331―135 | 対イラク戦バグダッド陥落その後(2) |
【ワシントン中島哲夫】対イラク武力行使に最後まで反対し、国際的な反戦潮流を強めて米英を苦しめたフランスに、米国が露骨な意趣返しをしそうな雲行きだ。米政府高官は23日、フランスを北大西洋条約機構(NATO)の意思決定プロセスから締め出す案などが検討されていることを明らかにした。
対仏報復論の急浮上は、パウエル国務長官が22日に行った米CBSテレビのインタビューがきっかけ。長官は国連安保理でのフランスの抵抗を「実に面倒だった」と回想し、「米国に立ち向かった(報いとしての)結果はあるのか」との質問に「イエス」と答えた。
これを受けて23日、ホワイトハウスと国務省の定例会見では「フランスはどんな報復を受けるのか」という点に関心が集中。どちらの報道官も明確な応答はしなかったが、AP通信などによると、ある高官はNATOで仲間外れにする案を示した。NATOには全加盟国参加の理事会とは別にフランスなどが加わっていない防衛計画委員会(DPC)があり、ここで意思決定を行うという構想だ。
これを含む複数の「懲罰案」を21日、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ライス大統領補佐官らが論議したと、AP通信は伝えている。
フランスはシラク大統領以下、対米関係修復に向けた動きを見せており、23日もドビルパン外相がパウエル長官に電話をかけた。しかしイラク復興事業での権益確保は望み薄で「ブッシュ政権に逆らうのは危険」という重苦しい「教訓」を残しそうだ。
[毎日新聞4月24日] ( 2003-04-24-11:16 )
米司法省は23日、米バージニア州アレクサンドリアの連邦地裁で同日、イラクで略奪された絵画などを米国に不法に持ち込もうとしたとして、イラク戦争で米軍に従軍した米FOXテレビの技術職員ベンジャミン・ジョンソン容疑者(27)の訴追手続きを開始したと発表した。
同地裁に提出された宣誓供述書などによると、従軍取材でバグダッド入りしたジョンソン容疑者は、フセイン・イラク大統領の長男ウダイ氏の自宅にあったとされる大統領とウダイ氏が描かれた肖像画など12点の絵画やイラク政府発行の債券などを入手、米国内に持ち込もうとした。17日、ワシントン郊外のダレス国際空港税関の荷物検査で発覚し、押収された。
同容疑者は税関に対し、イラク市民から譲り受けたと説明。持ち込んだ絵画などは自宅などに飾るつもりだったという。
FOXテレビは23日、同容疑者を解雇したと発表した。
米国では、ブッシュ米政権寄りとされるFOXテレビの報道姿勢が保守層に受け、視聴率でCNNテレビを抜いた。
司法省などによると、ロンドンのヒースロー空港や米ジョージア州アトランタの空港などでも同日までに、米軍人らがイラク政府の施設から持ち出した金メッキの自動小銃や装飾用のナイフなどが押収されている。(ワシントン共同)
[毎日新聞4月24日] ( 2003-04-24-11:53 )
【エルサレム支局】米国務省などが発表したパレスチナ国家独立への指針となる新和平案(ロードマップ)の要旨は次の通り。
一、05年までに最終的かつ包括的なイスラエル―パレスチナ紛争の和解を成し遂げる。
一、独立した民主的パレスチナ国家はイスラエルや近隣諸国と平和的に共存する。
一、米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連の4者は定期的に高官級協議を開催し、計画の履行状況を評価する。
第1段階(今年5月まで。テロと暴力の終結、パレスチナ人の生活の正常化、パレスチナ機関の建設)
一、パレスチナはイスラエルが存在する権利を認め、イスラエルはパレスチナ国家樹立に関与することを明確にする。
一、パレスチナはパレスチナに対する暴力とテロの終結を明確に宣言する。
一、治安が改善された段階で、イスラエル軍は00年9月28日以降に占領した地域から撤退する。
一、パレスチナの憲法草案を迅速に策定する。
第2段階(今年6月から12月)
一、今年末までに暫定的な国境を持つ独立したパレスチナ国家を樹立する。
一、4者はパレスチナの経済復興のための国際会議を開催する。
一、パレスチナ国家の新憲法は、適切なパレスチナ機関の最終承認を受ける。
第3段階(04年から05年。恒久的な地位に関する合意とイスラエル―パレスチナ紛争の終結)
一、4者は04年初頭に国際会議を開催し、パレスチナ国家の暫定的国境問題などを協議する。05年に国境、エルサレム、難民問題の恒久的解決を図る。このほか、レバノン、シリアとイスラエルとの包括的和平を可能な限り早期に実現することを目指す。
[毎日新聞5月1日] ( 2003-05-01-20:37 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20030502k0000m030109000c.html
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>一、パレスチナはパレスチナに対する暴力とテロの終結を明確に宣言する。
は、
一、パレスチナはイスラエルに対する暴力とテロの終結を明確に宣言する。
の誤りと思われる。
(しかし、この道筋で進むと、パレスチナが内戦状態になる可能性が高い)
もちろん、基本は、
一、イスラエルはパレスチナに対する暴力とテロの終結を明確に宣言する。
である。
イラク戦争 米大統領、戦闘終結を宣言「対テロ決定的前進」−−開戦から6週間
◇民主化移行には時間
【ワシントン中島哲夫】ブッシュ米大統領は米東部夏時間1日夜(日本時間2日午前)、カリフォルニア州沖を航行中の空母エイブラハム・リンカーン艦上から全米に向けて演説し、イラク戦争開戦から6週間で、大規模な戦闘作戦の終結と「戦闘での勝利」を宣言した。開戦の大義名分とした大量破壊兵器が発見されないことなどから「終戦宣言」は出来なかったが、意識的に戦時局面を一段落させ、次期大統領選を視野に入れた内政重視路線に軸足を移そうという狙いとみられる。
空母リンカーンはペルシャ湾でのイラク攻撃任務を終え、帰国途中。ブッシュ大統領は空母が向かっている同州サンディエゴから艦上対潜機で沖合まで飛び、同艦に降り立った。
ブッシュ大統領は演説で、イラクでの戦闘の目的は「自由の大義と世界平和」だったと述べ、大量破壊兵器については「我々は隠された生物・化学兵器の捜索を始めており、数百カ所が調査対象となる」などと簡単に触れるにとどめた。
またイラク戦争を、01年9月の米同時多発テロを受けた「テロとの戦争」の一環と強調し、「イラク解放は対テロ作戦における決定的な前進だ」と評価した。
同時に、戦闘部隊を派遣した英国、オーストラリア、ポーランドの国名を挙げ、謝意を表明した。また、「独裁政権から民主主義への移行には時間がかかるだろうが、それは努力に値する。わが連合は、仕事を終えるまで(イラクに)とどまる」と明言した。
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■解説
◇戦争正当化に自信
ブッシュ米大統領の1日の演説の最大の特徴は、イラクでの戦闘の「勝利宣言」であって、「終戦宣言」ではない点にある。
開戦前、ブッシュ大統領はイラクの「武装解除」の必要性を力説したが、フセイン政権が消滅した今も大量破壊兵器は見つからない。これでは「戦争目的を達成した」と公式宣言できない。
そこで1日の演説では大量破壊兵器以外の側面を強調した。イラクが01年9月の米同時多発テロに関与した証拠がないにもかかわらず、大統領は、イラクでの軍事的勝利を「テロとの戦争」の「決定的な前進」だと意義付けた。
また、イラク国民がフセイン政権の圧制から「解放された」意義も強調した。大統領はバグダッド陥落直後の4月11日、イラク戦争にはイラク国民の解放と大量破壊兵器の除去という二つの目的があると明言していた。
しかし、今回の演説では、「解放」の意味を広げ、フセイン政権が消滅しただけでは真の解放とは言えないという立場を示す発言もした。「民主主義への移行」を実現するまで米英軍はイラクにとどまるという部分だ。
ブッシュ政権は、イラクを手始めに米国主導の「民主主義的秩序」を中東全域へと広げようという狙いを露骨なほどに示してきた。大統領の演説は、その狙いを改めて示唆し、どんな批判を浴びようとイラク戦争を正当化できる自信も示したといえる。【中島哲夫】
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◇演説の骨子◇
一、イラクでの主要な戦闘は終結した
一、我々は自由の大義と世界平和のため戦った
一、イラクにはまだ困難な任務が残っている
一、旧体制の指導者を捕らえ、処罰する
一、隠匿されている化学・生物兵器の捜索が行われる
一、イラクの人々による、人々のための政府樹立を支援する
一、アフガニスタンとイラクの自由および平和的なパレスチナ建設に全力をあげる
一、イラク解放は反テロ作戦の決定的な前進だ
一、テロとの戦いは終わっていないが、流れは変わった
一、米国民へのテロに関与するものは、米国の敵であり、目標である
(2003年5月2日毎日新聞夕刊から)
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ブッシュ演説、旧約聖書引用 イスラム諸国の反発も
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ブッシュ米大統領は1日のイラク戦争の戦闘終結演説の末尾で、米軍が世界にもたらす「希望のメッセージ」として旧約聖書のイザヤ書を引用し、「捕らわれ人(びと)には、出(い)でよと、闇に住む者には身を現せ、と命じる」(新共同訳による)と述べた。 圧制下のイラクに苦しむ人々を「解放」した軍事作戦の成果を強調した発言と読めるが、聖書からの引用には、「異教徒の進駐」に警戒を示すアラブ、イスラム諸国からの反発も予想される。「捕らわれ人」とは、紀元前6世紀にバビロン(今のイラク)に捕囚されたユダヤ人(ユダの民)を指しており、イスラム側から見れば、フセイン政権の脅威にさらされていたイスラエルへの支援とも受け止められかねない表現になっている。ブッシュ氏は、同時多発テロ事件の直後にも「十字軍」と発言し、イスラム世界から強い反発を浴びたことがある。 (朝日05/02 12:59) |