるマジド元国防相が死亡したとみているが、確認されていない。大統領の長男ウダイ氏の死亡説も流れている。
21日の大規模空爆は、バグダッドにある政府施設のほか、北部キルクークやモスルなど3カ所の最精鋭部隊「共和国防衛隊」施設などが標的とされ、大統領の出身地ティクリートも空爆を受けている模様だ。空爆にはB1、B2、B52の各爆撃機を含む数百機の航空機が動員されたという。
一方、クウェート側から国境を越えてイラク南部に侵攻した米第1海兵師団、米陸軍第3歩兵師団などの米英軍地上部隊は、バスラ攻略と南部の油田地帯一帯の制圧を目指して進撃を続けている。同部隊が南部の港湾都市ウンムカスルを制圧した後、ユーフラテス川畔にある都市ナシリヤ近郊でイラク軍との戦闘が発生。米第1海兵遠征隊に所属する米兵1人が死亡し、同日朝に死亡した米第1海兵師団所属兵とあわせて、イラク軍との交戦による米英軍の死者は2人となった。
米海軍の特殊部隊(SEAL)はイラク南部の2カ所のガス・石油施設を支配下に置き、別の特殊部隊はイラク西部で空港3カ所を制圧した。
南部から侵攻した地上部隊は21日夜までにイラク領内約200キロの地点まで北上した。バグダッドまでの距離は残り約300キロと見られ、現在の速度で進むと、早ければ2日後には首都をうかがう地点に到達する可能性が濃厚だ。
また米英海軍は21日、機雷を積載してペルシャ湾に出航しようとしていたイラクの船舶3隻を拿捕(だほ)するとともに、機雷130個を発見した。
[毎日新聞3月22日] ( 2003-03-22-13:19 )
ペルシャ湾北部の米空母キティホークの海軍当局者は22日、バグダッドなどに向けてペルシャ湾や地中海、紅海から発射された巡航ミサイル、トマホークが同日までに350発に達したことを明らかにした。湾岸戦争時に撃ち込まれたトマホーク数の約290発を既に上回っている。
また別の海軍当局者は、同空母艦載機のFA18戦闘攻撃機4機が、イラク南部でイラク軍と戦闘していた第1海兵遠征軍を援護するため空爆を実施したと発表した。
バスラ北西のアルクルナで、4機は精密誘導爆弾七発を投下、イラク軍の大砲などを破壊したとしている。(米空母キティホーク艦上共同)
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-10:17 )
米政府は22日、トルコからイラクへの地上軍進撃作戦を最終的に断念する方針を決めた。トルコから南下する予定だった陸軍第4歩兵師団はクウェートに派遣され、イラク南部の兵力強化に向けられる。
AP通信によると、トルコ国境に近いイラク北部に現在、米軍特殊部隊が展開しているが、(1)北部の油田地帯の確保(2)トルコ軍とクルド勢力との衝突警戒のため、第一〇一空挺(くうてい)師団の一部が新たに投入される見通し。
第4歩兵師団は重装備の機械化部隊で、戦車などを積載した船舶は地中海のトルコ沖で待機していたが、スエズ運河を経由してクウェートに移動することになった。
米軍は当初、地上軍をクウェートから北上、トルコからは南下させ、首都バグダッドを挟撃する戦略を立てていた。
米国はイラク戦争に向けて最大6万2000人の部隊駐留をトルコ政府に求めていたが、トルコ国会は今月20日、米軍機のトルコ領空通過のみを承認した。(ワシントン共同)
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-10:09 )
イラク国営テレビは22日夜、通常番組を中断し、首都バグダッドの南約190キロにあるナジャフで起きた米英軍との戦闘で、バース党軍事部門の地区最高指揮官が戦死したと報じた。
事実とすれば、米英軍が既に首都から200キロ圏内に入っていることを示している。
ナジャフの北には要衝カルバラが控えているが、カルバラを越えれば、一直線の舗装道路で一時間以内にバグダッドまで到達が可能。米英軍は首都圏に配置されている最精鋭の共和国防衛隊と直接、対峙(たいじ)することになる。国営テレビは、戦闘の詳細には触れていない。
首都近郊でイラク軍と戦闘を展開する可能性がある部隊としては、クウェートからイラク領内に入った米軍第3歩兵師団が考えられる。同師団は22日にユーフラテス川の渡河地点であるナシリヤを制圧、さらに北上を続けているとされる。
国営テレビの報道は、バース党バグダッド本部名で行われた。地区の一指揮官の戦死が、通常番組を中断して発表されるのは極めて異例。(バグダッド共同)
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-09:11 )
シリア政府筋によると、イラクのサブリ外相が22日夜、シリアの首都ダマスカスを訪問した。米英によるイラク攻撃開始後、外相の外国訪問は初めてで、23日にシャラ・シリア外相と会談した後、カイロで開かれるアラブ連盟の外相級会議に出席する予定。
フセイン政権の打倒を目指す米英両軍の攻撃が激しさを増す中、エジプトを中心にアラブ各国の民衆レベルでは反米機運が高まっており、サブリ外相は連盟会議で攻撃停止に向けた協力を呼び掛ける考えとみられる。
しかしバーレーンなどフセイン大統領の亡命を働き掛けるペルシャ湾岸国や、一貫して攻撃に反対するシリアなど各国の足並みは乱れており、会議で統一したアラブの姿勢を打ち出せるかどうかは不透明だ。
22日のシリア国営テレビによると、サブリ外相は同テレビとのインタビューで、イラク政府が市民に武器を渡していることを明らかにし、「兵士以外にも(市民ら)700万人が武装している。イラクの砂漠が侵略者たちの墓場になるだろう」と徹底抗戦を強調した。(ダマスカス共同)
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-10:47 )
【カイロ城島徹】シリアからの報道によると、イラクのサブリ外相が22日、シリアの首都ダマスカスを訪れた。米英軍によるイラク開戦後に外相が外国を訪問するのは初めて。サブリ外相は23日にシリアのシャラ外相と会談した後、カイロに向かい、24日に開かれるアラブ連盟外相級会議に出席するとみられる。
サブリ外相は22日、シリア国営テレビのインタビューで、「兵士以外にも全国民が武装して戦う覚悟だ」と述べ、「イラクの砂漠を侵略者たちの墓場にしてみせる」と徹底抗戦の決意を示した。
またサブリ外相は同日、「トルコに本当の利益が何であるかを気付いてほしい」と報道陣に語り、米軍機の領空通過を認めたトルコを批判した。
シリアはアラブ諸国内でも一貫して米英の攻撃に反対し、22日には「イラクの兄弟たちを犠牲にする野蛮な攻撃を非難する」との公式声明を出し、戦争の即時終結を訴えている。米英軍の対イラク攻撃に伴い、アラブ各国では民衆レベルで反米、反戦の抗議行動が活発化しており、サブリ外相はこうした情勢を踏まえ、連盟会議で各国に攻撃停止への共同アピールを求めるとみられる。
しかし、連盟内では、フセイン大統領の亡命を求めるバーレーンや親米の立場を堅持するクウェートなど各国の立場は異なり、イラクの思惑通りになる可能性は極めて低いとみられる。
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-18:22 )
イラク外相、アラブ外相会議で停戦へ結束求める
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【カイロ=中西俊裕】アラブ各国は23日、カイロでイラク戦争への対応を話し合う外相会議の実質討議に入った。当初欠席すると予想されていたサブリ・イラク外相も参加。エジプトなどアラブ主要国・機関の首脳が国内の動揺を背景に戦争長期化への懸念を表明したのに対し、サブリ外相は米国に圧力をかけるよう訴えた。サブリ外相は、この日アラブ連盟本部で開いた外相会合の後、記者団に「米軍の侵略を止めるべきだ」と強調。米軍の軍事行動が続くことは「アラブ全体の安全保障を損ねる」と訴えた。
アラブ各国が介入しなければ「アラブ世界はより小さな国々に分裂し、米国やイスラエルに操られてしまう」と指摘。米国が検討しているとされる米軍人・文民を軸にした戦後のイラク統治政策を「地政学的な現状を変えようとする新たな植民地主義」という表現で非難した。24日に開くアラブ外相会議の本会議では、エジプト、シリアを中心に米のイラク攻撃の停止や早期収拾のための方策を議論するとみられる。 (12:00) |
イラク外相、アラブ外相会議で停戦へ結束求める
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【カイロ=中西俊裕】アラブ各国は23日、カイロでイラク戦争への対応を話し合う外相会議の実質討議に入った。当初欠席すると予想されていたサブリ・イラク外相も参加。エジプトなどアラブ主要国・機関の首脳が国内の動揺を背景に戦争長期化への懸念を表明したのに対し、サブリ外相は米国に圧力をかけるよう訴えた。サブリ外相は、この日アラブ連盟本部で開いた外相会合の後、記者団に「米軍の侵略を止めるべきだ」と強調。米軍の軍事行動が続くことは「アラブ全体の安全保障を損ねる」と訴えた。
アラブ各国が介入しなければ「アラブ世界はより小さな国々に分裂し、米国やイスラエルに操られてしまう」と指摘。米国が検討しているとされる米軍人・文民を軸にした戦後のイラク統治政策を「地政学的な現状を変えようとする新たな植民地主義」という表現で非難した。24日に開くアラブ外相会議の本会議では、エジプト、シリアを中心に米のイラク攻撃の停止や早期収拾のための方策を議論するとみられる。 (12:00) |
「おまえたちは米国の政権より悪質だ。とっととイラクから出て行け」。イラク情報省当局者は、米主要ネットワークの中で唯一、バグダッドに残っていたCNNのスタッフ4人に対し、悪態をつきながら国外退去処分を言い渡した。
CNNのニック・ロバートソン記者によると、当局は処分理由を列挙したリストを示したが、その内容は「ばかげた」ものだったという。
バグダッドに残っている外国メディア関係者は200人前後。日本人もフリージャーナリストら10数人がとどまっているが、戦況の悪化につれて当局の締め付けがさらに強くなる可能性もある。
フセイン政権は平時から、外国メディアの取材に情報省職員の同行を義務付けるなど厳しい制限を課してきた。CNNなどの放送を見ることができる国民はごく一部だが、質量ともにイラクの報道を凌駕(りょうが)する欧米メディアの戦況報道に対し、政権中枢が強い不快感を持っているのは間違いない。
バグダッドに残るジャーナリストらによると、イラク当局は最近、各メディアが海外に送るビデオ映像の事前検閲を通告。実際の運用は必ずしも厳格ではないようだが、米国寄りの報道をけん制する狙いとみられる。
このほか空爆が本格化した21日には、情報省職員が記者の泊まるホテルを訪れ、部屋から無断で町並みを撮影していないかなど取材活動の“抜き打ち検査”を行うという事態も起きた。(アンマン共同)
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-15:27 )
米英の大規模空爆、「孫子の兵法」を参考
米英軍が21日にイラクで実行した大規模空爆の戦略「衝撃と恐怖」は、「孫子の兵法」を参考に米国人の軍事学者が現代版に仕立て直したものだった。命中精度が高い精密誘導弾で市民への被害をできるだけ避けつつ、じゅうたん爆撃のような印象でイラク軍の戦意を一気に喪失させることをねらう。戦わずして敵の抵抗をくじく大胆な戦略が、もくろみ通りフセイン体制の転覆につながるのか。(ワシントン=石合力、梅原季哉)
21日の大規模空爆のテレビ中継では、バグダッド中心部の夜空を突然、閃光(せんこう)が切り裂き、轟音(ごうおん)とともに巨大なキノコ雲が次々と上がるのが映し出された。第2次大戦中の戦略爆撃さながらの光景だ。
だが、作戦終了直後に米国防総省で開かれた記者会見で、ラムズフェルド国防長官はこうした見方を全面否定した。「まったく比較にならない。きょう使われた兵器は、過去に誰も夢にすら見なかった正確さだ」
実際の被害は最小に抑え、敵軍が戦意を失う効果を最大限に発揮させようというのがこの戦略の特徴だ。攻撃対象のバグダッド市内の大統領宮殿は過去にも米英軍の攻撃対象になっており、空爆時はほとんど無人だったと見られる。
「戦争とはだますことだ」(孫子)。この発想が、ハーラン・ウルマン博士(60)が新しい戦略思想を考える基礎になった。博士は「孫子が言ったように、戦わずして勝つことを考えた」と言う。米国防大学の教官だった96年、湾岸戦争を指揮した元将軍たちとの共同研究で「衝撃と恐怖」戦略を提案した。
「衝撃と恐怖は敵の意思を制御する。衝撃は一瞬のうちに心に傷を与え、恐怖は長期的に選択肢はもうないと相手に分からせる」
例は広島・長崎だという。「2発の原子爆弾で日本人は自殺的抵抗からみじめな降伏へと一変した。驚きじゃないか」
ただし軍事技術の進展で、核兵器を使わなくてもそれを達成できると考える。「命中精度の高い兵器に心理戦や電子情報戦などの手段を組み合わせれば、敵に絶望感を抱かせることができる。多数の死者を出す市街地爆撃などはせずにすむ」
それでも、空爆に慣れっこになったイラク軍が今回どう反応するかは未知数だ。南部などで投降の動きもあるが、総崩れにはなっていない。
誤爆による民間人の犠牲が出れば、米国が期待する心理的効果が裏目に出る可能性もある。圧倒的な破壊力の映像がテレビに流れ続けるだけでも、イラクを取り囲むアラブ諸国の民衆の反米意識を刺激しかねない。
「衝撃と恐怖」が機能せず、戦争は長期化する可能性もある。孫子の兵法には米国に耳の痛い警句もある。「戦いが長引けば軍は疲弊し鋭気をくじく。敵の城を攻めれば戦力も尽き、国家の経済も窮乏する」 (03/23 16:55)
http://www.asahi.com/international/update/0323/015.html
米英の大規模空爆、「孫子の兵法」を参考 |
米英軍が21日にイラクで実行した大規模空爆の戦略「衝撃と恐怖」は、「孫子の兵法」を参考に米国人の軍事学者が現代版に仕立て直したものだった。命中精度が高い精密誘導弾で市民への被害をできるだけ避けつつ、じゅうたん爆撃のような印象でイラク軍の戦意を一気に喪失させることをねらう。戦わずして敵の抵抗をくじく大胆な戦略が、もくろみ通りフセイン体制の転覆につながるのか。(ワシントン=石合力、梅原季哉)
21日の大規模空爆のテレビ中継では、バグダッド中心部の夜空を突然、閃光(せんこう)が切り裂き、轟音(ごうおん)とともに巨大なキノコ雲が次々と上がるのが映し出された。第2次大戦中の戦略爆撃さながらの光景だ。 だが、作戦終了直後に米国防総省で開かれた記者会見で、ラムズフェルド国防長官はこうした見方を全面否定した。「まったく比較にならない。きょう使われた兵器は、過去に誰も夢にすら見なかった正確さだ」 実際の被害は最小に抑え、敵軍が戦意を失う効果を最大限に発揮させようというのがこの戦略の特徴だ。攻撃対象のバグダッド市内の大統領宮殿は過去にも米英軍の攻撃対象になっており、空爆時はほとんど無人だったと見られる。 「戦争とはだますことだ」(孫子)。この発想が、ハーラン・ウルマン博士(60)が新しい戦略思想を考える基礎になった。博士は「孫子が言ったように、戦わずして勝つことを考えた」と言う。米国防大学の教官だった96年、湾岸戦争を指揮した元将軍たちとの共同研究で「衝撃と恐怖」戦略を提案した。 「衝撃と恐怖は敵の意思を制御する。衝撃は一瞬のうちに心に傷を与え、恐怖は長期的に選択肢はもうないと相手に分からせる」 例は広島・長崎だという。「2発の原子爆弾で日本人は自殺的抵抗からみじめな降伏へと一変した。驚きじゃないか」 ただし軍事技術の進展で、核兵器を使わなくてもそれを達成できると考える。「命中精度の高い兵器に心理戦や電子情報戦などの手段を組み合わせれば、敵に絶望感を抱かせることができる。多数の死者を出す市街地爆撃などはせずにすむ」 それでも、空爆に慣れっこになったイラク軍が今回どう反応するかは未知数だ。南部などで投降の動きもあるが、総崩れにはなっていない。 誤爆による民間人の犠牲が出れば、米国が期待する心理的効果が裏目に出る可能性もある。圧倒的な破壊力の映像がテレビに流れ続けるだけでも、イラクを取り囲むアラブ諸国の民衆の反米意識を刺激しかねない。 「衝撃と恐怖」が機能せず、戦争は長期化する可能性もある。孫子の兵法には米国に耳の痛い警句もある。「戦いが長引けば軍は疲弊し鋭気をくじく。敵の城を攻めれば戦力も尽き、国家の経済も窮乏する」 (03/23 16:55) |
【米空母キティホーク艦上(ペルシャ湾北部)井上卓弥】米空母キティホークの広報担当者は22日夜、イラク戦争が開始された20日未明から22日朝までに、ペルシャ湾や紅海に展開する米英艦船計30隻からイラク領内に向け、約350基の巡航ミサイル「トマホーク」が発射されたことを明らかにした。すでに91年の湾岸戦争時(45日間)の288基を上回るハイペースという。
一方、イラク南部バスラの北西約60キロの町アルクルナ付近で22日午後、北上する第1海兵遠征軍の支援作戦に参加したキティホーク艦載の戦闘機F14トムキャット4機が、イラク軍の砲台などにレーザー誘導ミサイル7発を打ち込んだ。大規模空爆作戦は同日も続いて行われ、正午前から23日未明までにキティホークから前日の100機を超える約130機が作戦飛行に向かった。
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-18:45 )
テレビクルーの中で1人だけ負傷し溝に取り残されたカメラマンが、通り掛かって救出した同紙記者に明らかにした。
ITVテレビは「(記者らが)不明になった後、時間がたち非常に心配している」と述べた。ロイド記者は、1988年にイラクの毒ガス攻撃で住民約5000人が殺されたイラク北部のクルド人地区ハラブジャに真っ先に入って惨状を報じたことで知られる。ボスニアなど戦場の取材経験が豊富だった。
カメラマンによると、攻撃を逃れようと車を時速約100キロで走らせていた時、隣を見ると扉が開き、ロイド記者の姿が消えていた。車は溝に落ち火に包まれたが、カメラマンは寸前に脱出し助かった。イラク人の農民一家が白旗を掲げ助けに来ようとしたが、戦車は一家や溝に向けて銃撃、1時間以上逃げられなかったという。
23日付の英日曜紙サンデー・ミラーは射撃の方向からみて英軍の攻撃を受けた可能性が強いとの見方を打ち出している。(ロンドン共同)
ITVのクルーは米英軍の保護を受けず独自に取材していた。
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-13:28 )
【ドーハ(カタール)田中洋之】イラク戦争の陣頭指揮を取るトミー・フランクス米中東軍司令官(57)は22日、開戦から約60時間後で初めて、カタールの首都ドーハ郊外のアッサイリヤ基地にある前線司令部で記者会見に臨んだ。今回の戦争では米軍の戦況を発表する役回りとなり、その言動が世界で注目されている。
91年の湾岸戦争時に豪放さと派手なパフォーマンスで有名になったシュワルツコフ氏(当時の中東軍司令官)とは対照的に、「冷静沈着な戦略家」(米軍筋)として知られ、マスコミの表舞台に出ることを嫌う。
ブッシュ大統領と同じテキサス州で育った。大学を中退して自ら軍隊入りし、ベトナム戦争に参戦した。西ドイツや韓国の駐留米軍で勤務し、湾岸戦争では機甲師団を率いてイラクと戦った。「軍が私を育ててくれた」と振り返る。
00年7月に中東軍司令官に任命され、01年9月の米同時多発テロ後のアフガニスタン攻撃を指揮。今回のイラク戦争では、少数精鋭部隊の投入による短期決戦を求める軍内タカ派に対し、大規模な地上部隊を進軍させる作戦を主張し、ブッシュ大統領の支持を取り付けたとされる。
「兵士ほど戦争を憎んでいる者はいない」を信条とする。毎朝4時には起きて仕事に取りかかるほど自分に厳しく、部下の信頼も厚い。責任感が強く、「イラク攻撃がうまくいかなかったら、私のミスだ」と語ったという。先月には軍の秘密会議に夫人を同席させるなどの職権乱用疑惑が浮上したが、内部調査で不問とされた。
「兵士の中の兵士」といわれる一方、温和な性格で、「プー」のニックネームで親しまれる。これは5歳の孫娘がアニメ「くまのプーさん」にちなんで呼び始めたのが由来といわれる。22日の初会見で開戦後に最も驚いたことを尋ねられると、「今朝、妻から結婚記念日を祝うメールが届いていたこと」と答え、記者団の笑いを誘った。
[毎日新聞3月23日] ( 2003-03-23-18:28 )
米国による空爆で死亡したという情報が流れたラマダン副大統領が記者会見に登場し、同盟軍の攻撃が成功しているという主張はまったくの誤りであると指摘した。
ピンポイント空爆による大統領の暗殺未遂について尋ねられたラマダン副大統領は、「この4日間大統領は何度もテレビに映っている。私も何度か同席している。このような暗殺行為を行う英米こそがテロリスト集団であり、犯罪人として裁かれるべきである」と述べた。
また、英米のメディアによる情報の正確度について尋ねられた同副大統領は、「英米政権メディアの流す情報のうち真実は2%にすぎない」と述べた。 [阿修羅]
米英軍こそ「衝撃と恐怖」に=バスラ爆撃で77人死亡−イラク情報相 |
【カイロ23日時事】バグダッドからの情報によると、イラクのサハフ情報相は23日の記者会見で、「米英軍こそ『衝撃と恐怖』にさらされるだろう」と、米英軍の作戦名を引用しながら、イラク軍が米英軍に強力な反撃を加えると予告した。 |
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イラク戦費は800億ドル=議会に予算承認を要求へ−ブッシュ米大統領 | |||
【ワシントン23日時事】23日付の米紙ワシントン・ポストによると、ブッシュ大統領は議会に対し、イラク攻撃に要する戦費など追加予算約800億ドル(約9兆6000億円)の承認を求める方針を固めた。24日にも上下両院指導部に要請する。 |
キャンプ・デービッドからホワイトハウスに戻った際、記者団に述べたもの。
大統領はまた、人道支援物資のイラクへの搬入は、向こう36時間以内に始まる、と述べた。
イラク側の抵抗は散発的、共和国防衛隊は戦闘続ける=英国防相 | |
[ロンドン 23日 ロイター] フーン英国防相は、米英軍に対するイラク側の抵抗は散発的なものだが、精鋭部隊であるフセイン大統領の共和国防衛隊は戦闘を続けている、と述べた。
「イラク側の抵抗は散発的なものだ。正規軍の一部は投降しつつあるようだが、共和国防衛隊は明らかに戦闘を続けている」と述べた。 同国防相は、イラクでクラスター爆弾が使用されたかどうかについては、「現段階で、私はクラスター爆弾が使用されたかどうか確認する立場にない。ただ、米英軍兵士の生命を守るために使用が必要となる状況もある得るということを認識することは重要だ」と述べた。 クラスター爆弾は多数の小型爆弾を内臓しており、これらの一部はすぐに爆発せず、実質的に地雷の役割を果たす。 |
日本経済はぜい弱、戦争の影響を極めて慎重に見ている=日銀総裁 | |
[東京 24日 ロイター] 福井日銀総裁は、日本経済はぜい弱であり、戦争の影響を極めて慎重に見ていると述べた。そのうえで、G7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)各国は、連絡を密に取っているところであり、緊急G7を開催するかどうか判断する前の段階にある、との認識を示した。
参議院予算委員で武見敬三議員(自保)の質問に答えたもの。 福井日銀総裁は、「日本経済はぜい弱な基盤だという点から、イラク戦争の影響を極めて慎重にみている。目下のところ、世界のマーケットは戦争の影響を織り込んでいて、比較的落ち着いている」と述べた。 そのうえで、緊急G7を開くべきではないか、との質問に対して、「各国はそれぞれ連絡を密にして、その(開催する)必要性があるかないかを判断する前の段階だ。今のところ、緊密に連絡して、各国それぞれ国内において対応すれば、当面の情勢はいいのではないか、というところだ」と述べた。そのうえで、「(マーケットは)戦争の推移が短期決戦というシナリオを織り込んでおり、その短期決戦のシナリオにほころびが生じたときのマーケットへの影響というのは予測の限りではない。仮に戦争がシナリオ通り終了しても、戦争の及ぼす実体経済への後遺症がボディーブローのように効いてくることは、非常に慎重に見極めなくてはいけない。その点についても、各国、共通の認識で対処している」と語った。 |
米英軍、首都まで100キロ 各地で戦闘激化
米英軍は23日、イラク中部にあるイスラム教シーア派聖地ナジャフ近くまで進撃、首都バグダッドまで100キロの地点に迫ったが、激しい戦闘でイラク側に100人以上の死者が出た。また、米英軍が南部の大都市バスラをほぼ掌握したものの、制圧にまでは至っていない。空爆はこの日もバグダッド、中部にあるフセイン大統領の故郷ティクリート、キルクークなどで続けられた。また、カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」は、バグダッド上空で米軍の航空機が撃墜され、乗っていた米兵数人がイラク側の捕虜になったと報じた。一方、イラクの空爆から帰還途中の英軍機1機が米軍の迎撃ミサイル「パトリオット」に撃墜された。 【ドーハ(カタール)福島良典、ワシントン佐藤千矢子】イラク領内で北上を続ける米軍地上部隊は23日、イラク中部のナジャフ近くまで進撃、一両日中にもバグダッド郊外に到達し、首都の防衛にあたるイラクの精鋭部隊、共和国防衛隊と対じする見通しだ。 米陸軍第3歩兵師団に従軍しているロイター通信記者によると、同師団は22日夜、ナジャフの南約70キロの地点でイラク軍部隊と交戦、激しい戦闘が起こった。 一方、米テレビは23日、米軍筋の話として、イラク南部バスラの制圧が確認されたと報じた。だが、バスラ周囲では戦闘が散発的に続いており、完全制圧までにはまだ時間がかかるとの見方が支配的だ。 ロイター通信によると、英国防省筋は、早ければ24日夜か25日にも、バグダッドでの地上攻撃が始まる見通しだと述べるとともに「バスラでは中心部の戦闘に入る予定はない。焦点はバグダッドだ」と語った。一部の米英軍はバスラに駐留する共和国防衛隊や警察隊との投降交渉を続けている。 また、イラク最南部の港湾都市ウンムカスルについても、米英軍は制圧を発表したが、カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」は、米軍とイラク軍との間で23日も戦闘が続いていると報じている。 米統合参謀本部のマクリスタル作戦副部長は22日、米国防総省で会見し、21日の大規模空爆で、爆撃機などが1000回以上出撃してイラク全土の数百カ所を攻撃し、500発以上の巡航ミサイルを発射、数百発の精密誘導爆弾が投下されたことを明らかにした。また、イラク戦争での捕虜は現在、1000〜2000人にのぼることも明らかにした。 また、米政府は22日、北部からのイラク侵攻を断念、トルコ沿岸に待機していた米陸軍第4歩兵師団の兵器や装備を積載した艦船40隻は23日にも、スエズ運河を通ってペルシャ湾へ移動する。 [毎日新聞3月23日] |
【米空母キティホーク艦上(ペルシャ湾北部)井上卓弥】米空母キティホークの広報担当者は、バグダッドから100〜150キロ地点で実施された24日夜から未明までの空爆作戦で、同艦艦載機10機が重量250キロの通常爆弾を18個投下したことを明らかにした。首都攻略に向け、ペルシャ湾に展開する米空母群の地上軍支援作戦は重要局面を迎えた模様だ。
爆撃には戦闘攻撃機FA18ホーネットと戦闘機F14トムキャットが参加し、米地上軍の首都進攻に備えるイラク共和国防衛隊の防衛線を攻撃した模様。
キティホーク艦載機は開戦後、1日あたり60機前後が南部バスラ周辺への作戦飛行を行ったが、23日未明までの攻撃では実際の爆弾投下回数は少なかった。しかし、首都近郊に達した米地上軍に対する精鋭部隊・共和国防衛隊の抵抗が強まるにつれ、空爆の標的も北上し、投下爆弾数も急増しているようだ。
戦術計画部門のスティーブ・シューバー軍曹(33)は「我々は勝利を確信している。敵味方双方の死傷者が増えないよう、早期に戦争が終わることを望む」と語った。
[毎日新聞3月25日] ( 2003-03-25-10:05 )
アジズ・イラク副首相は日本時間未明、記者会見を行い「イラク指導部は頭を切断されることはない」と述べ、フセイン大統領が依然、政権を掌握していると強調した。
アジズ副首相は開戦後のフセイン大統領の演説について、「空爆の時間も正確に言った」として、事前収録説を一蹴。影武者説についても「死亡したという噂を広めようとしている」と否定した。そして、「米国はフセイン大統領が国民から孤立しているというが、国の統制を失った指導者が有効な抵抗を組織できるだろうか。フセイン大統領は国を統制し、国民を支配している」とフセイン大統領の健在ぶりをアピールした。
[毎日新聞3月25日] ( 2003-03-25-05:12 )
【ニューヨーク上村幸治】アナン国連事務総長24日は、イラク側から事務総長批判の声が相次いでいる問題を取り上げ、戦争の被害を受けているイラク首脳や国民の「怒りや不満は理解できる」と答える一方、自分は事務総長としての仕事を果たしたと反論した。
イラクのドウリ国連大使は(1)開戦前に国連職員をイラクから引き揚げさせた(2)米国によるイラク占領を前提として国連人道計画を再開しようとしているーーと事務総長を批判していた。
また、イラクのラマダン副大統領も、アナン氏の姿勢を米国寄りだと指弾し「(アナン氏は)米英の植民地の高等弁務官だ」と述べた。
一連の批判への感想を求められたアナン氏は「国連職員は他の国の外交官が出国した後、最後にイラクを出た」「国連安保理と私は、人道援助のためにできることなら何でもしようと思っている」と答えた。
事務総長報道官の定例会見でも、記者団から「なぜ(開戦を控えた)肝心の時期に沈黙したのか」「なぜイラク戦争を安保理に持ち込んで議論しないのか」などといった質問が相次いだ。
報道官は「事務総長は、戦争をするかしないかを決めるのは安保理だとはっきり言っていた」「イラク問題はすでに安保理で議論された」と述べ、責任はあくまで安保理にあると反論した。アナン氏への激しい批判に、報道官が興奮して顔を紅潮させる一幕もあった。
[毎日新聞3月25日] ( 2003-03-25-10:08 )
アラブ連盟が米英を非難、即時撤退を求める声明 イラク戦争への対応を緊急に協議していたアラブ連盟(本部カイロ)の外相会議は24日、米英両国の攻撃は国際的に正当性を欠き許されないと非難、イラクからの外国軍の即時撤退を要求する声明を採択し閉幕した。 22カ国・機構から成るアラブ連盟が一致して攻撃を強く非難する姿勢を打ち出し、イラクのサブリ外相は「侵略に反対することで合意したことに満足している」と述べた。 声明は(1)攻撃は国連憲章に違反し正当性がない(2)無条件のイラク撤兵を求める(3)国連安全保障理事会で協議するか、できなければ総会を緊急開催し協議するよう求める(4)アラブ諸国の国内問題への干渉を拒否し政権転覆に反対する―としている。 今月1日にシャルムエルシェイクで開かれたアラブ首脳会議では、秒読み段階にあった米国の武力行使に反対はするものの具体的な手段が講じられずアラブ陣営の亀裂が露呈。外相会議ではクウェートが米国に出撃基地を提供し、カタールも米中央軍司令部を置いていることから、強い調子の声明採択は難航も予想された。しかし、イラクでの戦闘激化への危機感から非難と撤退要求の大枠で合意した。(カイロ共同) [毎日新聞3月25日] |