「天木直人氏の『さらば外務省!』の衝撃」

【「天木公電事件」】 http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031006/mng_____tokuho__000.shtml
 つい先日までれっきとした外務省の駐レバノン大使であった天木直人氏(56)の著書「さらば外務省」が波紋を呼んでいる。天木氏は、こたびの米英連合によるイラク戦争に反対する旨の公電(在外公館から本国政府に伝達される公文書)を川口外相宛てに二通送り、同時に全在外公館にも送った。

 「大義なき戦争」といわれるイラク戦争であるが、天木氏以外に反対の声を上げた外交官はいなかったのだろうか。これに対し、天木氏は次のように述べている。「いない。外務省では反米的言動をする人は出世できない。これは同時中枢テロに始まったことではなく、はるか以前からの体質だ。特に若い外交官は大使になるために、自分を殺して組織に迎合しなければならない。憂うべき現実だ」。

 なぜ公電を打ったのかについて、天木氏は次のように説明している。一つは、小泉首相の対米追従外交姿勢があまりにもひどく、批判せざるを得なかったとして次のように述べている。「私は諸外国の政府・外交筋から、米国が開戦一年前に、すでにイラク攻撃の意思を固めていたとの情報を得て、外務省にも報告していた。『フセイン(元イラク大統領)は悪人であり、攻撃しても世界は誰も非難しない』というのが米国の論理だ。これは戦後の集団安全保障体制を曲がりなりにも支えてきた国連の存在を踏みにじった行為。にもかかわらず、戦争が始まると小泉首相は早々と米国支持を打ち出した」。

 もう一つは、戦後ハト派外交が築いてきた成果に対する蹂躙が我慢ならなかったとして次のように述べている。「アラブ人は中東で植民地政策を行ったことがない日本に親近感を持っている。それだけに、今回の対米支持は大きな失望感を与えた。彼らは『日本は米国に原爆を落とされ、占領までされ、最も戦争の痛みを分かっているはずではないのか。なのにどうして簡単に米国が支持できるのか』という思いを私にぶつけてきた。しかも首相は何度も繰り返し支持を表明した。この行為は親日的なアラブ人の心を深く傷つけた。私は、小泉さんという人は外交について何の見識も関心もない人だと思った」。

 この事態に対して、外交官としての歴史的責任を感じたとして次のように述べている。「この状況を目の当たりにし、今、発言しなければ35年間、何のために外交官をやってきたのかという思いに駆られた。それに発言を公の文書として記録に残したい気持ちもあった。こういう発言をした外交官がいたということを歴史にとどめたいとも思った。ただ、はじめから辞めてやろうという気はなかった。辞めれば敗北者になってしまうからだ」。

 天木氏の1本目の公電は、開戦直前の3.14日、「戦争回避のための外交努力を続けなければならない。たとえ戦争が避けられないにしても、国際社会の合意を取り付ける努力をし、米国の単独攻撃には反対すべきだ。さもなければ国連による集団安全保障体制は完全に死滅する」。二本目は開戦後の3.24日だった。「不幸にして戦争が始まってしまった今、日本がなすべきことは、米国支持を繰り返すことでも、戦後復興にいち早く手を挙げて日本を宣伝することでもない。外交の権威を取り戻すために、外交によって早く戦争を終結させるべきだ」。

 天木氏のこの直言は“たった一人の反乱”となった。これに対して、外務省が如何に対応したか。次のような厳しい処分が待ち受けていた。2本目の公電後、北島信一官房長から電話があり、「あんな電報を打ってきて、外務省を辞めるつもりか」と詰問された。さらに、6月頃、北島官房長から再度電話があり、「レバノン大使を最後に退職してもらう」と「最後通告」を受けた。しばらくして竹内行夫事務次官の署名が入った通知が送られてきたが、そこには「今回、退職してもらうことになった。川口外相が進める若返り人事の一環であり、了承してもらいたい」と書かれていた。

 天木氏はこう振り返る。「外務省の先輩・同僚の例をみても、不祥事でも起こさない限り、辞めさせられることはない。出世が遅い人でも一度、大使に出た後、どこかの大学の先生になったり、特殊法人に天下ったりして、また二−三年してもう一回、大使を務め外交官生活を終わるというケースが多い。外務省は私の退職を『勧奨退職』と言っているが、事実上の解雇と受け止めている。三十五年間の外交官生活がこんな紙切れ一枚で絶たれるのかと思うと腹立たしい気持ちでいっぱいだ」。

 天下りのあっせんでは、北島官房長から「面倒をみてやる。ただし二年だけだ」との打診があった。しかし、天木氏は「人をばかにした侮辱的な対応。これで外務省と決別しようときっぱり決心した」と話す。

 これを「天木公電事件」と云う。この事件には、小泉首相―川口外相の対米追従エージェントまがいの売国的正体それをお膳立てする外務省の反動的体質が露呈されている。

天木氏の履歴

 天木氏の履歴は次の通り。京大3年在学中に外交官試験に合格し、1969年に同大を中退して入省した。アフリカ二課長、オーストラリア公使、カナダ公使、デトロイト総領事などを経て、2001.1月から駐レバノン大使となったが、今年8.29日付で退職した。天木氏は、アフリカ二課長時代、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)に反対し、経済制裁を科すよう主張している。「あれは誰がみても人種差別であり、私の意見もとり入れられたが、それまでこうした主張をした課長はおらず、野党的な言動と受け取られた」と話す。

 外務省では、条約局や北米局など日米同盟を最優先に政策を決めていくグループが本流とされ、政策決定プロセスは自民党政権の意向に傾斜しすぎているのが現状だという。しかし、天木氏は「私はおかしいと思ったときには堂々と反対を唱えてきた。省内で歓迎されざる人物と思われていたと思う」と分析する。

 実際、天木氏の省内の出世は遅く、「待遇面でも差別を受けてきた」という。大使の俸給月額は最も安い一号俸で百二万円だが、駐レバノン大使になった後も約八十万円。さまざまな理由をつけられ「準大使」の扱いになっていたためだ。

【天木氏の今後】
 天木氏は八日、東京・有楽町の外国特派員協会で講演。同日、講談社から「さらば外務省」と題する著書を出版し、外務省の実態を告発する。これから外務省と戦っていくつもりなのだろうか。「本心では、この講演と著書をもってこの問題は終わりにし、今後は日本とレバノンの民間交流に役立ちたいと思っている。しかし、外務省が機密漏えいなどを口実に、私を訴えてくる可能性がある。実際、『公電を他人に見せたりすれば、機密漏えいに問われる』などという電話も受けた。もしそういうことになれば、私は命をかけて最後まで戦う覚悟がある。私にはもはや失うものは何もない」


【日刊ベリタ・「あなたはそんなに立派なのか」 公明党荒木参議院議員が天木氏を刑事告訴 「週刊現代」にも謝罪要求】

 「あなたはそんなに立派なのか」 公明党荒木参議院議員が天木氏を刑事告訴 「週刊現代」にも謝罪要求【ベリタ通信】
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200310131151191

 【東京13日=ベリタ通信】前駐レバノン大使の天木直人氏(56)の著書『さらば外務省!』に対し、公明党の荒木清寛参議院議員はこの本が発売された8日、東京地検に名誉毀損で天木氏への刑事告訴を行ったほか、天木氏のインタビューを掲載した「週刊現代」に対しても民事訴訟をちらつかせて訂正、謝罪を要求していることが分かった 」...


【日刊ベリタ・アジア記者クラブ共催特別講演会「「さらば外務省〜イラク攻撃に反対した『大使』の声」 」】

 イラク戦争に反対意思を表明した現職大使が、このほど外務省によって事実上の「解 任」処分となった。その人の名は、前レバノン大使の天木直人さん(56)。35年間外務省に勤務してきたキャリア官僚だ。天木さんはすべての在外公館に「イラク攻撃反対」の公電を打ち、本省ににらまれた末の解任劇だったという。

天木さんはこの間の経緯を記した告発手記をこのほど大手出版社から上梓し、10月8日に外国特派員協会で告発の講演を行う予定。そこでは、イラク戦争にまつわる日本の外交上の問題だけでなく、これまでたびたび問題になってきた外務省の機密費問題など35年間の経験を洗いざらい明らかにするという。大使経験者のこうした告発はこれまでほとんど前例がない。当日は日本の外交政策を含め、忌憚のない発言をいただきます。

●テーマ 「さらば外務省〜イラク攻撃に反対した『大使』の声」
●ゲスト 天木直人さん(前レバノン大使)
●と き 10月23日(木)午後6時45分〜9時
●場 所 新宿リサイクル活動センター4階
     電話03-5330-5374(新宿区高田馬場4-10-17)
     *JR・地下鉄「高田馬場駅」徒歩2分
●参加費/1500円(アジア記者クラブ会員は1000円)
※お問い合わせ/日刊ベリタ・事務局(電話03−5802−2430)
※参加者の予約は必要ありません。直接会場にお越しください。
※終了後、名刺交換会を兼ねた懇親会を行います。

参考記事 http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200309301716252


【週刊朝日「小泉首相と外務省は国を売った」】
 http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C1570102516/E1681170536/index.html

 10月17日号の週刊朝日に、小泉首相のイラク政策を批判して首になった天木直人大使のインタビュー記事が出ている。天木氏はインタビューで、イラク開戦前に行われたシラク/小泉の電話会談の記録を披露している。それによると、開戦前シラクと小泉とが電話会談しているが、シラクが「国連のイラク視察は継続すべきだ。イラクはミサイルを自ら破壊したり譲歩したりしている。米国はなぜ待てないのか」と述べたのに対し、小泉は「ところでシラクさんは日本びいきで、相撲がお好きでしたね」などと奇妙な受け答えしており、天木氏は「日本国のリーダーとして恥ずかしく思いました」と云う。

 
この小泉発言は一見はぐらかしと見えるが、これは単なるトンチンカンとか話をはぐらかしたというレベルの問題ではない。卑劣で下品な恐喝なのである。シラクが大の日本好きで、若いころ日本の女性との間に子供をつくったというのは、半ば公然の事実である。いろんなゴシップが飛び交っているが、フランスのマスコミには政治家の「へその下」のことは言及しないという立派な伝統があり、いっさい報道されない。そんなことはみんな興味はないのである。

 ところが小泉首相は、このへんの「情報」を内閣情報局とかの警察官僚のおかげで知っているとみられる。シラクに対してわざわざ「日本がお好きですね」と場違いな話題を持ち出したのは「そんなこというけど、あんたの秘密を俺は知っているんだぞ」というメッセージにほかならない。

 さて、かような愚劣首相をどう待遇すべきか。日本人民の能力が問われている。


【さて、真偽は…前大使が外務省暴露本を出版:天木直人氏の『さらば外務省』(講談社)】
 http://www.sankei.co.jp/news/morning/07iti002.htm 、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031007-00000127-kyodo-pol
 米国主導のイラク戦争に反対する意見具申をしたことで、外務省を事実上、解雇されたとしている天木直人前駐レバノン大使(56)が、8日発売の著書「さらば外務省!」(講談社刊)で、外務省の機密費のうち20億円が毎年、内閣官房に上納されていたとされる疑惑は、「厳然たる事実」と指摘していることが分かった。在カナダ大使館での約800万円の公金流用疑惑についても言及している。著書によると、機密費の上納は1960年代半ば、日韓国交正常化交渉で官邸の機密費が底を尽き、当時の佐藤栄作首相が椎名悦三郎外相に命じたのがきっかけ。天木氏は「同僚や上司から公然の秘密として何度も聞いた」と話し、少なくとも13年の外務省機密費盗用事件発覚まで上納は続いたとみている。

 また、同書によると、カナダのハリファクスで先進国首脳会議(サミット)が開催された翌年の1996年、天木氏が公使だった在カナダ大使館で、サミット時のホテル代の二重払いが判明、約800万円がホテルから返金された。当時の大使は「隠し財源ができた」と喜び、天木氏の離任後、会計担当官が「あの金はすべて使われた」と打ち明けたという。

 この指摘に対し、当時の複数の関係者は「全く覚えがないし、あり得ない」と反論している。(共同)

 外務省関係者は「あり得ないこと」と事実関係を全面否定しているが、天木氏は「すべて私が直接見聞きした事実」と話している。

 天木氏をめぐっては、民主党の菅直人代表らが、「大使の職務として当然の意見具申」なのに、それを理由に外務省が退職に追い込んだとして問題視しており、天木氏に接触、詳しい事情を聴いている。(10.7日付け共同通信参照)





(私論.私見)